誤字脱字報告ありがとうございます。
お待たせしました。
ローザのモウサでの過去を振り返る旅は終盤を迎えていた。
本来は過去の汚点の一つ(14歳の時のシャアとのツーショット写真)を消去するためだけのハズだったのだが、目的を達する前に本人の予期せぬ方向から雨霰と過去の罪(羞恥と若さゆえの過ち)にまみれた遺物が続々と顔を出し、後悔と懺悔の心から、ローザの精神はすり減り、限界に達しようとしていた。
そして苦難の末、ようやく当初の目的である汚点へとたどり着こうとしていた。
ローザは隠し部屋へ通じる扉がある自室のウォークインクローゼットに入ったところで、アムロから緊急通信が届く。
『ローザ、俺たち以外にこのモウサに艦船が停泊していることが分かった。もしかするとトラヴィス会長から話が合ったブッホ・コンツェルンの手の者の可能性がある。一度、ガランシェールに戻るぞ』
「少し待て、まだこちらの用事が終わっていない……くっ!?」
ローザがそう返事を返している最中に、大きな地響きが起こり、半壊した官邸が揺れる。
『攻撃ではない?爆発か?ローザ、官邸の地下からだ!人の意思を感じる!撤退するぞ!外に待機させてあるロトまで急げ!!』
「……なんだと?」
ローザもニュータイプ能力で数人の人の気配を察知した。
アムロと同様に、官邸の地下からだ。
しかも、その場所は官邸のシェルター群、ハマーンの隠し部屋がある方向からだ。
「まさか!?」
ローザは急ぎ、ウォークインクローゼットの隠し扉から、細い階段を降り、地下の隠し部屋へと進む。
ローザは小さな車が通れる程の大き目の地下通路に達すると、砂埃が立ち込め、数人の人影がシェルターから次々と出ていくのが見える。
しかも、そのシェルターはハマーンの隠し部屋だった。
そして、人影の一人の手にはあの問題の写真が納めてあるアルバムが……。
「貴様ら!!何者だ!!」
ローザは咄嗟に叫んでしまう。
人影はそのまま逃げださずに、なぜか全員ローザに振り替える。
砂埃も薄らぎ、その人影達の姿がしっかりと見えたが、女が一人、男が3人だ。
女は、ダークエルフのピロテースのような恰好。
男は三人共、ダンバインの聖戦士の青紫スーツのようなコスプレだった。
この4人はアルバムだけでなく、ゴシックロリータの服や少女趣味のワンピース等、ハマーンの過去の遺品をたんまりと携えていた。
「ん?ハマーン様かと思ったが、声が似ているだけ、驚かしてくれる。貴方こそ何者です!!」
ピロテースのような恰好の女は、鋭い視線をローザに向ける。
「そうだそうだ!!一瞬、ハマーン様かと思ったではないか」
「そうだ偽物め!!それでハマーン様に成りすましたつもりか!?」
「ノーマルスーツが全然違うぞ!!ゴールド聖闘士のような女王様ノーマルスーツだ!!不勉強にもほどがある!!」
聖戦士風コスプレ男共は口々にこんなことを言い出す。
「なにを!!……貴様たちは!?」
ローザはこの連中のコスプレに見覚えがあった。
ピロテースの恰好はモロ、イリア・パゾム
ダンバインの聖戦士スーツの男共は、ダニー、デル、デューンの元ジャムルの3Dだった。
そう、彼らはハマーン・カーンの元部下達だったのだ。
今はネオ・ジオン残党軍の一派で、イリアは大佐としてレウルーラの艦長を務め、ブッフォ・コンツェルンと手を組み、このモウサの調査を行っていたのだ。
イリアはローザの様子に訝し気に見つめながらこんなことを言い出す。
「……もしかすると貴方もアクシズのゆかりの者ですか?だが残念ですね、ハマーン様の遺品は我々のものです!!この場は見逃します!!早々に去れ!!」
どうやら、イリア達の真の目的はハマーンの隠し部屋にあるハマーンの遺品のようだ。
隠し部屋について何処からか知り、それでこの連中はハマーンの遺品目当てでブッフォと手を組みここに来たようだ。
「貴様ら、いいだろう!!元主の顔と………」
ローザは元部下達に、ハマーンだと名乗ろうとしようとしたが……、先ほどまでの黒歴史を思い出し、未だに元部下たちは堂々とコスプレをしている姿を見て、名乗るのを躊躇したのだ。
「元主?まだ言うか?このハマーン様モドキが!!ハマーン様はノーマルスーツを着ていても、バラをしょってんだよ!!」
「貴様にはオーラが無い!!蔑むような視線と声色の再現度が低い!!ハマーン様は根っからの女王様気質なんだよ!!」
「ハマーン様のスレンダーな完璧なお身体は、ノーマルスーツを着ていてもわかるんだよ!!乳とケツが垂れてるぞ!!オバン!!」
3D連中は、言うに事欠いて、本人に言いたい放題だ。
「………」
ローザの眼光はさらに鋭く……
イリアはそんなローザにこんなことを言い出す。
「そこまで言うならば、ノーマルスーツのヘルメットを脱いでください、ここは空気が多少あります。顔を見せてみなさい!!」
確かにこのシェルター地区には独立した空気発生装置が稼働していた。
「貴様ら、後悔するがいい」
ローザはノーマルスーツのヘルメットを脱ぎ、ナイフのように鋭く厳しい視線を4人に向ける。
「ふん、やっぱり違うではないか!!ハマーン様はな!!ミンキーモモカットなんだよ!!」
「なにをなにを?ディーン、違うぞ。ハマーン様は、オルドナ・ポセイダルカットだ!!」
「はぁ?何言ってるんだ!!貴様ら!!ガウ・ハ・レッシィに決まってるだろ!!」
何故か3Dの男共は昔のハマーンの髪型談義で喧嘩しだす。
確かに今のローザは茶色かかった金髪で、髪は伸ばし、サイドダウンでまとめて居るが、髪型で判断するのはどうかと思う。
しかも、全員答えが間違っている。
正解はシスコンのシャア好みのアルテイシア(セイラ)カットだ。
「……まあいい、そのアルバムは渡してもらおうか」
ローザはグッと我慢をし、連中に凄む。
それに応えるイリアは、手に持ってるアルバムを愛おしそうに眼前に掲げ、平然とこんなことを言い出す。
「それは渡せませんね。ハマーン様の幼き時代の写真は家宝となるものです。なんなら私の艦に飾り付けたい。そして、ハマーン様の魅力を世に知らしめるために各種SNSに掲載するつもりなのです!」
ローザにとって最悪のシナリオだ。
あのシャアとの写真が全世界に広まってしまうなど、絶対に許せるものではない。
「イリア・パゾム!!貴様!!」
ローザの怒りは頂点に。
「何故私の名を??……ハマーン様!?」
名を呼ばれ、イリアは困惑しだす。
「ローザ!無事か!?」
そこへ、アムロ率いるカークランドコーポレーションの精鋭達が現れ、イリア達に発砲。
「ちっ、撤退です」
イリアは3D達に指示を出し、銃で応戦しつつ通路奥へと走り出す。
カークランドコーポレーションの精鋭達は発砲しつつじりじりと進むが、深追いをせず、陣形を保つ。
「待て!!それを置いていけ!!」
ローザの声はイリア達には聞こえていないだろう。
「ローザ、待て!」
イリア達を追いかけようとするローザをアムロは肩を掴み止める。
「アムロ離せ!!」
「上では敵モビルスーツを確認した。ウラキ大尉がけん制し、こちらに近づかないようにしているが、こちらのロトは戦闘用ではない。長くはもたないだろう。撤退だ」
「ええい!!……ん!?」
ローザはアムロの手を振り切ろうとするが、足に何かが当たり、視線を移すと、赤色のアルバムが一冊落ちていた。
それは、ローザがこの世から消し去りたいと切望していたシャアとの思い出のアルバム集だった。
どうやら、先ほどの銃撃戦でイリアは一冊落としていったようだ。
強運と言っていいだろう。
ローザの紆余曲折はあったが目的はこれで達したのだった。
ローザ達は撤退し、ガランシェールに戻り警戒しながらモウサから離れる。
同じころ、反対側に停泊していた敵の艦もモウサから離れていくのを観測する。
ローザは赤いアルバムをガランシェール内で焼却処分し、灰を宇宙へと捨てる。
落ち着いたところでアムロはローザに質問をする。
「連中は何者だ?いや、聞くまでもないか、あのおかしな服装、おそらく元ネオ・ジオンの残党か?モウサの官邸に展示されていた制服と似ていた。それに何かを話していたようだが?」
「奴らは、元私の部下だった連中だ。私の事を認識できなかったようだがな」
「あの地下には何があった?」
「……私の個人的な隠し部屋があった」
「なるほど……」
アムロはそれ以上ローザに聞くことはなかった。
聞くだけ野暮だということもあるが、あのコスプレまがいの服装のハマーンの元部下達が、ハマーンの隠し部屋を漁る理由など、官邸の様子(惨状)を見るだけで、察しがついたからだ。
ローザはドッと疲れが出、目的を達した安心感もあり、帰路は深い眠りについた。
こうして、ローザの過去と向き合う旅は終わった。
二日ぶりの我が家に戻るローザ。
出迎える夫のエドの顔を見てホッと安堵の息を吐くが……
その晩の寝室、二人掛けのソファーで……。
「ローザ、お前、昔はクェスみたいな髪型だったんだな」
「何故それを!?」
「それ」
エドはタブレットの画面を隣に座るローザに見せながら操作し、次々と写真を見せる。
ローザの顔は見る見るうちに青ざめる。
「ど、どうしてこれを?」
そう、それはハマーンの幼き日の数々の写真だった。
「ああ、お前が出かけた後に、セラーナから通信があって、ちょっと話したんだが、そん時にこの写真データを送ってくれた。どうやらセラーナは地球に逃れる時に、家族やお前の写真データをこっそりナノチップに収めて、ブレスレットに忍ばせていたらしい。いや~、昔のお前、無邪気にかわいい笑顔するじゃねーか」
エドは顔を緩め、楽しそうに写真を眺める。
「……う……う」
ローザの顔は、今度は湯気が出るのではないかというぐらい真っ赤になる。
そして、エドはとある写真で操作する手を止め、微笑みながらローザにこんなことを聞く。
「おおっ、これってキャスバルとお前か?随分若いな。この頃お前は何歳だ?今のクェスやオードリーと同じぐらいか?へ~、やっぱお前、昔は奴の事好きだったんだな。なんで今はあんなに毛嫌いするんだ?」
そう、苦労の末、先ほど焼却処分したはずのあの忌まわしき過去の写真だった。
どうやら、セラーナがマスターデータを持っていたようだ。
「ああ!?あああああ!!??」
ローザは飛び込むようにベッドの中に潜り込む。
「おい、どうした?」
「………くッ~~ッ」
ローザは声にならない声を上げ、シーツに包まり、顔を真っ赤にし悶絶していた。
ローザは言うまでもなく羞恥で死にたくなる。
その後、ローザは三日間エドと口をきかなかったとか……。
そして、ますますキャスバルを毛嫌いするのであった。
また何か思い浮かんだら、書き足しますね。
番外編はどんなの物が読んでみたいですか?
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