暁妃緋真は勇者である   作:檮原

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ゆゆゆいをスマホで始め、ゆゆゆシリーズを借りてきて見始めました

自分も書いてみたくなったというのが正直なとこです

では、どうぞ


第1話 西暦勇者、新世紀に再誕す

新世紀297年12月

 

高知のかつては梼原と呼ばれた田舎町の一角に古びた家が建っていた

 

そこに向かって歩く3人の少女の姿があった。1人は陽気な足取りで歩き、1人は眠そうに目を擦りながら、そして最後の1人は周りに警戒するようにキョロキョロしながら歩く

 

「須美、そんなに警戒しなくて大丈夫だよ」

 

陽気に歩いていた少女が黒髪の少女に話しかける

 

「だって、こんな田舎町ですよ?いつか来るお役目に必要なものがあるんですか?本当に」

 

「それは、大赦からのお達しだから私にも分かんないけどさ。こういうの、楽しみじゃん?」

 

「気楽すぎます、銀は・・・それより、歩きながら寝ようとしないで下さいよ、そのっち」

 

そのっちと須美に呼ばれた少女は目を擦りながら

 

「んー・・・あれ~ここは?香川じゃない~?」

 

「はあー、寝惚けてないでしっかり歩いて」

 

「は〜い」

 

そんなこんなで3人は古びた家の前に着いた

 

「お役目に大切な物って何かな?ワクワクするなぁ」

 

「銀、出てきた物がいきなり襲いかかってくるかもしれません。気を付けてください」

 

「固いなー大丈夫だって、須美」

 

3人は、中に入り地下へ続く階段を下りる

 

そして、扉を開けるとそこには

 

周りの景色とは違って、真新しい機械じみたカプセルが2つ置かれていた

 

「これは!?」

 

カプセルを見た須美は、瞬時にそれが何であるか理解した

 

「須美、どうかした?」

 

「わっし〜、どうしたの〜?」

 

銀と園子は分からないのか須美の反応に首を傾げる

 

「これは、コールドスリープカプセルです」

 

「こおるどすりいぷ?」

 

「コールドスリープカプセルとは、西暦と呼ばれた時代に病気の治療法として考えられたものです。病気の治療法が無い不治の病への対処法が見つかるまでの間、患者を眠らせ歳を取らせないようにし、対処法が見つかった時に起こして患者を救うためのものです」

 

「ほえ〜そんな凄いものなんだね。これ〜」

 

須美の話を聞いて園子は、改めてカプセルを見て目を輝かせる

 

「つまり、ここにあるのは西暦の時代の人が眠っている可能性があるということです!」

 

「ってことは、ご先祖様だ〜!」

 

「ええ、なぜ大赦の人が大切な物といったかは分かりませんが、とにかく開けましょう」

 

須美の言葉に銀と園子は頷き、銀は奥のカプセルを園子と須美は手前のカプセルを開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カプセルが開く前、カプセルの中で眠る1人の少女は夢を見ていた。見ているのは、西暦の時代の最後の闘い

 

「緋真、人間守るの辞めてこっちに来ない?」

 

話してるのは、忌々しき敵。人のくせにバーテックスに付いたクソ野郎である

 

「誰がお前なんかと!」

 

緋真は仕込み大剣を構えて相手を見据える

 

「残念ね、来てくれると思ったのに」

 

「ふざけるな!」

 

緋真は剣を振るって攻撃を仕掛ける。だが、相手の攻撃にだんだん押され始める

 

その時、周りで闘っていた自分と同じ勇者が緋真を鼓舞する

 

「緋真!負けるんじゃねえ、守るんだろ、みんなを!」

 

「若葉・・・」

 

「緋真・・・ううん、ひさちゃん負けないで!」

 

「千景・・・」

 

「負けたらタマが許さないからな!」

 

「土居・・・」

 

「負けないで下さい、みんなで勝ちましょう」

 

「伊予島・・・」

 

「笑顔でみんなで、また笑おうよ!」

 

「高嶋・・・」

 

「私たちを助けてくれたあの時の緋真らしくない!負けるな!」

 

「白鳥・・・」

 

「もしかして、疲れましたか?疲れたなんて言わないで下さいね」

 

「秋原・・・」

 

「1人だけ死ぬなんて許さないよ」

 

「古波蔵・・・」

 

共に戦ってきた勇者の仲間に励まされた緋真は、大剣を構える

 

「私が勝って四国を終わらせる!」

 

「させねえよ、クソ野郎があああああ!」

 

緋真とバーテックス側の彼女は刀を振るって交差する

 

「どちらが、勝ったんだ?」

 

若葉たちは周りの雑魚を片付けながら目を見張る。すると、緋真のほうが少し体勢を崩す

 

「緋真!?」

 

若葉は声を張り上げるが

 

「うるせえ、死んでねえよ」

 

と、緋真から言葉が返ってきた

 

緋真の後ろでは、崩れゆく女性の姿があった

 

「ふふっ私の負けね。残念だわ」

 

「眠れ、―――」

 

そう言うと女性は、消え去ったのだった

 

 

 

 

 

 

そこで、夢は終わった

 

 

 

 

《目覚めなさい、闘いが近付いています》

 

西暦の時代からたまに聞こえていた声が、また聞こえる。誰かは分からないが、どうやら起きなければならないらしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、綺麗な顔で眠ってるなあ」

 

その時、今度は頭の中ではなく外から声が聞こえた。目を少しずつ開けるとそこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑顔でこちらを見る女の子がいた

 

その子に緋真は口を開いた

 

「今は新世紀何年だ?」

 

「今は新世紀297年12月です」

 

「そうか、そんなに経ったのか・・・よっこらしょっと」

 

緋真は、カプセルの中から体を起こす。そして前を見ると手前のカプセルからも女性が出てきていた

 

「ミノさん、そっちも出てきましたか〜?」

 

「うん、出てきたよ。園子」

 

「大丈夫ですか?1人で立てますか?」

 

淡い黄色の髪の女の子と灰色っぽい髪の女の子は2人で会話していて、黒髪の女の子は手前のカプセルに入っていた女性の介抱をしていた

 

緋真は、それを見ながら自力でカプセルから出た

 

「かなり、寝ていたんだな。おれたちは」

 

「そうですね、もう私たちだけなんですよね・・・」

 

緋真の言葉に女性は寂しそうに話す

 

「私たちもいるよ〜?」

 

「園子、この場合私たちの事じゃないからな」

 

園子の言葉に銀がつっこむ

 

「あの時約束したろ?俺たちが未来の勇者を導くんだってな」

 

「それは、そうですけど・・・やっぱり、寂しいものは寂しいんですよ」

 

「まあ、咲希の言いたいことも分かるけどな」

 

2人だけで喋っていると、須美が話しに入ってきた

 

「あの、私は鷲尾須美と言います。あなた方は、西暦の方でしょうか?」

 

「ああ、俺は暁妃緋真(あかつきひさな)。よろしくな、鷲尾」

 

「私は高嶋咲希と言います。よろしくお願いします」

 

「あ、あの私たちは小学生なので敬語使われると・・・そのむず痒いと言いますか・・・」

 

銀は歳上にしかも西暦の時代の人に敬語使われるのが恐れ多かったのか敬語を辞めてもらうように言う

 

「だそうだ、高嶋敬語じゃなくていいらしいぞ」

 

「ごめんね、これからよろしく」

 

『よろしくお願いします!』

 

そして、298年にバーテックスとの再戦は始まった。咲希は、毎度のことながら見送ってくれ、帰ってきたら「おかえり」と言ってくれた

 

 

 

 

 

 

 

それから、2年くらい経って咲希は大赦の中で新たな役目を担うらしい

 

 

 

 

そして、俺は─────

 

 

 

 

 

新世紀300年

桜並木の道を2人の少女が学校へと行くために通っていた。1人は車椅子に乗っていて、もう1人は車椅子を押している

 

「今日、新入部員入るんだよね?東郷さん」

 

「うん、1人は高校生らしいけどね」

 

東郷と呼ばれた車椅子に座っている少女は、押してもらっている少女の問いかけに答える

 

「楽しみだなぁ」

 

「ふふっ友奈ちゃん、本当に嬉しそう」

 

友奈と呼ばれた車椅子を押す少女は、楽しそうに話す

 

「新入部員に会うために、今日も授業頑張ろう」

 

 

そして、授業も終わって部室に向かおうとした友奈に同級生が話しかけてきた

 

「友奈、今度の野球部の試合出てくれる?」

 

「もちろん、任せといて」

 

友奈は、同級生の話しに元気良く答える

 

「今日も部活?」

 

「うん、そうだよ」

 

「なんていう部活だっけ?」

 

「勇者部だよ」

 

同級生の質問にも元気良く答えた

 

「なんか変な名前だよね?勇者部って・・・」

 

「ええーそうかな?カッコイイじゃん」

 

そう話し、友奈は東郷の車椅子のロックを外して教室から出た

 

そして、家庭科準備室こと勇者部の部室に入る

 

「失礼しまーす、友奈と東郷来ましたー」

 

友奈は部室に入ると元気いっぱいに挨拶した

 

「遅かったわね、それじゃ新入部員を2人紹介するわ」

 

そう話すと

 

「おー待ってました。風先輩」

 

パチパチと拍手しながら、友奈は席に着く。その隣に東郷もいる

 

「じゃ、まずはこの子からね」

 

風と呼ばれた女性は、モジモジしている少女を前に押し出す

 

「ほら、挨拶」

 

「い、犬吠埼樹です。よ、よろしくお願いします」

 

「宜しくね、樹ちゃん・・・ん、犬吠埼って」

 

友奈は、苗字が気になったのか呟く

 

「そう、樹は私の妹よ。成績優秀、容姿端麗、完全無欠、自慢の妹」

 

(シスコンかよ、しかも今の言葉で妹の方は顔真っ赤じゃねえか)

 

風の妹紹介に自己紹介を待っている緋真は、心の中でつっこんでいた

 

「お、お姉ちゃん。恥ずかしいよ」

 

風の紹介は案の定恥ずかしかったようだ。まあ、誰が妹でも恥ずかしくなるのは当たり前だが

 

「さて、それじゃもう1人」

 

そして、風から「どうぞ」というふうにバトンタッチされて挨拶する

 

「これから所属する、暁妃緋真だ。学年は高2、好きな物はカラオケ・・・宜しく」

 

「宜しくね、樹ちゃんと緋真ちゃん」

 

友奈は2人を見ながら挨拶する

 

「宜しくね、樹ちゃんに緋真・・・さん」

 

東郷もまた、挨拶するが歳上にはぎこちない返しになってしまう

 

「別に緋真ちゃんでいいぜ。昔はそうやって呼んでたんだからな」

 

「昔・・・?」

 

緋真の言葉が気になったのか東郷は聞き返す

 

「ああ、そっか。記憶無くしてるんだったな、昔よく話してたんだよお前と」

 

「じ、じゃあ東郷さんの昔の事知ってるんですか!?」

 

「まあ、2年前のことだし知ってるさ。よくつるんでいた友達のこともな」

 

「私、事故で記憶無くしてて2年前のこと覚えてないんです。教えてくれませんか?」

 

東郷は、自分の記憶を取り戻したいのか緋真に質問してくる

 

「まあ、仲良くしてた友達の名前は教えとく。三ノ輪銀と乃木園子って子たちだ」

 

「三ノ輪・・・銀、乃木・・・園子」

 

「ああ、仲良かったぜ。周りが羨むくらいにな」

 

「2人は元気なんですか?」

 

「・・・っ!」

 

東郷からのその言葉は、緋真の言葉を詰まらせるに充分だった。今はまだ話すわけにはいかないからだ

 

(勇者部っていうことは、大赦のプロジェクトの1つだ。今言えば面倒臭いことになる、どうっすかな・・・)

 

緋真は、どう調弄すか迷った

 

「あの、緋真さん?」

 

「あ、ああ悪ぃな。今は遠くで暮らしてるさ」

 

「そうですか」

 

どうにか、誤魔化すことに成功したが心苦しい事には変わりない

 

(悪ぃな、本当の事言いたいが今大赦に楯突くのは得策じゃねえんだ)

 

緋真は、心の中で思うのだった

 

 

 

そして、それから半月勇者部として緋真は色々なことをやらされた。迷子猫・犬・鳥などの捜索に里親探し、そして子供たちの前で創作演劇をした

 

 

 

 

 

 

そして、5月に入った頃

 

 

 

 

「さて、本日の活動も終わった事だし樹と緋真の歓迎会として何か食べに行こう」

 

風が言い出すとすぐさま友奈が食いつく様に

 

「さんせーです!」

 

と言い、東郷も続けて賛成する

 

「おいおい、めんどくせーな」

 

緋真は頭を掻きながら言う

 

「そんなこと言わずに、早速かめやへレッツゴー!」

 

「うどんって決まってんのかよ。肉がいいんだがな」

 

「つべこべ言わない!香川県民ならうどんでしょ」

 

俺、高知県民なんだがな

 

「何か言った?」

 

「何でもねえよ、行ってやるよ」

 

緋真の返事を聞いて風たちは『いえーい』とハイタッチするのだった

 

 

 

 

ーーー

 

 

かめやーー

 

 

「風先輩そのうどんで3杯目ですよ!?」

 

東郷が驚きながら風に尋ねると

 

「何言ってるの、うどんは女子力を上げるのよ」

 

と笑いながら答える

 

「太るぞ」

 

緋真がボソッと呟く

 

「ああん!?なんつったお前ぇー!」

 

風は緋真の言葉でキレて緋真の胸ぐらを掴む。緋真は悠々とした顔でうどんを啜る

 

「お姉ちゃん、落ち着いてー!」

 

樹は、そんな風を宥める

 

「そんなことより風先輩、話があるんじゃないですか?」

 

友奈は、場の雰囲気を変えるために話を切り出す

 

「そうだ、時期が早いんだけど今年の文化祭についての相談なんだけど・・・」

 

風が4人に向けて話し出す

 

「文化祭ねぇ・・・中高一貫だからかなりの規模なんだろ?」

 

「それは勿論!去年もすごい数の人が来たんですよ!」

 

緋真の質問に友奈が答える

 

「出店も体育館を使った出し物もかなりの数があるんですよ!」

 

友奈に続くように東郷も話す。すると、樹が

 

「お姉ちゃん、今から文化祭の事決めるの?」

 

「去年は準備が間に合わなくて何も出来なかったのよ」

 

樹が尋ね東郷が答える

 

「なるほどな、だから今年は何かやりたいってわけか」

 

東郷の話を聞いて、緋真は納得したように話す

 

暫く5人が考える中友奈が口を開く

 

「今年は演劇やりましょう。子供たちの前でやった時も盛り上がりましたし」

 

「あの時の演劇は、なんというか勢いで上手くいったような気もするけどねぇ」

 

風は1ヶ月前の演劇のことを回想しながらため息混じりに話す

 

「東郷、樹それに緋真もそれで大丈夫?」

 

「頑張ってみます」

 

「大丈夫だよ、お姉ちゃん」

 

「やるしかねぇんだろ、全くめんどくせぇな」

 

「なんだかんだ言って手伝ってくれるとこ、緋真ちゃんありがとう」

 

「仕方ねぇだろ、勇者部に入ってんだからよ」

 

「よーっし、そうと決まれば・・・」

 

「何かするの?お姉ちゃん」

 

風の言葉が気になったのか樹が聞くが、返ってきたのは予想外の言葉であった

 

「うどん、おかわり!」

 

ガンッガンッガンッ

 

風のおかわり宣言に樹と友奈、東郷は机に頭をぶつける

 

うどん4杯とか本当に太るぞ?

 

そんな中で緋真だけは風に向かってボソッと呟き、3人は額を抑えながら美味そうにうどんを啜る風を見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈は東郷と、風は樹とそれぞれ帰路に着く

 

緋真は緋真で1人で家に帰る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道ーー

 

 

夕日が射す川沿いの道を犬吠埼姉妹は歩いていた

 

 

 

「樹、夕飯は何を食べようか」

 

 

 

「お姉ちゃん、まだ食べるの!?」

 

風が、あれだけのうどんを食べていたので夕飯の話に樹は驚く

 

「うどんは別腹だよ(笑)」

 

そんな他愛もない会話が続く中でふと風が樹に尋ねる

 

「樹、もしお姉ちゃんに隠し事があったらどうする?」

 

「どうしたの?急に。そうだなー、付いて行くよ何があっても。だってお姉ちゃんは私の唯一の家族だから」

 

「そっか、ありがとう。やっぱ樹は私の最高の妹だよ」

 

「何か今日のお姉ちゃん変だね?大丈夫?」

 

「だ、大丈夫だよ。心配しなくても元気だから」

 

樹に心配されたのか風は何事も無かったように返事をする

 

(緋真に言われたこと、少し考えてはいるけど・・・)

 

心の中では緋真に言われたことが渦巻いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうこと?」

 

緋真に呼び出され、話を聞いた時耳を疑った

 

「何度も言ったろ、俺と東郷、そして結城友奈が居る限り選ばれるのはここだ」

 

「なんでそんな事が言えるの!まだ、分からないでしょ!?」

 

「理由は2つ。1つ目俺と東郷は先代勇者だからだ、そしてもう1つ結城友奈の適正値は他のグループを圧倒している。あんな数値は他者の追随を許さない程に圧倒的だ、だから選ばれるのはここだ」

 

「待って、東郷と緋真が先代勇者!?」

 

緋真の言葉の中で1番の驚きは、先代勇者だった2人がまさかの部員にいた事だった

 

「そうだ、俺たちは2年前バーテックスと闘い、東郷は脚と記憶を俺は左腕の機能を失った」

 

「・・・っ!」

 

緋真の言葉に返す言葉が見つからない風に、緋真は言葉を続ける

 

「俺達がここに居るのは偶然じゃねぇ。東郷が結城の家の隣に引っ越したのも、大赦の仕組んだことだ。俺達が巡り会うのは必然だったんだ」

 

「そんな、それじゃあ・・・本当に?」

 

「ああ、十中八九選ばれるのはここになるだろう。でも安心しろ、闘いたくなけりゃ俺だけでやる」

 

「な、何言って・・・」

 

風は緋真の言葉に言葉が出てこない。ここが間違いなく選ばれるのなら、樹を巻き込まずにいれるから

 

このまま、緋真に任せれば選ばれても普通に暮らせる。全てをなかったことにすれば・・・

 

「無理よ!他人に任せて引くことなんて私は出来ない!」

 

少し考えたが、やはりその考えは間違いであると頭を振る

 

「いいのか?妹のことが大事なんだろ?巻き込みたくないんじゃないのか?」

 

「ええ、出来ることなら巻き込みたくないわ。でも、それを決めるのはあんたでも私でもない!樹自身よ、樹がやると言ったら私はやらせる。あんたが心配するほど樹は弱くない!」

 

「はははは、そうか。ならいい、そこまで覚悟決めてるなら大丈夫だろ。俺も安心して背中任せられそうだ」

 

「ええ、任せなさい!もし本当に選ばれて勇者になったら、あんたの背中も樹も私が守ってみせる!」

 

風は拳を握り締めてガッツポーズを決めたのだった

 

 

 

(大丈夫、本当に選ばれても私は闘える。樹、あんたはどんな決断するんだろうね)

 

風は樹を見ながら、心の中で思うのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

犬吠埼樹と暁妃緋真が勇者部に入ってから1ヶ月が経った頃、授業が始まる前に東郷美森は昔を思い出していた

 

(私は2年前からの記憶が無い。そんな中引っ越した先で友奈ちゃんに出会えた事は本当に奇跡の様な事だった。それに、緋真さんのおかげで私には2人の友達がいた事も分かった)

 

 

 

 

 

 

1年前─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかして隣に引っ越して来た人?私の名前は結城友奈。お隣さんで同い年ってことは中学も一緒だよね?よろしくね」

 

「私は東郷美森と言います。結城さんこれから宜しくお願いします」

 

「友奈で良いよー、あと敬語も無しね!そうだ、この街を案内してあげるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・ごうさーん、東郷さーん」

 

東郷はボーッとしていたが友奈の声で現実に戻る

 

「あっ、どうかした!?友奈ちゃん」

 

「さっきから上の空だったよ。東郷さん、何かあった?」

 

「ううん、何でも無いよ。ちょっと友奈ちゃんと初めて会った時の事を思い出したの」

 

「そっかぁー、大体1年前だったよねー」

 

「そうだね。あの時友奈ちゃんが話しかけてくれて友達になってくれたのは本当に嬉しかった」

 

「それは私もだよ。だからこそ東郷さんと一緒に勇者部で何か出来る事がとっても楽しい。誘ってくれた風先輩には感謝だよね」

 

「それに、勇者部に入らなかったら緋真ちゃんから東郷さんの昔のお友達の名前すら聞けなかったもんね」

 

「ふふっ、本当にそうだね。あっ、友奈ちゃん授業始まるよ」

 

東郷が友奈にそう言うと友奈は、東郷の斜め前の席に着席した。チャイムが鳴って、先生が入ってくる

 

「起立!礼!神樹様に拝!」

 

日直の掛け声で生徒も先生も礼をする

 

 

ここに限った事ではないが四国の学校では授業の前に必ずお祈りをする。この四国以外の地域は未知のウイルスで壊滅してしまい、日本の八百万の神々が樹となり四国を囲む様に結界を張って四国の人々を守っていると教えられている

 

その教えを説いているのが"大赦"と呼ばれている所だ。四国のありとあらゆる機関を運営している。この讃州中学・高等学校もその1つだ

 

 

 

 

授業中、結城友奈は考えていた

 

「うーん、演劇をやりたいとは言ったものの何の演劇をやろうかなー。先月は魔王を倒す勇者の話をやったし・・・うーん」

 

「・・きさん!結城友奈さん!」

 

「は、はい!」

 

考え事に集中していたため、いきなり名前を呼ばれた友奈は驚いて席を立つ

 

「授業中にボーッとしてるなんて・・・」

 

「す、すみません」

 

友奈は頭を掻きながら謝る。その姿に他の生徒は笑っている

 

そんな時に当然スマホからけたたましくアラームが鳴り響いた

 

「わぁ!?何なのこの音・・・って、私のスマホから!?」

 

友奈はカバンからスマホを取り出す

 

「結城さん、スマホの電源は切っておきなさい」

 

「す、すみません」

 

またしても、頭を下げる

 

そんな時、東郷もまた自分のスマホを見ているのだった。画面には【樹海化警報(・・・・・)】と表示されていた

 

「すみませんでした、せんせ・・・い?」

 

周りを見ると、時が止まったように同級生と先生

 

いや、止まったようにではなく本当に止まっているのだ。同級生たちだけでなく外の風に飛ばされた葉も空飛ぶ鳥たちも

 

「何なのこれ・・・」

 

友奈が呆気に取られていると、後ろから名前を呼ぶ声が聞こえた

 

「友奈ちゃん、これって一体・・・」

 

「東郷さん・・・私にも何が何だか・・・」

 

2人は戸惑っている様子だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、風もこのアラームや時が止まった事に驚き樹の教室へと足を走らせた

 

(まさか、本当に緋真が言ったようになるなんて・・・!)

 

そう思いながら、階段を上ると樹が教室から廊下に出ていた

 

「樹!」

 

その声を聞いて、樹も走って向かってくる風に、抱き着く

 

「お姉ちゃん!何このアラーム、それに樹海化警報って」

 

驚く樹を余所に風は落ち着きながら答える

 

「樹、よく聞いて。私たちが当たり(・・・)だった」

 

 

 

 

 

 

同時刻、高校側では暁妃緋真が授業を受けていた

 

そんな時にアラームが鳴る

 

(来たか・・・)

 

緋真はスマホをカバンから取り出して画面を見る。そして、口角を緩ませた

 

「暁妃さん?スマホの電源は切っておいて下さい」

 

先生から注意を受ける

 

「すいませんねぇ、どうやら来るべき時が来たらしいんすわ」

 

「何を言っているのですか?」

 

「まぁ、簡単に言うと『祭りが始まる』ってことですよ」

 

緋真はスマホを見せながら話す

 

「何を言って・・・」

 

先生は言葉を言おうとしたが、そのまま時が止まってしまった

 

「まあ、説教なら後で受けますよ」

 

そう呟いて、緋真は窓の外に目をやった

 

 

(銀・・・お前が守ったこの世界を俺が守るからな)

 

緋真は心の中で呟き首から掛けているペンダントを開く。中には写真が入っており緋真の隣で輝いた笑顔の女の子が写っていた

 

 

 

 

 

突然周りの景色が変貌していくーー

 

 

 

 

 

 

 

 

その景色はまるで木の根の様な、しかし根の色はカラフル。異質とも呼べる景色が広がっていた

 

 

 

 

 

新世紀300年5月ー勇者部の日常は終わりを告げていた。それは、闘いの日々が始まることを意味していた




梼原(ゆすはら)とは、愛媛との県境にある町です。主人公は、そこの出身であり作者の自分の故郷でもあります

梼原の話は、話が進んでけば後々色々話します

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