誤字脱字報告ありがとうございます。
やっと、ストーリーモードに戻れました。
逆シャアまでカウントダウンに入りました。
宇宙世紀0092年3月上旬
ローザが俺の元に来て3年が経つ。
看護師の資格も取得し、正式に家の診療所で働くことになった。
仏頂面の不愛想なのは相変わらずだが、患者に対してもそれなりに丁寧には対応してるし、近所づきあいはまずまずだ。
最初の頃を思えば、随分とこの生活にも慣れたようだ。
あいつ、炊事洗濯もしたことが無かったし、飯もロクに作れなかったが、今ではどうだ。
俺よりも、堂に入っていやがる。
リゼが懇切丁寧に教えた結果だろうが、元々は器用なのだろう。
1月16日にこの家で3回目の誕生日を迎え25歳となったローザ。
俺はその誕生日に間に合わせるつもりで、あるものを準備していたが、間に合わなかった。
まあ、俺としてはサプライズとして、誕生日プレゼントのつもりだったんだが、今日までずれ込んでしまった。
リゼは昨日、中学校卒業式を迎え、今日は友達のジャニスの家にクラスメイト大勢で泊まりに行って、家に居ない。
2人の夕食を終え、俺はミルクシェーキとコーヒーが入ったマグカップを二つ持ち、ローザに声をかけ、リビングのソファーに腰を掛ける。
「ちょっといいか?」
「うむ」
ローザは台所の食器洗浄機のスイッチを押し、クマのキャラクターが入ったお気に入りのエプロンを脱いでから、俺の対面に座る。
俺は持ってきた自家製ホットミルクシェーキの入ったマグカップをローザに渡す。
その後に、12インチのタブレット端末をローザに見せるように渡した。
そこには写真が写っている。
「こ、これは……どういうことだ」
ローザは食い入るようにタブレットに写る写真を見て、珍しく困惑な声を上げていた。
「お前に言えば、反対するからな。すまんが勝手に調べさせてもらった」
「……何故だ?………セラーナ…セラーナなのか?」
写真に写ってる若い女性を見る目は揺れ、タブレットを持つ手が震えていた。
「そうだ。お前の実の妹だ。今の今迄確証はなかったが……今はレオナ・サンジョウと名乗っている。丁度一年前か、お前に妹の事を聞いた。妹を信頼置ける人物に預け、こっそりアクシズから送り出したと……お前は二度と妹に会わないとも言っていたな」
丁度一年前の2月頃か……
ハマーンはローザと名乗ってから、1年と数カ月が過ぎていた。
漸くこの生活も慣れだした頃だ。
俺はハマーンに生き別れた妹がいた事を聞いていたが、落ち着いた頃を見計らって再度聞いた。
その時にハマーンは4つ年下の妹セラーナ・カーンについてほんの少し俺に話した。
ハマーンが摂政官となり、アクシズの実質のナンバー1となったのが16歳の頃だそうだ。
丁度0083年デラーズ・フリートの反乱が起きた年だ。
周りは全員政敵で、自分一人の身を守るので精いっぱいだったらしい。
そこで、自分の弱点となるセラーナを、ハマーンがその時、唯一信頼していた人物トウコ・イチジョウという人物に託し、デラーズ・フリートの反乱に乗じて、地球へと逃がしたそうだ。それ以降の消息は分からないと……
詳しい事は語らず、その時は其れだけを語ったのみだった。
セラーナの行方について、唯一の手掛かりはトウコ・イチジョウという人物だ。
俺はトウコ・イチジョウなる人物とセラーナの行方について、ドリスに捜索を頼んだのだ。
その時、ドリスは俺に結婚するなんて一言も言ってなかったがな。
それは置いといてだ。あのドリスを持ってしても、捜索に難航し一年かかったようだ。
トウコ・イチジョウなる人物は、極東日本、キョウトシティで今でも力を持つ名家出身だった。だが、一年戦争時に死亡扱いになっており、帰って来た形跡もなかったそうだ。
ドリスはあらゆる情報網と可能性を検証し、ようやく行きついたのがフジコ・サンジョウという人物だった。
名前は日本語では『藤子』と書き、トウコともフジコとも読めるらしい。
トウコ・イチジョウはセラーナを守るために、名前も変えイチジョウ家の遠い分家であるニイガタシティのサンジョウ家の娘養子となったそうだ。
今は、極東日本ニイガタシティでレオナ・サンジョウと名を変えたセラーナは、フジコ・サンジョウと共に穏やかな日々を過ごしてるとの事だ。
「セラーナは……お前の望み通り、政治の世界に巻き込まれる事なく、穏やかに過ごしてる。ドリスが調べ、現地に行って、隠し撮りした写真がそれだ。まあ、レオナ・サンジョウは大学でも美人で目立つから有名らしいから、隠し撮りしなくとも、写真は結構あったそうだけどな。だが元々セラーナ自身を知る人物や情報が全く無いことから、誰もお前の妹だと気が付かないだろうだとさ」
フジコ・サンジョウまで行き当たったドリスだが、レオナ・サンジョウが本当にセラーナ・カーンなのか、状況的にはその可能性が非常に高かったが、確証を得られなかった。
セラーナ自身についての情報が無かったからだ。
しかも姉妹だが、あまりハマーンに似てない。
髪の色は今のローザのように染めているかもしれんが、レオナ・サンジョウは穏やかそうな顔立ちだ。似てるのは輪郭ぐらいか?
だが、俺はローザ…ハマーンの反応を見て、それが確証となった。
レオナ・サンジョウはセラーナであると。
「……セラーナの痕跡を消すために、私は全てを焼き払った。当時の写真やデータすら残っていないはずだ」
ローザはゆっくりと、さらに声を低くし語りだした。
「そうか……」
「何故だ。何故こんな事をする!……私は……私は……」
「お前、たまにリゼを見て、ふとセラーナの事を思い出してただろ……そういう時は眉を顰めてたぞ」
「私はあの子を見捨てたのだぞ!」
「いーや、救ったんだろ。この穏やかな顔をみろよ。とても捨てられたと思ってる顔じゃねーぞ。それ、大学の活動写真も見ろよ、どれも笑顔だ」
「あの子にとって憎むべき存在の私が死んだからだろう……」
「ふぅ、お前をずっと憎んでたのなら、そんな顔をしてねーよ。9年間恨んでいたんなら、今のお前みたいにずっと仏頂面だぜ。きっと」
「くっ……」
「……いつか会いに行けよ。今はまだ無理かもしれんが、こうしてお前は生きてるし、セラーナも生きてる。それにトウコさん、いや今はフジコさんか、……セラーナをお前の代わりに守ってくれたんだ。礼をちゃんと言っとけよ」
「…………」
ローザはタブレット端末を持ったまま、自室に走る。
あいつの目尻には光るものが見えた。
これ以上は野暮だな。
後日、語ってくれたが、トウコ・イチジョウはハマーンの教育係だったらしい。
そんで滅法厳しかったそうだ。
ハマーンを特別扱いせず、判断を誤れば厳しく問いただしてきたそうだ。
そんなトウコを始めはハマーンは嫌っていたそうだ。
だが、アクシズをコントロールしてきた父親が亡くなり、ハマーンを政治の道具にしようと近づく輩に対して、トウコは激しく抗議したそうだ。
権力を振りかざす相手だろうと、拳を振り下ろしてくる相手だろうともだ。
ハマーン自身、いろんな人物に裏切られてきたが、最後まで口うるさく厳しく接してくれたのがトウコだったと……。
とんだ女傑だな。そのトウコ・イチジョウって女は。
まさか、そのトウコの影響でハマーンがこんな感じになったんじゃあるまいな?
そのトウコ・イチジョウは何でも、一年戦争前、サイド3の友好使節団の一人で留学の呈をなして、サイド3の大学に通っていたらしい。そのホームステイ先がハマーンの家だったらしく、そのまま一年戦争に突入し、流れでアクシズにと。
ハマーンは、妹を守るため、最も信用できる人物に託した。
自分の周りに味方が居無くなろうとも……
ハマーンにとって、セラーナが唯一の良心だったのだろう。
今は無理だが、何れかは会わせてやりたいとは思う。
お互い生きて、この世界に居るのだから。
終盤まで一気に行きたいところです。