なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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早速の感想ありがとうございます。
誤字脱字報告も非常に助かります。

では続きです。


閑話 ハマーンの忘れ物②

 

『大佐、次はあちらに向かいましょう』

『そう急くこともない、ハマーン』

『せっかく、お忙しい身の大佐が、わたしのために時間を作ってくださったのですから』

『案内を頼んだまでだったのだがな……』

歳は13、4のピンク髪の少女が愛らしい笑顔を向け、額に傷がある20前後の若い金髪の偉丈夫の手を引き、小惑星モウサ内にある農場区域をツインテールを揺らしながら楽し気に歩く。

 

 

(や、やめろ!!やめるのだ!!あああああああっ!!!!………ゆ、夢か)

(悪夢だ。なぜ昔の私はあのような男に……、あの写真とアルバムだけは処分せねば……あれをエドにみられることこそ本当の悪夢だ!!)

ローザはガランシェールのゲスト用シートでうとうとと少々眠りについていたが、悪夢という名の過去の記憶が蘇り、うなされ目が覚める。

 

そう、ローザがモウサに向かうことを決めた理由、さらにはエドを連れて来たくなかった理由がこれだった。

かつて、ハマーンだったローザは、一年戦争がジオンの敗北で終結した後、ドズル・ザビの奥方と娘であるミネバと共にアクシズに逃れてきたジオンのエースパイロット、シャア・アズナブルに恋をしていた。

出会ったのは宇宙世紀0080、13歳の時。

シャアに気に入られたい一心で、お気に入りのツインテールを切り、シャア好みのショートヘアにまで……。

そして、15歳の時にシャアはハマーンを置いてアクシズを出ていってしまう。

再会したのはグリプス戦役の真っただ中の19歳の時だったが、それまでも、シャアを思い恋に焦がれていたのだ。

そして、アクシズの居住区であるモウサにはハマーンが一人になりたいときに使用していた隠し部屋に、シャアとの思い出の写真やそのアルバムを大切にしまっていたのだ。

 

一般的に見て、シャア・アズナブルは非常に魅力的な男性である。

その貴公子然としたルックスに、紳士的な振る舞いや言動から仕草に至るまで、女性だけでなく男性すらも引き付ける魅力にあふれていた。

少々芝居じみた言動(中二病チック)すらも魅力に映ってしまうのだ。

少女から大人になろうかという年齢の多感な時期の少女からみれば、どうだろうか?

しかも、上流階級の箱入り娘のハマーンならなおさらだ。

目の前にいるだけで、自分を迎えに来た王子様に見えても致し方がないだろう。

シャアの本性を知らない当時のハマーンからすれば、恋焦がれても致し方がない。

シャアの本性を知ったとしても、狂気を感じざるを得ないが、それはそれで大人の女性からみれば、その狂気とのギャップが魅力的に映ったり、保護欲にかられるのかもしれない。

 

シャアの本性を知り、エドの温かさを知った今のローザからすれば当時のシャアへの恋心は、黒歴史そのものであろう。

その時の写真やアルバムがもし、昨年結婚したばかりの最愛の夫であるエドに見られたのなら……。

羞恥心で死にたくなる。

その事で、エドのあの暖かい温もりが遠のいてしまうかもしれない。

そう考えると、絶望に近い暗雲とした思いが溢れ、どうしようもない焦りを感じてしまうのだ。

もし、ばれたのなら、レッドマンを殺して、自分も自害しようなどとも考えるほどだった。

 

まあ、エドにばれたところで、エドは気にするような男ではない。

ハマーンだったローザがシャアに恋心を寄せていたことはエドも知っているし、むしろ、若い頃のローザの写真を見ることができて、喜ぶだろう。

 

だが、恋に恋し恋心をこじらせているローザにとって、絶対的にノーだった。

 

「ふぅ……いかん」

宇宙空間の向こうにあるだろうモウサに視線を自然と向け、何が何でもあの写真とアルバムを抹消させようと再び決意するローザ。

 

 

 

 

その頃、ガランシェールのモビルスーツ格納スペースでは。

「アムロ中佐!こうやって直に会うのは初めてですね。是非お話を!」

「中佐?」

「失礼しました!二階級特進されてデータ上は中佐に、生きておられるから大尉ですね!」

「ウラキ大尉、今の俺は軍属ではない。死んだことになってる身だ」

「では、なんとお呼びすれば……」

「君と俺は同じ歳だ。タメ口でいい」

モウサ探索に向け各種確認作業を行ってるアムロにコウ・ウラキが話しかけていた。

興奮気味に話をしようとするウラキに、アムロは苦笑気味に対応する。

数々の功績を残した伝説のパイロットが目の前にいるのだ。

モビルスーツバカのウラキがこうもテンションがあがるのも致し方がないだろう。

 

アムロは現在32歳、民間企業であるカークランド・コーポレーションの取締役の一人で、技術開発部門のトップでもある。

ガランシェールの乗組員の中で、立場的に一番上である。

一方ウラキも32歳、今年早々に連邦軍オークリー基地からサナリィへ出向という形で、モビルスーツ訓練教官兼テストパイロットという立場となった。

現在、アナハイム・エレクトロニクスを辞めた2歳年上の妻ニナと8歳になる娘共々、サナリィの研究所がある月面都市フォンブラウンへ移り住む。

ニナはサナリィへの再就職を希望しているが、その手続きにいささか手間取っていた。

元アナハイム・エレクトロニクスの社員ということで、裏があるのではないかなど、精査されているのが実情だ。

因みにウラキの相棒であるチャック・キースというと、オークリー基地のモビルスーツ隊部隊長として少佐にまで出世していた。

連邦軍は全体的に人材不足もあって、戦闘経験豊富なキースは周りの勧めもあり、軍大学に入り、佐官教育を受けてのことである。

ウラキよりも全体的に柔軟な思考を持ちコミュニケーション能力も高いキースならではではないだろうか。

ウラキはキースに先んじられた感はあるが、ウラキはウラキで実績を積み、この出向でおおよその佐官要件を満たすまでに至っていた。

後は、半年間の教育を受ければというところまで来ていた。

 

 

私生活では女性問題で現在絶賛頭を悩ましているアムロは、このモウサの調査はいい息抜きになるはずだったが、しばらくウラキに金魚の糞のように付きまとわれることとなる。

 

アムロがモビルスーツ格納スペースで忙しなく各種作業を行っている理由は、サナリィからガランシェールに試験運用評価実験を行うためのモビルスーツが積み込まれているからだ。

そのモビルスーツは特殊作戦用可変小型モビルスーツD⁻50Cロトのバリエーション、特殊工作作業用と輸送運用用、民間災害活動用の3機。

ロトはサナリィが開発したタンク形態へと変形できるモビルスーツというよりも、人型戦車といった様相だ。

突出した要素として、全高12.2mと従来のモビルスーツに比べ圧倒的に小型であった。

ガランシェールの狭い格納スペースでも無理に積めば6機積めることができる。

その分スペック的にはモビルワーカーよりではあるが、戦闘にも十分耐えられるとして、モビルスーツとして登録されている。

実際に戦闘用のロトはすでに連邦軍特殊部隊エコーズで運用されている。

今回はモウサ内での移動などでの試験運用予定だ。

このような小惑星や廃棄コロニーなどの調査は、小型でタンク形態に変形できるロトの真価が発揮される運用方法であることは間違いない。

 

 

 

ガランシェール第二ブリッジの正面ディスプレーに目的の小惑星が徐々に近づいていく映像が映る。

小惑星モウサ、以前緩やかな楕円形だった形状は、コロニーとの衝突の衝撃でいたるところが欠けて歪な形になってはいたが、その姿にローザは何故だか懐かしい気分にさせられる。

「まもなくモウサに到着です。宇宙港に着岸可能か確認作業を行う間に、ノーマルスーツ着用の上、格納庫で待機願います」

ガランシェールの女性クルーがローザにそう告げに来る。

 

「わかった」

ローザはそのまま女性クルーに更衣室まで案内される。

 

 

ローザはノーマルスーツに着替え、格納庫に向かう。

「ローザ、来たか」

「ローザさんよろしく」

「ああ」

そこにはアムロとウラキが待っていた。

 

アムロはローザとウラキに改めて、今回の小惑星モウサの内部調査に同行するカークランドコーポレーションの社員である4名の隊員を紹介する。

何れも、元連邦軍兵士だったり元連邦軍開発や情報局の人員だったりする。

これはローザやウラキに考慮した人選である。

元連邦兵士であればハマーンだとばれにくいし、現在連邦軍所属のウラキとしてもやりやすいというのと、ばれたとしても口の堅い人間を選んでいる。

 

 

アムロは他の隊員から離れ、ローザを呼び寄せる。

「ローザちょっといいか、アクシズ総督府はモウサ内にあると聞いているが、予定通り案内を頼む」

「うむ、建物施設が残っていればの話だがな。恐らく、グレミーに乗っ取られ、捨て石にされた段階で必要なデータは奴らにすべて接収されているだろう」

「そうか……」

「ふん、トラヴィスがわざわざこのような調査を大々的に行わずとも、私から情報を得た方が早い。だが、情報の出所(私)を連邦から隠す意味でも、今回の調査を行うことにした……。いや、それだけではないな、トラヴィスが言う連邦内の派閥争いなどの政治的思惑が絡んだ結果か。実にばかばかしい」

モウサはアクシズの居住区域であり、アクシズ内の市政を司る総督府は当然モウサ内にあった。

そもそもモウサが先に資源採掘のため開発発展し、モウサの資源の枯渇を見越してより強大な資源が眠るアクシズを後に接岸させ、さらには要塞化したのが当時のアクシズの姿だ。

それを取り仕切っていたのがハマーンの父であり祖父であった。

そのモウサとアクシズはグレミーの反乱により、グレミー側に乗っ取られ、当時ハマーンが拠点としていたサイド3のコア3コロニーに、アクシズからモウサを切り離し質量爆弾として突撃させたのだ。

当然、グレミー側はモウサを突撃させる前に重要な情報はすべて引き揚げている。

ただ、モウサを突撃させ、破壊されるだろう事を予想して、情報の消去等は行っていない可能性はあるし、それ以外にも何か情報が残っている可能性もある。

連邦もそれを期待して、モウサの調査を依頼したのかもしれないが、それがメインではない。

トラヴィスもわざわざモウサの実地調査を行わなくても、アクシズ執政官のハマーンであったローザから聞き取りをすれば、より正確な情報を得られえるハズだ。

ローザが言うように、情報源の隠蔽のために実地調査を行うにしては、わざわざモウサにローザやアムロを連れて本格的に実地するとは、別の思惑があるとみていい。それはトラヴィスがこの話を持ってきたときに話していた連邦内の派閥争いが関係しているのだろう。

 

「ああ、そうだろう。連邦は今更だがアクシズにも同時に調査隊を派遣している」

アムロはローザの意見を肯定しつつ、今更というのも当然だ。

3年前アクシズショックで二つに割れたアクシズは、外からの監視は行われていたが、この3年間ほぼ放置状態で内部調査を本格的に行っていなかったのだ。

それに、アクシズはハマーンとグレミーが倒れた後、連邦によって4年間管理されていた。

アクシズを地球に落とすためにシャアに一時的に占拠されていたとしても、今更の話である。

 

「ふむ、確かに今更だ。アクシズに搭載されていた『設計支援システム』『自動生産設備』は当然接収されているだろうし、アクシズのモビルスーツ等の兵器群の設計図データは、当時、私がアナハイム(アナハイムエレクトロニクス)に大量生産させるために渡してある。今となってはアクシズやモウサにそれほど価値はない」

 

「今回の話の裏にはサナリィをめぐる政治的縄張り争いだけでなく、アナハイムも裏で噛んでいる。さらに第三勢力としてブッホ・コンツェルンも介入しようと手を出してきたところを、トラヴィス社長がそれを食い止めるために、今回の話に乗ったようだ」

 

「うむ、そういえば、そのようなことを言っていたか……」

トラヴィスからモウサ調査の話をもって来た時に、確かにトラヴィスはローザとエドにこの辺りの話していた。

万が一の時のためにもエドの同行はやめた方がいいと説得していたのだが、ローザはあのシャアとの写真やアルバムの事で気が気でなく意識をほぼそちらに奪われており、この辺の事は話半分にしか聞いていなかったのだ。

因みに、ブッホ・コンツェルンとは、近頃勢力をつけてきた工業総合メーカーで、アナハイム・エレクトロニクスの下請けでモビルスーツのパーツなどを多量に生産していた。

元はカークランド・コーポレーションと同じく、モビルスーツ等の残骸を売りはたいていたジャンク屋であったのだが……。

この会社がのちのコスモ・バビロニアの大元であった。

この頃から、将来を見越して、モビルスーツなどの開発を独自に着手し始めていた。

 

 

「……ん、どうやらモウサの宇宙港が使えるようだ。キャプテン(ジンネマン)から着岸すると連絡がきた」

アムロはイヤホン型の通信機で連絡を受ける。

 

いよいよモウサへと、ローザは現在28歳、実に7年ぶりに誰もいない実家への帰還である。

 

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