なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

56 / 99
感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

蛇足編トップバッターは皆さんのアンケートで一番多かったローザ編です。
蛇足編は時系列は前後したりしますのでご了承を。
今回のお話は47話『番外後日談:ラプラスの箱前編』の裏話となります。

蛇足編で見て見たいお話のアンケート結果は……
ローザ様甘々生活見て見たい。 778 / 38%
マリーダさん。この環境に適応できるのか? 389 / 19%
オードリーの学校生活見て見たい 244 / 12%
クェス、パパに甘えたい。 169 / 8%
アムロかキャスバル…… 477 / 23%

アムロとキャスバルが意外と得票が高かったですね。
やはり主人公ってところですか。


蛇足編
ローザ編①ローザの苦節


宇宙世紀0094年2月

第2次ネオ・ジオン抗争、俗に言うシャアの反乱から一年が過ぎ去る。

新サイド6、15番コロニーの片田舎の教会では結婚式が執り行われていた。

 

トラヴィス・カークランドとアンネローゼ・ローゼンハイン。

2人の年齢はトラヴィス54歳、アンネローゼが30歳と24歳もの差がある年の差夫婦が出来上がった。

アンネローゼは既に両親も親族も亡くなっていたため、エドがアンネローゼの父役となり、バージンロードを歩くことに……

 

 

その光景を最前列の席で見ていたローザは、祝いの席にはそぐわない上に、珍しくもため息を吐いていた。

 

ローザはトラヴィスとアンネローゼの結婚に反対や異論などは無い。

アンネローゼとは同じ屋根の下で3年以上暮らしてきた仲だ。

友達というよりも家族に近い関係だ。

流石に24歳上のトラヴィスと結婚すると聞いた時には、少々口を挟んだのだが、今では祝福する立場だ。

 

だったら、何故ため息を……

 

ローザの目は正装するエドの姿を追い、再びため息を吐く。

 

ローザはシャアの反乱以降、明確にエドを異性として意識し、この1年間、エドにアプローチを続けたのだ。

だが、全く進展しない。

いや、それどころか気づかれもしていない節もある。

 

アンネローゼの手を引いてバージンロードを歩くエドの姿を見ると、ため息の一つや二つ吐きたくもなる。

 

 

 

 

ネオ・ジオンを指揮し、地球連邦に挑んだ鉄の女と呼ばれたあのハマーン・カーンは、エドワード・ヘイガーに恋をしていたのだ。

いや、夫婦になる事を望んでいた。

5年も一緒に暮らしていたのだ。

夫婦になるまでの過程である恋人や彼氏彼女の関係などはとうに通り越した深い関係なのだ。

ただ、それが義理の兄妹という形だが。

 

最初はエドに無理矢理妹にさせられ、渋々その立場に収まっていたローザだったが、そのうち妹の立場も悪くないと思い、エドとの生活を楽しんでいた。

時が経ち、エドに対し、家族として、妹として全幅の信頼を置くまでとなる。

そして、さらにエドと生活を共にするうちに、徐々に心に靄がかかりだす。

それが恋心だと気が付くが、表に出す事はしなかった。

自分はハマーン・カーンだから、大罪人だからと……

 

 

だが、シャアの反乱時に家を出て、囚われの身となり、死を覚悟していた時だ。

牢屋の中で思い出すのは、エドとリゼとのあの家での穏やかな生活の日々だった。

あの家に帰りたい……エドにもう一度会いたいと……

そんな時、エドの親友であるトラヴィスやドリスらが現れ助けられる。

 

その後、無事家に戻り、エドと再会を果たし、エドに抱き留められる。

その安心感と充足感に、ローザは秘めた思いを抑えることが出来なくなる。

 

ずっと一緒に居たい……ずっと触れて居たいと……

 

だが、ローザは自分の思いを表現するすべを知らない。

ましてや、自分に似つかわしくもないこの感情を……。

 

ローザはエドに甘えるようになるのだが……それが不器用過ぎた。

エドの手を握りに行く程度のものだったのだ。

触れていたいという思いが率直に出ているのだが、それではエドには何も伝わらない。

 

エドにとって、ローザは飽くまでも妹なのだ。

妹が手を握って来ても、エドにとって兄妹のコミュニケーションの一つ程度にしか思われないだろう。

 

そして、ローザはさらに気持ちが焦る。

ローザにとって予想外な事態が起こっていた。

嘗て、シャア・アズナブルと呼ばれた男を警戒しているのだ。

シャアはエドに命を助けられ、レッドマンと名を変え、このコロニーで生活をし出していた。

ローザはそのレッドマンがエドに接する態度が最初は気にくわない程度だった。

エドに対して横柄な態度をしめしてるわけでもなく、殺意があるとは到底思えない。

だが妙に馴れ馴れしいのだ。

ある時、診療所の常連の自分より若い女性連中が、エドと接するレッドマンを見て言うのだ。

レッドマンにはエドに秘めたる愛があると……。

ローザはその話に耳を傾けていた。

(奴はエドを狙っているだと?バカな)

ローザは否定してみたものの、ある事を思い出す。

時折見せるレッドマンがエドを見る目が尋常じゃないことに……

ローザが昔読んだ帝王学の本には英雄色を好むというものがあった。

しかも、過去の英傑は男色家が異様に多い事もその時知ったのだ。

レッドマン、いやシャア・アズナブルは間違いなく英傑の一人であろう。

(エドの身が危ない)

エドにそれと無しに、レッドマンに気を付けろと忠告したりしたのだが、全く取り合ってくれないのだ。

ならば、自分が守るしかない。

何よりレッドマンより先にエドと結ばれば、万事解決なのではないかと。

 

ローザはそんな思いを秘めていたのだった。

 

 

ローザはトラヴィスとアンネローゼの結婚式が終わり、本格的に動き出す。

今迄の自分のやり方では、エドに振り向いてくれないどころか、全く気が付かない、埒が明かないと……

 

 

そこでローザは、クロエの所に相談に行く事にした。

クロエはあの堅物のヴィンセントと結ばれ、今は1歳になる子も設けていたのだ。

きっと何らかの参考になるだろうと。

それとなしにヴィンセントとクロエの結婚への経緯を聞く。

 

「えーっと、わたしはずっと彼の後ろについて行って、彼の隣でいつも微笑んでいたの。彼がわたしをどう思おうと彼が好きだから……10年間そうして、そしたら彼がわたしを好きだって、結婚したいって……」

クロエは我が子を腕に抱きながらそうヴィンセントとのなり染めを話す。

 

どうやら、クロエはローザと同じレベルの事をやっていたようだ。

(10年か………ヴィンセントで10年………あの鈍感のエドならば、それでは済まないだろう。それこそ30年や50年、いや一生かかっても不可能だろう)

クロエの話は全く参考にならず、肩を落とすローザ。

 

それに、今エドと接する時間は1年前に比べ減っていたのだ。

クェスとオードリーも共に暮らすようになってから、夕食前後から、エドはクェスとオードリーと接し、コミュニケーションの時間としていたのだ。

特にクェスはエドから離れようとしないのだ。

クェスとオードリーを引き取る際に、エドとローザはある約束事を決めていた。

必然的に嘗てハマーンだったローザがミネバ・ザビであるオードリーを優先的に気を留めてしまうだろうから、エドがクェスを見るようにするという事だった。

最初の内は、エドがクェス、ローザがオードリーという形にはなっていたが、オードリーはエドに懐くクェスを見て、羨ましく思っていたようだ。

オードリーは父の顔も知らずに育った。父親を求めるのも致し方が無いだろう。

結局、エドが二人ともの相手をする事になったのだ。よって、ローザがエドと接する時間は以前に比べ随分と減ってしまったのだ。

それでもクェスとオードリーが中学校に行っている間の、午前から夕方までは仕事のパートナーとしてエドと接しはしている。

だがそれは、飽くまでも診療所の医者と看護師の関係としてだ。

それはそれで充実してはいたのだが……、ローザとしては物足りなく思う。

 

以前に比べエドとの直接の接触が少なくなった上で、今のやり方では、到底願いはかなわないだろうことはローザにも理解できていた。

 

 

次に訪れたのは、アンネローゼの部屋だ。

アンネローゼは結婚したのだが、月の半分ぐらいは、この家の2階に住んでいた。

なんでも、居心地が良いかららしい。

 

アンネローゼにも自分の秘めた思いを語らずに、トラヴィスとアンネローゼの馴れ初めを聞こうとしたのだが……

 

「ふぅ、ローザ姉さん。バレバレよ。エド先生の事が好きなんでしょ」

アンネローゼはため息一つ吐いてから、ローザの悩みをズバリ言い当てたのだ。

 

「な、何の事だ。何故そこでエドが出る。私はただ興味本位で聞いただけだ」

ローザは思いを言い当てられ、動揺を隠しきれていなかった。

 

「はぁ、あのねローザ姉さん。ローザ姉さんがエド先生を兄さんとしてじゃなくて、男性として好きだってことは、知ってるのよ」

 

「何を馬鹿な、私とエドは義理とは言え兄妹だぞ。それにだ。家族としては信頼していてだ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「気が付かないと思ってるの?みーんな知ってるわよ。トラヴィスはそうだし、リゼちゃんだって、近所の奥様方もそうよ。あのクロエでも気が付いていたんだから、もしかしたらオードリーやクェスも気が付いてるかもしれないわよ。気が付いていないのはエド先生本人だけなんだから」

 

「な、なな何を……」

 

「ほら、エド先生を落とすんでしょ。だったら素直にならないと。今のままじゃ全然だめよ」

 

「う…うう」

ローザの顔は真っ赤だった。

 

「ほら、エド先生と付き合いたいんでしょ?」

 

「……そ、そうだ」

ローザは真っ赤な顔のまま俯いて、静かに認めた。

 

「素直なのはよろしい。でもね。エド先生は難物よ。私がアプローチしても全然なんだから」

 

「!?」

ローザはアンネローゼがエドにアプローチしていたという話に驚いていた。

 

「そんなに驚く事かしら?まあ、過去の事だから安心して、今はトラヴィス一筋だから」

 

「……」

 

「そうね、エド先生は普通じゃダメよ。私達の事は全くと言って女扱いをしてないんだから。本気で妹扱いよ。だから先ずはローザ姉さんを女だと認めさせないといけないわ。そうね……私に良い案があるわ。これならば鈍感なエド先生もいちころよ」

そう言ってアンネローゼはローザにエドを落とす案を授けたのだ。

 

 

そしてローザはアンネローゼの案を実行すべく機会を伺う。

 

ヘイガー家では、浴室を使う順番が凡そ決まっていた。

最初にクェスかオードリー、次にリゼかローザ、そして最後にエドだった。

普段2階のシャワールームを使ってるアンネローゼもそこそこの頻度で3階の浴室を使用するのだが、それでも最後はエドだった。

 

そして、クェスとオードリーが浴室を使い終わり、リゼに先に入ってもらい、ローザがエドの前に浴室に入る。

脱衣場と浴室に鍵をかける仕様になっているが、普段鍵をかける事は殆ど無い。

一応ノックで確認する程度だ。

 

ここまで言えばわかるだろう。

そう、アンネローゼがローザに授けた案とは……

脱衣場で裸のローザにエドが出くわして、ローザの裸に見とれて女として認識させよう作戦だ。

 

ローザはこの案を聞いた時には、随分と躊躇したのものだ。やはり好きな男でも、いや、好きだと意識した男だからこそ、裸を見られるのが恥ずかしい様だ。

所詮エドも男だ。ローザのモデルのようなバランス良いプロポーションの裸を見たのなら、ドキドキするだろうと。

アンネローゼの説得に応じ、ローザは決意した。

 

ローザは体を丁寧に洗った後、脱衣場でバスタオルを巻き待機する。

エドが脱衣所に入ったら、バスタオルを落とし裸になる作戦だ。

流石に恥ずかしいのかパンツだけは着用していた。

 

打ち合わせ通りアンネローゼがエドに声をかける。

「エド先生、お風呂空いたみたいよ」

 

「そうか?ローザが入ってなかったか?」

 

「もう上がって、自室に戻ったみたい」

 

「そうか」

エドはそう言って、リビングから脱衣場へ向かい、脱衣場の扉を一応ノックをしそのまま入って行く。

 

そして……

エドが脱衣場に入り、ローザは勇気を振り絞って、体を撒いていたバスタオルをワザと落とし、バランスのいい見事なプロポーションの肢体をさらす。

 

しかし、エドの反応は

「ローザ、入っていたのか。返事位しろよな。まあ、いいか」

 

エドは何もなかったかのように、ローザの裸を余所に自分はさっさと服を脱いで、素っ裸になって浴室の扉を開けて入ろうとする。

そんなエドの姿に逆にローザが固まってしまい、声を上げる事も身動き一つもできずにいた。

 

浴室に入り際にエドは……

「おまえ、クマさんパンツはここだけにしておけよな。好きな男の前ではやめておいた方が良いぞ」

そう言って浴室の扉を閉めたのだった。

 

ローザはしばらく身動きが出来ず、浴室の扉を眺めていた。

浴室からエドの鼻歌が聞こえ……

 

ローザが顔を真っ赤にして、自室に逃げ込んだのは言うまでもない。

そして、その日を境に、ローザはクマさんパンツを二度と着用しなかった。

 

結局、アンネローゼ発案のエドに女と見てもらうための、偶然裸を見せつける作戦は失敗した。

 

(女として全く見られていないのか……胸が足りないのか?……それよりもエドの体、その…意外と引き締まっていた……いや、私は何を考えているのだ)

その後しばらく、羞恥心やら、腹立たしいやら、悔しいやらで、エドと真面に話すことが出来ず、気落ちをする日々を過ごす。

 

 

そんなローザに近所の奥様方、アンナさんを筆頭に声をかけた。

「ローザちゃん。この頃元気がないね。何か悩みでもあるのかい。……たぶんだけど。エドの事かい?」

 

「……ああ」

ローザは心ここにあらずという風に生返事をする。

 

そこから、奥様方連中はローザを囲み、あれやこれやと話し合う。

どうやら、アンネローゼが話した通り、近所の奥様方全員が、ローザがエドの事が好きだと周知の事実であったようだ。

 

「男の心をつかむにはまずは胃袋からって、昔から決まってるのよ。エドに美味しい物を料理してあげて、うまいって言わせればいいの。お袋の味っていうのかしら、地味な料理の方が効果が高いわ。エドの好物でそういう物を作ってあげるのよ」

奥様方が出した結論は、美味しい物でエドの男心を鷲掴みにする。いわば餌付け作戦だった。

 

ローザの心に再び希望が湧きあがる。

エドの好物と言えばカレーであった。

今では甘口カレーがヘイガー家の定番となっていたが、以前エドがちょっと辛い方が好きだと言っていたのを思い出す。

 

ローザは早速、晩御飯用にカレーを仕込む。

エドの分だけ、中辛程度の辛さに味付けをする。

 

「どうだ」

夕飯時、少々自慢顔でエドの前に仕込んだ中辛カレーをテーブルに出す。

ローザは個人レストランのオーナーシェフであるヴィンセントに、カレーの中辛のレシピを家庭的にアレンジしたものを教えて貰い、4時間かけて仕込んでいたのだ。

 

「おお?なんか俺のだけカレーの色が違うぞ?」

 

「新たな試みを入れた試作品だ」

 

「俺は試食係かよ。まあいいか、そんじゃ、いただきますっと」

 

「ど、どうだ」

ローザは若干緊張気味に聞く。

 

「うまいな。中辛か。俺好みだな」

エドのこの言葉を聞き、ローザは心の中でガッツポーズをとっていた。

 

だが、エドはその後に意外な言葉を続けた。

「だが、やっぱ、いつものカレーがいいな」

 

「どうしてだ」

ローザの表情が曇る。

 

「いやな。お前が作る超甘口カレーさ、5年も食ってたらそれがこの家のカレーというかだ。それを体が欲しくなるんだよ。だからいつものお前が作る甘口カレーが俺は好きだな」

エドはニカっとした笑顔をローザに向ける。

 

「!?……そ、そうか。い、何時ものでいいのか」

さらにローザにとって予想だにしないエドの言葉に、うれしいやら恥ずかしいやらの感情が沸き上がり、慌てていた。

 

「ん?なんだ、顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」

エドはとどめに、ローザに顔を瑞っと寄せ、右手でローザの左手首を抑え、左手でローザの額に手を当てて、熱を測りだした。

 

「な、何でもない!熱などない!」

ローザはつい、エドの手を振り払ってしまった。

 

結局、奥様方発案のエドの胃袋を掴む作戦は、不発に終わったが、ローザにとって嬉しい誤算となった。

 

 

エドはその後も相変わらずであった。

昔からエドがトラヴィスらと遊びに行って帰って来ると、女の香水の匂いをさせていたのは、度々あった事だったのだが、それすらも焦り、許容できなくなっていたのだ。

時間だけが無残にも進んでいき、一行に進行しないエドとの関係に、激しい焦りを覚え、もはやなりふり構っていられなくなっていた。

 

 

そしてついにはドリスに連絡をつけたのだ。

ローザにとってドリスはエドとの関係において、あまり相談したくない相手であった。

ドリスはエドの昔の女だと認識していたからだ。

だが、唯一エドを落としたと言える人物でもある。

 

ローザとしては恥を忍んで、ドリスに相談したのだ。

 

「あー、やっぱりそうなるわよね。エドは気が付かないわよね。色恋沙汰には恐竜の神経並みに鈍いわよね。ましてや妹と認識されてるあなただと余計にね。わかったわ。ドリスお姉さんがとっておきの方法を教えてあげる」

 

ローザはドリスにその方法を聞いて、流石に躊躇したのだが、ローザは暫く悩んだ末に、それを実行することにする。

こういう強引なやり方は、エドに対して取りたくなかったのだ。

 

ドリスに教えて貰った方法とは、『寝込みを襲え』だ。

ドリスが昔、エド本人に使い成功した方法だ。

エドは体を鍛えているが、戦闘センスは壊滅的なため、コツさえつかめば女の身のローザでも組み敷けると……

 

ローザは機会を待った。

リゼは今日修学旅行で家に帰ってこない。

たまにエドの寝所に潜り込もうとするクェスは同室のオードリーに頼んで見張って貰っている。

 

そして……エドが寝静まった頃を見測り、エドの部屋へと忍び込む。

パジャマは薄手のネグリジェ。

これはアンネローゼのチョイスだ。

その下にはエドが誕生日に買ってくれた大人の下着。

 

一応エドが寝ているベッドの様子を確認する。

クェスはいないようだ。

 

エドが規則正しい寝息を立てて、静かに眠っていた。

ローザは暫くエドの寝顔に見入ってしまった。

普段は少々目つきが悪いエドだが、こうして寝静まった顔を見ると可愛らしいものだと。

 

意を決して、ドリスに教えてもらった先手必須の方法を実行しようとする。

シーツを捲って一気にエドの上に馬乗りになる作戦だ。

緊張感で汗を滲ませる。

ローザはネオ・ジオン時代の最終決戦よりも緊張していた。

 

シーツを剥ぎとろうと、手を掛けたのだが……

 

「何やってんだお前?」

エドの目が開き、ローザを見ていたのだ。

 

ローザはそのまま強引に事を成せばよかったのだが、そこで慌ててしまったのだ。

「な……そ、そのだ」

 

「ん?お前、顔が赤いぞ、しかも冷や汗かいてるのか……おい、大丈夫か!?」

エドはシーツに手を掛けたローザの手を取り、一気に立ち上がる。

 

「い、いやそれはだな」

 

「それはじゃねーー!ちょっとこい!お前無理してんじゃないのか!?」

エドはそう言って、ローザを強引に1階の診療室に連れて行く。

 

「ち、ちがう」

 

エドはローザを診察し……

「体には異常はない。……すまない。お前がそんなに悩んでいたとは……」

エドはローザに謝りだす。

 

「………」

その言葉を聞いて、ローザは分かってくれたとホッと息を吐く。

漸くエドに自分の思いが伝わったと……

 

しかし……

「オードリーやクェスの事で、いや、あいつ…レッドマンの事でか、……ダメだったらダメだと言ってくれ……俺はお前に知らず知らずに負担をかけちまってるかもしれないとは危惧をしていたが、そのままにしちまってた。俺はお前に甘えちまっていた。すまん」

エドはローザに自分の気持ちを吐くが、ローザが思っていた事とは全く異なる内容だった。

ローザが精神的に負担が掛かってるのは主にエドの事なのだが……。

そんなエドの気持ちや気遣いに、自分が行おうとしていたことに恥じる一方で、そんな気遣いができるならなぜ分かってくれないのかと腹立だしいやらと、感情を綯交ぜるローザ。

 

「……ふぅ、別に負担とは思っていない。少々エドの顔を見たくなっただけだ」

ローザは精いっぱいの言葉をエドに掛ける。

 

「そうか、ならばいいんだが」

エドは全く気が付かない。

 

結局、ドリス発案のエドを強引にものにする作戦は失敗する。

 

 

 

もはや、手詰まりなのかと……ローザの顔はますます曇りがちになっていく。

 

だが、そんなローザを見かねて周りの人間が立ち上がった。

そのそうそうたるメンバーは……

トラヴィス・カークランド54歳元連邦軍中尉にて、現在も裏では民間軍事会社スレイブ・レイスとして活動。

ドリス・ブラント38歳元連邦軍軍曹にて、世界を股に掛ける世界一の女ハッカー。

アムロ・レイ30歳元連邦軍大尉。連邦軍最強のパイロットにして、最高峰のニュータイプの一人。

ヴィンセント・カークランド32歳元マルコシアス隊の小隊長にて、ネオ・ジオン時代はその堅実な働きにより少佐まで上りつめた。

アンネローゼ・ローゼンハイン30歳元マルコシアス隊のニュータイプ。

クロエ・カークランド28歳元連邦軍の強化人間、ネオ・ジオン時代は中尉。死神と恐れられた凄腕のパイロット。

コウ・ウラキ現役の連邦軍大尉30歳、モビルスーツの操縦技術は一級品。

モーラ・キース現役連邦軍大尉35歳、現在オークリー基地の整備総長、皆の姉御。

そして、リゼにオードリー。ただクェスだけはまったく気乗りじゃなかった。

その他、数々の協力者が立ち上がり、エド包囲網がここに完成した。

 

 

そして……。

ローザのハマーンとしての実の妹、セラーナと会う事に託けて、エド包囲網作戦が実行される。

 

今のローザには、親身になって付き合ってくれる友人が多数いる。

ネオ・ジオン時代は、本当の意味でハマーンに向き合ってくれた人間はいなかった。

それもこれも、エドのお陰であった。

 

 

流石のエドも、この包囲網から抜け出す事は出来ず、遂にエドが落ちた。

宇宙世紀0095年4月

遂にローザはエドと結ばれる事に……

エドと出会ってから6年と3カ月だった。

 

 

 

宇宙世紀0097年4月現在。

ローザはキングサイズのベッドで並んで静かに寝ているエドの寝顔を眺める。

改めて幸せというものはこういうものだと感じるローザ。

……そっとエドの手を握り、自分も眠りへとつく。

 




次はたぶんバナージ編です。

皆さんにご質問です。レッドマンとなったシャアの結婚相手は誰が良いですか?

  • リタ・ベルナル
  • ナナイ・ミゲル
  • リゼ・ヘイガー
  • 外伝系女性キャラ
  • エド(精神的に)

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