誤字脱字報告ありがとうございます。
やっぱり長くなったです。
閃光のハサウェイについては、かなり私的意見も入って、さらに改変(特に人物)されてますんで、ご了承ください。
じいちゃんは約束通り、ハサウェイについて話してくれた。
「ハサウェイ・ノアな。地球で連邦軍や連邦政府のお偉いさんを狙ったテロがちょくちょく起きてるってよ、今ニュースとかで盛んに話題になってるだろ?アレに関わってるって話だ」
「え?反連邦のテロ活動よね。たしかマフティー・ナビーユ・エリン、テロ屋がつけそうないかにも自分たちはインテリですっていうふざけた名前の。ハサウェイが……、でもブライト艦長は連邦の大佐じゃなかったかしら」
「そうだ。……しかも、悪いことにだ。そのマフティーのリーダーに祭り上げられてる。組織名であり、そこのリーダーの名でもあるマフティー・ナビーユ・エリンを名乗ってな」
マフティーは地球に住まう特権階級の人々を標的にしてテロを行ってる。
その旗頭にハサウェイが……。
「バカじゃない!あんな暗殺まがいな事をやったって意味が無いのに!しかもテロで無関係な人まで巻き込んでおいて!」
マスコミはマフティー・ナビーユ・エリンは腐敗した特権階級の粛清の為に立ちあがったと大々的に騒いでる。
スペースノイドは皆歓迎してるみたいな言い方をして。
でも、スペースノイドの大半は無関心。
いえ、話題性としては関心はあるけど、対岸の火だと思ってる。
オードリーともこの話題が上がるのだけど、マフティーの声明は今を生きるスペースノイドの考え方じゃないと、……私もそう思う。
特権階級の人々は、地球に住んでその権力を振るってるだけ。
時代錯誤も甚だしい振舞。
そんな人間をいくら粛清した所で、地球連邦政府そのものが変わるとはとても思わない。
地球連邦政府そのものが、特権階級の温床なのだから……
シャアは嘗て、地球連邦と地球に住む人々を地球から全て排除しようとした。
それは何故か、地球に住む人々自身が、特別意識を持ってるからだと。
だから地球にしがみ付く。
そんな人々全てを強制的に地球に住めなくするために、隕石落としを決行した。
やりかたは物凄く乱暴だけど、理にはかなっていた。
ただ、その後の事は全くと言って考えていないような振舞。
それでは、宇宙に住む人々も苦境に追いやる結果しか見えない。
地球連邦政府は自分達の都合のいいように、地球は豊かで宇宙は貧しいと、地球に住む人間は特別だと、そう言う風に地球に住まう人々をある意味コントロールしてる。
地球選民主義を持つティターンズが台頭した理由はそう言う土壌が元々地球にあったからだと、そう言う風に地球連邦がコントロールしてきたからだと……。
勘違いも甚だしいけど、それが現実。
今や、世界経済は宇宙で成り立ってる。
地球はコロニー無くして、経済は回らない。
特に軍事産業や機械産業はもちろん、生活家電や食料まで生活必需品さえも今や宇宙で作られてる。
そのシェアは25年前の一年戦争前とは比べものにならないぐらい宇宙に傾いている。
もはやコロニーで住まう人々は地球を頼らなくても生活が出来ている。
火星との航路が確立して空気や水も宇宙で全て賄える。
鉱物資源はもちろんね。
確かに、スペースノイドは税や生産品を地球連邦に搾取されてるイメージがあるけれども、実際にそれを差し引いても、非合法地球移住者や地球に住む一般市民に比べ豊かになって来てる。
少なくともこの新サイド6では、飢える人は居ないし、皆普通に生活が出来てる。
貧富の差はあるかもしれないけど、それは地球だって同じこと。
資本主義経済で回ってる限りそれは付いて回る話だし。
後20年いえ、10年もすれば、宇宙の方が目に見えて豊かになる。
連邦政府も、それを分かってるはずなのに……。
未だに地球にしがみ付いてる。
オードリーは懸念していたわ。
その現実に直面した連邦政府や地球に住む人々はどのような行動を移すかと……。
何かしら理由をつけて、軍事力をかざし、コロニーに対しとんでもない締め付けを行ってくるか、最悪いちゃもんつけて、攻撃してくるかもしれない。
それに反発して、コロニー側からも地球連邦に対し攻撃を仕掛けるかもしれない。
そうならないように、地球に住まう人、宇宙に住まう人両方に意識改革を行わないといけないと……
じいちゃんは少々間をおいて話を続ける。
「ふう、まあ体のいい勢いのある若者が祭り上げられたってことだ。要するに踊らされてるんだよハサウェイ・ノアは……。マフティーの実際の指導者は正体不明のクワック・サルヴァーを名乗る人物だ。ふざけた名だ。『ヤブ医者』だぞ。誰かの当てつけだなこりゃ。
連邦政府や連邦軍等の特権階級の連中を暗殺して何になる?最終的に連邦議会をぶっ潰すつもりらしいが、そんな事をして誰が得をする?一般市民にはそれこそ関係ねえ。特にスペースノイドにはな。それを考えれば答えは出る」
「じいちゃん。それって……」
「命を狙われてるとわかった特権階級の連中は何をする?マフティーを排除するために連邦軍を大々的に動かすだろ。軍が動くとなると何を使う?兵器だな。そうすると儲かるのは軍事産業だよな。ようするにアナハイムだ。アナハイムが噛んでる事はとっくに連邦軍もわかってるぜ。マフティーはアナハイム製のモビルスーツを堂々と使ってるんだぜ。本来連邦軍しか持ってるはずが無いモビルスーツをよ。それなのにアナハイムは今ものうのうとモビルスーツを作ってやがるんだぜ。これは出来レースなんだよ。腐敗した特権階級の粛清とか言ってやがるが、狙われた奴のリストをみりゃ、そりゃもう丸わかりだぜ。ある政治家達にとって都合の悪い奴や、政敵、裏を知り過ぎた奴らばっかりだ」
「マフティ―が行ってる事は、要するに政治闘争の片棒を担いでるだけよ。連邦の闇の中に潜った腐れきった連中を喜ばせてるだけの話なわけよ」
アンネローゼさんがじいちゃんの話に補足する。
「え?」
「アナハイムはな、マフティーにもMS流してるし、そのお陰で連邦軍からも多量発注を頂けるって事だ。アナハイムもウハウハだしよ。アナハイムから裏金が貰える奴もウハウハだって事だ。それ以外にも戦争が起きて副次的に得する奴も連邦政府や連邦軍内にも居るから、そいつらも見て見ぬふりだ」
「なによそれ!」
オードリーはそんなとんでもない連中がいる世界に足を踏み入れようとしているの?
「最終的には体のいい時期にマフティーに参加してる連中はトカゲのしっぽ切りのように連邦軍に退治されるだろうな。マフティーに参加してるような連中は、非正規地球移住者や連邦政府に不平不満を抱いてる連中ばかりだ。連邦にとって不要な連中さ。そんな連中も一掃できるんだから、連邦政府のド腐れ共にとって一石二鳥ってわけだ。こんな汚ねーやり方をよく考えるこった。政敵も排除出来て、裏金も手に入る。そんであらかじめ決まったシナリオ通りマフティーを倒せば不平不満分子や問題となっていた非正規地球移住者も一掃でき、連邦軍の威光を示す事も出来るってもんだ。連邦にとって一石二鳥どころか三鳥も四鳥ってか?」
じいちゃんは片目を瞑りながら、呆れた口調でそう語ってるけど、開いてる方の目は鋭く一点を見据えていた。
「ふざけてるわ!」
「まあ、それに一役も二役も買ったのが、マフティーの実質的な指導者『ヤブ医者』クワック・サルヴァーだ。ハサウェイや非正規地球移住者や連邦政府不満分子を取り込んで、将来の地球の為だーとか言って、都合のいいテロリストにしたて上げて、裏では連邦政府の最大の政治団体と手を結び、アナハイムとも太いパイプを持ってる奴だ。中々の曲者だぜ。………これが成功した見返りとして政治家になって大臣なんて話もあるだろうよ。アナハイムからも裏金もたっぷり貰ってるだろうしな」
「じいちゃん、そのふざけた名前の奴ってだれよ」
「それも調べは付いたてるぜ。ブレン元少将だ。俺らにも責任あるだろうな。5年前に俺らがあいつの管轄のオーガスタ基地とオーガスタ研究所を跡形もなく爆破しちまって、失脚したしな。まさかここまで曲者だとは思ってなかったぜ。テロ屋の指導者の顔と連邦政府とのつなぎ役の顔、二つの顔を見事使い分けてやがる。良い役者になれるんじゃねーか?」
「何よ。『ヤブ医者』って通り名はパパに当てつけってわけ?」
「そうかも知れないわね。エド先生の奪取に失敗してから、あんなことになったからね」
アンネローゼさんは呆れたようにそう言った。
5年前オーガスタ研究所は最強の強化人間を作るためにパパを攫った。
パパは力ずくで奪還した後、その元凶のオーガスタ研究所とオーガスタ基地を破壊した。
そのせいでブレン少将は失脚したから、根に持ってるかもしれない。
完全に逆恨みじゃない。
「後な、アナハイムの裏で操ってんのは、マーサ・ビスト・カーバイン。あのド腐れババァだ。もしかしたら、マフティーにハサウェイを選んだのも、恨みからじゃねーか?あのババァ、捕まった時にブライトに恨み節をぶちまけてたからな」
マーサ・ビスト・カーバイン。
ビスト財閥の一族にして、アナハイム・エレクトロニクスを実質的に運営していた人。
このおばさんはラプラスの箱事変の時に暗躍して、ラプラスの箱をコロニーごと焼き払おうとしたとんでもないおばさん。人の死なんて何とも思ってないとんでもない人だった。
結局、あの時アムロやスレイブ・レイス、ブライト艦長の活躍で、マーサ・ビスト・カーバインは正式に連邦軍に捕まったはずだったのだけど、きっと大金叩いて塀の中から出て来たんだわ。
よーくわかった。
要するにハサウェイは騙されていい様に利用されてるってわけね。
連邦内の政治闘争に巻き込まれてるなんて知らずにね。
ほんとお人好しよね。
本人は、本気で僕が地球を守るんだとか思ってるんじゃない?
なんか、一発叩きたくなってきた。
「それでじいちゃん、どうするの?当然ぶっ潰すわよね」
「怖いこって……大まかなプランも考えてある。まだ練り込みが足りんがな。大きく四つある。マフティーの象徴であるハサウェイの捕縛、クワック・サルヴァーを名乗るブレン元少将の捕縛、アナハイムを裏で操るマーサ・ビスト・カーバインの捕縛だ。その後は、マスコミをつかったプロパガンダで、連邦政府内部の内乱だと、まことしやかに噂を流してけん制ってわけだ。そうすりゃこれらを仕掛けた連邦内部の闇のお偉いさん連中もしばらく大人しくなるだろう」
じいちゃんは簡単にこんな事を言ってるけど、実際はかなり難関なはず。
でも、じいちゃんが言うとこれが現実となる。
これが、数多の難解ミッションを成し遂げて来たスレイブ・レイスの頭領トラヴィス・カークランドの本当の顔。
しかも、今のスレイブ・レイスには優秀なスタッフが揃ってる。
戦略、戦術、情報、交渉、内務のプロ。技術者にMSパイロットと……
「明日、午前に作戦会議をするわ。クェスは私の直属の部下という事で参加させるから」
アンネローゼさんはトラヴィスのじいちゃんの会社、カークランド・コーポレーションの現社長。本人は唯のお飾りって言ってたけど、会社の明るい雰囲気は間違いなくアンネローゼさんのお陰だと思う。
「アンネローゼさんありがとう」
「今からエドにこの事を説明しに行く。エドは今やスレイブ・レイスの最終意思決定者の一人だからな。クェスは精々エドを説得する方法を考えるこった」
「えー?じいちゃんも手伝ってくれないの?」
あっ、今から一番の難関が待っていた。
パパ、危ない事をしようとしてると分かったら、きっと許してくれないだろうな。
「それは手伝ってやるが、最終的にはお前さんの意思だ」
「……パパ、許してくれるかな」
「大丈夫だ。ちゃんと自分の意思を伝えればエドは分かってくれる。危険な場所に娘を送りたくないとは絶対思ってるだろうが、クェスはもういい大人だろ?エドはクェスの意思を尊重するだろうさ、そう言う男だ」
こうして15番コロニーの我が家へと、じいちゃんとアンネローゼさん、マリーダ姉とバナージも合流して帰る事に……。
さあ、クェスはどうする?
他の連中は?
今回のこの作戦に何らかの形でしれっと入って来そうな人物は誰?
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ジュドー(リィナ)
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レッド(真紅:FSS)
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リッパーとボマー
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セイラ(他アムロガールズ)
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ヨナ(リタ付きレッドマン)