なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


短く行こうと思ったのに……
3話で終わるか心配になってきました。



クェス編【中】

 

「正体が分かったって?………ハサウェイ・ノア……っておいそれ……ちょっとここではまずい、そっちに行く」

トラヴィスのじいちゃんの電話する声がここまで聞こえてきた。

 

私はじいちゃんがある人物の名前を口にし、記憶の淵からその名を思い出す。

ハサウェイ・ノアって、あのハサウェイ?

私に付きまとってたあの坊やのハサウェイ?

そう、シャアの反乱の際に、ちょっとだけ関わった男の子。

内気そうで、子供っぽいハサウェイの顔を思い出す。

 

「クェス、緊急の用事が出来た。今から会議だ。まあ、此処なら自由に居ても構わないし、俺んちによっても構わないが、ほとぼりが冷めたら家に戻れよ。エドが心配するだろ」

電話を切ったじいちゃんは私にそう言って、重役室を出て行こうとする。

 

「じいちゃん。ハサウェイ・ノアって、ブライト艦長の息子の?何かあったの?」

 

「聞こえてたのか?…お前さん知り合いか?そう言えば誰かに聞いたことがあるな……まあ、大したことはねーよ」

じいちゃんはバツの悪そうな顔をしてそう言って、出て行った。

 

「ちょ、じいちゃんって……大したことないって、思いっきり嘘よね。電話で話してたじいちゃん、顔が真剣だった」

絶対何かあるわよ。

そう言えば、ハサウェイも私と同じ年だったわね。今は何をしてるのかしら?

それにじいちゃんが正体がとか言ってたけど……

ブライト艦長とは家で数回顔を合わせたけど、私の事も話してるハズだし。

どっちにしても子供の頃にちょっと関わっただけの関係だから、別に今更どうってことは無いのだけど……引っかかるわ。

うん?……この騒めく感じ、何?……私、ハサウェイを止めなくっちゃ……

なんで?……今更?……私のけじめ……

よくわからないけど、そんな気がする。

 

 

 

 

私はじいちゃんの後をこっそりついて行く。

エレベーターを3階下に降りてったわ。

私はすかさず隣のエレベーターで3階下に降りる。

右に真っすぐにじいちゃんの後姿が見える。

そこを左に曲がってと……次に右に……

 

「クェス!」

角を曲がると、じいちゃんが待ち構えて、こっちを見据えていた。

 

「わっ、あれ?バレちゃってた?」

 

「ふう、今から大事な会議だ。お前さんは部外者だから、入れないぞ」

 

「ええっ?見学はダメ?」

 

「ふぅ、なんだクェス。ハサウェイ・ノアがそんなに気になるのか?」

 

「気になるわ。本人がというよりも、何をやってるかよ。私のニュータイプの勘が私も行くべきだと言ってるの。私がハサウェイを止めないといけない気がするのよ。何を止めるとかは分からないけど。そんな気がする」

私は訳も分からなく、こんな事をじいちゃんに必死に訴えかけていた。

 

「お前さん…何を知ってる?いや、違うか……ニュータイプの勘って奴か………ちょっと待ってろ………」

じいちゃんはそう言ってからその場で電話をし出した。

 

「…ローゼ。……クェスがな。……………そうか。いや……そうなんだが……わかった」

私は最初はパパに電話をかけるんじゃないかと、ちょっと焦ったのだけど、どうやら奥さんのアンネローゼさんのようね。

アンネローゼさんはパパの四つ下、アムロと同じ歳で、じいちゃんの24歳年下の奥さん。

昔はうちの家に居候してて、今もよく家に遊びに来るわ。

ローザ姉とクロエさんとも仲がいい。

そして、アンネローゼさんはニュータイプ。

 

じいちゃんは電話を切った後、私にため息交じりにこういった。

「ふぅ、ニュータイプの勘がお前さんを突き動かしてるんだろ?お前さんが9年前みたいに、こっそりついて来ても困るしな。話だけは聞かせてやるよ……その後の判断はその時に考えるか……俺の方からもエドに話は通すが、エドには自分で事前に話しておけよ。ちゃんと話せばエドは理解してくれる。何せローザちゃんを嫁にするぐらいの度量があるからな」

9年前とは、私がラプラスの箱の事で、パパに黙って、じいちゃんやオードリー達が乗った戦艦にこっそり忍び込んで、ついて行った時の事で、私はまだ16歳だった。

 

「じいちゃん、ありがとう。今からパパにはちゃんと連絡するね」

そう言って、じいちゃんの情報端末を借りて、その場で電話する。

 

「パパ!しばらく、トラヴィスのじいちゃんの所でバイトするから、よろしくね」

 

『はぁ~?何言ってんだクェス!?おい、おおおい!』

パパの困惑する声が聞こえるがそのままじいちゃんに情報端末を渡す。

 

「クェス、お前さんな~………エド、すまん。ちょっとなクェスを巻き込みそうなんだ。事情は後でクェスと一緒にちゃんと説明しに行くからよ~」

じいちゃんは呆れ顔で情報端末を受け取り、パパと話す。

 

『はぁ、おっさんいつもすまねーな』

 

「いいってことよ」

そう言って、通話をきるじいちゃん。

パパには、じいちゃんとのこの短い話で凡その事は伝わった様ね。

 

「クェス。エドにあんま心配かけんなよな。後で一緒に行ってやるから、エドにはちゃんと謝れよ」

 

「ありがと、じいちゃん」

 

「はぁ……、この件はまだ俺もちゃんと報告も受けてないし、上役だけで話し合いをする。そこそこ時間がかかるだろう。その後に教えてやるから、大人しくさっきの部屋か、俺んちで待ってろよ」

 

「了解いたしましたー」

私はワザとらしく敬礼をして、さっきの部屋に戻る事にした。

 

重役室に戻ろうとしたのだけど、せっかくここに来たんだから……

バナージは本社かな?それともプラントの方かな?

マリーダ姉はこっちに戻ってるかな?

 

本社一階に戻り、受付のリィナさんにマリーダ姉とバナージがここ(本社)にいるか聞いてみる。

リィナさんはサイド1出身で、マリーダ姉と同じ歳の可愛らしい人。

1年後にはサイド1に戻って、じいちゃんの会社の家電部門のシャングリラ支店の支店長になるらしい。

マリーダ姉とは仲がいいよう。

マリーダ姉曰く、勝手になついてくるから仕方がないらしい。

しかも、驚く事にローザ姉の昔の知り合いで、家に遊びに来たこともある。

ローザ姉の昔って、ネオ・ジオンの鉄の女の時代よね。

ネオ・ジオンの関係者なのかもとは思ったのだけど、どうみても、そうは見えないし。

本人に聞いたら、ちょっと変わった関係らしくって、どちらからというとリィナさんのお兄さんと知り合いだったらしい。

という事は、そのお兄さんがネオ・ジオンの関係者なのかもしれないわ。

 

リィナさんが問い合わせてもらったら、マリーダ姉はちょうど火星から戻って来て、本社に居るとの事。バナージは残念ながらプラントの方。

 

マリーダ姉にじいちゃんの部屋に来てもらった。

「マリーダ姉、久しぶり。そこに座って座って」

私は冷蔵庫からマリーダ姉に飲み物を出す。

 

「クェス、会長の執務室を我が物顔で使うのはどうかと思うぞ」

 

「気にしない気にしない。じいちゃんが良いって言ってるし」

 

「……エド兄に、怒られたのか?」

 

「なんでそうなるの?今回は違うわよ」

 

「ふぅ、クェス。そろそろ腰を落ち着けたらどうだ?」

 

「何よ。マリーダ姉まで、私に早く結婚しろって言うの?私よりマリーダ姉の方が心配なんだけど」

 

「ち、違う。私の事はどうでもいい。クェス自分の将来の道筋を決めたらどうだと言う事だ。迷っているのなら、オードリーと一緒にすればいいのではないか?オードリーからは何度も請われてるのだろう?」

 

「………私は、オードリーとは違うわ……あの子みたいに大層な志は無いもの」

私はオードリーから、一緒に仕事をしないかと何度も請われた。

オードリーには夢がある。

争いの無い世界を作ると言う大きな夢が……

そのためにオードリーは大学に籍を置き、外交や経済の研究をしながら、法律事務所を開き始めた。

『クェスは一歩踏み出せない私を後ろからいつも押してくれる。ちょっと強引なところもあるけど、私には丁度いいわ。それに、もし私が間違えたのならクェスが止めてくれるでしょ?』

こう言って、何度も誘われた。

オードリーは5年後、10年後を見据えて動いてる。

オードリーが大統領になればきっといい世界になると思うのだけどね。

でも私は……。

 

「私も大層な志など持っていない。今の生活に十分満足してる。このままずっと続けばいいとも思っている」

 

「私だってそうよ」

 

「そうか?私にはクェスが迷い猫のようにみえるぞ」

 

「猫って、マリーダ姉、例えが下手ね」

確かに私は迷ってる。具体的に何に迷ってるのか自分でもわからない。

オードリーと一緒の世界というのも有りなのかもしれないけど……今の私の中途半端の気持ちではオードリーに申し訳ない気がしてならない。

そうかといって、自分が何がしたいかなんてわからないし。

 

「うむ。エド兄のようにはいかないと言う事か……」

 

「パパだったら、そうね。『将来に迷いがあるってか?ああんっ!?何かやってりゃ、そんなもんそのうち出来るだろ』とかかな?」

 

「ふふっ、そうだな。エド兄は迷う事はあまりない様だ。迷う前に体が動くようだからな。羨ましい限りだ」

 

「ほんと、パパって、いい男だよね」

 

「それは否定はしないが、それを態度で示しすぎるとローザ姉さんが嫉妬するぞ」

 

「それよ!それなのよ!いい年して、まだ乙女なんだからローザ姉は、パパの事になると、パパの娘の私にまでそんな感じなんだから。年々酷くなってるように思うわ」

 

「なるほど、クェスはそれでここに来たのか……ローザ姉さんの欠点だな」

 

「そうなのよ。分かってくれるのはマリーダ姉だけよ。この前もちょっとパパと街にデートしただけで!」

 

「皆、分かってて言わないだけじゃないのか?」

 

「いい年して、嫉妬はみっともないって言ってやって!」

 

「それを私が言うのか?流石に無理だぞ」

 

「やっぱそうだよね。ローザ姉はそれを口では絶対出さないけど、プレッシャーが漏れてるし、本人は気が付いてないわね。やっぱり私が一度きっちり言ってあげないといけないわ………うーん。やっぱりリゼ姉に言ってもらおうかな」

 

「ローザ姉さんはリゼには弱いようだし、その方が良いだろう」

 

「それにしてもパパはパパでローザ姉のプレッシャーとか嫉妬とか全く感じないらしいけど……パパって鈍感を通り越してるわよね。ニュータイプの感応能力とかも全く感じられないみたいだし……。どうなってるのかな?」

 

「うむ。逆説的にだ。あの鈍感力だからこそ、数多のニュータイプとも対等に付き合えるのだろう」

 

「ぷふっ、そうかもね」

ついパパの顔を思い浮かべて、笑ってしまう。

 

そんな会話を楽しんでるとマリーダ姉の社内用の携帯端末に連絡が来る。

「クェス、ミーティングが入った。またあとでな。今日は家に帰るから、待っててくれ」

 

「わかった。待ってるね」

 

 

 

マリーダ姉が重役室を出て行った後、しばらくして、トラヴィスのじいちゃんがスーツ姿のアンネローゼさんを連れて戻って来る。

 

「アンネローゼさん、こんにちは」

「こんにちは、クェス」

「そんじゃ、始めますか」

私はアンネローゼさんと挨拶を交わした後、ソファーに座り、じいちゃんが話し出す。

 

「ハサウェイ・ノアな。地球で連邦軍や連邦政府のお偉いさんを狙ったテロがちょくちょく起きてるってよ。今ニュースとかで盛んに話題になってるだろ?アレに関わってるって話だ」

 





マリーダさん再登場。
ちょい28歳のリィナさん登場。

次はジージェネにはならないつもり。
さて、どうやってハサウェイを止めるのか。

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