TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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どーも、21話です
もはや初期案の原型も何もない話ではありますが、まだギリギリセーフ(白目)
というわけで、ドゾー(´・ω・`)ノ


第21話

「ちょっとデオキシス!?人に会わないように飛んでって言っただろ!?」

 

「ーーーーーーーーー?」

 

飛行機から逃げるように飛び去ったデオキシス・・・に対して少し慌てたように怒るうみ。何が悪かったのか理解していないデオキシスは、首を傾げながら飛ぶ。

 

「全く・・・!急ぐぞ!」

 

状況を考え今はしょうがないとデオキシスへの説教を後回しにするうみ。スピードフォルムのデオキシスは、うみがなぜため息をついているのか分からず、とにかく運ばねば、とさらにスピードを上げるのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「グォォォォォ!」

 

「ミニリュウ!横回避!」

 

「フゥ!」

 

うみが空を飛翔している頃。ワタルはミニリュウとともに、必死になってゾロアークを足止めしていた。

 

「ミニリュウ!『でんじは』!」

 

 

「フゥ!」

 

「グルルル・・・」

 

流石に真っ向勝負をするには、ワタルとミニリュウの経験もレベルも足りない。そこでうみは、ミニリュウの使えるワザを聞き、バトルを延長できるだけの策を与えた。

 

『いいですか。ゾロアークがどのくらい強いのかは分かりません。ただ一つ分かることは、ミニリュウでは到底勝つことはできないということでしょう』

 

『じゃあどうすれば?』

 

『簡単です。「勝たなければいい」』

 

「っても簡単に言ってくれるよな、うみちゃん!」

 

そう言うワタルだが、口元には笑みが浮かぶ。

 

 

「グアァァァァァァ!!!」

 

未だエンテイに化けているゾロアークだが、現在は幻影ではなく、『つじぎり』や『こうそくいどう』など、自身の使えるワザを用いてミニリュウを狙う。

ミニリュウは、当たれば致命傷になりうるそれらのワザを、ワタルの指示で的確に避ける。

 

「・・・なかなか上手いもんじゃないか」

 

「そりゃどうも・・・左回避!」

 

キョウの軽口に答えながらも、指示を切らさないよう注意するワタル。5分ほどが経過した現在、ワタルは集中力の限界が近づいていた。

 

(俺自身は特に何もしていないってのに、この緊張感・・・うみちゃん、バトルは簡単なんてよく言えるよ!)

 

自分の指示のミスがパートナーの敗北につながるという責任感。パートナーのみならず、周囲の状況、相手の出方、そういったものすべてを考慮せねばならない状況に、頭が痛くなる。

 

「!ミニリュウ!後方回避!」

 

「フゥ!」

 

ゾロアークが繰り出した『きりさく』をすんでのところで回避するミニリュウ。エンテイ(ゾロアーク)の前足が地面にめり込む。

 

「!?」

 

「!フゥ!」

 

「ガァァァ!!」

 

しかし、ゾロアークはそのまま地面ごと前足を振り抜き、道路のアスファルトや下の地面をミニリュウに向けてぶちまける。

視界を塞がれたことで一瞬動きが止まったミニリュウへ、ゾロアークが死角を縫うように接近する。

 

「まずっ!?ミニリュウ!」

 

ミニリュウがワタルの声に反応し下がろうとするが、すでにゾロアークは目前。

 

(しまった!ミニリュウ!)

 

思わずミニリュウへ手を伸ばすワタル。まさにゾロアークの一撃がミニリュウに入ろうとしているその時。

 

「「『たいあたり』!」」

 

「!?」

 

ワタルの後ろから声がする。ゾロアークの横から、ポケモンが二匹突っ込んできて、ゾロアークを怯ませる。

 

「『ちょうおんぱ』!」

 

追加で響いたその指示で、ゾロアークの上空から別のポケモンが不快な音波をぶつける。

 

「!?!?グ、ガァァァ?」

 

その音波を浴びた途端ふらつくゾロアーク。目の焦点があっておらず、どうやらこんらんしているようだった。エンテイの姿だった体が少しずつ、ゾロアーク本来の姿へと戻っていく。

ワタルが驚いて後ろを見ると、ちょうど車から3人の男が降りてくるところだった。

 

「遅いぞタケシ!ギリギリだ!」

 

「んな無茶なこと頼んどいてそれですか!?初めてだったんですよ、ポケモンのゲット!」

 

「すげー、マジで戦ってる!」

 

「いけーコロ!ぶちかませー!」

 

降りてきたうちの2人は、見たことのないまだ大学生くらいの男だった。運転席からは、タケシがやけにやつれた顔で這い出てくる。

 

「あんたらは・・・」

 

「おっ、釣り師ニキでしょ?どもー、俺一応うみちゃんリスナーの1人です!スレの方だけですけど、チャラ男って言われてました!あそこにいるコラッタのパートナーっす!よろしくっす!」

 

そう言って元気に手を取りブンブン上下させるのは、快活そうな表情にやや天然パーマ気味の男だった。もう1人、やや大人びた風なメガネをかけた男も、ワタルの前に立ちお辞儀する。

 

「どうも、同じくうみちゃんリスナーで、あそこのガーディ・・・コロのパートナーです。農家ニキって呼ばれてるって言えば分かりますか?」

 

「あっ・・・!」

 

メガネの方に見覚えがあるな、と思っていたワタルはその自己紹介で納得する。しかし一体なんでポケモンを、と思っているとキョウがやってきてニヤリと笑う。

 

「こちらでも一応2個だけはボールを確保していたんだよ。本当は俺とタケシで使いたかったんだが、俺は俺で動く必要もあったしな。タケシにうみちゃんの配信に来ていた人間を厳選させてボールを渡して、人員を増やしたのさ。・・・ポケモンを扱える人間は多いほうがいいからな」

 

そんな風に話していると、ゾロアークがこんらんから復活する。元の姿に戻ったゾロアークは、怒りの形相で四匹を見る。

 

「・・・そういうことなら、力を借ります」

 

「よっしゃー!いけコラッタ!」

 

「コロー!怪我しないようになー!」

 

「えーと・・・よくわからんがコウモリ!気張れ!」

 

それぞれのパートナーの声に、やる気満々でゾロアークを睨む四匹・・・いや、コウモリと呼ばれた『ズバット』だけは不服そうだ。

 

「・・・グアァァァァァァ!」

 

「来たぞ!」

 

「おっしゃー!コラッタ、『たいあたり』!」

 

「あ、バカ!」

 

突っ込んできたゾロアークに、意気揚々とたいあたりを指示するチャラ男。しかし、馬鹿正直な前からの突進にあたるほどゾロアークもバカではなく、突っ込んできたコラッタをむんずとひっ掴み、ポーイと放り投げてしまう。

 

「コラッター!?」

 

「そりゃそうなるだろ・・・」

 

「コロ、ええと、そうだ!火吹いて近づかせるな!」

 

農家ニキの指示で『ひのこ』を放つコロ。しかし、今度はそのまま火に突っ込んできて、コロの首元を地面に押さえつけられてしまう。

 

「ギャン!?」

 

「コロ!」

 

「くそっ・・・!ミニリュウ、『たたきつける』!」

 

「コウモリ、『ちょうおんぱ』!」

 

なんとか助けようと、パートナーに指示を出すワタルとタケシ。しかし、ゾロアークは迫り来る二匹を見ると、すぐにコロをつかみ、ミニリュウに向けてぶん投げる。

 

「フォ!?」

 

「ガゥ!?」

 

慌てて急制動するミニリュウだったが、コロは空中ゆえ止まれず、ミニリュウも避けきれず互いに激突してしまう。ズバットに至っては、ちょうおんぱが外れ、ゾロアークに蹴っ飛ばされる。

 

「ズバッ!?」

 

「お、おい!コウモリ!」

 

「くそ・・・数は増えたのに、抑えられなくなってる・・・!」

 

ゆっくりとこちらに向かってくるゾロアークに、冷や汗を流すワタル。

連携不足というのもあったが、それぞれのポケモンのコンディションも影響していた。捕獲の際に散々暴れており、捕獲時には体力もスタミナも消耗していたコラッタとズバット。殆どの間一匹でゾロアークを相手取っていたことですでに限界が近いミニリュウ。飼い犬だった頃から温厚な性格だったこともあり、どこか闘争心が弱いガーディ。四匹ともが、何かしらの不具合や欠点を抱えていた。

 

一方のゾロアークも、内心ではかなり四匹に苦戦していた。ミニリュウに関してはゾロアークと練度の差があるにもかかわらず渡り合い、他の三匹も、ミニリュウ以下の実力とはいえ数の利はあちらにある。我が子を探すためにも体力をあまり消耗したくないゾロアークとしては、可能であればすぐに逃げ出したい状況であった。

 

「グァァァァァ!!」

 

「まずい、来るぞ!」

 

ふらつく四匹に、早く決着をつけようと襲いかかるゾロアーク。鋭い爪での一撃がミニリュウへと迫り、今度こそ絶体絶命、というその時だった。

 

「・・・!」

 

「ミニリュウ・・・!」

 

ミニリュウとゾロアークの間に、上空から物凄い勢いでなにかが飛来し、ゾロアークの爪を受け止める。

 

「!?」

 

「あれは・・・!」

 

ゾロアークはその相手に目を見張った。ゾロアークの爪を止めたそのポケモンは、全体的に丸いフォルムであり、赤と青のみの非生物的な配色をしていた。ヒラ麺のようになった腕を交差し、そこから半透明の膜を形成している。

ワタル達は、そのポケモンの背後に立っている者を見る。例によって赤いジャンパーにジーンズ。黄色いリュックを背負い、赤い野球帽を被ったその人物は、振り返ると儚くも何処か幻想的な笑みをふわりと浮かべる。

 

「ありがとうございます。もう大丈夫です・・・私が来ました」

 

ワタルとキョウはその少女の登場にニヤリと笑い、チャラ男とタケシは外人4コマのごとく腕を上げ喜び、農家ニキはぽかんと口を開けている。

そんな大人達の様子を見て微笑みを苦笑に変えつつ、少女・・・うみは、ゾロアークに向き直るのだった。

 

「さて・・・ゾロアーク」

 

「・・・っ!」

 

デオキシスディフェンスフォルムを挟んでゾロアークと向かい合い、話しかけるうみ。得体の知れない少女と、明らかに強者の雰囲気を纏うデオキシスに警戒するゾロアーク。しかし、次のうみの言葉に耳を疑う。

 

「あなたの子ども・・・ゾロアを連れてきたよ」

 

「・・・!?!?」

 

思わず力を込めていた腕を下ろし呆然とうみを見るゾロアーク。動きが止まったことで展開していた『まもる』を解くデオキシス。

デオキシスが一歩退くと、刺激しないようゆっくりとゾロアークへと近づくうみ。その様子を見て思わず止めようとするキョウ達だったが、そんな男達を手で制するうみ。ゾロアークの前まで来ると、そのまま背負っていたリュックを下ろし、ジッパーを開ける。

 

「・・・プハッ、キャン!」

 

「・・・!ガ、グァ・・・」

 

そこから出て来たのは、あまりにもスピードが出すぎて落ちそうになったのでリュック内に入っていたゾロアだった。出てくるとともにゾロアークを見とめると、嬉しさから一声鳴く。ゾロアを見たゾロアークは、手を前に出し、口をわななかせながらゆっくりと膝をつく。

 

『まぁ・・・まぁ・・・!』

 

「グァァァァァ!」

 

感極まり、ゾロアークへと走り寄るゾロア。ゾロアークも、手を広げそれを受け止め、二度と離さないと言わんばかりにぎゅっと抱きしめる。二匹の目には、うっすらと涙も浮かんでいた。

二匹は、離れていた時間を埋めるかのように、しばらくの間涙を流しつつ抱き合っているのだった。

 

 

 

 

そんな二匹を、美しいものを見るような優しい目で見守っていたうみ。今はそっとしておいてあげよう、とゆっくりと静かにキョウ達の元へと向かう。

 

「・・・すいません、遅くなっちゃって」

 

「いや、むしろ迅速だったと言えるだろう。何にせよ、これで解決だ」

 

「ほんどによがっだよ〜!いいがぞぐだばぁ〜!」

 

「うぉぉぉ、感動っす!泣けてくるっす!」

 

「・・・お前ら少し静かにできないのかよ・・・」

 

「まぁまぁ。・・・にしても良かったです。ちゃんと家族に会えたようで」

 

ゾロアーク達の姿を見て感動し、滂沱の涙を流すタケシとチャラ男。そんな2人を見て少し引いているが、否定はしないワタル。コロというポケモンの家族を持つが故に、二匹が出会えたことを純粋に嬉しく思う農家ニキ。それぞれの感想を持ちつつ二匹を見守るのだった。

 

「・・・でも、この後どうすればいいんでしょう」

 

「・・・幸いと言っていいのか、マスコミは現在周囲にいない。今のうちにあの二匹を保護し、人目につかぬよう森に返すことができればいいんだが」

 

「でも、被害は結構出てますよね?流石にこのままお咎めなし、は難しいかと」

 

「そんな!なんとかならないっすか!?」

 

ゾロアはともかく、ゾロアークは区内にて暴れすぎた。炎による被害は幻影だったので実質ゼロと言っていいが、パニックによって発生した事故や人身事故に関しては言い逃れできない。

ゾロアーク達に対する同情はあるものの、しっかりと罰は与えるべきである。しかし、ポケモンによる被害を裁く法もなければ、そもそもゾロアークには責任を負うパートナーがいない。どうしよう、と悩む大人達の中で、うみがはいっと手をあげる。

 

「・・・一つ、提案があるんですが」

 

「なにかな?」

 

「あの二匹を、うちで保護してはダメでしょうか?」

 

「「「「「・・・え?」」」」」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

太平洋・日本近海。デオキシスの気配を感じ日本へと迫る緑の龍・・・レックウザは、別の気配を感じ洋上で停止していた。海面をじっと睨みつけるレックウザ。

 

「・・・GURUAAA!!」

 

何かに反応したのか、口を開き、『はかいこうせん』を海面に向け打ち込む。海面に命中したはかいこうせんは、激しい水しぶきを起こし、海面に白い水滴の壁ができる。

 

「ーーーーーーー」

 

と、そのしぶきを突き破り、ポケモンが姿をあらわす。そのポケモンは白い体に、先が手のようになった翼を持ち、背中には青い三対のフィンのようなもの。

まさに白い翼竜とも言えるそのポケモンは、レックウザへとテレパシーを送る。

 

『落ち着くのだ。貴方の持つその怒りはただの八つ当たりに過ぎない』

 

「GURUAAAAAA!!」

 

『いけない。「あの子」に手を出すということの意味を分かっているのか』

 

必死に説得するポケモン・・・ルギア。しかし、レックウザは意に介さず、怒りをルギアにすら向ける。

 

「GURUAAAAAA!!」

 

ついにしびれを切らしたレックウザは、そこを退け、と言わんばかりにはかいこうせんを放つ。ルギアはそれを躱し、海中へと潜りフィンを畳むと、自身の周りに海流を纏いながら飛び出し、レックウザへと迫る。

 

「ーーーーーーー!」

 

「GURUAAAAAAーーー!!」

 

迎え撃つレックウザも、『げきりん』を発動し真っ向からぶつかる。二匹のぶつかり合いにより海流は乱れ、周囲に嵐が発生する。付近の海中にいた生物達は皆より深く、もしくはより遠くへと逃げ出す。

二匹は互いにブレス技を撃ち合い、体をぶつけ合う。レックウザがその長い体を活かしてルギアに巻きつこうとすれば、ルギアはそれを身軽に躱し、海中から水の柱を生み出しレックウザを飲み込む。しかしレックウザはそれを素の力だけで振り払うと、ルギアへと襲いかかる。

 

『どうしても退かないというのか・・・!』

 

「GURUAAAAAA!!」

 

ルギアはなおも説得を続けるが、レックウザは止まらない。しばらくの間二匹の攻防が続く。と、業を煮やしたレックウザが無理やりルギアへと迫る。ルギアのブレス技が直撃するも、御構い無しに接近するレックウザ。ルギアの目前まで迫り、口を開き至近距離での一撃を狙うレックウザ。

すると、突如海面と上空からブレスが飛来する。どちらもレックウザへと直撃し、たまらず後退するレックウザ。爆煙を振り払い不届き者を睨むレックウザ。

 

「ーーーーーーーーーーーーー」

 

海面から浮上してきたのは、海を作ったとされる伝説のポケモンーーーカイオーガ。青いその巨体に見合わないジャンプを決め、レックウザへと襲いかかる。それを躱したレックウザだったが、今度は上空からエネルギー弾が襲いかかる。

 

「GURUAAAAAA!!」

 

「GAGYAGYAAAAAAーー!!」

 

上空を見上げたレックウザ。そこには、空間を切り裂き飛んでくるパルキアの姿があった。

パルキアは両手にエネルギーを集中させ、『きあいだま』を放つ。レックウザはそれを避けるが、今度はルギアが自身の奥の手である『エアロブラスト』を放つ。

三体の伝説の猛攻に、流石に分が悪いと悟ったレックウザは、置き土産とばかりに『りゅうせいぐん』を放ち、縄張りへと帰って行くのだった。三匹はそれぞれにそれに対応し、気づくとレックウザは遠くの空へと消えていた。

 

 

『・・・やれやれ、どうにかなったか』

 

ふぅ、とため息をつくルギア。事が済み、カイオーガは海の底へと戻って行く。

パルキアも、一瞬だけ日本の方角を見て、直ぐに空間を開き自身の世界へと戻って行く。

1匹残ったルギアは、日本へと向き、微笑む。

 

『・・・さて、これからどうなることか』

 

そう呟くと、ルギアも深海の底へと戻って行くのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「・・・では、例の『〇〇区炎上事件』に関する君の報告を聞こうか」

 

事件から数日後、事後処理等がある程度終わり、キョウは報告書を持って警察上層部・・・トップである警視総監の元を訪れていた。

 

 

「は!数日前発生した〇〇区における謎の未確認生物、仮称ポケモンによる火災事件について報告します。現在確認されるだけで、およそ120件ほどの事故・および建物の倒壊を確認しております。それらに関する対応は、現在進行中です」

 

「・・・それで、今回の件に関わったという民間人については?」

 

「現在、我々外来種対策課にて保護しております」

 

「・・・暴れたというポケモンについては?」

 

「残念ながら、ポケモンは逃走。今のところ足取りはつかめておりません」

 

「・・・報告ご苦労、あとは書類にて確認する」

 

「はっ」

 

敬礼し、部屋を立ち去るキョウ。ドアノブに手をかけたところで、警視総監が呟く。

 

「ポケモンとは、なんだと思うね」

 

その呟きに、キョウは一瞬の間の後、答える。

 

「自分は、人と寄り添う隣人であると考えます」

 

「・・・そうか」

 

そう言って黙る警視総監。もう言うことはないと判断し、部屋を出る。1人となった部屋の中で、警視総監は窓の外をじっと眺めているのだった。

 

 

 

 

「お疲れーっす。どーでした?」

 

対策課の部屋へと戻ってきたキョウに、机でパソコンに向かいながら声をかけるタケシ。

 

「なんとも言えんな。・・・お前のポケモンはどうした?」

 

タケシが捕まえたはずのズバットが見当たらず尋ねるキョウ。ぶすっとした表情で、タケシは部屋の隅を指差す。タケシの指差す先では、対策課のメンバーにひたすら弄られるズバットがいた。

 

「へぇー、これがポケモンかぁ」

 

「話では聞いてたけど、本当に普通のコウモリとは違うのね」

 

「目とかないんだな。やっぱ超音波で周囲を見て飛ぶのか」

 

「ズッ、ズバッズバッ」

 

ズバットの周りを囲むようにして集まり、頭を撫でたり全体を眺めている職員。ズバットは眠たいのか、少し嫌そうにしている。

 

「・・・なんだあれは」

 

「ポケモンを見るのが初めてですからね。そりゃああなりますよ。はぁ〜まったく、あいつには女が寄ってくるのに、なんで俺には・・・」

 

ブツブツと呪詛を垂れ流すタケシを見てため息をつくキョウ。ふと、タケシのパソコンの画面を見る。

 

「それは何を見てるんだ?」

 

「あっ、そうだそうだ、見てくださいよこれ」

 

そう言って横にずれるタケシに変わりパソコンの前に座るキョウ。画面に映し出されたものを見て一瞬驚き、次いで微笑ましそうに笑う。

 

「なるほどな。うみちゃんからか?」

 

「ええ。これが見れたんなら、報告書の偽造もやった価値がありますよ」

 

「・・・通常の報告でやったらただじゃおかんぞ」

 

「いや分かってますって!」

 

そう言って言い合う2人。パソコンには、うみからのメールと、それに添付されていた幸せそうに寄り添って丸まり眠るゾロアとゾロアークを写した写真画像が表示されているのだった。




唐突な登場人物紹介ィ!(ポケモン持ち編)
ワタル
通称釣り師ニキ。うみちゃんの配信の古参視聴者。ある日ミニリュウを拾った事で色々とあり、ポケモン持ちとなった。ちなみに所持しているミニリュウは6V。バトルに関しては初心者であるが、指示は結構的確。基本大人な性格だが、釣りをすると性格が修造になる。

農家ニキ
飼っていた犬がきのみを食べた事でポケモンとなった。うみちゃん以外のポケモン持ちの中で一番信頼関係が築けている人。メガネ野郎。

チャラ男
うみちゃんリスナーの中からタケシの独断と偏見でもって選ばれた男。言動は軽いが口は堅い。所持しているコラッタは現在のポケモン持ちの中で最弱。

タケシ
皆さんご存知変態警察ニキ。この度晴れてポケモン持ちとなったが、信頼関係については微妙。電子戦に強く、スレ民や配信を見る者からうみちゃんへの悪影響がある者を容赦なくBANする。

うみちゃん家のポケモン事情
デオキシス
今回初登場なのにうみちゃんを運んでゾロアークの一撃を受け止めただけで終わった不憫な子。何考えてるかよくわからないが、そのうねる触手で様々な家事をこなす。

ミロカロス(ミロ)
ヤンデレさん。♀。うみちゃん以外の人間はおろか、ポケモンですら邪魔扱いする。ライなどのパソコン組に関しては問題なく接する。美しい見た目からは想像できないくらいドスの利いた声を出す事がある。基本脳筋である。

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