TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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どーも、27話です。
取り敢えず第一章的なのがもうすぐ終わるのですが、章分けはしたほうがいいのだろうか・・・
そんなことを考えつつ文字数多め(当社比)で投稿(´・ω・`)


第27話

「おはよう。眠れたかい?」

 

廃墟でゴースを保護し、ジラーチを連れてキョウの車に乗っていたうみ。疲労感から眠気に襲われ意識を手放していたが、眼が覚めると対策課の部屋にいた。

 

「・・・ここは」

 

「外来種対策課の部屋さ。完全に寝てしまっていたし、距離的にも家よりこっちの方がいいかと思ってな」

 

キョウの言葉を聞きながら起き上がるうみ。外はすでに明るくなっており、朝日が窓から差し込む。

ふと、朝日に目を細めていると掛けられている毛布の中、お腹部分に違和感を感じる。毛布をバッと取り払うと、そこにはなんとジラーチがひっついたままスヤスヤと寝息をたてていた。

 

「・・・」

 

「・・・離そうとすると泣きながら首を振るんでな」

 

申し訳なさげにそう言うキョウに、大丈夫です、と答えながら立ち上がるうみ。ジラーチは全く離れずひしっとしがみつきながらぷうぷうと言っている。

 

「おっ、うみちゃん起きたか?」

 

「大丈夫だったか?大変だったらしいじゃないか」

 

「うぉぉ、なんか可愛いのがいるっすね!」

 

上からタケシ、ワタル、チャラ男である。農家ニキは家に帰ってしまったが、3人はうみ達の体験したことについて興味があり、キョウから話を聞いていたのだった。3人ともうみとうみにしがみついているジラーチを見ている。

 

「お騒がせしてすいません・・・自分が浅慮でした」

 

そう言って頭を下げるうみに、オロオロするチャラ男。しかしキョウとタケシ、そしてワタルはうんうんと頷いている。

 

「そうだな。もっと俺ら大人を頼ってもらいたいもんだ」

 

「ですねー。俺らだって一応はポケモンに関与する人間なんだしな」

 

「一般人寄りの俺だけど、ポケモン持ちの中ではうみちゃんの次くらいには役に立つと思うし、俺を頼るんでもいいぞ」

 

3人から滅多打ちにされしょげるうみ。散々言っている大人組だが、それでもうみが心配ゆえの言葉であることはうみも理解しているので、ぐうの音も出ない。

 

「ところでうみちゃん、申し訳ないんだが・・・」

 

言いづらそうにしているキョウの方を向くと、横に女性警官が一人立っている。

 

「キョウさん、その人は?」

 

うみの言葉にキョウが答えるより早く、敬礼する女性。

 

「アンズって言います。よろしくね、うみちゃん?」

 

快活に笑うアンズにとりあえず会釈するうみ。そんな女子二人の挨拶もそこそこに、キョウが用件を伝える。

 

「実は今うみちゃんが署にいることを知った警視総監・・・まぁ言うなれば警察のトップの人だな。その人が会いたいって言っててな・・・」

 

「つまり、ポケモンに関する説明ってことですね?」

 

「・・・ああ。流石、話が早くて助かる。しかし、まだ疲労が抜けてないんじゃないか・・・?」

 

心配げな大人組に微笑むうみ。

 

「いえ。大丈夫です。・・・ところでライは?」

 

その言葉にあー・・・という空気が流れ、部屋の隅の方を指差す。

 

「わぁー、可愛いー!」

 

「見てこれ、ほっぺプニプニよ」

 

「ほぉー、マジでこんな色なんだなぁ」

 

「あーあ、私もこんなポケモンだったら欲しいなぁ」

 

「・・・」

 

「あー・・・」

 

そこでは、ライが対策課の職員によってひたすらに観察され撫でられ続けていた。ライ自身は目が死んでおり物凄いうっとおしそうだが、どうやら手は出していないようだ。

 

「すまない・・・どうやらうちの職員は探究心というか好奇心というか・・・そう言ったところが強いみたいでな・・・」

 

「ズバットもやられてたしな」

 

「ミニリュウもな・・・」

 

遠い目でそう言う二人のパートナーは、反対側の部屋の隅でグッタリとしていた。散々撫でられてライもそろそろ怒りそうだ。

 

「とりあえずライに電撃やられたくなかったらそろそろ止めるべきなんですけど・・・」

 

「もしそうなってもあいつらの自業自得さ。それはともかく、とりあえず問題がないようならこれから警視総監の元へ行くとしよう」

 

そう言って歩き出したキョウだったが、アンズに腕を掴んで止められる。

 

「ちょおーっと待った!」

 

「・・・なんだ、アンズ」

 

鬱陶しそうに睨むキョウに、ビシッと指差しながらアンズが言う。

 

「あのね、折角の美人さんなのにこんな格好で人前に出す?普通」

 

「?どういうことですか?」

 

頭に?マークを浮かべるうみ。今のうみの格好は、上は無地のパーカー、下はジーンズ。廃墟へ向かった時の格好のままである。

 

「あのねぇ、昨日の夜から動き回った挙句着の身着のままとか、可哀想にもほどがあるでしょ!」

 

まくし立てるアンズに面食らううみとキョウ。キョウはともかく、うみまでも同じような反応をするため、アンズは怒り心頭だった。

 

「もういい!父さんは先行ってうみちゃんは遅くなるって伝えといて!私がうみちゃんの身支度するから!」

 

「え!?父さん!?」

 

驚愕の事実に驚くうみの手を引っ張り、アンズはズンズンと部屋を出て行くのだった。

 

「・・・キョウさんの娘さんだったんですね」

 

「・・・ああ。あんな性格なもんで手を焼いている」

 

そう言ってため息をつくキョウを、いつもとは真逆なことにタケシが慰めるように肩を叩くのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さあうみちゃん、着いたよ」

 

「こ、ここは・・・」

 

署を出て、アンズに連れられたうみがやってきたのは、服屋だった。問題なのは、そこがただの服屋ではなく女性物オンリーの服屋であった事だった。

 

(いやいやいやいや!?流石に風呂やトイレは慣れたし、家にあったワンピースとか水着も覚悟を決めたけどこれは流石に!?)

 

「あの〜、今持ち合わせ無いのでこのままでも・・・」

 

「それくらい私が出すわよ。遠慮しないでいいの!」

 

(なんであんたがそんなウキウキなんだよ!?)

 

上機嫌のアンズに引き摺られるようにして入店するうみ。

 

「いらっしゃ・・・!こちらなどいかがでしょう!?」

 

「早っ!?」

 

入店するやいなや高速で服を手にとって迫る店員。その目には「可愛い!着せ替えたい!」と出ている。

そのままうみは、アンズと店員の二人に試着室に放り込まれるのだった。ちなみにジラーチは、脱がされたうみのパーカーにくるまってスヤァしていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なんか随分長いっすね」

 

対策課の部屋でのんびりと待っていたワタル達。チャラ男の言葉にタケシがドヤ顔をする。

 

「あのなぁ、こういう準備ってのは女性の方は時間がかかるもんなのさ。んなことで遅い遅いって言ってたら彼女できねーぞ」

 

「タケシさん彼女いたことありましたっけ?」

 

「グフッ!?」

 

容赦のない職員の言葉に机に突っ伏して妙な声を上げるタケシ。そんなくだらない話をしていると、ドアが開きアンズが入ってくる。

 

「ほらうみちゃん、恥ずかしがらなくていいって、可愛いよ?」

 

『だ、だから嫌なんですって・・・あ、ちょっ、引っ張らないでください・・・!?』

 

「おー、戻ってきた・・・か」

 

「お疲れーっす。どんなかん・・・じ」

 

「おかえり、あんまり無理やりするの・・・は」

 

各々が帰ってきたアンズとうみに声をかけ、固まる。

ドアの陰から出てきたうみは、今までとはだいぶ違う姿だった。青い薄手のカーディガンを羽織り、中には真っ白なシャツ。下はジーンズから黒いスカートへと変わり、羞恥から真っ赤になっている顔を隠すように、ポニーテールにした長い銀髪で顔を隠している。

 

「か、かわっ・・・!?」

 

「ぐっ・・・!」

 

「ヌッ・・・!」

 

「あら、可愛い!」

 

女子職員が歓声をあげ、男性職員とポケモン持ちの野郎共は皆妙な声をあげ見てはいけないものでも見たかのようによそを向き、必死に何かに耐えている。

 

「うみちゃんやっぱ綺麗じゃない!アンズもいい仕事してるわ」

 

「いやぁ、うみちゃんという良質の素材があってこそでしょうよ。にしても我ながら働いた感あるわ〜」

 

「もう・・・好きにしてください・・・」

 

もみくちゃにされながら死んだ目でそう呟くうみ。そんな局所的カオスな状況の中、キョウが戻ってくる。うみを見て一瞬目を見開くも、すぐに元の表情に戻る。

 

「準備はできたみたいだな・・・うん、恥ずかしがらなくてもいい、一層綺麗になってるから」

 

「くそぅ!あれが既婚者の姿だ!」

 

「俺らとは年季も経験も違う・・・!クッソ羨ま妬ましい!」

 

「・・・否定はしないがお前らなぁ・・・」

 

理不尽な恨みのこもった呪詛が独身職員及びタケシ・チャラ男から漏れ出ている。それを見ながら、否定しないし同感ではあるがなんとも、と呆れた表情のワタル。

 

「あ、はい。もう行けますよ」

 

「うむ、じゃあ着いてきてくれ」

 

そう言って歩き出すキョウにこれ幸いと着いて行くうみ。後ろからは野郎共の呪詛と女子職員の残念そうな声が聞こえるが、努めて聞こえないふりをする。ライはすかさずうみについていくことで職員から解放される。

 

「・・・疲れた」

 

「まぁ悪気はないからな。すまないが許してやってくれ」

 

「服買ってもらったし、まぁこれで差し引きゼロってことにしときます」

 

廊下を歩きながら話すキョウとライを抱きかかえぬいぐるみの振りをさせるうみ。通りすがった男性職員がたまにうみを見て驚き、その後見惚れて壁に激突するという事態が多発している。

 

「この部屋だ」

 

そう言ってキョウが立ち止まる。いざとなると急に緊張してくるうみ。深呼吸を一つして、そっと扉を開く。

 

「やぁ、待っていたよ。掛けたまえ」

 

中にいたのは、威圧感のある初老の男性だった。着こんだ警察の制服がその威圧感をましている。

 

「失礼します!」

 

キョウが敬礼をしてサッと部屋に入る。うみも慌てて着いていき、部屋の扉をキョウが閉じる。

 

「はじめまして・・・うみちゃん、だったかな。私は警視総監をしている後藤というものだ」

 

「は、はじめまして!うみと言います!」

 

特に怒られているというわけでもないのに威圧感から直立不動で答えるうみ。そんなうみを見て苦笑する男二人。

 

「そんなに緊張する必要はない。ただ今回の事件とポケモンについて聞きたいことがあるだけだ」

 

座って、と言ってソファを促す警視総監。恐る恐る座るうみとさっと隣に座るキョウ。

対面に警視総監が座り、対談が始まる。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「にしても、うみちゃんが警察のトップと対談とは、一配信者とは思えない話だな」

 

対談が始まった頃、対策課ではうみについての話で盛り上がっていた。

 

「過去動画見てると本当にポケモンばっかりなんだな」

 

「ああ、だからよほどの物好きじゃねーと定期的に見てる視聴者にはなんねーんすよ」

 

「うみちゃん自体は実況とかゲーム関連の配信はしないって言ってるしな。まぁ相談室のお陰で俺は助かったんだが」

 

ワタルがそう言いながらミニリュウを撫でる。その様子を見ていた職員の中には、ポケモンだけでなく、うみの出自に関しても興味を持つ者が現れる。

 

「でも、なんでうみちゃんはポケモンについて詳しいんだろうか?科学者連中や動物学の権威とやらもお手上げなのに」

 

「うーん・・・配信でそれとなく聞いた奴も居たんだがなぁ」

 

「そうっすね。なんか、『申し訳無いのですが、親については覚えていなくて』とか言うんすよ?もうなんか色々察して聞けないじゃ無いっすか」

 

下手な声真似をするチャラ男にくすりと笑いながらも、少し空気が重くなる。

 

「・・・今うみちゃんはどうやって暮らしているの?」

 

「他言は無用ですが、現在は口座にうみちゃんの名義で残されていた金で生活してるらしい。隣に住んでいる老人が中心となって住民で生活を助けているそうだ」

 

うみの置かれている境遇を聞き、少ししんみりした空気になる。そんな中、ふとチャラ男が気づく。

 

「・・・そういえばうみちゃんが連れていたあのちっこいの居なくないっすか?」

 

『・・・え?』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・俺からは以上です」

 

「・・・」

 

一方その頃、警視総監ーーー後藤へのポケモン及び今回の事件に関する説明を終えていた。

聞き終わった後藤は黙ったまま何かを考えているようであり、キョウも初めて聞いたポケモンの情報について考えている。

うみ以外の大人二人が放つプレッシャーに押しつぶされそうなうみ。ライを撫でながら必死に心を落ち着かせている。

 

「・・・君は」

 

するとおもむろに後藤が喋り出す。うみをしっかりと見つめる瞳には何も感情が見えない 。

 

「一体どこからその情報を得たのかね?」

 

「・・・っ」

 

ついに来たか、というのがうみの中での感想だった。後藤だけでなく、横に座るキョウからも注目されているのがわかる。

 

(実はゲームのキャラクターなんです・・・って言えればどれだけ良かったか)

 

仮にそう言ったとして、この世界にないゲームの話をしても何を言っているんだこいつは、と思われるだけだろう。

 

「・・・言えません」

 

「・・・ほう?」

 

二人の大人が怪訝な顔をする。そんな中、うみは「話さない」ことを選んだ。

 

(俺がなぜこの世界にきたのか、なんでこの体に俺が入ったのか。それがわかるまではまだ何も言えない・・・)

 

うみが俯く中、後藤とキョウの視線が突き刺さる。と、先にキョウが喋り出す。

 

「・・・警視総監殿。報告書でも書いてましたが、うみちゃんは親を覚えておらず、親戚等もいません」

 

「分かっている。だがなおのこと何故このような知識を持つのかが問題なんだ」

 

若干のフォローを入れるが、後藤の言葉に黙り込むキョウ。すると後藤は立ち上がり、窓から外を眺める。

 

「・・・だがまぁ、そうも言っておれん状況だ。最近の外来種関連の事件の件数は、増加の一途をたどっている。早急な対応が必要とされるのだ。故に私は、君達対策課を容認した。・・・しかし結果は先の〇〇区の事件だ。今の警察ではポケモンには勝てん」

 

そう言って振り向く後藤。

 

「・・・君の名前、そして君の住んでいる住居に登録されていた名前で調べた結果、君の戸籍は見当たらなかった」

 

(え・・・?)

 

突如知らされた衝撃の真実。思わずぽかんと口を開け惚けてしまううみに、後藤は続ける。

 

「きみが一体何者なのか、それは未だ分からない。扶養者もおらず身寄りもない子供を放っておくわけにもいかない。・・・しかし、君以外に対処できる者も居ないというのが現状だ」

 

そこまで喋った後、後藤が頭を下げる。

 

「え、ちょ!?」

 

「頼む。我々に力を貸して欲しい」

 

慌てふためくうみだが、キョウは後藤を見つめたまま、後藤は頭を下げたまま動かない。

 

「ちょっと待ってください!でも、警察にはキョウさんもタケシさんも居ますし・・・」

 

「彼らだけで、本当にポケモンに対応できると思うかね?」

 

後藤の言葉に次の言葉が詰まるうみ。はっきりと言うならば、二人だけではおそらく対処は不可能だ。

 

「現在でさえ、君を含む一般人の手助けでようやく動けている状態だ。私には何もできない。守れないんだ。市民の安全も、君の言うポケモンの安全も、何も・・・」

 

そう言って頭を下げ続ける後藤。その手は固く握り締められ、震えている。

 

「警視総監さん・・・」

 

予想外の人物からの要請にどうしていいか分からなくなるうみ。キョウはそんなうみを横からじっと見ているだけである。

 

「・・・分かりました」

 

しばらくの間の後、うみの方が折れた。その言葉に顔を上げる後藤。うみは、眉をハの字にしながら苦笑していた。

 

「俺だけの活動では心もとないとは思っていたんです。・・・協力します、警察に」

 

後藤はそう言って真剣な目でこちらを見るうみに、少しだけ微笑みながら頷く。

 

「・・・ありがとう。今後ともよろしく頼む」

 

そう言って差し出された手に、うみが手を重ねる。固い握手をする二人を見ながら、キョウはウンウンと頷いている。と、そのタイミングで扉の向こう、廊下が騒がしいことに三人が気づく。

 

「・・・何やら騒がしいな」

 

「失礼します。・・・おい、何が」

 

「ーーーーー!」

 

「うわっ!?」

 

「!?ジラーチ!?」

 

「ま、待て!あの謎の生物を捕まえろ!」

 

キョウが確認のために扉を開けた途端、そこから涙目のジラーチが飛び込んできて、うみの懐に飛び込んでくる。その後に、警官が数名ジラーチを追って雪崩れ込んでくる。

 

「け、警視総監!?し、失礼しました!?」

 

哀れなことに飛び込んできた警官たちは警視総監を見て震えながら敬礼する。

 

「この生き物に関しては良い。君たちは通常業務に戻りたまえ」

 

「はっ!」

 

警視総監の言葉に再度元気な挨拶をすると、警官たちは綺麗なフォームで走り去っていった。

 

「・・・ふぅ、うみちゃん、そいつどうしたんだ?」

 

一部始終を黙って見ていたキョウは、うみの無い胸に顔を埋めているジラーチを見る。

 

「よしよし・・・多分、寂しがり屋なんだと思います」

 

「ーーー、ーーー!」

 

「ってあああ!?服シワになっちゃうから、ぐりぐりはダメェ!?」

 

慌てながらジラーチを落ち着かせようとするうみを見て微笑みから笑いにシフトした後藤が書類を取り出す。

 

「取り敢えず、うみちゃんは特別捜査員という立ち位置を用意する。外来種・・・おっと、ポケモンだったか。ポケモンに関する事件があった際はこちらで知らせよう。この書類と、後これを持っていたまえ」

 

そう言って差し出された黒いケースを手に取り開く。すると、そこに入っていた物に驚愕する。

 

「これって・・・!?」

 

「ああ、そういうことだ」

 

応用に頷く後藤を見た後、再度ケースの中の物を見つめるうみ。

そこに入っていたのは、旭日章があしらわれた下面に、上面には写真を入れる場所と『特別捜査員』という階級と、所在が書かれた二つ折りの手帳のようなものが入っていた。

 

「警察手帳!?」

 

「に、似たものだ。基本的には使わない方が良いが、どうしてもポケモンに関する事件で使うべき時があれば使うといい。・・・ただし、責任の所在は森本警部にあるからな」

 

「えっ」

 

ふと後ろからキョウさんの驚く声が聞こえた気がしたが、そんなことを超える驚きがあるのでうみは反応できない。ジラーチを背中に移動させつつ恐る恐る手帳をとる。

 

「後日写真を撮りにきてもらうから忘れずにね」

 

「あ、はい!」

 

「それと給料に関してだが・・・」

 

「きゅ、給料出るんですか!?」

 

本日何度目かの驚愕がうみを襲う。いたずらが成功した子どものように笑い、片目をつぶりながら後藤が指を立てる。

 

「取り敢えず普通の公務員と同じように渡すわけにもいかないが、君は親もおらず一人で生活するということも鑑みて、これくらいは提示させてもらおう」

 

「・・・」

 

サラサラと書類の中から給料に関する書類を取り出し見せられる。それを見たうみが口をぽかんと開けて目を見開くのを見て、今度はキョウが笑う。

 

「あとは君がお世話になっているというご老人にも挨拶せねばな。ちょうど明日退院だっただろうから、うみちゃんの家に出向くよ」

 

「は、はい・・・」

 

書類をまとめて手渡されたうみは、いまだに惚けながらふらふらと扉まで歩く。

 

「では、君の奮闘を期待する」

 

「し、失礼します!?」

 

後藤の敬礼に慌てて自分も敬礼するうみ。その後ライとジラーチ、書類を抱えたうみが退出すると、キョウの顔から笑みが消える。

 

「・・・やれやれ。うみちゃんが独自に動く為の身分を作りつつ、生活保護を建前にうみちゃんに給料を与えることで警察組織から逃げ出さないようにする。そういうことですか、警視総監殿?」

 

「さて、何のことだか」

 

キョウがしかめっ面で問い詰めるが、警視総監は椅子に座り微笑むだけである。

 

「・・・一応言っておきます。俺はもしうみちゃんが辞めたいというなら俺がどうなろうとも辞めさせますからね」

 

「・・・対策課の人事は君に一任している。好きにするといいさ」

 

その後しばらく警視総監をにらんでいたキョウだったが、やがて失礼しました、と言って退出する。

 

「・・・日本、いや世界はもう動き出しているんだよ」

 

そう言う警視総監の手元には、『極秘』『ハワイ島 キラウエア火山内にて発見された未知の生物に関する報告』と書かれた英字の資料が置かれていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うみちゃんが正式に対策課に配属ぅぅ!?」

 

「あ、あはは・・・」

 

対策課の部屋へと戻ってきたうみの言葉に驚く面々。そんな中タケシとアンズは少し後ろで天に向かってガッツポーズを決めている。

 

「で、でも大丈夫なのか?法律的に」

 

「その、書類の中に『なお、あくまで特別顧問としてその道の権威からの助力である』ってあって・・・」

 

「・・・つまりは書類上はうみちゃんが女児だとは書いてない、って事か?」

 

「いやまぁ書いてはないけどさぁ・・・」

 

「いいんです、俺としては願ったりな状況なので!」

 

やる気十分なうみを見て、じゃあいいか〜と一瞬で和んだ空気となりスルーされる。

一方でこの後の書類処理の矛先が来ることを悟りタケシは後方でorzしていた。

 

「ーーー?」

 

「っと、大丈夫、もう少ししたらお家行くからなー」

 

「ーーー!」

 

また少し眠たげなジラーチをあやしていると、ふと疑問に思ったワタルが話しかける。

 

「そういえば、配信は今後どうするんだ?」

 

「あ、それに関しては営利目的での活動は無理ですけど、趣味の範疇としてならオッケーだそうです」

 

うみが指で輪っかを作りオッケー!と言うと、ワタルは心なしか嬉しそうにそっか、と呟く。

 

「うみちゃん。準備ができたよ」

 

そのタイミングで、キョウがうみの新幹線チケットを持って入ってくる。急いで荷物をまとめ、腰にボールが付いているか最後に確認してから職員に頭を下げる。

 

「ええと、昨夜はありがとうございます!また来ます!」

 

「いつでも来てねー」

 

「またね」

 

「くっそー!書類が案の定来やがった!うみちゃんまたね!」

 

「ライ!」

 

ライが職員とハイタッチしている。なんだかんだで仲良くなれたようだった。

 

「お疲れ様です!」

 

元気に挨拶した後、うみは家へと帰って行くのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おやおや、おっさん久しぶりやん」

 

うみを送った後。キョウはマサキの元を訪れていた。

 

「にしても前の配信見たで。途中で終わってもーたけどえらいことになっとったやん」

 

「そこに関してはいい。それで、何か分かったのか」

 

世間話を楽しもうとするマサキを急かすキョウ。そんなキョウにニヤリと笑いながら、マサキがパソコンに向き直る。

 

「分かったも何も、この天才ハッカーのマサキ様に入れんサーバーなんざない。ペンタゴンでもお茶の子さいさいやで・・・見てみ」

 

「・・・これはまた。まずいもん見たな」

 

「ああ。わいも初めて見たときはごっつ驚いたわ」

 

調子のいいことを言っていたマサキだったが、キョウに問題のデータを見せながら冷や汗をかく。

そこにあったのは、とある海外の研究データだった。極秘を表す文字とともに、多重のセキュリティで守られている。

 

「『謎の生命体に関する研究報告』、『謎の生命体の解剖結果』。・・・加えてこれか」

 

「うみちゃんとやらに教えんでええんか?」

 

「むしろ教えるべきじゃない。こんなモノ、間違っている」

 

「どーする?」

 

「引き続き調べてくれ。今は情報の鮮度と確度が最も重要だ。・・・許されるものでは無いな」

 

心底嫌悪する、と顔を鬼の形相にしながら吐き捨てるキョウ。

そこには最後の資料、

『謎の生命体に対する拷問・薬物による軍事的利用の可能性』

と書かれた資料が映されていた。




唐突な人物紹介ィ!
警視総監(後藤)
当初はポケモン関連のキャラから名前を借りようと思っていたが、ハンサムって名前はちょっと・・・と思い、最近マイブームの仮面ライダーから、誤砲ちゃんの名前を持ってきた。今後うみちゃんが動いていく中で様々にサポートしてくれる人。後日孫にポニーテールにしてみてと言って「キモい」と言われてしまう。

森本キョウ
今話で名字を適当につけられた男。ポケモンと渡り合えるほどの格闘技術を持つ。得意技はアイアンクローとバックブリーカー。パートナーはヒトモシ(5V)。ヒトモシはキョウの生命力を吸い取ってしまいたいのだが、キョウの生命力が多すぎていつもキャパオーバーで失敗している。キョウからはそのことに気づいてすらもらえてない。

アンズ
キョウの娘。うみちゃんを気に入り、妹のように接している。パートナーは現在無し。キョウが唯一口で勝てない相手。得意技はパイルドライバー。

うみちゃん家のポケモン事情
ジラーチ
廃墟編で保護した。泣き虫な性格で、うみから離れるとすごく泣く。うみが宥めてもたまに泣く。結構不憫枠である。

ゴース
今回の騒動の原因。人間に対し軽度のトラウマがあるが、うみに関しては発症しない。ちなみに6V。幻三点セットによる説得(神秘)により力を失いゴースに戻った。冷静になったことで性格は丸くなっている。現在は警察から支給されたボールでうみが所持している。

ゾロア・ゾロアーク
うみちゃん家の庭にある木の下で生活している。ゾロアークは暴れたことの反省と罪滅ぼしを兼ねて、うみ家の防衛を担当している。スピアー、バンギラスと共にたまにシュミレーションをして練度を高めている。ゾロアは最近遊び仲間のビードルが増えた。

次回、おじいちゃんvsキョウ

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