誤字脱字報告ありがとうございます。
皆様今迄お付き合いして頂きましてありがとうございました。
漸く、この何となく始めたお話に決着をつけることが出来ました。
今回最終回ですが、一応、番外後日談を1話分用意してます。
(ちょっと先にはなると思いますが)
では、最終回です。
宇宙世紀0093年3月12日夜更け
「お兄ちゃん!なんか空が光ってる」
「おおっ?まじでなんだ?オーロラって奴か?いやいや、まじでどうなってる?」
俺はリゼの大声で窓の外を見ると、コロニーの強化ガラスの外で虹色に輝く何かが見えていた。
まるで、地球を覆うような感じに輝いていた。
「温かい、人々の温もり。まだ人々は温かい温もりをこれ程の輝きに」
隣で窓の外を見るミネバはこんな事を言っていた。
さっぱり意味がわからん。
ミネバを預かって二日たったが、やっぱなんか不思議な感じな子だ。
浮世離れしすぎてるって言うかだな。
うーん。預かったのはいいが、どうすべきか。
一応姫様だしな。
それよりもだ。
確か、今日がシャアと決着付ける日だとか言ってたよな、トラヴィスのおっさん。
まだ連絡が無い。まあ、戦闘宙域ではミノフスキー粒子とかで無理だろうが。
まさか、この光が関係してるんじゃないだろうな?
やはり、落ち着かん。
ローザの奴、無茶せずに、おっさんらに素直に助けられてればいいんだが。
ミネバは今、リゼの部屋で寝泊まりしてる。
ベッドは隣の空き部屋の奴を持ってきて置いてやった。
最初は、2階のアンネローゼが使ってる部屋の隣にしようかとしたんだが、リゼが同じ部屋でいいって言うもんだから、そうした。
まあ、急に知らんところに連れられて、しかも生活とか激変してるからな、しばらくは年近いリゼに預けた方が無難だろうとそうしてる。
ミネバも嫌がって無さそうだし、大丈夫だろう。
今日も眠れそうにねーな。
3月13日に日付が代わり、5時を回った頃。
診療所扉を叩く音がする。
おい、インターフォンあるだろ?こんなマネすんのは、トラヴィスのおっさんぐらいだ。
俺は慌てて、一階の診療所の扉を開ける。
「よお、エド帰ったぞ」
「エド先生へとへと、何か食べる物なーい?」
「エド先生、連れて帰ってきましたよ」
「………」
目の前にはトラヴィスのおっさんとアンネローゼ、ヴィンセントに……そして、ヴィンセントに背負われてるローザが居た。
ヴィンセントはローザを降ろし、ローザはよろよろと俺の元に……
「お前…よく」
「……ただいまだ」
俺は、しな垂れかかるローザを抱き留める。
ローザは重症ではなかったが、小さな裂傷や腫れ打撲などが全身のあちらこちらにあった。少々熱も出てる。
どう見てもこの怪我は拷問の跡だな、しかも生々しい。……まあ、まだ軽度の部類だ。一年戦争時は凄惨な拷問後の人間を何人も見て来た。傷の具合から女がやったのだろう。
くそっ、何処のどいつがやりやがった。
診療所で処置を施し、痛み止めと、体力回復を促すため無理にでも寝かしつけようと睡眠薬を処方し、3階の自室に寝かしつける。
「……」
ローザは何故か黙ったまま俺の手を放そうとしない。
ローザが寝静まった頃を見計らい、そっと手を外し部屋を出る。
俺はトラヴィスのおっさんとヴィンセント、アンネローゼに深く頭を下げる。
「感謝しかない。ありがとう」
3人は照れくさそうにしていた。
俺がローザの処置をしてる間、トラヴィスのおっさんは俺が用意した食い物を食べ、
アンネローゼはシャワーを浴びて来たようだ。ヴィンセントはクロエの様子を見に。
おっさんらの話によると、ローザはシャアの艦隊旗艦に拘束されていたとの事だ。
多分そこで、拷問まがいの尋問を受けていたのだろう。
そんで、おっさんらはシャアがロンド・ベルと交戦中に、けん制撤退行動を起こしていた艦隊旗艦を後方から襲い、ローザを奪還したのだとか。
簡単に言っていたが、艦隊から人ひとり救出するなんて芸当は普通出来るもんじゃない。
ローザが何故そんな所にいたかというと、おっさんらがローザから聞いた話だと、ローザは協力者を得て、ミネバを逃がした犯人として、わざと捕まり、シャアとの接触の機会を待って、暗殺を実行しようとしたらしい。
結果は失敗したと……
「で……この子はなんだ?」
ソファーに寝かせている緑色の髪の少女を指さし、3人に尋ねる。
怪我とかはなさそうだ。
年の頃はミネバとあまり変わらん感じだ。
「戦場で拾っちゃった」
アンネローゼが舌を出して答える。
「おい、ネコを拾って来たのとわけが違うんだぞ!」
「敵だったのよ。この子モビルアーマーに乗って攻撃してきたから、仕方なくコクピットごと引っこ抜いて、……ほっとくわけにも行かないでしょ?」
なに?この子モビルアーマー乗ってたのかよ?どう見ても小学生卒業したてか、中学生ぐらいだぞ。
「で……なんで、ここに居るんだ?」
「いや~、流石に連邦に引き渡すのもな。だってよ。どうやらモビルアーマー乗って暴れまくってたようだしよ。一応ネオ・ジオンの軍服着てるし~……ぶっちゃけ!エド!こういうの得意だろ!!」
「ぶっちゃけ過ぎだおっさん!!俺んちは託児所じゃねーんだぞ!!」
「いいじゃん。ローザちゃんをちゃんと連れ帰って来ただろ」
「う……それを言われると痛すぎるぞ。あーーわったよ!面倒みてやる。一人も二人も変わらん!!そのかわり、裏工作は任せたぞおっさん!」
「流石エド~話が分かる~」
おっさんはふざけた調子でそんな事を言いやがる。
「この子の身元はわかるのか?」
「今んところ何にもわからん。ネオ・ジオンの関係者だろうがよ。ドリスが明日調べるって言ってたな。今日は疲れたからとかで旦那とホテルに帰った。明日にはここに顔を出すだろうさ」
今回もドリスにもかなり迷惑をかけたな……、今後も迷惑かけると思う……。はぁ、俺はドリスに返しきれない借りがまた出来ちまった。
「そうか…ドリスに礼を言わないとな。……そんでシャアはどうなった?」
「まだわからん……ネオ・ジオンの艦隊は3分の1は撤退していったが、シャア本人はどうやら最後までモビルスーツを駆り、アクシズに居たようだ。アクシズの落下に巻き込まれたか……運よく助かっても、連邦軍に捕まってるだろう」
「アクシズが落下?はぁ?そんなんニュースにもなってないぞ?」
アクシズ落下って事は、地球に落下したって事だよな。そんなん大惨事になってるだろ?ニュースにならないわけが無い。
「それもわからん。アクシズは確かに地球に落下していた。だが途中で謎の光と共に、急に引力から押し戻されたんだ。ドリスもわけがわからんと言っていた」
なんだそりゃ?物理法則を余裕で吹っ飛ばす現象は?
まさか、あのオーロラのような光か?そんな事がありえるのか?
おっさんも困惑顔だ。なにかの奇跡とでもいうのか?
「何にしろシャアは失敗し、第2、第3の隕石落としは無くなったということか」
とりあえずアクシズの落下は阻止できたという事か、そんでシャアもまだ生死は分からんが、終わりだろうと……
これで、終わりでいいんだよな。
ローザがもう苦しむ必要は無いという事で、いいんだよな。
この後、緑髪の子を2階の病室に寝かせる。一応鍵をかけておく。
この子を助けた際相当取り乱していたらしく、ドリスが麻酔薬をうって眠らせたらしい。
朝になり、リゼやミネバ、クロエが起きてきて、皆で朝食をとる。
リゼにローザが帰って来た事を伝えると、満面の笑顔で部屋で寝てるローザの様子を見に行った。
ミネバは増えた大人達に囲まれた食卓でも、全く動じてなかった。
大人社会で生きて来たミネバにとってどうってことないのだろう。
朝食後、トラヴィスのおっさんは後片付けがあるとかで、16番コロニーに帰って行った。
ヴィンセントはクロエと自宅アパートに戻る。
アンネローゼは疲れたから寝るとの事だ。
リゼは今は学校は試験休みだ。ミネバと共に近所に散歩がてら買い物に行くと。
まあ、ミネバは世間に顔バレはしてないから、近所ぐらいなら大丈夫だろう。
何にしろ、ミネバはリゼに相当懐いてる。リゼの前では年相応の笑顔もみせていた。
眠り続けている緑髪の女の子の様子を見た後、ローザの様子を見に行く。
俺はベッドの横に椅子を持って行き、寝てるローザの顔を覗き込む。
「……エド」
ローザは目を覚ましていた。
「よく戻ったな」
「すまなかった」
「もう、気が済んだか?」
「ああ……」
「じゃあ、お前はハマーン・カーンじゃあなく、俺の妹のローザ・ヘイガーでいいんだな」
「………」
なんでそこで黙る。
「なんだ?もう気が済んだんじゃないのかよ。ハマーンに戻りたいのか?」
「いいや……もういい。……ローザ・ヘイガーがいい」
「だったら何が不満なんだ?」
こいつのこのしゃべり方は、何かに不満があるときの感じだ。
「………」
ローザは黙って俺の服の袖を掴む。
「なんなんだ?」
「私は怪我人だ……しばらくこうさせてくれ」
ローザは俺の手を掴みこう言った。どこか気恥しそうに。
「はぁ?何おまえ?」
何甘えてんだ?……まあいい、こいつにとっても、シャアとの対峙は辛い事だったのだろう。今は好きにさせておくか。
「ふん」
ローザは俺の手を掴んだままそっぽを向く。
俺はそんなローザの顔を眺めながら思いにふける。
これでいつも通りの日常に戻れる。
こいつと出会って、たった4年とちょっとなのに、随分長い間一緒に居た気分だ。
仏頂面のこいつが居て、リゼの明るい声が響くこの家は、いつの間にか俺にとって当たり前で、掛け替えのない物になっていたんだな。
ローザ…戻ってきてくれて……ありがとうだ。
翌日、新サイド6医師会からの戦時派遣医師団の再三の要請を無視し続けたが、なんか秘書課の若いねーちゃんが直接俺んちに現れて、泣いて頼み込んできた。俺が行かないと、理事長に首にされちゃうとかなんとかで……おい、それパワハラだろ。
今回のシャアの起こした反乱の戦地に近いコロニーでは、怪我人を収容したのはいいが医者不足らしい。
俺は明日戦時派遣医師団に出向することに決める。
まあ、ローザも一日寝たら普通に動けるぐらいにはなったし、大丈夫だろう。
問題は緑髪の少女だが……名前はクェス・パラヤ。父親は今回シャアと交渉した連邦側の高級官僚だったそうだ。
なぜシャアの側でパイロットをしていたか、本人から聞いても、よくわからんことを言って理解に苦しむ……、だが、どうやら親に反発して家を出た家出娘らしい。反抗期って奴だろう。
しかし、ドリスの情報ではクェスの父、アデナウアー・パラヤは新生ネオ・ジオンのルナツー奇襲で死亡したらしい。
母親はいないらしく、しばらく預かって、親戚を当たるしかないか……。
ローザやアンネローゼ曰く、クェスはニュータイプらしい。
まあ、俺からしたら、唯の駄々っ子にしか見えないんだけどな。
そんなクェスもリゼの前では素直になる。
……リゼパワーすげーな。
まあ、ミネバと同じ年だし、リゼに任せておけば大丈夫だろう。
ミネバ、いや今はオードリーか。
オードリーもこのまましばらく預かる事になる。
ローザが自分が面倒をみると息巻いていた。
オードリーにリゼがローザはお姉ちゃんなんだよと教えたら、オードリーがローザ姉さまと言った時には、ローザの顔が超緩んでいたな。
一応様付けはよせよとローザとオードリーに言ったが、元主従だし、しばらくギクシャクしそうだ。
それとローザだが妙に甘えてきやがる。何かと俺の手を引こうとする。いや、口調や表情は以前と一緒だし、俺の気のせいかもしれんが……
宇宙世紀0093年3月15日
戦時派遣医師団出向当日。
おい、なんで俺一人なんだよ。しかも、医師会の小型医療用船舶を自分で操縦して行けだって?
はあ、俺一人だったら、やっぱローザでも連れてくればよかったか?一応看護資格もってるしな。
まあ、ローザは最初は一緒に来たがったが、まだ本人は本調子じゃないし、家に残る様に言った。かなり渋々といった感じだったがな。
オードリーとクェスが家にいるし、流石にリゼ一人に任せるのはまずいだろう。
4年と2カ月前か……こうして小型医療用船舶での帰りにハマーンを拾ったのは。
俺は医療用船舶をオートで設定して、サイド1方向に向かうが……
途中でデブリ群に進路コースが重なってしまう。
おい、こんな所にデブリ群があるなんて聞いてないし、マップにも載ってないんだが、はぁ、世間で言うアクシズ・ショックの影響か?未だにキラキラ光ったままだし。
げっ、マニュアルに戻してコースを避けたのに、なんでデブリがこっちに向かってくんだよ!
「やばっ!?」
俺は舵を切って、大きく避けたんだが、船舶に衝撃が走る。
操縦席に緊急警報が鳴り響く。
おい、ここで俺はお陀仏かよ。
そう思っていたが、何とかデブリを抜けることが出来た。
しかし……船舶に大きなダメージが……どうやら、デブリの小隕石が船体にめり込んだらしい。
「はぁ、帰るしかないか……」
幸い船舶の航行に問題が無いが、中の医療設備やら送り届けるはずの医療物資やらが半分滅茶苦茶に……。保険効くよなこれ……。
俺が悪いんじゃないぞ。オート航行がデブリの中を突っ切ろうとしたのがそもそもの間違いだ。この船舶のAIが悪い!……まあ、航行記録があるから大丈夫だろう。
それにしてもだ。隕石突っ込んだままだと、バランサーに影響でるよな。
俺はノーマルスーツに着替え、船舶の倉庫部に突っ込んだ隕石の状況を見に行く。
………おい、これ脱出ポッドだよな。
俺は嫌な予感しかしなかった。
しかもなんで二つなんだよ!!
一つは焦げてて微妙だが、赤っぽい。もう一つは真っ白だ。こっちは焦げてないが……
赤っぽい方はこりゃダメだな。真っ白の方は大丈夫そうだ。
生命維持装置は?
一応二つとも動いてる。
はぁ……またかよ!!
か、帰るか。
読んて頂まして、ありがとうございました。
番外後日談。
この後のエドとローザのお話と……オードリーやクェス。
トラヴィスやアンネローゼ、ヴィンセントとクロエ。
ちょろっと赤い人と白い人
そんで……ウラキ
あれ?一話で収まるのか?