前回からの続きですが、今回はリタ視点での話になります。
では、どうぞ。
私には未来が見えていた。
オーストラリア大陸にコロニーが落ち、その衝撃で私が住む街は跡形もなく吹き飛び、そして家族と共に多数の人々が犠牲になる光景を……。
家族や知り合いだけでも助けるために逃げようと声を上げたのだけど、子供だった私の言葉を両親や知り合いは聞き入れてくれなかった。
でも、幼馴染のヨナとミシェルだけは……
連邦軍本部ジャブローを狙ったジオンによるコロニー落としは、オーストラリア大陸南東に落下、その衝撃によってオーストラリア大陸の南東部は文字通り大地は消し飛び、海とへと変化し、周囲の地表はひっくり返り、町や人を悉く消し飛ばした。
実にオーストラリア大陸の半分の面積は不毛の大地へと……
私はコロニーが落ちる事を知っていたのに、コロニーを止めるどころか、人々を、大切な家族さえも逃がすこともできなかった。
私が何もできない子供だから……。
コロニーが落ちる光景を目の当たりにした際、次の未来が見えていた。
20年先に起こる人類滅亡の最悪の結末を……。
次こそは何としても私が止めなくては……。
私は最悪の結末に至る未来を変えるため、いくつもの分岐点や分岐への道筋を見て来た。
未来が近くなればなるほど、その最悪の結末への光景は鮮やかにくっきりと映る。
見えたのは最悪の結末だけじゃない。
それと同時に、最悪の結末の阻止への分岐も見えてくる。
その中でも確率が高く、阻止できる方法も。
それは人類滅亡への引き金となる、あの白いモビルアーマーの破壊と停止。
でも、私は私の命を使うだけでは足りず、幼馴染のヨナとミシェルまでも巻き込まなくてはならなかった。
最悪それでも止められないかもしれない。
止められたとしても、ヨナとミシェルも死なしてしまう可能性もある。
それでも私はやり遂げなければ……、阻止しなければ人類に未来はないのだから……。
例え幼馴染を巻き込んでしまったとしても、二人が死んでしまったとしても……。
いえ、二人を死なせないようにしなければ意味がないわ。
私はどうなっても構わない。
ヨナに自由に空を飛んでほしい……。
ミシェルには心のままに生きてほしい……。
宇宙世紀0095年12月3日
私はユニコーンガンダム3号機フェネクスに乗り込み、密かに決意する。
この子と一体となって、人類もヨナとミシェルも助けて見せると……。
そして、ユニコーンガンダム3号機フェネクスのサイコフレームは予知通り暴走し、私の操縦から離れ、味方戦艦とMSを破壊尽くし、闇夜の宇宙(そら)へと消え入り、私の精神を取り込もうとする。
そう、これでいいの。
私の魂をフェネクスのサイコフレームの中に溶け込ませ、サイコフレームと私の意識を融合させ、疑似宇宙意思(サイコ・フィールド)の力を振るうことが出来る。
ヨナと共に、あの白いモビルアーマー(Ⅱネオ・ジオング)を止める。
しかし……。
私の意識が途切れる瞬間、フェネクスのメインカメラから見えたものは……。
真っ白いモビルスーツ。
この子(フェネクス)と私と違って、真のユニコーンのガンダム……。
フェネクスは抵抗もせず、そのユニコーンのガンダム(νガンダム)に掴まれる。
何が起きてるの?
ユニコーンのガンダム(νガンダム)が何故ここに?
白の英雄は2年前のネオ・ジオンとの闘いで行方知れずになったはずなのに?
私の見た未来にはこんなことが起きる分岐は無かった。
フェネクスはユニコーンのガンダムに連れていかれる。
私は失敗したの?
もう白いモビルアーマーによる人類滅亡の道筋は避けられない?
ヨナもミシェルの未来も……。
ごめんなさい。
私はそこで意識を手放した。
私は私が自分であることも理解できない位に意思が胡乱となり、精神世界を漂っていた。
時折、左手には温かい心の声が流れてくる。
「「生きろ、目を覚ませ、未来を歩めば幸せになれる」」と。
誰なのかな?よくわからない。
この声が心地いい。
男の人の声?……お兄ちゃん?
私には兄はいないハズなのに、なぜかそんな心の声が漏れてしまう。
でも、優しい声。
今迄感じたことが無い安心感。
心地よすぎて、私はこのままでいいと、時に意識を任せてしまった。
でも突然、私の胡乱な意識に他人の感情の渦が衝撃として抜けていき、私は無理やり意思を繋ぎ止められる。
その感情の渦は、激しい復讐心と執着心、母への愛情への渇望が見え隠れしていたのだけど、それに覆いかぶさるように、無垢な信頼と安心感、さらには認めてもらいたいという承認欲求まで……。喜怒哀楽が激しすぎて、私は船酔いするかのような感覚に襲われる。
その感情の渦の元凶は、フェネクスのコクピットに乗り込んだ金髪の偉丈夫。
この人はシャア。
私の見えた未来予知で最も残酷な終焉を迎える未来を作り出す人だった。
彼があの白いモビルアーマーに乗り込む、または緑髪の少女を乗り込ませて世界を破滅に……。
でも、白の英雄が身を呈して彼を止めたはず。
なのになぜここに、しかもフェネクスに?
今の状況は私の見た未来のどれにも当てはまらない。
やはり破滅に向かっているの?
でも、彼の感情のこれは……。
光とも言えないけど、闇に覆われているわけでもない。
闇夜の浮かぶ朧月のよう。
この人からは未来予知で見たシャアのような憎悪の狂気は感じられない。
確かにこの人はシャアだけど、かつてのシャアじゃない。
シャア・アズナブルとキャスバル・レム・ダイクンという過去の名のしがらみに囚われながらも、全く別の名であるデニス・レッドマンとして名づけ親と共に生きようとしている。
彼の精神に深くつながると、ここ最近の彼の過去が見えて来た。
その姿は真面目に生きようと不器用に奮闘するけど、空回りし続けるちょっとダメなおじさんだった。
ふふっ。
なにこれは?
これがあのシャアなの?
私は久しぶりに心から笑った気がした。
しかも、彼の近くには白の英雄に、彼に人生を狂わされたハズの悲しき女帝まで。
バーテンとして不器用な笑顔でお客さんをもてなす彼。
時には白の英雄と他愛もない言葉を交わしながら、シェーカーを振る姿も。
そして、大好きな親友を追いかけまわす彼。
それを阻止しようとその親友の伴侶となった女帝が彼を逆に追い回す。
夜には自宅で一人、過去の自分に向き合い、大きく感情を揺らす姿も見える。
後悔…、懺悔…、何とも言えない苦しい感情を巡らせていた。
なんだろう?
この不器用な感じがその、かわいいかも。
そんなことを思っていたら私は目が覚めた。
すると、目の前には、ちょっと目つきが鋭い白衣の男性が……。
「目が覚めたか……、大丈夫だ。今はゆっくり休めばいい」
あの温かな優しい声でそう言ってくれた。
私が見た未来の分岐から完全に離れてしまった。
でも、大丈夫。
同時に新しい未来が見えたから……。
そう、彼と私であの白いモビルアーマー(Ⅱネオ・ジオング)を止める未来を……。
人類の危機も、ヨナとミシェルも死なない。
私が一番望んだ世界。
目覚めて、ベッドから起き上がれるようになってから、ここヘイガー診療所の医師エドワード・ヘイガーお兄ちゃんとトラヴィス・カークランドさんから、今の状況の説明を受けた。
フェネクスのコクピットから衰弱死寸前で助けられた事、1年半以上眠りについていた事。
トラヴィスさんの民間軍事会社が連邦からフェネクス破壊依頼を受け、破壊に成功したことを連邦宇宙軍に報告し、私の死亡も確定させた事。
実際にはフェネクスを鹵獲して、私を助け、秘密裏にここの診療所に運び、私をかくまってくれた事。
連邦に戻すと、私は軍法会議で死刑か、裏で使い捨ての実験動物のような扱いを受けるだろう事。
また、フェネクスの戦闘ログ記録を確認済みで、私の操縦で母艦エシャロットを攻撃したのではなく、フェネクスが暴走した結果だということを確認した事。
そして、トラヴィスさんもエドお兄ちゃんも私を助けたいと……。
私は自然と涙が溢れえる。
20年ぶりに泣いた。
私は誰かに助けたいと言われたのはヨナ以外で初めてかもしれない……。
私はヘイガー診療所、エドお兄ちゃんの元で入院を兼ねて生活することになった。
ここでの生活は今までに考えられないぐらいに穏やかだった。
薬剤投与や実験もない。
勿論、モビルスーツの訓練などもない。
エドお兄ちゃんの家族は皆、優しく私を受け入れてくれる。
でも、困ったことがある。
そう、エドお兄ちゃんとリゼ以外皆、高レベルのニュータイプだった。
私が目覚めて直ぐ、入院してきたマリーダも危険な感じだけど人工ニュータイプの気配、同じ頃にここに住むようになったバナージくんもかなり凄いニュータイプの気配。
これはニュータイプ特有の悩み。
なぜなら、何かの拍子に、皆の心の声が聞こえてきてしまうから。
ローザさんはエドお兄ちゃんの事ばかり。
声と態度と大違いで心の声はすごく恥ずかしがり屋さん。
《きょ、今日こそはエドと……う、ううう、私からは言えない。いや、エドは良いと言ってくれたのだ。……しかし、エドから誘ってくれてもいいではないか、しかし、エドは疲れているのだ。いや、これでは結婚前と一緒ではないか……》
私にはよくわからないけどエドお兄ちゃんが悪いように思う。
オードリーとクェスの二人は日常会話をしながらニュータイプ能力の念話を織り混ぜて、話してるし。
「オードリー、今日って共通授業の課題ってあったかな?」
「昼からの社会科講義の課題がきょう提出よ《また、忘れたの?》」
「そ、そうだっけ?《あれ?オードリー、後でみせて》」
「共有ファイルに入れておくわ《でも、最後のコメント欄は自分で考えないとダメよ》」
「サンキュー《今度、壺屋のウラガン印の甘々焼き蜜イモ奢るわ》」
2人はいつも仲良しね。
最近、バナージくんは思い悩んでいるよう。
《学校に通わせてくれたエドおじさんには感謝しきれない。だが、どうすれば……、オードリーとクェスは学校ではアイドル以上に崇拝されていて、一緒にいる俺はやっかみに……、今のところ敵意がエドおじさんに集中しているから、実質被害はないけど、二人と一緒に住んでるなんて知れたら、どんな目にあうことやら。全力でばれないようにしないと》
いいな、私も高校に行きたかったな。
私は中学に上がるころに、ニュータイプ研究所に連れていかれて、学校に行ってないから。
入院したてのマリーダはここでの新しい生活にどうやら困惑しているよう。
《リゼから渡された下着…、なぜ、パンツにネコのイラストが全面に?これは若年の子供用のものではないのか?間違えたのか?いや、この家には若年層はいないぞ、ミネバ様もクェスも16歳だそうだから、こういうものは履かないだろう。どういうことだ?》
私がリゼから渡されたパンツはウサギちゃんのイラストだったわ。
私はかわいいと思う。
そして、そんな家族の様子なんて全く気にしていないというか、まったく知らないエドお兄ちゃん。
こんなにニュータイプに囲まれて生活しているのに、ニュータイプに覚醒しないどころか、感応の気配すら感じない。
よく言えば理性的、悪く言えば鈍感ということなのかなと思う。
その鈍感力が常人の数倍はあるのかもしれない。
今、穏やかな時が流れてる。
でも、1年後には白いモビルアーマー(Ⅱネオ・ジオング)がこの新サイド6を火の海にし……世界を破滅へと。
白いモビルアーマーを止めなくっちゃいけない。
私の予知では今のレッドマンを名乗るシャアがキーポイントとなる。
彼と共に白いモビルアーマーを止める予知。
彼は私の説得で一緒に戦ってくれるだろうか?
それに今は穏やかな生活に満足しているけど、心の闇と復讐の炎がまだ消え切っていない彼を戦場に誘って良いものなのか?
私はそのことを考えると心が重くなる。
そして……半年が過ぎる。
リタの予知ですが、改変しております。
Ⅱネオ・ジオングが自身が世界を滅亡させるのではなく、新サイド6を攻撃することが、世界が滅亡に向かう切っ掛けになる設定。
という感じでお願いします。
どんな閑話を読んでみたいですか?
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