なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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0083からあの人参戦


⑤アルビオン

宇宙世紀0089年8月上旬

俺は新サイド6の中心1番コロニーに来ていた。

新サイド6の医師会の例会だ。

半年に一回、出ないといけない決まりだ。

 

 

「エドワード君、戦時派遣医師団はご苦労だった。現地は酷い状態だと聞いていた。さすが軍務経験者だ。よく生きて帰ってこれた。君を推挙した私の慧眼に狂いは無かった」

このちょび髭のおやじは新サイド6医師会を牛耳ってるリヒター・マルチネスっていう政治屋気取りの医師会のトップだ。

何言ってやがる。脅しに近いやり方をして、半ば強制的に出向させたのはどこの誰だ?あんただろ?しかも、なにさらっと自分の手柄にしてやがる。

 

「まあ、なんとか」

 

「ただ、宇宙救護船舶を壊したのはいただけないな。あれを直すのにいくらかかったと思っているのかね?」

 

「はぁ、まあ保険で賄えたからいいでしょ?それに、新サイド6からは6人の予定が俺1人しか派遣しなかったから、現地でいい面の皮でしたが?」

 

「ふん、まあいい。今後ともがんばりたまえ」

そう言って、このちょび髭おやじは手をしっしっと振り、どっかに行きやがった。

何そのあしらい方、俺は害虫かなにかかよ?くそったれめ。

確かに、宇宙救護船舶はハマーンの脱出ポットが突っ込んできて、結構壊れちまったが、飛べない訳じゃないだろ?確かに結構な大穴空いたが、保険で賄えるじゃねーか!

しかも派遣団俺一人って、現地に着いた時には針の筵だったんだけどな!

どうやら、このちょび髭おやじ、俺の事が相当気にくわないらしい。

俺の若さで軍医上がりというのもそうだが、医者の卵の若い連中が気軽に話しかけてくれるのもその一因らしい。

まあ、一番は俺が反抗的で生意気だというところだろうが……

 

 

俺はコロニー間の定期便までの時間が空いてるため、宇宙港にあるファーストフード店で飯にすることにした。

15番コロニーの定期便は1日1往復しかない。それ程片田舎だってことだ。

 

このファーストフード店からは宇宙が一望できる。

宇宙の暗闇から巨大な戦艦がこちらに向かってくるのが見えた。

「おお?ペガサス級が停泊しに来たって事は、定期検閲か?」

 

ペガサス級強襲揚陸艦。

モビルスーツを運用するための戦艦だ。

今はアーガマ級が主流になりつつあるが、それでもその能力の高さには定評がある。

 

連邦宇宙軍の任務の一つにコロニーの検閲がある。

反乱分子の有無を確認するためだ。

まあ、俺が知ってる当時はかなりずさんだったけどな。

 

俺が0083年に軍医として載っていたのもペガサス級だった。

確かペガサス級7番艦アルビオンだったな。

 

あのデラーズ・フリートの反乱に巻き込まれたんだが……よく生き残れたな俺。

デラーズ・フリートに勝利した連邦軍だったが、アルビオンは艦長と一部の乗員を排除して、ティターンズに組み込まれる事になった。

一部の乗員とは俺の事だ。

地球至上主義、宇宙市民大っ嫌いでゴミくそとしか思っていないティターンズにとって、コロニー出身の俺はお呼びじゃないってことだ。

俺もティターンズなどこっちから願い下げだ。頼まれたって絶対入ってやらん。

あのエリート意識丸出しのハゲ眼鏡の下で働くなんてまっぴらごめんだ。

 

俺はその後直ぐに連邦軍を退役して、一時期他のコロニーに住んでいたが、最終的にこの新サイド6に移住して診療所を開業したってわけだ。

 

俺と一緒にティターンズから排除された連中とは、今もたまに連絡を取り合ってる。

あの人参嫌いとエロ眼鏡は連邦軍に所属したままだ。しかも、グリプス戦役を生き残っていやがる。とっつあん坊やだが、パイロットの腕はエース級だからな彼奴らは。

あいつ等さえよければ、軍なぞやめて新サイド6に就職先を見つけてやるんだけどな。

だが、あいつら奥さんいるしな。しかも子供まで……。

人参嫌いは年上の金髪美人。エロ眼鏡も年上の整備士のゴツイ姉御だ。

年上の姉さん女房か、羨ましいと言えば羨ましいか。

 

 

 

「エド、エドじゃないか?」

俺は後ろから急に声を掛けられる。

 

「モ、モズリー先生?」

振り返ると懐かしい顔がそこにあった。

 

「やっぱり、エドか、こんなところに……なつかしいな」

50過ぎの恰幅のいい中年の俺がモズリー先生と呼んだその人は俺に握手を求める。

この人の名前は、アロイス・モズリー、アルビオンに乗船したもう一人の軍医にして、軍学校時代の講師だった。

俺は正式にはモズリー先生の軍医の研修兼助手としてアルビオンに乗船していたのだ。

 

「先生……死んだんじゃなかったんですか?」

 

「勝手に殺さないでくれ」

 

「アルビオンはティターンズに再編成されたんで、てっきり先のグリプス戦役で死んだものと……」

 

「はっはーー、ティターンズなどとうにやめてしまったさ。あんな血も涙もない所に居られるか……艦長の件もあっただろ」

 

「そ、そうっすか。でもまた会えてうれしいです」

懐かしい顔と会い、しばらく先生と談笑をする。

 

俺はてっきり、アルビオンにそのまま乗っていて、グリプス戦役で艦と一緒に爆散したと思っていた。

だが、モズリー先生は俺がアルビオンから排除された後、直ぐに配置転換を求めたらしい。一度軍学校の講師に戻って、また戦艦に乗って軍医をしているらしい。

戦艦の従軍軍医の方が楽だと。

そんで、さっき停泊したペガサス級に乗っていたそうだ。

艦長の件とは……

アルビオンの当時の艦長、シナプス艦長は、デラーズ・フリートの反乱の際、功績を上げ活躍はしたものの、ティターンズの前身組織に盾突いた行動をとっていた。さらに上司のコーウェン中将が進めていたガンダム計画が破綻し、逆にデラーズ・フリートに利用され、連邦宇宙軍に大ダメージを与えるきっかけとなったため、軍法裁判にかけられ、共に処刑されたのだ。

シナプス艦長の事は良くは知らないが、連邦には珍しく人道派の艦長だったという事は知っている。

ティターンズにとっては邪魔でしかなかったのだろう。

 

「だがもったいない。君ほどの腕前と度胸の有る人間が、町医者など」

 

「軍は性に合わないんですよ」

因みに組織やら、群れるのも苦手なんだよな。

 

「やはり……先のネオ・ジオン抗争は酷いものだったかい?」

先生には先ほど、俺がサイド3で戦時派遣医師団に参加していた事を話していた。

 

「はい、ネオ・ジオンの連中は俺よりも若い連中が殆どです。中には15にも満たない子供も」

 

「……そうか……まあ何かあれば気軽に相談してくれ」

そう言って、モズリー先生と別れる。

先生からはプライベートな連絡先を教えて貰った。

 

 

 

 

俺はしばらくして、定期便で15番コロニーに戻り、診療所兼自宅に帰ると、診療所からリゼが勢いよく飛び出し俺にこう告げる。

 

「お兄ちゃん!お姉ちゃんが寝ながらうーんとあーとか言ってるよ!」

 

……ようやく眠り姫が起きるのか。

 




0083からまさかの人
予想出来ましたか?
というか、皆さん思ってるはず、こいつ誰ってw

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