なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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早速ですが、残念な合コンの始まりです。


閑話 合コン再び その2

女性陣も各々の席に座り、最後にジュドーが細長いアンティーク調テーブルに男性陣と女性陣が対面に座ってる上座の席、オードリーとバナージの横の位置に座る。

 

「今日は集まってくれてありがとう。軽い感じの親睦会って事でよろしく。男性陣は俺の会社の部下と幼馴染とか知り合いが参加で、女性陣は俺の個人的な知り合いと、妹も混ざってるのは愛嬌って事で」

ジュドーは昨年の秋から、正式にカークランド・コーポレーションのもう一つの顔である民間軍事部門スレイブ・レイスのモビルスーツ教官と隊長という役職を受けていた。

その際、つけられた直属の部下が3人程居るのだが、一癖も二癖も強い連中だった。

今回この合コンに参加しているのはそのうちの2人だ。

トラヴィスが、癖が強すぎる連中をジュドーに丸投げしたと言っても良いだろう。

因みに、ルーもモビルスーツ教官と隊長職を受けていたが、ジュドーとは別に部下が3人程ついている。

 

 

「そんじゃあ、男連中から自己紹介ってことで、因みに女性陣は皆、スレイブ・レイスの事も知ってるから部署とかも言ってもいいぞ。一応俺から手本って事で、そんじゃ…。ジュドー・アーシタ32歳、カークランド・コーポレーションの民間軍事部門スレイブ・レイス第二ユニットモビルスーツ教官兼特殊機動204隊の隊長で、去年までは長距離輸送部門で木星間輸送船のクルーをしてたんだけど、昨年から専属でこっちに。因みにそこのリィナ・アーシタの兄貴だ。あっと、それと、去年の秋に同じ部署のルーと結婚したての新婚なんだ、まあ、結婚したからってなにも変わんないし、16年位付き合ってたからね。…こんな感じで、まずは呼んでもいないのについて来たバナージから」

ジュドーは結婚と同時に、ルーと共に長距離輸送部門からスレイブ・レイス専属に転任となり、モビルスーツ教官として、新人研修や教育を行いつつ部隊も率いていた。

 

 

ジュドーに促され、バナージが自己紹介を始める。

 

「俺はバナージ・リンクス26歳、ジュドーさんと同じくカークランド・コーポレーションの開発部門宇宙開発課主任で、緊急時にはスレイブ・レイス第三ユニット緊急徴集部隊の部隊員も務めてます。マリーダさんとクェスとは家族で、オードリーとは恋仲です」

バナージは至って真面目に模範的な自己紹介を行うが、最後には合コンではある意味タブーである恋人宣言を口にする。

バナージはこれを主張するためだけにこの場に参加したようなものだ。

対面のオードリーはその言葉に嬉しそうに微笑み、隣のクェスは呆れていた。

そもそも、誰もが公認しているカップルの片割れを合コンに参加させる自体ナンセンスなのだが……。ジュドーの思惑としては、気品のある花も必要だという事と、もしクェスが荒れ狂った場合に、宥める人が必要だろうという事で呼んだようだ。

 

「……まあ、そう言う事で男達は、もしオードリーに声をかけるとしても番犬が居るから気をつけるように。次、アンジェロ」

ジュドーはそう言って、バナージの横に座る銀髪の色気のある青年に自己紹介を促す。

 

 

「……アンジェロ・ザウパーだ。27歳。本来、飲食チェーンナイチンゲール系列の月支部、大佐…フロンタル月統括支部長の元で働いていたのだが、しぶしぶ今は出向という形で、スレイブ・レイスでこの男の部下ということになっている。だが、俺は飽くまでもフロンタル支部長の部下だ。その事は忘れないでもらおう。こいつ等ともなれ合うつもりはない。特にお前とはな」

そう言って、アンジェロはバナージをキッと一睨みする。

アンジェロ・ザウパー、元ネオ・ジオンの残党であったフル・フロンタル率いる袖付きの部隊長だった男だ。宇宙世紀0096年3月に起こったラプラス事変にて袖付きは、スレイブ・レイスに壊滅させられ、そのまま母体であるカークランド・コーポレーションに吸収される。だが、フル・フロンタルとその部下の数人は、本人の要望で、農業更生を経て、レッドマンが経営するバーや夜の飲食業を主体とする飲食チェーンナイチンゲールに就職することに……。

フル・フロンタル自身、そのカリスマ性や経営能力で月支部を任されるまでに一気に上り詰めるのだった。

フル・フロンタルの元で不満無く働いていたアンジェロだが、昨年、急にフロンタル自身から出向を命じられ今に至る。

敬愛するフロンタルの命令には逆らえないが、今の待遇に不満たらたらなのだ。

しかも、今、ラプラス事変で敵として戦い、乗機を直接行動不能にさせられたバナージが横にいるのだから尚更だ。

 

「え?なに、アンジェロって、バナージと知り合いなの?会長、そんな事を一言も言ってないよ。……わざとか、あの人面白がってる節があるからな。はぁ~。まあ、何でもいいから、仲よくしよう。次々、イーノよろしく」

どうやら、ジュドーはアンジェロとバナージに因縁がある事を知らなかったようだ。

バナージはどこ吹く風といった感じだが、アンジェロはまだ、遺恨が冷めきっていないようだ。

 

次にジュドーから紹介を受け、すらっとした高身長のイケメンが、爽やかな笑顔を称え、甘い声で自己紹介を行った。

「イーノ・アッバーブ、32歳です。ジュドーの幼馴染です。イーノ・アレクサンドの方が通りが良いかな?今は俳優をやってます」

そう、彼こそが内気で、ジュドー達にいつも振り回され、貧乏くじを引きまくっていたあのイーノの成長した姿だった。

「やっぱり、イーノ・アレクサンドさん……」

イーノがそう紹介する前から、チェーミンはイーノを羨望の眼差しで眺めていた。

実はイーノは今、イーノ・アレクサンドの芸名で俳優業を営んでいた。

しかも、草食系イケメン俳優としてどの世代の女性からも人気が高く、いくつか賞も受賞する程の実力も備え、毎年好感度ランキング10位内に入る誰もが知る有名俳優だったのだ。

17年前ジュドーとルーが木星に旅立った頃、リィナが勝手にモデルのコンクールにイーノをエントリーしたのが切掛けだった。背も高く優し気な風貌もあって、直ぐに若手人気モデルに……、そこから俳優に転向し今に至っていた。

エゥーゴで活動していた頃から女装や潜入捜査などでその片鱗を見せてはいたのは確かだが、ここまでの有名人になるとは、当時を知る誰もが予想外だっただろう。

いや、リィナだけが先見の明があったのかも知れない。

そのイーノだが、たまたま、仕事で新サイド6に映画の舞台挨拶に来たついでに休暇を取って、ジュドーやルーに会いに来たところにこの合コンの話だったのだ。

 

「まさか、イーノがイケメン俳優とか、俺も俳優に転向しようかな?」

「お兄ちゃんはいいところコメディアンよ」

「そ、そうですか、リィナさん辛口だよね……じゃあ、次ギュネイよろしく」

兄妹漫才もそこそこに次を指名するジュドー。

 

 

「ギュネイ・ガス、31歳だ。スレイブ・レイス第二ユニット直属特殊機動MSパイロットだ。それよりもクェス!この横の男とはどういう関係なんだ!」

ギュネイ・ガス。第二次ネオ・ジオン紛争にて、高度な強化人間としてニュータイプ用モビルスーツを駆り活躍していたエース格のパイロットだった。偶然出くわしたアムロのリ・ガズィに負けるも、シャアに助けられ命拾いをする。

最終決戦時は戦場でクェスの反応が消えた事で、持ち場をそっちのけでクェスを探し回り、そうこうしいてる内に、アクシズ落下を阻止され大将であるシャアも行方不明となり、ネオ・ジオンは敗北。

撤退するネオ・ジオンの艦隊に合流できたのだが、その道中で見たものは、無残にもボロボロとなったクェスの乗機だったαアジールの姿だった。

コクピット部は跡形もなく破壊され、クェスの死を知り、茫然自失となる。

その後、ネオ・ジオンの艦隊の半分以上がカークランド・コーポレーションに吸収され、クェスの死に自暴自棄となっていたギュネイはそのままカークランド・コーポレーションの元で働く事に。

もはや生きる屍となったギュネイは長距離輸送部門の護衛モビルスーツ要員として淡々と生を貪っていた。

実はクェスは生きていて、新たな養父や姉妹達と楽しく毎日を過ごしていたなどと知らずに……。

因みに、その時期にジュドーとルーに出会っている。

 

丁度3年前、木星から帰還し本社に戻っていたギュネイは、カークランド・コーポレーションに遊びに来ていた誰もが見惚れる美女に成長したクェスを見かけたのだ。

ギュネイは脳内で殴られる様な衝撃を受けた「クェスかもしれない」と。

気を取り直し、早速クェスの後をつけ、クェスの様子を見る事に……。

16番コロニーから15番コロニーまでコソコソと後をつけるギュネイ。

クェスはとある診療所を兼ねた家(自宅)に入り、直ぐに出て、隣のオシャレな家(レッドマン邸)に入った。

この時、既にギュネイは「間違いないクェスだ」と断定していた。

しばらくすると、クェスはオシャレな家から出て来る。

ギュネイはクェスに早速声を掛ける。

「クェス!生きて……生きていたのか」

ギュネイは既に涙目だ。

「え?あんた、まさかギュネイ?生きてたのね」

クェスの方はかなりあっさりだ。

「クェス、俺の女になれ、もう、シャア大佐はいない。俺はまっとうに職にもついてる。金の心配もない!」

ギュネイはいきなりクェスを口説き始めたのだが……

「シャア?彼奴ならあそこよ」

クェスが指さす方向には、幼稚園児位の双子の金髪の兄妹を両腕に抱えながら、デレ顔のレッドマンが向こうから歩いて来たのだ。

 

「!!!??まさか、大佐が生きて!!!!しかも子供まで!!!?くそーーーーっ!!」

ギュネイは別の意味で涙目となり、そう叫んでその場を勢いよく逃げるように去って行く。

どうやら、ギュネイはリタとレッドマンの子供達をクェスとレッドマンの子供と勘違いしたようだ。

16番コロニーに戻ったギュネイは会社に1か月間の有給届を提出して、シャア暗殺計画を立てようとする。

(あのロリコン大佐!生きて、ネオ・ジオンを捨てただけじゃなく、クェスをかどわかし!子供まで!!!許せん!!)

だが、ギュネイはシャア暗殺計画の為に周囲で聞き込み調査等を行ったのだが、どうやらシャアはレッドマンと名を変えクェスとは別の幼妻を娶ったと。

さらにクェスが、診療所を営み美女達を一人で囲う医者の元で暮らしている事を聞き付ける。

ギュネイは再びクェスと接触を図るためにヘイガー診療所を物陰から見張る。

診療所を兼ねた家から出てきたクェスに玄関先で声を掛けるギュネイ。

「クェス、大佐とはもう何ともないのだろ!俺と暮らそう!俺は今全うに暮らし、一流企業にも勤めている。金もそこそこ貯めてる」

「嫌よ。なんであんたと暮らさないといけないのよ。私はパパと一緒が良いのよ」

「パパだと!?何言ってんだ!あんな冴えない中年のどこが良いんだ!?クェスは騙されてるだけだ!!あんな医者を装った色情狂の中年より、俺の方がよっぽど良い!!」

どうやらギュネイは調査の段階でエドを見かけていたようだ。

しかも、思いっきり勘違いをしていた。クェスがエドの愛人に無理矢理やらされていると。

 

しかし、ギュネイは言ってはいけない事を言ってしまっていた。

間の悪い所に丁度この騒ぎに様子を見に来たローザが玄関から出てきたタイミングで……。

「ほう、貴様、我が夫を冴えない中年の色情狂と……フン」

「パパよりあんたのほうがいい男だとでも?……エイ!」

 

そして、ギュネイはローザから横っ腹に鋭いリバーブローを喰らい悶絶し、くの字に体が曲がったところをクェスにアッパーを喰らい、後ろに吹き飛び気絶する。

 

その後はエドの診療所に運び込まれ、エドの治療を受ける事となる。

その際、強化処置の形跡をエドが発見して、ギュネイは通院することになったとか。

強化処置の後遺症が軽度ではあったとはいえ、エドのお陰で今ではすっかり後遺症は完治し、エドの誤解も解け、今では全く頭が上がらない存在に。

 

その後、ギュネイはクェスに何度もアプローチを行うが、すげなく断られ続け今に至っている。

 

そのギュネイだが、今はアンジェロ同様にジュドーの直属の部下として活動している。

 

 

「ギュネイ、落ち着けよ……まさか、ギュネイがクェスの知り合いだとか、しかもこれハサウェイもこの場に呼んだのは不味かったかな?まあいっか。じゃあ次、ハサウェイよろしく」

ジュドーは相変わらず軽いノリで最後のハサウェイに振る。

 

 

「ハサウェイ・ノア、25歳です。そこのチェーミンの兄になります。昨年このコロニーに引っ越してきたばかりです。今はレッドマンさんのバーと赤鼻さんの農場でアルバイトの日々を過ごしてますが、将来的には教師を目指そうと思ってます。……クェスとは13年前から友人関係です」

ハサウェイも無難な自己紹介を行いつつ、隣のギュネイにクェスとの仲をアピールしけん制する。

ギュネイはそんなハサウェイを睨んでいた。

但し、ハサウェイはクェスと13年前に確かに出会っているが、その間の12年間はクェスとの接点は全くない。クェスの事を死んでいたと思っていたのだから、13年前から友人とはいささか盛り過ぎだろう。

しかしながら、13年前の第二次ネオ・ジオン抗争時に互いにクェスに恋心抱いてはいたが、直接接点が無かったギュネイとハサウェイ、13年の時を経て、漸くライバルとして顔を合わせる事となったのだ。

……クェス本人にどう思われているかは別の話だが。

 

 

こうして男性陣の自己紹介を終えるが、どう考えてもこの合コン、始めっから失敗の気配が漂いすぎていた。

 




アンジェロ参上
相変わらずの擦れっぷりと、大佐の敬愛っぷりです。

ギュネイ惨状。
ギュネイこの13年間何があった!?
ハサウェイ同様、クェスや紅白ダメンズと真逆の、なんとも悲しい生活を送っていたようです。

イーノがイケメンに!
ガンダムチーム時代は不遇のイーノ。
でも何だかんだとイーノが居なかったらガンダムチームは成立しなかったと言っても言いすぎじゃないと思うのは私だけかな?
縁の下の力もちポジションだったと思うのです。


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