TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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どーも、16話です。
久しぶりにポケモンでもするかー、とブラックを起動すると、ライがいました。驚きつつも懐かしさとともにステータスを見ると、「かわらわり」が「いわくだき」になってました。
・・・誰だひでん要員にした奴(´・ω・`)


第16話

「さて、それじゃあ少し話を聞かせてもらおうかな」

 

キョウに案内され、仮設テントにやってきたうみ。キョウと机を挟んだ対面にある椅子に座り、緊張の面持ちである。一方でうみと対面するキョウは内心でかなり警戒していた。

 

『それでポケモンってのはなんだ』

 

『うみちゃんって言う動画配信者がいるんですけどね?その子が言うには最近の外来種案件の殆どがそのポケモンっていう生物らしいんですわ。何でも火を吹いたり水を放出したり、果ては山を1匹で崩すようなバケモンもいるとか』

 

『馬鹿馬鹿しい。そんな話を信じているのか?』

 

『ほんとなんですって!あの子のペッt・・・家族だっていうネズミも電気を放ったりするんですよ!』

 

道すがら最低限の情報としてタケシから聞いた話を思い出す。当初はなんらかの仕掛けなどで行われた、配信での作り話だと思っていたキョウだったが、先のタケシへの電撃を放った生き物ーーーライを見る。こちらを不安そうに見上げるうみの腕の中で、のほほんとした顔でこちらを見ている。

 

(・・・いや、あの目。おそらく今うみちゃんに近付けば俺もタケシのように攻撃されるだろう)

 

ライの目の奥底にある若干の敵意を感じ取るキョウ。後ろの方では黒焦げになったタケシが腕を組み立っているが、顔を見るとデレッデレである。反省のはの字もない。

 

「えと、その・・・どこまで話せばいいですか?」

 

「ああ、基本的な話はこの馬鹿から聞いている。今回何が起きていたのかを君の主観で構わない、教えてくれ」

 

後ろのタケシを親指で指しながら、不安げな表情のうみを安心させるように微笑む。数瞬の間の後、ライを抱きしめつつリングマとの戦闘について離す。

 

「・・・そのリングマというのは今どうなっている?」

 

「すいません、放置してきてしまいました」

 

「いや、構わない。人命が優先だというのは当たり前だ。むしろそんな状況でよく動けたね」

 

うみと会話しつつ、タケシに目配せする。仕事モードの表情に戻り、テントを駆け足で出て行くタケシ。

 

「では、次にその・・・君の持つというポケモンや、腰に下げているボールについて説明してくれないか?」

 

「・・・」

 

そこでうみは少し逡巡する。ボールについての説明やライとミロの説明については問題ない。むしろ、ボールに関してはうみ単独では実現不可能だった「ボールの量産」のための伝手を手に入れられるかもしれない。ただ一つ、うみには懸念していることがあった。

 

「説明するのは構いません。・・・ただ、一つお願いがあります」

 

「何かな?」

 

「ライとミロ・・・俺の家族に関して、一切の干渉を『どんな理由があろうとも』しないと確約してください」

 

「・・・!」

 

それは、ライとミロ、そして未だボックス内に眠る相棒達への心配だった。もしもボールに関する研究が開始されれば、その流れからポケモンに関する研究も始まるだろう。しかし野生のポケモンは決して言うことを聞かない上に、何より捕縛が困難だ。

そうなると必然的に、より御しやすい「すでに捕獲されたポケモン」を対象とするだろう。そうなるとうみのポケモンが現在最もその標的にふさわしい状況だ。

 

(・・・最低だ、俺)

 

うみの表情は暗い。先ほどの条件にはあえて作った抜け道がある。簡潔にいうと、要求の内容はうみのポケモンには手を出すな、ということである。

即ち、『他の人間が捕獲したポケモンや野生に関しては問題ない』ということである。

もしもポケモンが実験として使われることになったなら。その研究というのがポケモンの命に関わるものだとしたら。どんな場合であれ、うみに関与する権利はない。うみは、自分の家族のために他のポケモンを切り捨てた、と言っていい。

 

「・・・そうか」

 

若干の間をおいて、キョウがそう言って考え事を始める。沈む気持ちから俯くうみ。そんなうみに対し、キョウはボソリと呟く。

 

「別に君は悪くない」

 

「!」

 

心を読まれたことに驚くうみ。思わず顔を上げると、キョウの視線とぶつかる。

 

「君の想像する通り、ポケモンに関する研究はこれから始まっていくだろう。そこには君が不快に思うこともあるかもしれない。でも、君に罪はない。家族を守りたいという思いは至極当然のことだ。君に非はない」

 

真剣な顔でそう言うキョウに、うみは最初ポカンとした顔をするが、すぐに微笑む。

 

「ありがとうございます・・・優しいんですね」

 

「優しいのは君だろう。しかし、そうだな・・・もし君がポケモンの立場について思うところがあるのなら・・・」

 

「?」

 

そこで一旦切り、迷うような表情のキョウ。どうしたんだろう、と思いつつうみは次の言葉を待つ。

 

「・・・我々に協力してくれないか?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・失礼します」

 

少しして、タケシに連れられたワタルは、元気になりアグレッシブさを取り戻し(てしまっ)たミニリュウをなんとか抑えながら、仮設テントに入る。そこには、キョウとうみがいた。

 

「やあ、来たね。とりあえずそこに座ってくれ」

 

キョウに促され、うみの横に座るワタル。ワタルを見て一瞬羨ましそうにしたタケシだったが、すぐに仕事モードを再起動し、資料を2人に配る。

 

「・・・あの、事情聴取はもう終わりましたよね?俺早く爺さんとこに行きたいんですが・・・」

 

ワタルがそう言うが、キョウは申し訳なさそうに首を振る。

 

「すまない、君たちにはどうしても言わなければならないことがあってね。・・・まずは一つ。今回の騒動に対して、マスコミには報道規制がかけられる。それにあたって、君たちには守秘義務が課せられる事になった」

 

「はぁ・・・」

 

気の無い返事をするワタルと、無言で頷くうみ。その様子を見ていたキョウは、おもむろに切り出す。

 

「ワタル君。君は、今回の件でポケモン、と言うものに対してどう思った?」

 

その言葉に一瞬躊躇いながらうみをチラ見し、意を決したかのように喋り出す。

 

「・・・正直、怖いな、と思いました。あのポケモン・・・リングマに目前まで迫られた時は、本当に死ぬかと思いました。ミニリュウに対しても、暴れたりしてた時は少し恐怖でしたね。パソコンを尻尾で両断ですから」

 

ワタルの言葉に、ピクリと反応し、悲しそうな顔になるうみ。しかし、次のワタルの言葉に驚いたような顔をする。

 

「でも、もっと知りたいとも思いました。もっとこいつや、他のポケモンについて知って、理解したいと思いました。リングマを見た時、俺はこんな奴を理解なんてできるはずがないと感じました。それが今、無性に悔しい。こいつは、ミニリュウにはこうしてある程度お互いに気を許し会うことが出来たんです」

 

そう言って膝の上のミニリュウを撫でるワタル。ミニリュウは、暴れる事なく、静かにワタルに撫でられつつ、キョウやうみを見ている。

 

「だから、俺はもっとこいつらと関わっていきたいと思います」

 

「・・・そうか」

 

ワタルの言葉を聞き、頷きながらそう呟くキョウ。うみも心なしかルンルンである。タケシはもううみしか見てない。・・・仕事モード解除してない?とワタルは思った。

 

「君の意見はよく分かった。そこでワタル君と、そしてうみちゃんに一つ提案がある」

 

そう言って資料を見るよう促すキョウ。2人は自分の前に置かれた資料を手に取り、捲っていく。

 

「・・・『外来種対策用特別捜査課』?」

 

そこに書かれていた名前を読み上げるワタル。それにキョウが頷く。

 

「そうだ。最近多発している外来種事件への対策として、警察の方で設立を予定されている。君たちへの提案とは他でもない。外来種・・・つまりポケモンに関するこの課での捜査への協力を要請したい」

 

「俺たちに?」

 

驚き、思わず繰り返すワタル。うみは未だ真剣に資料を読みつつ、話を聞いている。

 

「でもそれって、警察じゃない俺らがしてもいいんですか?」

 

「むしろ君たちでなければダメだろう、と私は考えている」

 

そう言って真剣な顔で語るキョウ。

 

「これはマスコミにも流れていない話だが、実は昨日、外来種捕獲のために山に入った武装した警察数十名が、全員重傷になって戻ってくるという事態が起きた」

 

「!?」

 

思わずうみはキョウの方を向く。まさかそんな事になっていようとは考えもしなかった。何かあれば、きっとニュースやネットに情報が流れると思っていたが、その情報は流れていない。

 

「これに対し事態を重く見た上は、特別な課を設立し事に当たるとしている。俺はその課の責任者に任命されている。人事に関しては問題ない。今君達は、分かっている中で唯一ポケモンを所持している人間だ。もし今後ポケモンが暴れるという事態になれば、君たち以外に対処するすべはない。どうか頼む、我々に協力してくれ」

 

そこまで話し、机に手をついて頭を下げるキョウ。それを見たタケシも頭を下げる。警察に頭を下げられるという事態に混乱しつつ、ワタルはちらりとうみを見る。

 

「・・・分かりました」

 

「!」

 

「協力します。俺はもともとポケモンと人との共存を目指しています。その手伝いができるのなら願ったりです」

 

「・・・そうか」

 

うみの言葉に驚くワタル。キョウはそれを聞き安堵するように息を吐きつつ頭を上げる。

 

「・・・俺もやります」

 

躊躇いながらも、ポケモンを知るために、とワタルも名乗り出る。2人ともが協力を約束してくれた事に喜びつつ、キョウが今後の方針について話す。

 

「・・・では今日はもう一旦帰ってもらって構わない。うみちゃんは、どうやら〇〇県から来たようだね。今車と新幹線のチケットを手配した。今日は一度帰りなさい。また今度親御さんとお話しするから」

 

「あ、俺親いませんよ?」

 

「?いや、仕事から帰ってきてからでいいから、また連絡をくれれば・・・」

 

「いえ、仕事とかじゃなくて、俺多分捨てられてるんで親とかいませんよ?」

 

話の最後の最後でぶち込まれた唐突の爆弾発言に、場の空気が一瞬で凍る。一体何が、とオロオロするうみを見上げつつ、やれやれとライは首を振るのだった。

 

 

 

 

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新人配信者:うみちゃんについて語るスレpart10

 

1:名無し

 

さて、記念すべき10パート目に突入したわけだが

 

2:名無し

 

人少なねぇな

 

3:名無し

 

無茶しやがって・・・(AA略

 

4:名無し

 

勝手に殺すな。まあ死にかけたが

 

5:名無し

 

おっ?ってことはポケモンいたのか?

 

6:名無し

 

ああ、鳥みたいのがいた。凛々しい顔した鳩みてぇな奴

 

7:名無し

 

で、どうだった?

 

8:名無し

 

砂かけられたり、突進されたりで散々な目にあった。あと突進で俺のバイクが逝かれた

 

9:名無し

 

おま・・・バイク逝ったか・・・

 

10:名無し

 

他のやつは?

 

11:名無し

 

こっちは紫色の蛇みたいなのいたわ。流石に明らか毒ありそうだから遠くから観察して情報集めるだけにしたけど、そいつが紫の煙吐いたと思ったら木の上からリスとかスズメとかが落ちてきた。明らか毒だったわあれ

 

12:名無し

 

俺は例の研究所にいたっていう紫ネズミ見たぞ!すげぇ早くて、ネズミ捕りシート置いてたのに歯で器用にひっぺがして逃げてった時は口あんぐりなったわ

 

13:名無し

 

なんだ結局全員ダメだったか

 

14:名無し

 

情報共有してた奴らもいたんだが、今そいつらは病院だな。なんでも山の中を集団で探してたらでっかい蛾に襲われたらしい

 

15:名無し

 

まじで無茶しやがって・・・ところで農家ニキの方はその後どうなった?

 

16:農家

 

・・・ポケモンヤベェわ。うちのコロ、他の奴が言ってた紫の蛇、あれを普通に火だるまにして撃退してた

 

17:名無し

 

はい有能

 

18:名無し

 

これは農家ニキの一人勝ちか・・・?

 

19:農家

 

勝ったな、コロと風呂入ってくる

 

20:名無し

 

フラグ立てていくなしw

 

21:名無し

 

にしてもまじでどうやって手なずけるってんだよ

 

22:変態警察

 

うみちゃんが配信で説明してた内容をwikiにまとめてきた。これ見て気をつけて調べてこい

 

23:名無し

 

でかした!

 

24:名無し

 

流石の有能ぶりである

 

25:変態警察

 

それとお前ら、次の配信は絶対見とけよ。まじでやばくなると思うから

 

26:名無し

 

?どゆこと?

 

27:名無し

 

言われなくてもうみちゃんのご尊顔を見にいくぜ!

 

28:名無し

 

当たり前だよなぁ?

 

29:名無し

 

そうだよ(便乗)

 

30:名無し

 

ホモは帰って、どうぞ

 

31:名無し

 

お前もホモじゃねぇか

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・ミロ、ありがとうね」

 

『キュッ!』

 

帰りの新幹線に乗り、ボール越しにミロにお礼を言ううみ。窓の外を眺めつつ、キョウからの提案について考える。

 

「外来種対策課・・・か」

 

(ポケモンに関する情報は集めやすくなるだろうな。それと、ボールに関しても量産について聞くと、キョウさんは「確認する」と言ってくれた)

 

少なくとも今のところ死者の情報はない。全ては順調とまでは行かないまでも、良い方向に進んでいる。そのはずだが、うみは言いようのない不安を感じていた。

 

「考えても仕方ない!やれることをやろう!」

 

自身に言い聞かせるようにそう叫び、新幹線内だと気づき慌てて口をふさぐ。しかしそこで、さっきとは別の違和感を感じる。

 

「・・・人がいない?」

 

さっきの駅までは載っていた人々が影も形もない。降りたのかとも思ったが、しかし席にはいくつかバッグや弁当などが置きっぱなしである。

なにかがおかしい、そう思いうみが席を立った瞬間だった。

 

「ーーーーーー」

 

「!?」

 

新幹線がトンネルに入った。すると突如、うみの席の鏡から黒い何かが這い出てくる。とっさに通路に逃げるうみだったが、何かはそのままうみを追う。

 

「ライ!お願い!」

 

「ライ!」

 

とっさにライを呼び、黒い何かを迎撃するうみ。勢いよく突っ込んだライだったが、そのなにかに触れた途端、ライが飲み込まれる。

 

「ライ!?」

 

「そんな!ライ!」

 

ライを捕まえたまま窓に戻って行くなにか。慌てて追いかけようとした隙を突き、背後から来たもう一つのなにかが腰のミロのボールを奪い取る。

 

「しまった!?」

 

そうしてライとボールを奪ったなにかは、そのまま窓の向こうに消えていく。

 

「かえせ!」

 

うみは一瞬躊躇うも、ライ達を助けるために、黒いなにかに突っ込む。

こうして、うみとその相棒達を取り込むと、なにかはゆっくりと窓の向こうに消えていった。

 

 

 

 

トンネルを抜け、車両にはいくつかの荷物と、うみの赤い帽子だけが落ちているのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

現実世界とも異世界とも異なる場所。そこにいた『それ』は、なにかの気配を感じ動き出していた。

 

「ーーーーーーーーーー」

 

なにかの起こした空間の歪みを感じ取り、ゆっくりと腕を振り上げる。肩部にある宝石のようなものが光り、そのエネルギーが腕へと伝わる。そのまま勢いよく振り下ろされた腕から、エネルギー刃が発生し空間を切断する。

 

空間を司りし『それ』は、悠然と異世界へと向かうのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方、同じく異空間に潜む『それ』もまた、動き出していた。

なにかの引き起こした時間の歪みを正すべく、怒りのままに異世界へと走る。

 

「ーーーーーーーーー!!!」

 

時間を司りし『それ』は、怒りの咆哮とともに異世界へと向かうのだった。

 




『それ』とか『なにか』とか使いすぎで読みづらいかもしれません。
だが私は謝らない(ごめん)

次回、『なにか』vs『それ』vs『それ』

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