なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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ご無沙汰してます。

今回のお話は時系列的には前話の続きです。


閑話 復活のキャスバル(NT編②)

 

宇宙世紀0096年12月

今年も色々あったな、ラプラス事変でトラヴィスのおっさん達が大暴れ、オードリーが彼氏(バナージ)を連れ帰って来るわ、クェスは黙ってついて行くわ、さらにはリゼの生き別れの姉妹のマリーダが残酷な運命の末、家にやって来た。

それと、おっさんから預かっていたずっと昏睡状態の患者のリタが目覚めて、そのまま家に居ついちまった。

随分と家族が増えちまったもんだ。

 

それだけじゃねー、近所の住人も増えた。

キャスバルの実の妹のセイラが修羅場の末にそのままキャスバルの家に住み着いた。

キャスバルの奴、妹が大好きな癖になぜか20年もほったらかしにしてやがった。

兄妹の空白の時間を埋めるかの如く、今は2人で生活してる。

 

そのセイラなんだが、どうやらアムロの事が好きなようだ。

アムロもアムロで年上のセイラにはかなり好意的というか憧れというか、まあ、平たく言えばアムロもセイラの事が大好きなのだろう。

だがアムロの奴は過去の女の清算を全くしてなかったのが運の尽き、元カノのベルトーチカと前カノのチェーンの襲来を受け、ローザのせいもあるんだが、その二人はアムロのマンションに住み着き現在進行形で絶賛修羅場中だ。

そう言えばアムロの幼馴染で後家さんのフラウが、ちょうどこのコロニーに遊びに来ているな。

どうなることやら。

 

俺んちでは、バナージをクェスとオードリーと同じ高校に通わせた。

バナージは真面目で勉学も優秀で、性格もいい。

オードリーはともかく、性格に難があるクェスともうまくやってる。

もちろんローザやリゼともな。

バナージはローザの事はローザさんって感じで呼び、なんだか師弟というか部活の先輩後輩みたいな感じだ。

ローザにモビルスーツの操縦をアムロ共々教えて貰ったのが影響しているのだろう。

俺のことはエドおじさんって感じでおじさん呼びだ。

俺ももう36だしな。年を取ったという事だ。

流石に倍も年が違うのに兄って感じじゃねーが、それなりにおじさん呼びはショックだったわけだが。

リタやマリーダの事はさん付けで呼んでるが、何故かマリーダの姉であるリゼの事はリゼ姉さんって呼んでるな。

リゼに限っては、近所の子だけでなく、学校の連中ですらリゼの事をお姉様とか姉さんとか、姉上とか呼ばれてる。

ちょっと前までは仕草やらなんやらが子供っぽかったが、クェスやオードリーがやって来てからは、マジで姉さんをやってたからな。

それが行き過ぎて万人の姉体質になっちまったようだ。

 

話を戻すが、バナージはまじで出来た奴だ。

母子家庭で育ったらしいが、母親の教育がよっぽどよかったのだろう。

そのバナージは、ここで生活する上で俺が便宜上保護者となっている。

俺の養子でもいいんだが、彼奴の実家は存在し血縁者は今も生きてる。

何より彼奴の血筋のビストの名はのちのち必要となるだろうから、戸籍関係はそのまま残してある。

 

マリーダは先月に2回目の手術を行い、経過は順調。

表情も最初に来た頃に比べれば随分と柔らかくなったものだ。

 

リタはこの家に居ついたのはいいのだが、一般常識が少々かけている事がわかった。

いや、ローザやクェスとは違って致命的じゃないんだが、無防備過ぎる。

直ぐ人の事を信じてしまう傾向があるため、クェスの他愛も無い冗談も真に受ける。

それも致し方が無いのだろう。

リタは13歳からニュータイプ研究所に居たらしく、あのゆるふわ系の感じに反して結構ハードな人生を送って来たようだ。

だがそれじゃ、社会に出て直ぐに痛い目に遭うだろう。

そこで、アンネローゼの勧めで、リタは社会復帰の一環として、アンネローゼの元バイト先の花屋でアルバイトを始める事になった。

あの花屋の女将さんに任せれば大丈夫だろう。

 

アンネローゼと言えば、トラヴィスのおっさんと結婚したにも関わらず、しばらくはうちの家の部屋に寝泊まりすることが多かった。

だが、この頃はこっちに帰って来ることがほぼなくなった。

それはいい事なんだがな。

彼奴の明るい声が聞こえないのは、少々寂しい気もする。

アンネローゼがこちらに帰って来れなくなったのは、トラヴィスのおっさんの会社が急激に大きくなった影響でだ。

トラヴィスのおっさんのジャンク屋は、10年前まで従業員十数人の会社だったが、5年前には数百人規模、3年前のアムロ加入での特許商品の量産や技術革新、ローザの情報提供によりアステロイド帯に取り残された元ネオジオンの生産施設及び技術者を編入して1万人以上に。

今年になって、袖付きやらジオン残党やらを加え、そんでアムロの商品開発が進み5万人を超え今も増え続けている。

さらに各コロニーのジャンク屋やらを傘下に加え、グループ全体では10万人を超えてるとか。

アンネローゼはそんな中マーケティング部門を任されているらしく、忙しい毎日を過ごし、会社で寝泊まりしているようだ。

 

アムロと言えば、彼奴この頃家に殆ど帰らずに会社で寝泊まりしてるらしい。

まあ、あいつ自宅のマンションに帰ったところで、金黒(ベルトーチカ、チェーン)が修羅場を展開してるからな、家に帰りたくないのも仕方がない。

そのおかげもあって、アムロは会社のラボに引きこもり続け、画期的なジャイロシステムと熱交換エネルギーシステムやナノモーターを開発したんだと、元々モビルスーツの小型化の課題であった物を姿勢制御や熱放出問題を解決するものだったそうなんだが、コロニーのシステムや宇宙船舶など幅広く大いに利用できるらしい。

ナノモーターについては、生活家電や医療用マシンにも応用が利くとあって、他の企業から特許認定交渉や提携交渉などで引く手数多らしい。

アムロの奴、モビルスーツパイロットとして超一流なのに、技術者としても超一流とか、マジでなんなんだ?

まあ、その分私生活はほぼ破綻してるがな。

 

 

 

俺はそんな事を思い起こしながら、診療所の研究室で医療技術論文をまとめるためにノート型のコンピュータを前にしていた。

今日の午後からは休診でローザは買い物に出掛けているし、妹連中やバナージは学校へ、リタは花屋でバイト、マリーダは仮退院扱で義父(おやじ)さんと食事に出かけてる。

要するに珍しく俺一人だということだ。

 

キーボードを打ちこみ論文を進めていると、診療所の正面玄関のチャイムが鳴る。

急患か?

 

『エド、私だ』

「ん?検診か?」

インターフォンの画面にはレッドマンことキャスバルが写っていた。

 

『いや、相談があってな』

「まあ、入れや」

俺は診療所の入口のロックを外し、診察室で奴を待ち構える。

 

診療室の扉を開き入って来る奴はどこか神妙な雰囲気だ。

俺は丸椅子に奴に座るように促しながら要件を聞く。

「相談って何だ?」

「……エド頼みがある」

「なんだ?改まって」

「エド、私のアレを結合してくれまいか?」

 

「はぁ?何言ってんだお前?」

アレの結合ってなんだ?何かの隠語か?

俺は奴を訝し気に見据える。

 

「いや、アレだ。随分と待たせてしまったが私のアレを接合してほしい」

なにモジモジしてやがるんだ?しかも少し顔が赤いぞ?

36のおっさんが、なんだか気持ち悪いぞ。

 

「アレってなんだ?はっきり言えよ。キャスバル」

アレってなんだ?まじで身に覚えがない。

 

「ま、まさか、処分してしまったのではあるまいな?」

ん?なんか一気に絶望したような表情になったぞ!?

どういうことだ?

 

「だから何の事だって聞いてるんだ!はっきり言え!」

 

「……エドに培養してもらい預かってもらっている私の股間のアレだ」

今度は神妙な顔つきでこんな事を言い出す。

 

「ん?んんん?あっ?アレか……」

俺はようやく思い出した。

研究室の研究資料保管用冷凍庫の奥に閉まって置いたアレの事を。

そう3年半以上前、重症のこいつを宇宙で拾ったが顔と股間の損傷が激しく、特に股間は手遅れだった。なんとか苦労して遺伝子操作と幹細胞培養でこいつの股間を培養したんだが、『私の大きさではない』とか言いやがって、接合手術を拒否しやがった。

しかもしばらく預かってくれとか、しゃーなしに特殊な冷凍しても凍らないような処置を施し、冷凍保存をしていた奴のムスコだ。

 

「思い出してくれたようだな」

キャスバルはホッと安堵の息を漏らす。

 

「それにしても今更だな。……まさか、お前、セイラとの生活が嫌になって、このコロニーから逃げ出すつもりじゃねーだろな!?」

 

「違う。このコロニーから出て行くつもりなど毛頭ない。それにアルテイシアには一生をかけて償うつもりだ」

 

「だったら、なんだって?」

もう、ムスコから分離され3年半も経ってる。

流石に不自由だろうと何度か声をかけたが、奴は問題ないと言い張っていやがったし、なぜ今更ムスコを接合する気になったんだ?

 

「……うむ」

キャスバルは言い難そうにしていた。

 

「俺にも言えないことなのかよ」

 

「そんなことはない。少々気恥ずかしいだけだ。……好きな女性が出来た」

 

「ほう、そうか……まさか、昔みたいに弄ぶつもりじゃないだろうな?」

なるほど、彼女が出来たってことか、そりゃ当然ムスコは必要だろう。

だが、こいつの場合、女との付き合い方がかなり歪んでるらしいからな

 

「そんな事はない。……この胸の高鳴りは久しく感じ得なかった感覚だ。いや、それとも違う。これが恋なのかもしれない」

何言ってんだ?いい年こいたおっさんが、顔をあからめながら。

まあ、こいつの場合超イケメンだから、こんなこと言ったところで逆にモテるんだろうけどな。

俺なんかがこんなこと言いだしたら、気持ち悪がられるのが落ちだ。

 

「まあいいか、好きになった奴って誰なんだ?」

 

キャスバルは躊躇気味にこの名を言った。

「……リタ嬢だ」

 

「まじか……、全然気が付かなかった。お前、リタと接点あったか?」

 

「カークランドコーポレーションに所要でしばらく出入りしていた際の事だ」

 

「そういえばそんなことをリタから聞いてたな」

2か月前だったかリタはトラヴィスのおっさんに呼ばれて、元乗っていたあのど派手な金ぴか暴走モビルスーツの件でおっさんの会社のプラント基地にしばらく通ってたな。

そん時、キャスバルの奴と行き帰りも一緒だったって言ってた。

 

「そのことで相談なのだが、リタとの交際を認めてほしい」

「はぁ?リタが良いって言えば、別に俺に聞かなくてもいいだろ?」

「いや、そうはいかない。エドに認めてもらわなければならない」

なんで、リタとお前の交際に俺の許可がいるんだよ。

 

「そもそも、リタはお前と付き合いをOKしたのか?」

「それは問題ない。私とリタは相思相愛だ」

「……そうかよ」

リタはキャスバルのダメンズぶりを放ってはおけないみたいな感じの事を言ってたな。

誰が誰を好きになろうとかまわないが、二人とも特殊な事情を持っている。

キャスバルは言わずとしれたジオン・ダイクンの息子にして、ネオ・ジオンの総帥となり地球連邦に反旗を翻した男、あのシャア・アズナブル。

歴史の裏にシャア・アズナブルありと言われる程の世界で最も危険視された男だった。

今じゃ、こんなだけどな。

 

リタはリタで元連邦のニュータイプ兵だった。

しかもニュータイプ用の新型機あのフェネクスとかいう金ぴかモビルスーツの稼働試験中に暴走し、味方の戦艦を落としてしまったという経緯がある。

そこにリタの意思があったかは不明だが、今のリタを見ればそれは本当に暴走だったのだと思う。

だが、連邦のメンツのために暴走事故という扱いになってはいるが、フェネクス破壊の命令を下している時点で、リタを反逆者扱いで有無を言わさずに処刑しようとしていたのは明らかだ。

 

そんな二人だが、世間では死亡が確定視されている。

連邦からしてみれば、厄介者が消えてホッとしているといったところだ。

 

しかし、何の因果か、二人はこうして生きてる。

しかも、カップルになろうとは……。

 

 

 

「エド、さっきの頼みなのだが、認めてほしい!」

キャスバルは椅子から立ち上がり俺に迫り両手を握って懇願しだした。

「ちょっ、何すんだ!別に認めて……」

 

そんなタイミングでだ。

「き、貴様!!何をやっている!!エドから離れろ!!」

ローザが買い物から戻って来て、いきなりキャスバルに怒声を浴びせる。

 

「ちっ、邪魔が入ったか!エド、また来る!」

キャスバルはさっと身を翻して、診察室から逃げ出す。

 

「この俗物が!二度とエドに近づくな!!」

そんなキャスバルを追いかけるローザ。

 

……いつも通りだな。

 

 

しかし、キャスバルとリタか。

リタとも少し話した方がいいだろうな。

 




次回はリタとレッドマン……NT組もあるかも
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