誤字脱字報告ありがとうございます。
今回は繋ぎ回。
短めです。
俺はローザを宇宙港に送り出し、夜明け頃、家に帰るとアンネローゼが診療所の前に待っていた。
この事を話すと、ビンタを食らった。
自分にも相談しろと、なぜ止めなかったと………、俺はすまんと一言謝る事しかできなかった。
だが、直ぐに許してくれた。
リゼには……ローザが急用が出来てしばらく帰ってこれない事を伝えた。
賢い子だ。何となくわかってるのだろう。
「早く戻ってきてほしいね」と、あまり深く聞いてこなかった。
トラヴィスのおっさんにも話した。
おっさんは俺を慰めるようなことを言ってくれたが、余計に辛い。
俺は無力だ。
こうして妹を…家族同然の女一人を助けてやる事すらできない。
一年戦争時に味わった。自分の無力さを再び痛感した。
その三日後……
シャアが新生ネオ・ジオンの総帥として、世界に向け演説を行った。
『………そしてそのザビ家一党はジオン公国を騙り、地球に独立戦争を仕掛けたのである。
その結果は諸君らが知っている通り、ザビ家の敗北に終わった。それはいい。
しかしその結果、地球連邦政府は増長し、連邦軍の内部は腐敗し、ティターンズのような反連邦政府運動を生み、ザビ家の残党を騙るハマーンの跳梁ともなった。
これが難民を生んだ歴史である』
堂々たる演説だった。見る者、聞く者を魅了するだろう。
演説の声、抑揚、内容どれをとっても、非の打ち所がない。
宇宙市民にとって反地球連邦のプロパガンダとしては最高の出来だ。
だが、俺の怒りは頂点に達していた。
こいつの裏を知る俺にはとても許容できるもんじゃない。
思わずその場にあったコップを、テレビに映るシャアに投げつけていた。
何がザビ家の残党を騙るハマーンだ!!幼いあいつをてめえが仕向けたんだろうが!!
あいつの青春と未来を奪って置いて、その口が言うか!
連邦軍の内部腐敗解消をエゥーゴで実現できなかったのも、人のせいか!!
「くそが!!」
あんな奴の所にローザを行かすんじゃなかった!!
無理矢理でも止めればよかった!!
そんな時だ。俺の元に二通のメールが入る。
両方ともセキュリティが厳重だ。
一つは、新サイド6の医師会からだ。
内容は新生ネオ・ジオン軍と地球連邦軍との戦闘に備えての、戦時派遣医師団の募集案内だった。それの添付書類には医師会の会長秘書から、なんか半強制的に出ろって書いてあんな。
もう一つは、連邦軍からだ。
軍医復兵の通知だ。
宇宙軍再編に伴い人数不足だと。
知らねーよ!ったくよ!
まてよ。
もしかすると、ローザを止めれるかもしれん。
いくらなんでも、いきなりあいつが本丸のサイド1のスイートウォーターコロニーに、入れるわけがない。
それに、シャアと決着をつける前にやる事があると言っていた。
まだ、月の可能性が高いな。うまく行ったとしてもサイド1の連邦の息がかかったコロニーに居るかもしれん。
俺は二つのメールを見比べる。
となると……
戦時派遣医師団だな。
自由がきくし、というか現地さえ行けば好き勝手やってやるしな。
連邦軍の軍医だったらどこに派遣されるかわからん。
戦時派遣医師団だと、派遣先は多分サイド1だろう。
しかも、速攻手続きすれば、医療船無しに、身一つで先に行ってローザの先回りができるかも知れん。
リゼの事はアンネローゼに頼んでだ、それとトラヴィスのおっさんにも……
そういえば、アンネローゼの奴、昨日から部屋に帰って無さそうだが……どこ行きやがった?
電話をしてもアンネローゼもトラヴィスのおっさんも出やがらねー。
ヴィンセントはまだ仕事中だよな。
クロエに電話してみたが、ヴィンセントはトラヴィスのおっさんのジャンク屋に行ってるらしい。
なんで電話出ねーんだ。おっさんは。
埒が明かねー。
俺は居ても立ってもおられず、診療所を午後から緊急休診として、おっさんのジャンク屋がある16番コロニーに向かった。
次回も急展開。
ちょっと先にハマーン様視点かハマーン様の行動をかければなと。