なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

さて、とりあえず続きをどうぞ。


アムロ・キャスバル・エド男達の挽歌編②

冷蔵庫に、エビとイカの冷凍があったな。

レトルトライスもあるし、うんじゃ海鮮ピラフで行くか。

俺はキッチンでフライパンを温め始める。

 

今、リビングにはアムロの元カノだと思われる金髪美女のセイラ・マスさんがソファーに座りコーヒーをすすってる。

何でも、アムロの無事を聞いて、地球からわざわざ訪れたのだとか。

今も、アムロの事が好きなのかもしれんな。

あいつ、こんな美人さんを3年間ほったらかしにするなんてよ。

意外と罪作りな奴じゃねーか。

それとだ。料理しながら世間話をしていたんだが、俺と同じ医者の様だ。

あと、確かにセイラさんは美人だが、表情が硬いというか、何となくなんだが影があるというか、そんな印象を受ける。

 

 

海鮮ピラフとブロッコリーのサラダ、ヘイガー家特製ジャガイモポタージュをプレートに乗せて、セイラさんの前に出す。

「美味しそう。ドクターは料理もお上手なのですね」

 

「一人暮らしも長かったもんで。ちょっと診療所の方に友人が来てましてね。そっちにも昼食を持って行きますんで」

俺はそう言って席を外そうとした。

 

「申し訳ございません。私が突然訪問したばかりに、ご迷惑を……ドクターのご友人にもお詫びの言葉でもかけさせてください」

するとセイラさんは立ち上がり、俺に付いて来ようとする。

 

「いや、いいですよ。奴とは気安い関係なんで」

 

「それでは私の気が収まりません。私のせいで、折角のご友人との貴重な時間を奪う真似をしてしまっておりますので、ご友人に一言お詫びを言わせてください」

セイラさんは申し訳なさそうな顔をしていた。

いや、まじでいいんだけど、むしろ会わせたくないんだけどな。

悪意はなさそうなだけに厄介だ。

 

「はぁ、まあ、挨拶ぐらいなら」

意外と頑固なところが有るのかこの人。

まあ、お詫びの挨拶ぐらいなら大丈夫か。

よっぽどの事じゃないと奴がシャアってバレないか。

一目だけだし、なまじ怪しんでも、似てる人って事で誤魔化せば大丈夫だ。

何せ、奴が生きてるなんて信じる方が可笑しいからな。しかもこんな片田舎居るなんてな。

 

俺は奴の分の昼食をプレートに乗せ、階段を降りる。

その後ろにセイラさんが静々と付いてきていた。

 

1階の廊下から、診療所の待合室に入る従業員用の扉を開ける。

「待ったか?昼飯もってきたぞ。それとだ。ちょっとこの人がな……」

「いいや、昼食をご馳走になる身だ。構わんよ。ん?……?……!?」

俺がキャスバルにそう声をかけ、奴が返事をしながら読んでいた雑誌をテーブルに置いて、こっちに顔を向けたんだが……明らかに様子がおかしい。

 

「うそ……キャスバル兄さん!?」

へっ?

 

「ア、 アルテイシアか?」

はぁああ??

 

俺は思わずそう声を上げ、固まったままの二人の顔を交互に見る。

俺の後ろのセイラさんはキャスバルを見て信じられないという表情をしていた。

前のキャスバルもセイラさんを見て、かなり動揺してる顔だ。

 

何だこれ!?

はあああ!?

えええ!?

ま、まさか。こ、こいつ等、知り合いなのか!?

 

 

「エド……すまない。火急の要件を思い出した。ここで失礼する」

キャスバルの奴は、平静を装い、スッと立ち上がり、診療所の出入口の方へスタスタとスリッパの音をたてながら歩き出す。

 

「ま、待ってキャスバル兄さん!!」

セイラさんはキャスバルの方へ駆け寄る。

 

「人違いだ。……私はデニス・レッドマン。それ以上でもそれ以下でもない」

何言ってんだお前。

キャスバル兄さんって本名で呼ばれてるぞ。

兄さんって何、兄妹?

 

「兄さん!逃げないで!」

出入口に向かうキャスバルを追うセイラさん。

 

「違うと言っているのだっ…ぐはっ!!」

キャスバルは追いすがるセイラさんにスリッパのかかとを踏まれ、盛大に前へとコケ、診療所の出入り口のドアノブの手すりに盛大に額を打つ。

 

「あっ……」

セイラさんの声がそう漏れていたが手遅れだ。

キャスバルはそのまま倒れノックダウン。

気を失ったようだ。

結構血が出てるぞ。

 

 

はぁ、俺はキャスバルをそのまま待合室の長椅子に寝かせ額の傷を見て処置を施す。

3針縫ったぞ。

キャスバルはまだ目を覚まさないが大丈夫だろう。軽い脳震盪だ。

 

「度々すみません」

セイラさんは深く俺に頭を下げる。

 

俺はそこで、そもそもの疑問を口にする。

「あのさ、セイラさんはこいつの何なの?」

 

「この人はその………」

 

「ああ、大丈夫だ。こいつがキャスバル・ダイクンだってことは俺は知ってる」

 

「そうですか。……この人は私の実の兄です。私の本当の名はアルテイシア・ソム・ダイクン。この人の実の妹です。……この人は私の生き別れた兄なんです。でもなんで生きて……」

そう言ってセイラは泣き出してしまった。

俺も知ってる。ジオン・ダイクンには二人の子がいた。

一人は目の前のキャスバル・レム・ダイクン。後にシャア・アズナブルと名乗り、世界を混乱に陥れた一人だ。

そして……その妹がアルテイシア・ソム・ダイクン。

キャスバルの奴がたまに、酔った勢いで、幼かった頃の妹のアルテイシアの事を懐かしそうに語りだすことがあった。

まじか…セイラがこいつの実の妹だったのか。

確かに目元とか輪郭の感じとか似てるよな。

二人の顔を見比べれば確かに美男美女兄妹だ。

 

 

「………」

俺はそこにあったティッシュを涙するセイラに黙って渡す。

 

「この人は……兄は大罪人です。死んで当たり前の人なんです。私は3年前兄が死んだと聞いて、心の中ではホッとしていたんです。……同じ父と母を持つ兄なのに……私はそんな冷たい人間なんです。……でも…でも……う…ううう」

俺に語りながら涙を流すセイラに、俺は軽く背中をさする。

まあ、わからんでもないよな。

自分の兄が世界で最も危険視された男で、誰もが知るカリスマで大罪人だ。

しかも、死んだと思っていたのに、生きて目の前に現れりゃあな。

それにだ。キャスバルにしても、実の妹に自分が生きているという事は告げられなかっただろう。

自分が世界にどう思われているか分かってるだろうしな。

自分が生きているだけで、妹に迷惑がかかちまうってな。

 

 

ん?ちょっと待てよ。

セイラがキャスバルの実の妹でだ。

セイラはアムロの元カノ(推測)でアムロを追ってここにやって来た。

キャスバルとアムロが語った話だと。

2人はジオンと連邦軍の兵士として、何度も死闘を演じて来た。

しかも、一年戦争時には、キャスバルの思い人がアムロとの死闘中に、キャスバルを庇って、アムロの手で死んじまったらしい。

 

なんだこれ?

あれ?

 

整理してみよう。

キャスバルとアムロはライバル。殺し合いをしたぐらいのな。

キャスバルにとってアムロは思い人の仇となるわけだ。

まあ、戦争中でその思い人がアムロと戦うキャスバルを庇ったってことは、アムロに非は無いんだけどな。

心情的にはそうなるだろう。

そのアムロの元カノ(推測)がキャスバルの生き別れた目に入れても痛くない可愛い実の妹のセイラだったと。

 

…………

………

……

 

可笑しいだろこれ!?

どういう愛憎関係だこれ!?

何やってんだお前ら!?

 

 

 

そこで、漸くキャスバルが目を覚ます。

「んん………エドか……私はどうなった?」

頭を抑えながら体を起し、足を床に降ろして長椅子に腰を掛ける。

 

「エドかじゃねー!お前は土下座だ。セイラさんに謝れ!!」

 

「ア、アルテイシア……私は…………」

キャスバルは同じ長椅子の端に座っていたセイラに気が付き、動揺を隠せない。

 

「兄さん……。なぜ生きているのですか?」

セイラはスッと立ち上がり、長椅子に腰を掛けるキャスバルの前に立つ。

さっきまで泣いていた目を拭い、キッとした鋭い目つきで見据えていた。

 

「……3年前の戦いで瀕死だった私をエドが助けてくれたのだ」

 

「……貴方は死ぬべきだった。何故今ものうのうと生きているのですか」

セイラはあえてキツイ言葉をキャスバルに投げかける。

セイラは先ほどまで泣いていた。

いろんな思いが一気にあふれ出たのだろう。

あの涙には実の兄が生きていたという、間違いなくうれし涙が含まれていた。

これは儀式だ。

この兄妹には必要な過程なのだろう。

 

「………私は……すまない」

キャスバルは項垂れ、観念したかのように頭を下げる。

 

 

「ふうぅ、俺は邪魔だな。……セイラさん。何かあったら、そこのインターフォンで声をかけてくれ……」

俺は3階に戻るとするか、この場では俺は邪魔者でしかないな。

 

「ドクター…いえエドワード先生。ありがとうございます」

セイラは俺に深く頭を下げる。

俺は軽く手を振って見せる。

 

「キャスバル!実の妹に迷惑をかけっぱなしで、しかもほったらかした罪は俺的に一番重い。頭を床にこすり付けまくって反省しまくれ!!謝りまくれ!!そんで一生罪滅ぼしをしろ!!」

俺はキャスバルに思いっきりこう言ってやった。

何より、実の妹をほったらかしにして、こんなに心配かけさせたのが許せん。

 

「エド……」

 

俺は診療所に2人を残し、居住スペースに戻る。

2人には時間が必要だ。

じっくり話せばいい。

 

いや、待てよ。アムロが来るんだよな。あと40分もないぞ。

これ、アムロに今日は来るなと言っておいた方がいいんじゃねーか。

 

俺は3階に戻り、コーヒーを温めなおしながらアムロに電話をするが、電話がつながらない。

あいつは……

 

そこで、またインターフォンのチャイムが鳴る。

なんだ?アムロの奴もう来たのか?早すぎじゃねーか?

マジでモビルスーツで来たんじゃないだろうな。

だが、今はちょっとヤバ目だぞ。

奴には説明して、帰って貰った方が良いだろう。

 

俺はインターフォンの映像を見て返事をしようとすると……

そこにはアムロは映ってない。

黒髪ショートカットの可愛らしい女性が玄関先に映っていた。

『アムロ……アムロがここに居るって……その、アムロに会わせてください』

 

へっ!?

俺は思わずそんな声が漏れていた。

 




遂に出会ってはいけない人たちが出会ってしまった。
説教モード開始のセイラさん
レッドマンの精神はもつのだろうか?

そこに第2の刺客登場……
さてさて誰なんでしょうか?
ガンダムシリーズを見ている皆さまならばおわかりだと思います。

まだ続きますよ。

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