なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

まじで、これでいいのか?
いや……これは無いよな。
今も、自問自答してる今回の話。
後日談だからまあ、ちょっといいかな。
と……そんな話です。
先に謝っておきます。シャアファンの方ごめんなさい。

番外の番外程度に思っておいてください。
ラプラスの箱とは一切関係ない話です。


番外後日談:ラプラスの箱中編その3キャスバルという男

赤い人とは、焼け焦げていた赤い脱出ポッドに入っていた奴の事だ。

最初見つけた時には脱出ポッドの焦げ具合から、中は電子レンジ状態だろうと最初はもうダメだと思ったのだが、生命維持装置は動き続けていた。

だが、直ぐに応急処置を施さなければならない状態だった。

ノーマルスーツの形状から新生ネオ・ジオンの士官だと分かる。

連邦に引き渡される可能性があるため、例の如く病院に搬送せずに、診療所に運び込んだのだが……。

赤い人は結構酷い状態だった。ローザを助けた時よりもな。

身元が分からないぐらい顔の皮膚がはがれ落ちていた。気道も肺も半分熱でやられていた。

体の方は随分とマシな状態だった。着ていたノーマルスーツが熱から守ってくれたのだろう。

頭部や気道が酷い状態なのはノーマルスーツのヘルメットを外していたからだ。被ってりゃもうちっとましだったのにな。

だが、ノーマルスーツを着ていた体は確かに大丈夫だったのだが、何故か股間だけ重症だった。いや、もうダメだった。

 

診療所に運び込んで、生命維持のための処置を施し、命を取り留める事はできた。

問題はこの赤い人は誰だって事だ。

意識は勿論ない。この顔じゃ、身元もわからんし、新生ネオ・ジオンの士官じゃ、血液採取しても遺伝子情報バンクにも載っていないだろうから照合しようがない。本人の意識が戻らない限り、当分は身元は分からないだろうなと思っていた。

だが……意外なところから直ぐに身元が判明した。

家の妹共からだ。

ローザは集中治療室に運び込んだ重傷の赤い人を一目見て、シャアだと、あの新生ネオ・ジオン総帥のあのシャア・アズナブルだと、強い口調で言い出した。

顔は熱で皮膚が削げ焼け落ち、誰が誰だかわからない状態なのだが、間違いないと断言した。

ローザはニュータイプだ。そして目の前の死にかけの赤い人がシャアならば、真実なのだろう。ニュータイプ同士が、お互いの存在を認識できる能力があるらしい事は知ってる。

 

「……この男をどうする気だ」と俺に強い口調で問いかけるローザ。

俺はその問いかけにいつも通り答える。

治療を施す。

目の前の男が誰だろうが、怪我人や病人を治すのが医者の役目だと……。

俺がそう言うとローザはそれ以上何も言わず、手術の準備を進めてくれる。

俺のやってる事はローザの気持ちを蔑ろにする行為だとは分かっている。

だが俺は、やはり見捨てられない。

目の前の人間はまだ生きている。このまま放置すれば死に至るのは間違いない。

赤い人に緊急手術を施した後、「すまん」とローザに謝ると……

ローザは色んな感情が入り混じった表情を一瞬浮かべた後、大きく息を吐き

「いい……私も嘗て、こうして助けられた」と、俺にそう言ってくれたその目はどこか優し気だった。

 

赤い人に直接接触させていないクェスも1Fの治療室のメディカルマシーンで眠る赤い人がシャアだと言い出した。

それはいいのだが、かなりどうでもよさげにな。

おいクェス、お前、最初はシャアが好きでくっ付いて行ったんじゃないのか?何その変わり身の早さ、最近の子は皆こんな感じでドライなのか?いや、こいつが特別ドライなだけか。

そんでオードリーまでシャアだと。憐みの表情を浮かべてな。

この顔無しの赤い人の素性を、ニュータイプの3人が3人ともシャアだと主張した。

間違いないだろう。

後にトラヴィスのおっさんが赤い人の脱出ポッドを調べ、ドリスの協力を得て、新生ネオ・ジオンのニュータイプ用のモビルスーツサザビーの物だと判明。

赤い脱出ポッドに乗っていた赤い人はその搭乗者のシャアだろうと

 

俺はメディカルマシーンの中で眠るこの男を見ながら思う。

ローザの気持ちを考えると、こいつをあのまま野垂死にさせた方が良かったのかもしれん。

俺だってこいつは生きていてはいけない奴だと思ってる。

だが、今の目の前のこいつは新生ネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルではなく、唯の怪我人だ。

俺の性分として、目の前で怪我をしてるこいつを放ってはおけなかった。

 

シャアの治療を始め2か月後、メディカルマシーンの中で意識を覚醒させる。

顔の治療は終わってない上に、意識が朦朧とし、話すことが出来る状態では無かった。

4か月後に、奴の遺伝子から培養した顔や頭皮の皮膚や鼻や耳の再生移植治療が進み、漸く見れる顔になった。

その面の面影に俺も覚えがある。テレビの演説でな。

股間の再生治療は、流石にちょっと時間がかかる。いや、そもそも現在の既存の医療技術では完全再生する方法は確立されていない。

やって出来んことは無いが、成功するかわからん状態だ。

ようやく意思の疎通が出来るほどに回復し、一般病室に移すことが出来たのだが、流石に2階の病室に置くのは憚れる。

アンネローゼが住んでるし、アムロも眠ったままだ。何よりローザの事を思うとな……。

一階の診療所の物置部屋を片付けて、ベッドを置き奴を移した。

 

シャアの世話についてなのだが、俺が率先して行う様にした。

ローザは看護師である自分が当然やるべきだと言ってくれたが、流石にな。

ローザも色々と準備はしてくれるが、せめて直接世話をさせないようにした。

ローザが奴の病室には一人で入らせないようにも気を回し、入る際は必ず俺と一緒にだ。

経緯が経緯だけに無理強いはさせたくないし、俺自身もさせるべきではないと思いもあった。

 

俺はそんな心境のまま治療を進めていく。

 

シャアが話せるようになってから、奴に第2次ネオ・ジオン抗争の事の顛末を話してやった。

だが、奴はまるで他人事のような感覚で聞き、相づちを打っていやがった。

流石にこいつの態度に殴ってやりたい衝動が走ったが、ぐっと我慢する。

まあ、かなり文句は言ってやったがな。

だが、アムロ・レイが生きてる事と、アクシズショックと言われる地球を覆う煌めきが今も輝いている事を話すと……苦悶の表情を浮かべていた。

 

シャアはローザの存在に気が付いていた。多分ハマーン・カーンであることにも気が付いている。

奴もニュータイプだからな。

だが、ローザが直接シャアに話しかける事は無いし、俺が居る前でシャアからわざわざローザに話し掛ける事もしなかった。

奴がなんとか一人で体を起し食事がとれるようになって数日。

俺とローザで奴の病室に入り、何時ものように検診を行う。

勿論俺がベッドで寝ている奴の目の前に立って、各種チェックを行い、ローザは後方で検診データのチェックやらと俺のサポートをしてくれる。

俺が少し席を外し、直ぐに奴の病室に戻ったのだが、ベッドの上のシャアはローザに話しかけていた。

俺は病室に入らず、扉の外から中の会話に聞き耳を立てる。

 

「ハマーン……何故だ」

 

「何故だとは何だ?貴様を助けた事か?それとも私がここに居る事か?それとだ。私の名はローザだ。ハマーンなどと言う名は知らんな」

 

「私をどうするつもりだ」

 

「知らん。私はお前を許せはしないが……だがエドが決めた事だ。どんな悪党だろうが怪我をした人間を放っておけない性分なのでな」

 

「お前は本当にハマーンなのか?……あの医者は何者だ?」

 

「ローザだと言っているだろう。ハマーンという女はもうここには居ない。エドは私の家族…らしい。私を無理矢理妹にした街医者だ。おかしな男だ」

 

「何を言っている?」

 

「ふん。貴様には一生わからない類の話だ。それと貴様に一つ忠告をしておくぞ。エドに手を出してみろ。貴様を私の手で必ず焼き払ってやる」

 

この分だと大丈夫か。

ローザも心では奴を許してはいないだろうが、今は割り切っているようだ。

随分と心の余裕が見える。

 

 

そのうち、シャアがトイレやシャワーに一人で行けるようになると、今度は他の連中とも顔を会わすようになる。

 

クェスは、本当にどうでもよさげに、空気扱いで、ほぼ無視を決め込んでいやがった。

オードリーからは、挨拶の言葉程度かわしていたが、憐みの目を向けられていたな。

アンネローゼからは女の敵のような軽蔑した目で、無言の圧力をかけられていやがった。

出くわすたびにこれだ。

流石のシャアも精神が擦り減っただろう。

自業自得とは言え、これはきついものがあるな。

 

俺は奴が退院する程度に回復したのなら、連邦軍に突き出すつもりだった。

奴は正当な手続きを受け、裁きを受けるべきだと。

 

だがローザとトラヴィスのおっさんは反対する。

ローザはシャアを生かしておくのは危険だと。

連邦軍に突き出せば、オードリー…いや、この場所とミネバの存在を話し、交渉に用いる可能性が高いと、それと自分の、ハマーンの存在もだと……シャアの口八丁で刑の軽減や、最悪条件付きで解放などもあり得ると。

 

トラヴィスのおっさんも連邦軍に突き出したところで、こいつは真面な裁判が行われない可能性が高いと踏んでいた。

それどころかさらに連邦の高官共と交渉し、譲歩を引き出し、宇宙の闇の中に紛れ、また地球に牙を向くだろうと。

流石にそれは無いんじゃないかと、おっさんに言ったのだがな。

第二次ネオ・ジオン抗争終結から数か月経った現在、メディアではシャアの死亡説が有力になりつつあるが、連邦軍からの正式な通達は無い。

だったら、奴を突き出せば、連邦も鼻高々とシャアを捕縛したことを宣言できるだろう。

そして、奴を裁判にかけ処刑になると……

だが、おっさんは俺の言葉を否定する。

おっさん曰く、連邦内部にもシャアの内通者や信奉者がいると。

さらに連邦上層部の穏健派や強硬派の一部には、宇宙に敵が必要だという理念を持った連中がいるらしい。

巨大な地球連邦という組織を形だけでも維持するには、敵が必要だと。

組織に明確な敵が居る事により、意思統一が強固になるのは確かだ。

だが、シャアは野放しにするには危険すぎる男だ。

一年戦争から今迄、大きな戦争や争いには何かしら奴が関わっているのは間違いない。

もし、シャアの処刑が現実になったとして、裁判どころか、人知れず処刑されるのが落ちだそうだ。

 

連邦って言う組織は大きくなりすぎたが故の問題を抱えているって事だ。

連邦の維持という大枠は組織内では統一されているだろうが、思想や方針がバラバラだ。

ティターンズのような連中だけじゃなく、様々な思想の下に連邦の維持をやりくりしている。

俺からすりゃ、もう崩壊しているのと同じだと思うがな。

 

トラヴィスのおっさんも、シャアを人知れず処分をした方がいいと……それはおっさんがやると。シャアと裏でつながっていた裏社会の連中や連邦内の協力者などを吐かせた後にな。それはレイスとしての役目だとも言っていた。

 

俺自身はシャア個人に直接の恨みは無い。

だが、こいつが世界に戦争という厄災をまき散らした極悪人であり、俺もこいつを許せないという気持ちがデカい。

ローザの事を思うと、ボコボコにしてやりたい気持ちでいっぱいだ。

 

しかし、こいつの罪は正当に裁かなければ意味がない。

この時はまだ、こいつの処遇については決まっていなかった。

 

 

シャアを拾ってから半年が経ち、術後も各種再生、移植手術もうまく行き、経過は良好だった。

アムロが目覚める1週間前の話だ。

奴から俺に話しかけて来た。

「なぜ、私を生かした」

 

「俺の前に死にかけたあんたが居ただけだ。極悪人だろうと、医者の前じゃ怪我人は平等だ。ローザも言ってなかったか?俺の性分なんでな」

 

「ハマーンか……ハマーンを助け、変えたのはドクターか?」

 

「今はローザだ。変えたかは知らねーが、今は俺の妹で、この診療所の看護師だ」

 

「……私をどうする気だ」

 

「さーな。俺はあんたに正当な裁きを受けて欲しいんだがな。あんたがやって来た事の罪を償うためにもな。だが、あんたは大物過ぎる。連邦に引き渡したところで、正当な裁きとやらは受けられるのかわからないそうだ」

 

「……連邦は腐ってる」

 

「俺も知ってる。それをあんたも利用してたんじゃないのか?」

 

「政治とはそう言うものだ」

 

「そうかよ。まあ俺の周りの連中は皆あんたの死を望んでいるぞ。あんたのやって来た事はあまりにもでかい。世の中に混乱を巻き起こしたのは確かだ。宇宙移民(スペースノイド)の救済とか言っているが、結局ダメージを受けたのは地球よりも宇宙移民の俺達だ」

 

「多少の犠牲はやむを得ない。なんとしてもやり遂げなければならない事があるのだ」

 

「俺にはいまいちわからん。あんたの事はちょっと調べさせて貰ったが……あんたの本当にやりたかった事ってなんだ?」

 

「人類の行く末を導くためだ」

 

「本当にそうか?…あんたの行動は支離滅裂だ。子供が駄々をこねてる様にしか見えねー」

 

「………」

 

「まあ、あんたがどう思おうが俺の知った事じゃない。ただやって来た事には責任を取らねーとな」

 

「私の死を望むなら、そうするがいい」

 

「俺は医者だって言ってんだろ。俺は人を生かすのが仕事だ。殺す事じゃねー。だが俺個人もあんたのやり方には憤ってる。ここでの治療を終えたら、俺はあんたを放り出すつもりだ。その後の事は知らん。ただ俺の身内や知り合いが黙っちゃいねーがな」

 

「私の命運はドクターに握られているという事か」

 

「どうだか。……なああんた。あんたは本当に何をやりたかったんだ?……言っておくが人類を導くとかそんなんじゃねー、シャア・アズナブルじゃない、キャスバル・レム・ダイクン。あんた自身が何をやりたかった?いや、何になりたかったんだ?」

 

「……何が言いたい?」

俺がキャスバルの名を出すと、こいつの表情が一瞬強張ったように見えた。

 

「キャスバル、お前の本音だよ」

 

「………私……いや俺は……………………」

キャスバル・レム・ダイクンはしばらくの沈黙の後、二言三言、静かにとある言葉を口にした。

 

 

俺は平手打ちで奴の頬を叩く。

1発……

乾いた音が病室に響く。

 

こいつが放った言葉で俺は思い知らされる。

こいつは、子供のまま大人になっちまった。

なまじ出来る奴だからこんな事に……

 

「お前、キャスバルを名乗るのがそんなに怖いのか。……そのためのシャア・アズナブルであり、クワトロ・バジーナか。甘ったれるなよ!」

こいつはシャアを演じ続けて来た。目的のためなら非道な事も辞さない男をな。

今迄やって来た事は、キャスバルではなく、シャアがやったと……。だからこいつはシャアがやって来た事をまるで他人事のようにとらえやがる。

そして、今回の第二次ネオ・ジオン抗争もそうだ。

こいつはダイクンの息子だと大衆に言っておきながら、シャア・アズナブルを名乗った。

キャスバルを名乗らずにな。

こいつは臆病者だ。

シャアという狂気の仮面を被らなければ何もできないな。

いや、そうせざるを得なかったのかもしれない。

復讐のためには、キャスバルのままでは出来なかったのだろう。

 

「……お前に何が分かる」

 

「わからねーよ。だがなこれだけは言っておくぞキャスバル。……シャア・アズナブルはお前だ。キャスバル・レム・ダイクンは戦乱を巻き起こした大罪人だ」

こいつのために、どれだけの人間が苦しんだんだ。

キャスバルの甘ったれた目的のためにだ。

 

「ぐっ………」

 

俺はこの後も、こいつに説教をくれてやった。

だが、こいつにも同情の余地はある。

幼くして父親が死に、内乱に巻き込まれ、色々あったのだろう。

最愛の母親と別れ……そして……こうなっちまった。

だがな、一年戦争から今迄、そんな話はそこら中に転がってる。

しかもだ。こいつ自身のせいで、親を亡くした子供がどれだけいるか。

 

俺はキャスバルの病室を出た後……酷い顔をしていたようだ。

ローザやリゼ、オードリーだけじゃなく、クェスにまで心配された。

 

あの時キャスバルが俺に発した本音の言葉はこうだった。

「母に会いたかった……母と俺達兄妹を否定したこの世の中を許せなかった」

こいつの母親はとうに亡くなってる。

死んだ人間はどうあがいても甦らない。二度と会う事は叶わない。

それが自然の摂理というものだ。

其れなのにだ。まだこいつは母親……いや、母の面影を追いかけていやがる。

キャスバルは子供の頃に味わった絶望から未だ抜け出していなかった。

絶望から復讐へ、シャアという復讐鬼の仮面を被り、復讐という名の狂気をこの世のすべてにぶつけたのだろう。

こいつの復讐は永遠に達することは無いだろう。

復讐の味をしめた人間は、次の復讐へと移行する。

わざわざ適当な難癖付けてな。それが終わりなき復讐劇へとつながる。

こいつはなまじ才能があるから、それが大それた物になる。

 

母の温もりを追い続けるキャスバルと復讐鬼のシャアか。

その相反する感情がこいつの滅茶苦茶な行動の理由か。

 

 

俺はこの頃から病室内では奴の事をキャスバルと本名で呼ぶようになった。

そして、奴の態度が徐々に変わって行った。

 

 

最初は居丈高な感じだったが、退院する頃には、随分と軟化していた……いや、妙に馴れ馴れしい感じだ……。

たまに、妙に奴の視線を感じることもあった。

まあ、何かされるわけでもないが。

 

こいつの処遇について、トラヴィスのおっさんやら、ローザ達と何度か話し合いを重ね、結局、シャアを連邦に引き渡すことをしない方向となった。

退院前、トラヴィスのおっさんには脅され、アムロには罵られ、ローザ達女連中には無言の圧力をかけられと散々な目にあったこいつを、拾ってから8カ月後、俺は退院させた。

 

その際俺はこいつには言ってやった。

自分が今迄やって来た事を、キャスバル・レム・ダイクンとして考えろと。

それと、一般の人々の生活に触れ、人々の思いを感じろとな。

その上で、自首するなり、自殺するなり、何処となり行くなり勝手にしろと。

俺は奴を診療所から放り出す。

だが、トラヴィスのおっさんやアムロ達は、こいつを警戒し保険をかけていた。

キャスバルを15番コロニーからは決して出られないように細工したのだ。

トラヴィスのおっさんとアムロ、ドリスが協力して作った怪しげな首輪を嵌めさせたのだ。

俺には行動を監視するための装置だと言っていたが、怪しいものだ。

まさか、逃げ出したら首輪が作動して首ちょんぱとかないだろうな。

人知れず殺されないだけましか。

まあ、そんな事をしなくても奴は、しばらくここを離れないだろうと言ってやったんだがな。

奴の股間の手術はまだだったし。流石に男のシンボルは置いて行けないだろう。

それに今の奴はもう……。

 

 

その2カ月後に股間の培養が順調に行き、接合が可能となったため、再手術を施してやろうとしたのだが……、「私の大きさではない」とか文句を言いやがって、無いよりはましだろと言ってやったのだが……何故か顔を赤らめ、「ド、ドクターに預かって欲しい」と言われた。

普通に嫌なんだが。

なんでも俺を裏切らないための証だとか……。

いや俺、お前とそんな約束したか?

確かに、しばらくはここに居て、一般人の生活をしろとは言ってやった。

その上で、自分の罪の償いかたを決めろと、猶予を与えてやったのだが……

但し、ネオ・ジオンに戻るなんて選択をしたら、その時はお前の命の保証はしないぞと脅しはした。

俺としては、自分がやって来た事を見つめ直し、自首して、連邦の甘い誘惑を跳ね除け、堂々と正当な裁きを受けて欲しいんだがな。

 

 

だが、奴は退院してこの2年間ちょっと、普通に住人に溶け込み生活をしていた。

俺が紹介した農場で昼を過ごし、夜はバーのバーテンとして働かせた。

その半年後には、バーのバーテン一本に……農場での単純作業は奴には向いてなかったようだ。逆にバーは大繁盛らしい。

シャアはイケメンだから、奴目当ての女性客も多いんだそうだ。

顔を隠すために髪型をオールバックから、もっさりロン毛に変え、グラサン姿だけどな。

あんまり変わらん気がするが……、まあ、新生ネオ・ジオンの総帥がこんなところでバーテンをしてるなんて、誰も思わないだろう。

それに今の奴は、バー茨の園15番コロニー店店長兼バーテンのデニス・レッドマンと名乗っている。

まあ、俺が例の行方不明者名簿から適当にあしらった名前を付けたのだが、我ながら良いセンスだと思うぞ。

だから、対外的には奴はレッドマンの名で通ってる。

 

何回か奴のバーに飲みに様子を見に行ったが、そのたびに俺の飲み代をタダにするとかなんとか言ってきやがる。しかも、他の客ほったらかしで、俺の相手をするもんだから、うっとおしい。

 

家に帰ってローザにその事を話したりすると、何故かめちゃくちゃ心配される。

もう、アレに会うなと……。

しかも俺の体の彼方此方を調べようとしやがる。何を気にしてるんだ?

夫婦になってからは特にな。

 

キャスバルは必要もないのに、週に1度は何故か俺の診療所に現れ、検診を受けに来る。

そのたびにローザの機嫌が悪くなる。

そのうちローザが居ない時間帯を見計らって現れるようになって、それを察知したローザが待ち伏せして追い払うみたいな感じが続いた。

ローザの奴、キャスバルが入院していた時よりも、退院した後の方が毛嫌い度が酷くなってるぞ。なぜだ?入院中、奴と何かあったとか無いはずだが。

 

あの新生ネオ・ジオン総帥の勇ましい姿がどこに行ったのやら。

キャスバルはシャア・アズナブルにはもう戻らないだろう。

こいつ自身3年前のアムロとの戦いで燃え尽きてる。

こいつは俺にそう語った。

あれがシャア・アズナブルとしてのすべてだったような気がすると。

 

だからといって、こいつの罪は消せはしないんだがな。

 

トラヴィスのおっさんやアムロは奴の監視体制だけは、万全を期していた。

今のところネオ・ジオンの人間等とも接触は無い様だ。

大人しいもんだ。

 

彼奴、このままずるずるここで過ごすつもりじゃないだろうな。

なんかこの生活を楽しんでる気配まである。

罪の償いかたを考える時間は確かに与えてやったが、うやむやにするつもりか?

俺の前では必ず何らかの報いはするとは言っていたが……。

報いとかいらねーから、とっとと罪の償い方を考えろってんだ。

 

それとだ。早く股間の手術受けに来いよな

お前の言うビックサイズなんてものは、お前の遺伝子から作れるわけねーだろ。

こんなもんいつまでも診療所の保管冷凍庫に入れておきたくねーんだよ。

ローザにバレて捨てられても、培養してやらねーぞ。

 




一言……なんてこうなった?

…長々とすみませんでした。
次はちゃんとラプラスの箱やります。
モビルスーツでるよ。たぶん。

色々とシャアの偽名を考えてました。
デニス・レッドマン
ベニス・レッドマン
ノーマン・レッドマン
レッドマン・デュランダル
レッドマン・シドウ
最後の方は声ネタかよ。

シャアは多分エドの事を始めて出来た友達だと思ってるハズ。
キャスバルなんて気軽に呼ばれたことないだろうし。
シャアは今迄友達なんていなかったから、接し方が可笑しい。
……………………
ローザさんの苦労が絶えない><

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