TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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どーも、24話です
最近牛丼にハマり、すき家のキングサイズを3個食べるという学生テンションで片付けて良いか迷う早食いを友人と勝負しました。完食40分でした。
おかげで昨日は死にそうでした(´・ω・`)
皆さん、食べ物は適度に食べましょう。


第24話

森の中に立つ廃墟と化した別荘へとやってきたうみ。中に入り、物音の原因を確かめるため奥へと進んでいた。

 

「ここは・・・」

 

廊下の突き当りのドアを開けると、そこはまるで中世の世界に入り込んだかのような豪奢な部屋だった。長いテーブルに燭台が等間隔で置かれ、上座の後ろには立派な暖炉がある。

 

「貴族みたいな暮らしでもしてたのかな・・・にしてもこれは流石にどうなんだ?」

 

 

テーブルを撫でながらうみは困惑する。テーブルクロスの敷かれた机には、埃もチリもなく、すぐにでも使えるような状態だった。

 

「・・・次に行こう」

 

食堂を抜け、先に進む。ドアを開けると、すぐに廊下があり、またしても蝋燭で照らされ、不気味な雰囲気ながらも先が見えるようになっていた。

 

「ライ、何か感じる?」

 

「ライ・・・」

 

横を歩くライに尋ねるも、申し訳なさげに首を振るライ。

 

『なんか結構綺麗だな』『これ本当に廃墟か?』『実はだれか住んでるとかじゃね?』

 

「個人的に調べた範囲の話ですが・・・ここは10年ほど前から買い手もおらず完全に放置されています」

 

そう言って廊下の中程まで歩いた時だった。軋むような音を立て、前方のドアがゆっくりと開く。

息を飲むうみと警戒心を強めるライ。一方のコメント欄は、阿鼻叫喚だった。

 

『!?』『気のせいだよな?今勝手に開いたが』『ハハハ、やっぱいるんじゃん誰か。なぁそうだろ?そうだと言って・・・』『こ、こんな配信見てられるか!俺はコロと戯れてくる!』『農家ニキェ・・・』『まぁ、いい奴だったよ』

 

「・・・行きましょう」

 

ゆっくりと近づき、開いたドアの向こうへと行くうみ。するとそこには、立派なソファと、大理石の彫刻や何やら高そうな絵画の飾られた部屋があった。

 

「ここは・・・見た感じ応接室のようなものですかね」

 

『やっぱここも綺麗なのな』『なぁ、ここまできたら流石におかしいと思うんだが、これ本当にヤラセとかドッキリとかではないんだよな?』『ばっかやろうお前、うみちゃんがそんなことするわけねぇだろ』『だよなー。そもそも俺らにドッキリ仕掛けたところでって話だし』

 

「はい、まぁヤラセじゃないです。実際見に来たのは初めてですが、まさかここまで綺麗なままとは思いませんでしたけど」

 

(ドッキリ・・・っぽいことはしようとしてるからなんとも言えないけど)

 

応接室の中に入り、一通り周囲を見渡した時。

 

「っ、びっくりした・・・」

 

『うぉぉぉぉぇぇぇぁぁぁぁ!?』『おいうみちゃんドア閉まったぞ!?』『幽霊に閉じ込められた!?』

 

流石に急に閉まる扉に驚くうみ。コメントが慌てているが、それを見てキョトンとするうみ。

 

「?でもライが居るから最悪の場合ぶち壊せば出れますよ?」

 

「ライ!」

 

『あ』『あ』『あ』『あ』『あ』

 

コメントが「あ」で埋まる。そんなくだらない事をしつつ応接室を調べていると、ライが何かを見つける。

 

「ライ!」

 

「どうした?・・・これは」

 

『なんだなんだ?』『写真立てか』『見えね』『うみちゃん何が写ってる?』

 

ライが持ってきたのは相当古くなった木製の写真立てだった。そこに写っていたのは、ベッドの上で微笑む少女と、家族と思われる男女二人と男の子だった。少女は笑っているが、他の人達は何故か笑いつつも泣いているような表情だ。

 

「ここに住んでいた人でしょう。でもなんでこんな写真が残っているんでしょう?」

 

『何らかの理由で持って行けなかったとか?』『夜逃げとか?』『こんなでかい家住んでて夜逃げとかある?』『そもそも家族写真って人にもよるけどかなり大事なものの部類に入らね?』

 

コメント欄でも色々と考えられているが、全く見当もつかない。

 

「・・・とにかく後にしましょう。このまま考えていてもらちがあきませんし」

 

そう言って写真立てを目の前にあったテーブルの上に置き、カメラを持ち直す。

 

『・・・で・・・おい・・・で』

 

「!」

 

立ち上がった瞬間、背後から聞こえたか細い声に驚き、振り向きながらバックステップで距離を取る。そこには誰もおらず、先程と変わらない室内が広がるのみだった。

 

『うみちゃんどした?』『なんかあったっぽい?』『幽霊か!?』

 

(・・・視聴者には聞こえていない。映像越しでは気づけないのか、小さすぎて声がカメラに入ってないか。それよりも・・・)

 

うみは頬を伝う嫌な汗を拭いながら、入ってきたドアの対面にあるドアへと向かう。

ノブを回すが、ドアが開く様子はない。

 

「・・・ここは開きませんね。一旦玄関前まで戻りましょうか」

 

『ありゃ』『壊していくのかと思ったわ』『まぁ最終手段って言ってたし?』『それよりこんな廃墟を夜に探索できるうみちゃんのつよつよメンタル俺も欲しいわ・・・』

 

そうして、玄関前まで戻ってきたうみ。そこで立ち止まると、真剣な表情で息を吐く。

 

「・・・どう思いますか?」

 

『これは・・・』『まずいですよ!?』『いやぁぁぁ増えてるぅぅぅぅ!』

 

うみが見下ろす先には、自身が入ってきたときについた靴の泥跡。その横には、入ってきたときにはなかった靴跡が増えており、またなにかの動物が通った足跡までできていた。

 

「・・・二階に行きましょう。やはりここには何かあります」

 

『やはり・・・?』『いやぁぁぁ幽霊いやぁぁぁぁぁ』『まじでやばくなってきたなこの配信!』

 

軋む階段を気をつけながら登るうみ。二階に上がるとまず見えたのは、二つのドア。そして、突き当たりを曲がると今度は他のドアよりもだいぶチープなドアがあった。そのドアだけは、なぜかピンク色であり、小さな木の看板が垂れ下がっている。

 

「・・・『ゆかのへや』、ですか」

 

『ゆかってあれか、写真にいた・・・』『ああ、あの幸薄そうな美人の女性か』『ちげーだろうが。ベッドで微笑んでた少女の方だろJK』『ワイトもそう思います』『さまよえる亡者はそう思いません』『お前ら出てくると本当に亡霊出てきそうで怖いから来ないで』『ワイトキングもそう思います』『カエレ!』

 

「・・・とりあえずまずは手前の部屋から調べてみましょう」

 

そう言ってうみが振り返ったときだった。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・!?な!?」

 

『出たぁぁぁぁぁ!!』『まじか!?』『二体いるぅぅ!?』

 

階段を上がりきったところ、廊下の向こうに、二人の男が立っていた。無表情で、感情の見えない瞳がこちらを凝視している。

 

「だ、誰でしょうか?この別荘の管理者でしょうか?」

 

万が一、一般人であった場合のために一応確認をするうみ。ライもまだ電撃を放つ寸前で止まっている。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・何か言ってくれるとありがたいんですが」

 

うみが、黙り続ける二人の男にそう言うと、男たちが突如笑い始める。

 

「ハハハッ、アハハハッ、あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

「ヒヒ、ヒィーッヒッヒッヒ!!!!」

 

『アババババ』『どう見ても狂人ですありがとうございました』『いや幽霊やろがい!』

 

視聴者も大騒ぎで、皆一様に『逃げろ!』とコメントしている。そんな中、うみは二人の背後にいた存在に気づいた。

紫の靄に覆われた球体の体に、目つきの悪い顔がついたポケモン。隣には同じく紫色をした宙に浮く両手と、よりおばけに近い形となった体を持つポケモン。

 

「!見えた!ゴース!ゴースト!」

 

『ゴースト?』『開眼!』『命燃やしてそう』『ポケモンだったのか!』

 

男達の背後にいる二匹ーーーゴースとゴーストは、ケラケラと笑いながら謎の靄を放っている。それに包まれると、男達はいきなりうみに向けて襲いかかってきた。

 

「「うがぁぁぁぁ!」」

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

ライが咄嗟に電撃を放とうとするが、ゴース達までの距離が遠い上に、廊下を走ってくる男達が絶妙に邪魔をして、狙いが定まらない。これはダメだ、と判断したうみはライを連れ走り出す。

 

『にげてー!』『不味いってこれ!』『どーなってんの!?あれ本物の人じゃんか!?』

 

残念ながらコメントを拾う暇はない。急いで近場のドアに飛び込むと、内鍵を閉めようとする。

 

「・・・くっそ、鍵が壊れてる!」

 

しかし運の悪いことに、その部屋の鍵は壊れ、施錠できない状態であった。

 

「どうしよう・・・うわっぷ!?」

 

慌てて右往左往していたうみの腕を、何かが掴む。そのまま引っ張られたうみは、タンスの中に引き込まれ口を塞がれる。

 

「むーっ、むーっ!」

 

「しっ、うみちゃん、俺だ」

 

捕まったことでパニックになり、逃げ出そうともがくうみ。すると、聞き覚えのある声がする。落ち着いて見上げると、そこにいたのはキョウだった。

 

「キョウさん!?どうしてここに?」

 

「それは・・・!静かに、奴らがくる」

 

い二人が息を潜めたタイミングで、ゴース達に操られた男達がドアを蹴破って入ってくる。

 

「あー」

 

「うー」

 

(たのむ・・・!そのまま行ってくれ・・・!)

 

必死に息を潜める二人。すると男の一人がうみ達の隠れるタンスへと近づく。

 

(・・・!)

 

男がタンスの取っ手に手をかけ、うみをかばいながらキョウが体当たりする準備をした時だった。

 

『こっちだ変態!』『うみちゃんに手を出すな!』『児ポ法で捕まれ!』『お前のかーちゃんでべそ!』『しょーもないな!?』『ちくわ大明神絵巻』『だれ・・・なんだ今の!?』

 

キョウに引っ張られたタイミングで落としたスマホから、コメントの読み上げが聞こえる。

それを聞いた男達は、タンスを離れスマホを拾うと、どこかへと行ってしまった。

 

「・・・ふぅ、もういいだろう」

 

「あの・・・ありがとうございます。でも、なんでキョウさんが?」

 

タンスを出て、まずお礼を言ううみ。うみの質問に顔をしかめたキョウは、軽くうみを小突く。

 

「いたっ!」

 

「なんでじゃないだろう。全く危険なことをして」

 

「うぅ・・・すいません・・・」

 

自分に非があることを自覚しているうみはすぐに謝る。キョウもそこまで説教をするでもなく、よし、と頷く。

 

「俺が来たのはうみちゃんを迎えに来ただけだよ。それで玄関に入ったところで、あの様子がおかしい二人組に出くわしてね。残念なことに銃を車においてきていたもんで、仕方なくここに隠れていたってわけだ」

 

「なるほど・・・」

 

「それで、ここにポケモンは居たのかい?」

 

説明を終え、うみへと尋ねるキョウ。うみは頷くと、眉をハの字にする。

 

「はい、ゴース・ゴーストという、かなり危険な部類のポケモンを確認しました。・・・でも、なんであんな回りくどいことをしているんでしょう?」

 

「回りくどい?」

 

はい、と言いながらうみはドアの向こうを探る。

 

「そのポケモンは人間を操っているんだろう?ならそれは相当危険じゃないか。回りくどいも何もないと思うが」

 

「ええ、でもあのポケモン達なら、そんなことをしなくても人を殺すことができるんです」

 

「なんだと・・・?」

 

予想外の言葉に驚くキョウ。ドアを開け、外が安全なことを確認するとライを先頭にして廊下へと出る。

 

「でもあの二匹は男達を殺すわけでもなく、操ってこちらを襲わせています。・・・どうしてそんなことをしているのかは分かりませんが、少なくとも俺たちへの危害の意志だけはあるみたいです」

 

「・・・とにかく、ひとまずここを出るべきだろう。一階へ向かうぞ」

 

そう言って歩き出すキョウをうみが止める。

 

「待ってください。俺は、まだ帰れません。あのポケモン達がなぜ人を襲っているのか、それを調べるためにここへきたんです!」

 

「だめだ。どんな理由があれ、まずは此処を出るべきだろう」

 

そう言うキョウに、ですが、となおも食い下がろうとするうみ。すると、耳をピンと立て、ライが奥へ向かって走り出す。

 

「!ライ!?待って!」

 

「あ、おい!?・・・くそっ、しょうがないか・・・!」

 

ライを追いかけるうみを、諦めてついていくことにして追うキョウ。

ライは階段ではなく二階の奥へと進む。そこには最初に確認したピンクの部屋があった。

 

「ライ!待って!」

 

ライはそのままそのドアを蹴り飛ばし、中へと入る。慌ててうみとキョウも入り、驚愕した。

 

「・・・なんだここは?」

 

「ありえない・・・他の場所以上に劣化がない・・・」

 

そこは、見るからに女の子と言った趣味の部屋だった。置かれている小物は少し前の流行りものばかりだったが、それ以上に驚いたのは、建物自体は経年劣化で朽ち始めていたのに、この部屋だけはまるで今なお住み続けているかのように綺麗だった。

 

「これまで見てきた場所も大体は劣化が少なかったが・・・これは不自然すぎる!」

 

キョウもタンスやその横に飾られていた花瓶などを触りつつおどろきの声を上げる。一方のうみは、ある場所を凝視して動かない。

 

「・・・うみちゃん?・・・っ!?」

 

うみの見ている方を向き、キョウはこの廃墟に来て一番の驚きを表した。

 

 

そこにあったのは、白骨死体だった。すでに死んで何年も経つだろうそれは、骨となっている以外に劣化が見られず、なおかつ綺麗な服を着せられ、手にはぬいぐるみを持たされている。ベッドの上で眠るように安置されているそれは、ひどく異質で、それでいて不可侵の領域のように思えた。

 

その異常な光景を目の当たりにし、二人とも言葉を発せない。と、うみがゆっくりと歩き出し、そっとベッドの横にある椅子に座る。

 

「!・・・キョウさん」

 

「!」

 

うみがふと横の机に目をやり、あるものを手に取る。呼ばれたキョウが近づき、手袋を素早く装備し手に取る。

 

「・・・日記のようだ。おそらくこの白骨死体の子の物だろう」

 

そう言って少しずつページを開き、読み進める。

 

『〇〇月〇〇日

私のせいでお父さんお母さん、それに弟にまで迷惑をかけてしまっている。そんな私自身が許せない。でもみんなが私を治そうとしているのに、私がそれを諦めるわけにはいかない。頑張るのよ私』

 

『〇〇月〇〇日

今日は片目が見えなくなった。白く濁った目玉を鏡で見てしまい、悲鳴をあげてしまった。みんなが慌てて私の元へとやってきて、ずっと看病してくれる。

 

ごめんなさい。こんな子に生まれてごめんなさい』

 

『〇〇月〇〇日

両目が見えなくなって一ヶ月。とうとう耳までもが聞こえなくなった。家族の声まで届かなくなるなんて。もう嫌だ、死にたい。これを書かせている代筆のメイドが体にすがるけれど、私にはもうその声が届かない』

 

『〇〇月〇〇日

ーーーーーーーどうしてーーーーーもうやだ

ーーーーーごめんなさいーーーーーごめんなさい』

 

『〇〇月〇〇日

弟がとても素敵なものを教えてくれた。点字というもので、これを使えばまたみんなとお話ができる。初めてお母さんに試した時、一緒にお話をした。とても嬉しかった。弟に感謝したし、また希望が持てた。ありがとうと言ったら、「何があっても守るから。みんなで姉様を守るから」と点字で言ってくれた』

 

『〇〇月〇〇日

今度は声が出なくなった。その次に指先の感覚が消えたらしい。もうみんなからのこえも言葉も聞こえない。暗いところに行ってしまい、わたしから話しかけることしかできない。唯一出来るのは、まだそばにいるか確認することだけ。

 

 

 

 

みんないる?』

 

『〇〇月〇〇日

 

みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな』

 

『〇〇月〇〇日

これでみんないっしょだ。わたしもお母さんもお父さんも。わたしが頑張るから、みんなで一緒に。みんながいるのなら、わたしが一緒にしてあげるから』

 

 

「・・・大体わかってきたな」

 

「いや、なんかだいぶホラーだったんですけど・・・」

 

日記を読み終わり、何事もなかったかのように閉じるキョウにドン引きしながら「いやいや」と手を振るうみ。

そんなうみを気にせず、いきなりキョウは布団をめくった。

 

「うわっ、何してるんです・・・か」

 

そこには、見えていた白骨死体だけでなく、無数の人の骨が乱雑に詰め込まれていた。その山を凝視しつつ何かを考えているキョウ。

 

「うみちゃんはどこまで分かっている?」

 

「え?あ、いえ、おそらくこの子が日記の主で、だんだんと病気で体の機能が低下していって発狂して、最後には病気と最後まで戦う決意をしたってことしか・・・」

 

「ふむ・・・少し違うな。おそらくこの日記、途中で書いた者が変わっている」

 

「え!?」

 

思わず日記を受け取り読み直すうみ。

そんなうみを見つつ、キョウは悲しげな表情を浮かべる。

 

「うみちゃん。ゴーストタイプのポケモンというのは、ひょっとして幽霊的側面もあるのかな?」

 

「え?あ、はい、一部のポケモンにはそういうのもあったと思います」

 

そうか、と言って頷くと、キョウは懐からボールを取り出す。

 

「・・・成仏させる、というのは難しいかも知れんが、やってみる価値はあるか」

 

「あ・・・それ、ひょっとして」

 

ニヤリと笑うと、キョウがボールを投げる。中から光が飛び出し、形を取り始める。

紫の炎を灯した溶けかけのロウソクのような姿のそのポケモンは、うみとキョウを見ると、「ヨッ」と言うように手をあげる。

 

「最近俺にもポケモンが必要ということで適当に捕まえたんだが、どうだ?」

 

キョウが振り向くと、物凄い近くで目をキラキラさせたうみがいてギョッとする。

 

「すごい!ヒトモシじゃないですか!最後まで進化させれば特殊タイプ一致『オーバーヒート』で全てを焼き尽くすこともできる子ですよ!」

 

興奮気味のうみに、自慢で見せたのに若干引いているキョウ。そ、そうか・・・とよく分からないながらもスルーする。

 

「それで、なんでこのタイミングでヒトモシを?」

 

「ああ、捕まえてしばらくした時に分かったんだが、こいつどうやら道案内をしてくれるみたいなんでな。ここの騒動の元凶の元まで連れて行ってもらおうと思ってな」

 

その言葉に若干グギギギ、と悔しそうなヒトモシ。

 

(・・・ひょっとして、ヒトモシとしては生命力を吸い取ろうとしてるのにキョウさんが色々と(心技体)強すぎてそれができてないから実質道案内しかしてないオチじゃ・・・)

 

ヒトモシの情報を思い出し、戦慄するうみ。まさかの可能性に、キョウだけは絶対に怒らせないようにせねば、と意思を固めたうみであった。

 

「さて、じゃあ行くか」

 

「行くって・・・目星とかはついてるんですか?」

 

うみの質問に、ニヤリとしながら答えるキョウ。

 

「ああ・・・この少女の弟の部屋。おそらくそこに元凶、もしくはそれに近づくヒントがあるはずだ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方、別荘の中に入っていたピカチュウ(擬き)は、のんきに廊下を歩いていた。

 

「あー」

 

「!」

 

と、前方からやってきたのはゴース達に操られた男。慌ててピカチュウ(擬き)は物陰に隠れる。男が通り過ぎ、一安心したピカチュウ()はそっと近くの部屋へと入り込む。

 

ドアを器用に閉め、ほっと一息つく。その後後ろを向くと、紫のシルエットが目に入る。

 

「ミュッ!?」

 

あまりの驚きに素の鳴き声が出てしまう。その鳴き声にゆっくりと振り返った紫の影は、ニタニタを笑いながらピカチュウ()を見る。

 

「ゲッゲッゲッゲッ!」

 

「!」

 

その笑いに身震いし、ピカチュウ()は逃げ出す。開け放たれたドアの向こう、逃げて行ったピカチュウ()を追いかける男達を見つつ笑う。

 

『侵入者・・・捕まえる・・・家族・・・守る・・・姉様・・・マモル』

 

長い夜の中、戦いの時が迫っていた。




頑張って1話に収めようと思ったら結局次回に持ち越すやーつ。うみちゃんの「破ァ!」が早く見たい方は脳内で巫女服姿のうみちゃんを思い浮かべて補完しといて下さい。多分明日の夜更新ですから。

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