TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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どーも、29話です(´・ω・`)
身も心もボドボドダァ!
でも執筆がやめられない・・・病気かな?
日間の順位が一瞬だけ5位いってて大草原。
これからものんびりと続けていこうと思います。


第29話

「・・・何故だ」

 

完全に崩壊した都市のビル群の中、ワタルは灰色の煙に包まれた空を見つめ呟いた。その顔には焦燥と怒り、そして言いようのない悲しみが浮かんでいる。

 

「・・・っ!何でなんだ・・・!うみちゃん!」

 

怒りのままに叫ぶワタル。その見据える先にいるのは、無表情のうみ。傍には倒れ臥すキョウ。うみが無造作に腕を振るうと、とっさに避けようとしたワタルの体がゆっくりと地面に倒れる。

 

「・・・しょうがないんですよ、釣り師ニキ。これがみなさんが望んだ結果です」

 

無慈悲に、かつ無関心なその言葉とともにゆっくりと歩き出すうみ。

 

「・・・!ま、待ってくれうみちゃん!俺たちが、俺たちが悪かった!だからなぁ、もう勝負はついてる、だから・・・!」

 

ゆっくりと近づいてくるうみにタケシが必死の命乞いをする。手に持っていたものを捨て、抵抗の意思がないことを示している。それでもなお、うみは止まらない。

 

「ダメですよ?・・・警部ニキも釣り師ニキも農家ニキも、チャラ男さんも。みーんなもう先に行ったんですから。警察ニキで最後ですよ」

 

遠く離れた場所で、ビルに背中を預け死んでいる農家ニキや、一番最初に強襲されたチャラ男を指しながら、嬉しそうに笑ううみ。そんな相手にタケシは、もはやこれまでと覚悟を決める。

 

「・・・いくら推しとはいえもう看過できんぞ・・・!うみちゃん!」

 

「あはははははっ!良いですねぇ、そそりますねぇその覚悟!来てください、俺のすべてでもって受け止めますから!」

 

狂気の笑い声をあげるうみに、やけくその特攻を仕掛けるタケシ。勢いよく突っ込む中で、右手に持った最後の武器を突き出す。

 

「・・・!?」

 

タケシの一撃をなんでもないもののようにひらりと躱し、両手に持った特徴的な武器を構えるうみ。

 

「そんな馬鹿正直な攻撃じゃあダメですよ・・・さよならです」

 

最後にタケシが見たのは、鉄色の杭だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁぁぁぁぁ!?」

 

「ふっふーん、甘いですよ警察ニキ!」

 

『草』『うみちゃん強強じゃねーか』『というかゲーム選びのセンスよ』『四脚パイル月光とかなんともまぁ・・・』『にしても警部ニキに関してはアセン全くわかってないっぽいし』

 

「いやぁ、難しいな・・・」

 

「まさかここまでうみちゃんが強いとは」

 

「・・・いや、そもそもなんで俺らゲームしてんの!?」

 

ツッコむワタルの叫びに、人間達の横で遊んでいたポケモン勢がやれやれと首を振る。

 

 

 

 

 

 

ワタル達がうみ家にやってきたのは数時間前のことだった。

 

「いらっしゃいませ!お疲れ様です!」

 

「やぁ、お世話になるよ」

 

「う、うぉぉぉ、おれ女の子の家にお邪魔するの初めてっすわ・・・」

 

「よろしくね、うみちゃん」

 

「・・・思ってたより普通なんだな・・・」

 

「ワタルさんは一体どんな家だと思ってたんですか・・・」

 

玄関で出迎えたうみに連れられ、二階の空き部屋に荷物を置く野郎ども。

 

「よし!それじゃあ、特訓について説明を・・・」

 

「あ、待ってください。えーっとですね・・・」

 

気合いとやる気十分のワタルに、うみがストップをかける。ゴソゴソと押入れの中を探ると、黒い箱のようなものを取り出す。

 

「ゲーム!しましょう!」

 

「「「「「・・・え?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、今に至ると」

 

「そんなに張り詰めても良いことないし、まぁ気楽にいこうや」

 

「一人、まだ来ていないしな」

 

『釣り師ニキ負けまくって不機嫌か?』『ワロスw』『にしても初代からVDまで全部のシリーズでやってるのに誰もうみちゃんに勝てないのか・・・』

 

「まぁ粗製の鴉じゃぁ山猫には勝てないってことですよ」

 

『はい本日のドヤうみ出ました』『可愛い』『ない胸張ってるのが微笑ましい』『ないのが良いんだるぉぉぉぉん!?』『次なにやる?』

 

コメント欄はうみのドヤ顔をいじりながら、既に次のゲームに興味津々だった。うみは、前回意図せず強制終了してしまった配信の謝罪と事情説明も兼ねて配信をしていた。うみ以外の人間が映らないよう、テレビのゲーム画面固定である。うみ以外はそこを通らないようにし、それぞれにネットでのニックネームで呼び合うよう男性陣には注意している。

 

「それにポケモン達も少し長旅してきたんですから、今日1日は休ませるのは予定に入れてましたから。あんまり無茶させても強くはなりませんよ?まぁ、なんか調子良さそうですし、午後からやるのもアリですが」

 

「・・・なるほどね。分かったよ、その辺に関してはやっぱり俺よりうみちゃんの知識だな」

 

『当たり前だろぉぉぉん?』『特訓って?』『タイトル見てこいアホ。今日の配信はヤベーぞ』『現在日本でポケモンを持っている奴らが全員集合してるんだぜ?ヤベーだろ』『まじかよ。うみちゃんのファンになるんで那珂ちゃんのファン辞めます』

 

「まぁトレーナーの皆さんには今夜しっかりとポケモンのとの戦いについてレクチャーしますけどね。視聴者の方も、今夜の配信を見ていただければもしもポケモンに出会ったりした時に役立つ可能性ありますよ」

 

『まじかぁぁぁ』『ちょっとその辺の山行ってくる』『コラッタってやつはネズミらしいからおれ下水道探してくる』

 

「あ、待ってください。前回の配信見ましたか?」

 

『?ああ、肝試しか』『あれはビビったな』『あのポケモン怖すぎね?』

 

前回の配信を見ていた視聴者がいたことに安堵しつつ、うみは全員へ警告する。

 

「あの配信を見てくれた方には想像がつきやすいと思いますが、本来ポケモンっていうのは危険な生き物なんです。例えば俺の相棒のライなんかも、やろうと思えば少し電気を流すだけで俺を殺せます。警部ニキのヒトモシというポケモンも、本来の習性では人の生命力を吸い取ってしまうという恐ろしい能力も持っています」

 

『怖!?』『そーいえば確かに、ライニキとかうみちゃんにべったりだから気にならなかったけど、あの電撃とか危険すぎるよな』『コラッタでさえやばそうなんだけど』『ポケモンやばくね?』『これからも増えるんだろ?なんか怖えぇな』

 

コメント欄が少しだけ大人しくなる。うみはそこですかさず自身の主張を述べつつ視聴者に訴える。

 

「ですが、彼らとの付き合い方を覚え、むやみに刺激しなければ、良き隣人として接することはできるんです。現にいま、俺以外にもこんなにポケモンと仲良くなった人たちがいます。みなさん、ポケモンは確かに危険な力を持つものかもしれません。・・・ですが、分かり合い、助け合うこと。友人や家族として一緒に生きることもできるはずなんです。

ですからどうか、俺達がそれを証明していくので、それまで無茶なことは控えてください。もしポケモンで困っているようなら、俺はそれをあらゆる形でお助けします。どうか、よろしくお願いします」

 

そこまで言ってから、深々と頭を下げるうみ。

そんなうみの様子を見ながら、キョウは感心する。

 

(なるほど、動画投稿者という形での注意喚起か。行動力のある10代前後の人なら配信という形での情報の方が効くだろうな。ニュースを見ない輩もいるだろう。・・・うみちゃんがそこまで考えてやっているのかはわからんが)

 

『まー命が惜しいしな』『確かに。あれ見て無闇に近づこうとするほど死にたがりじゃねぇなぁ』『でもポケモン持つのは憧れるわぁ・・・』『今後次第じゃね?』

 

視聴者も一定数納得してくれているようで、うみもホッとする。

 

「・・・では午前の部はここまでに。次は午後にまた配信しますね。明日は特訓なので配信はお休みです。また明後日、お会いしましょう。ありがとうございました」

 

『乙』『おつー』『さーてポケモンで日本が忙しくなるぞー!』『午後の部はうみちゃんリスナー必修だな』『誰かスレの方にもURL貼っといて』

 

配信を終え、うみがパソコンを閉じる。ワタル達もゲームを片付けると、裏庭へと移動する。

 

「・・・では、これから配信では決して言わないことをお伝えしときます」

 

「おう。・・・でも、ポケモンに関して何かいうことがあるなら一般のやつにも周知しとくべきじゃないか?」

 

タケシの言葉に首を振るうみ。他の面々の顔を見つつ、うみは背中に背負っているリュックを開ける。

 

「・・・こいつは、廃墟で出会った・・・?」

 

その中にいたのは、スヤスヤと眠るジラーチだった。唯一見たことのあったキョウがそれに気づく。

 

「・・・この子の名前はジラーチ。・・・数あるポケモンの中でも、特別希少な『幻のポケモン』と呼ばれる個体です」

 

「・・・幻?」

 

全員がピンとこないという顔でジラーチを見る。うみの腕の中で気持ちよさそうに寝息を立てている様子は愛らしいが、全員何がどう幻なのか分からない。

 

「この子は、およそ1000年のうちに七日間だけ目を覚ますと言われています」

 

「せ・・・!?」

 

驚くワタル達を気にせず、うみは説明を続ける。

 

「本来は『眠り繭』と呼ばれる状態になって地脈や水脈の中で眠るんですが・・・この子に聞いて見たところ、最近眠りが浅くなっててしょっちゅう起きてしまうそうです」

 

「それで幻か・・・だが、それなら一般人に周知しても問題ないのでは?そもそも見つけることが困難だろうに」

 

キョウの言葉に、うみは首を振る。

 

「いいえ。この子に関する情報は、本当に信頼できる相手にだけしか話せません。・・・このこの最も恐ろしい点。それは、『どんな願いも叶える能力』です」

 

全員の間に静寂が訪れる。最初に再起動したのはタケシだった。

 

「・・・うみちゃん、それってあれか?神龍的な何かか?」

 

タケシの言葉に頷くうみ。唖然としつつも、一瞬の間にチャラ男以外の全員がその能力について思考を巡らせる。

 

「・・・そういうことか」

 

「え?何が?」

 

「なんでも願いを叶えるポケモン。んなもんどう考えても危険な上に誰もかれもが狙って大変なことになるわ」

 

「・・・あぁ!そういうことか」

 

「本当にわかってんのかよ・・・」

 

調子よく笑うチャラ男を見て不安そうなワタル。そんな中、キョウがうみへ尋ねる。

 

「でもそれを俺たちに教えたのはなぜだ?そんな危ないポケモンならば、誰にも教えなければいいんじゃないか?」

 

「・・・ぶっちゃけまだまだジラーチレベルで危ないポケモンはいっぱいいます。この世界に現れているのかは分かりませんが・・・それでも危険なポケモンがいる、と言葉で曖昧に伝えるよりは、実際どのくらいヤバイのかの見本としてですね、教えた理由の一つは」

 

「・・・もう一つは?」

 

「もしも俺に何かあった場合に、ジラーチを守ってもらうためですね。俺自身いつ何があるかは分からないと思ってるんで」

 

そう言いながらうみの脳裏に思い出されるのは、『うみ』としての記憶。なんらかの制約の下でこの状況が成り立っているのだとしたら、いつ『〇〇』としての意思や人格が消えるのかも分からない以上、残されるジラーチに関して放置するのはマズイ。

 

「・・・あんまりそういうことは考えたくないな」

 

キョウのしんみりした言葉に、男性陣が頷く。うみはそんな様子を見て雰囲気を切り替えようと微笑む。

 

「・・・じゃあ、お昼。食べましょう!材料は買ってきてるんで、今日はカレーです!」

 

「・・・お!いいね!じゃあ俺手伝うわ」

 

ワタルが料理の手伝いを立候補し、他の面々は食事の準備をする。ポケモン達は、それぞれのパートナーに着いて行き、準備を手伝っている。

 

(幻・・・ね。『願いを叶える』レベルがゴロゴロいると。それはまぁゾッとする話だが・・・。それを知っている、いやおそらく実際にそんなポケモンを間近で見てもいるんだろうな。うみちゃんは。この世の誰も知らないはずのそんな存在を)

 

机を運びながら、キョウの頭の中には、うみの正体に関する考えがぐるぐると巡っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「はいそれでは、午後の配信兼特訓の一環として、ポケモンバトルといきましょうか」

 

昼食後、裏庭に集まったうみ達。庭には、スピアー達が忙しなく岩を集めてきている。

 

『でっか!?』『蜂・・・だよな、あれ』『いやいやいや・・・あんな蜂に襲われたらタダじゃ済まんぞ・・・』『あんな蜂相手にできるかよ!?俺の仕事もう今後無理だろ!あんなの相手にできるかよ!』『蜂駆除業者ニキは強く生きろ』

 

配信の視聴者は飛び交うスピアーに驚いているようだ。中には蜂退治の業者の人間もいたらしく、コメントから慌てようが伝わってくる。

 

 

「うみちゃん。バトルは分かったんだが、あの岩は・・・?」

 

「ああ、即席のバトルフィールドにするんです。あの岩に囲まれた場所から出たら即アウトです」

 

「にしてもバトルは早すぎないか?」

 

農家ニキが心配げに告げる。しかしうみは首を横に振ると、説明を続ける。

 

「現状のポケモンによる事件の概要は資料から見てきたんですが、どうやらポケモンの習性が認知されていないがために怒らせてしまった結果という場合が多いみたいなんです。つまり、もし俺たち対策課が動くことになったとしたら、9割方戦闘が待っているってことですね。だからこの特訓でしっかりと経験を積んだ方がいいと思うんです」

 

「うーん・・・なるほどな」

 

「あ、準備できたみたいですし、早速やって見ましょうか」

 

誰から先にやります?とうみが聞く。すると、真っ先にワタルとタケシが手を挙げる。

 

「俺が行く。この中では一番経験があるはずだしな」

 

「俺もだ。折角の機会だ、より多く経験したいし、ズバットもやる気みたいだしな」

 

「分かりました。じゃあ、まずは釣り師ニキと警察ニキですね」

 

『この2人か!』『釣り師ニキどのくらいなんだろうな』『初めて見るわ、楽しみ』

 

ワタルとタケシが、配信に映らないギリギリの位置に立ち、それぞれのパートナーをフィールドに出す。

 

「いけ、ミニリュウ!」

 

「やってやれ!ズバット!」

 

気合十分のズバットとミニリュウ。対してうみは、腰に提げたボールには手を伸ばさず、スピアー達を暫く見つめた後、二匹ほど呼んでくる。

 

「じゃあ、俺はこの二匹ですね」

 

「「スピッ」」

 

『蜂だ』『見るからにむしタイプ』『いやいや、案外空飛んでるからひこうってこともあるんじゃね?』『複合もあるんだろ?ならむしと何かだろう』

 

うみが連れてきたのは、レベル的にミニリュウとズバットとほぼ同じくらい、つまりは実力的に差があまりないポケモン同士での戦いにしたのだった。

 

「本来野生のポケモンとのバトルにルールは無いですけど、今回は特訓なんで。勝敗は戦闘不能を俺の方で判断します。それと一度バトルが終わったらあそこのスピアーに頼んできのみを貰ってください。スピアーはどくわざも持っているんで、毒状態にされることもあると思いますが、きのみで対処できるんで直ぐにリタイヤしてください」

 

うみが指差した方には、何故か眼帯をしてタオルを首にかけたスピアーがフィールドの囲いになっている岩を叩いている。まるでボクシングのセコンドである。

 

「了解だ」

 

「わかった」

 

「他の方は次の準備がてら見て研究してください。・・・では始めます」

 

周りで見ているスピアー達の羽音が静まり、キョウ達待機組も真剣にフィールドを見ている。

緊張感の漂う空間の中、うみが手を挙げる。

 

「それでは・・・始め!」

 

「ミニリュウ、『でんじは』!」

 

「ズバット!『ちょうおんぱ』」

 

合図とともにワタル達がパートナーに指示を出す。ミニリュウが口から電気の球を、ズバットは超音波を放つ。

 

「スピアーA前方2メートル地面に『ミサイルばり』、スピアーB上空へ回避」

 

うみの指示でスピアーAが地面へと針をばらまく。ミニリュウのでんじはを受けるが、砂埃が舞うことでワタル達の視界から外れる。Bは素早く上空へ飛び、超音波を避けつつ砂埃の届かない位置へ行く。

 

「!ズバット、『きゅうけつ』!」

 

「ミニリュウ!『たつまき』!」

 

上空へと逃げたスピアーに気づき、2人がそれぞれに指示を出しつつ攻撃を加える。

 

「・・・甘い。スピアーA、『ダブルニードル』」

 

「!?しまっ!?」

 

「スピッ」

 

「フゥ!?」

 

「ズバッ!?」

 

ミニリュウ達の注意がスピアーBへと集まったと同時に、煙の中から猛突進してきたスピアーAの針が突き刺さる。勢いそのままに吹き飛ばされ、岩に叩きつけられるミニリュウとズバット。ワタル達は焦りながら起きろと指示を出しているが、その上空から重力に身を任せスピアーBが襲いかかる。

 

「終わりですね。スピアーB、『みだれづき』、Aは『ミサイルばり』」

 

うみの指示で容赦ないトドメが降り注ぐ。

 

「ミニリュウ!」

 

「くっそ、ズバット!」

 

砂煙の向こう、パートナーの身を案じて叫ぶワタルとタケシ。砂煙が晴れると、そこには呆然とするミニリュウ達と、的確に傷つけないようミニリュウ達の周りに突き刺さる針と、スピアーBの腕の針があった。

 

「・・・はい終了です。お疲れ様でした」

 

うみが終了の合図を出すが、ワタルもタケシも呆然としている。

 

『うぉぉぉ、強えぇ!?』『さすうみ!』『ライニキじゃないからいい勝負なるかと思ったんだがなー・・・』

 

「お二人共、事前に渡していたわざのリストをよく呼んでるみたいですし、最初に状態異常で有利に持ち込もうとするのはいい戦術です。でも、相手の方が素早いとこういうことも起きますし特に『でんじは』のまひ状態は、相手の視界から消えることで機動力の低下を補えるのでその辺も注意が必要ですね」

 

「・・・ああ、分かった。全く、流石の強さだな」

 

「かぁー!参った参った、完敗だわー・・・」

 

うみからのアドバイスを受けながら、パートナーを連れてきのみを受け取りに行く2人。一方バトルを見ていたキョウ達は、うみの戦いを見て冷や汗を流す。

 

「かなりの練度だなぁ、あの蜂。毒もありで素早いって、マジで怖いな」

 

「・・・俺のコラッタ無事じゃ済まなそうなんですけど・・・」

 

「・・・」

 

「じゃあ次、どなたから行きます?さっきはいきなりタッグでバトルしましたけど、一対一でもいいですよ?」

 

うみがそう言うと、今度は農家ニキが手を挙げる。

 

「じゃあ次、俺が1人で行ってみるわ」

 

「分かりました。・・・ええと、じゃあ次はサイドンが相手します」

 

「・・・!?」

 

まさかポケモンが変わるとは思っていなかったのか、驚愕する農家ニキ。

 

『今度はまたデッケーな』『サイドンっていうのか。固そうだな』『農家ニキの犬で勝てるのかこれ?』

 

視聴者は早くも無理と断じる者がいるが、農家ニキは眼鏡を押し上げ、ニヤリと笑う。

 

「・・・いいや、手はある。・・・筈だ」

 

そんな農家ニキに微笑みながら、うみがバトルを開始する。

 

「では、始め!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・これは」

 

「まさかの状況だな」

 

『おいおい、すげーな農家ニキ』『善戦、っていうか押してね?』

 

開始から40分が経過し、状況は最初の予想を大きく上回る状態だった。動きが鈍くなり、息切れしているサイドン。対する農家ニキの相棒ガーディのコロは、狭いフィールド内を縦横無尽に駆け回りながら、近づくサイドンから逃げ回っている。

 

「サイドン、『がんせきふうじ』!」

 

「コロ!『ほえる』!」

 

サイドンが大きな岩を出現させ、コロへと向かって放つ。しかし、コロは素早く躱しながら大きな咆哮でサイドンを牽制する。

 

(・・・正解。サイドンはタメや振りの大きいわざしかないし、何より図体がデカい分バトルでなら息切れさせるのは可能。それでいて「ほえる」でとりつかせないようにしてつかず離れず、「ひのこ」を織り交ぜながら地道に攻撃。・・・農家ニキは優秀ですね)

 

その後も、長時間のバトルとなり、最後にはひのこが出せなくなりながらも、相当にダメージを負ったサイドンへ『たいあたり』のヒットアンドアウェイでコロが勝利したのだった。

 

「そこまで!勝者、農家ニキ!」

 

『勝ったぁぁぁぁぁ!』『期待の星や』『やんややんや』『すげー長かったな』

 

「お疲れ様です」

 

「いやー、うまくいってよかったよ」

 

メガネを取り、汗だらけの顔を拭く農家ニキ。その横では疲労しているであろうに嬉しそうに農家ニキの周りをくるくる回るコロ。文句なしの結果ではあるが、念のためにと忠告するうみ。

 

「バトル自体は素晴らしい結果でしたけど、実際には突然別のポケモンに乱入されたりすることもありますし、引き際を見極める練習とかもしたほうがいいですね」

 

「ああ、そうだね。コロにあまり無理させたくないし」

 

コロを抱きかかえながら考え事を始める農家ニキに説明しながら、頑張ったサイドンをねぎらいきのみを渡すうみ。流石に日々畑仕事しかしていないサイドンには急にバトルは無茶だったか、と自省する。

 

「じゃあ次は、キョ・・・警部ニキとチャラ男さん、どっちから行きますか?」

 

「俺!俺から行きたいっす!」

 

「俺は後でいい。まだもう少しどういうもんか理解してからの方がいいだろうしな」

 

元気に手を挙げるチャラ男と、メモ帳を取り出しなにやら書き込んでいるキョウ。視聴者の方もどうやら勝利者が出たこともあり結構賑わい、ポケモンバトルに関心を持ってくれている。

 

「俺ももう一回したいな」

 

「俺もだ。こうなったら勝つまでやるぞ!なぁズバット!」

 

「ズバッズバッ!」

 

きのみで回復を終えたワタルとタケシもやる気満々で戻ってくる。各々がポケモン・他のトレーナーとのコミュニケーションをとりながら、どうやって戦うのかを研究している。そして、バトルを通じてさらに絆を深め、それでいて視聴者は勝敗に一喜一憂し、どちらがどう強いとか、こっちのポケモンがすごいとか、コメントの交流も活気付いてくる。

 

そして特訓開始から数時間が経過し、ある程度戦術的駆け引きもでき、男性陣同士でのバトルも行い始めた時だった。

 

「ミニリュウ、『たたきつける』!」

 

「ヒトモシ、『あやしいひかり』!」

 

「しまった!?」

 

ワタルとキョウのバトル中、それは起こった。

ヒトモシがミニリュウへとあやしいひかりを使い、ミニリュウはフラフラとこんらんし、動きが止まる。

 

「いまだ、『ほのおのうず』!」

 

「ミニリュウ、回避だ!後ろへ飛べ!」

 

とっさに指示を出すワタルだったが、ミニリュウはこんらん状態でうまく動けない。そこへヒトモシの放ったほのおのうずがクリーンヒットし、大ダメージを受ける。

 

「ミニリュウ!」

 

思わず叫ぶワタル。無情にもキョウは追加で『おどろかす』や『スモッグ』などを使い、ミニリュウを追い詰めて行く。絶体絶命の状況に陥った相棒にいてもたってもいられなくなったワタルは、無意識に叫ぶ。

 

「ミニリュウ!勝て!」

 

「・・・!」

 

ワタルの叫びに、ミニリュウが目をカッと見開く。するとミニリュウの体が光に包まれ、直視できない状態になる。

 

「・・・なんだこれは!?」

 

「うみちゃん!様子が変だ!なんだこれ!?」

 

「これは・・・!進化!?」

 

『うおっ、まぶし!』『目があァ!目があぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』『ム●カニキうるさい』『進化って、うっそだろおい!』

 

予想外の事態に、視聴者や男性陣のみならず、うみも驚愕する。その場の全員が固唾を呑んで見守る中、ミニリュウはゆっくりと形を変えて行く。細長い蛇のようなフォルムはそのままに、羽のようだったエラの他に新たに角が生え、首に一つ、尻尾に二つの水晶のような玉が現れる。

 

「・・・ヤベェなこれは」

 

「綺麗なもんだ・・・」

 

『かっけぇぇぇ!』『しかも可愛い!』『マスコット系な感じだったのがかなりの美形になった!?』

 

「・・・ドラゴンポケモン、ハクリュー。強力なドラゴン系ポケモンの一体です。その神秘的な姿から、神聖なポケモンとしても考えられているようなポケモンです」

 

もうすぐ日が沈むという段階、ハクリューを照らす夕日がよりその幻想的な姿を際立たせている。コメントでもカッコいいや可愛いと言ったコメントが大半を占める。

 

「・・・ハクリュー、か?」

 

「フゥ!」

 

おうよ、というように元気な鳴き声をあげるハクリュー。ピンピンしている様子にニヤリと笑うワタル。ヒトモシに相対し、反撃を開始する。

 

「ハクリュー!『でんじは』!」

 

「ヒトモシ、回避だ!」

 

先手を打ったハクリューのでんじはを左に避けるヒトモシ。するとそれを読んでいたかのように素早く回り込み、目の前に現れるハクリュー。

ギョッとしたヒトモシが固まったところを、するりとその長い体で締め上げる。

 

「『まきつく』!捕らえろ!」

 

「しまっ・・・!?」

 

逃げられなくなったヒトモシが必死にばたつくが、進化したことでステータスが上がったハクリュー相手では逃げ出せない。その後きっちり5分間締め付けられたヒトモシは、グロッキー状態で戦闘不能となるのだった。

 

「そこまで!勝者、釣り師ニキ!」

 

『88888888888』『やべー!進化だってよ進化!』『すっげー、マジモンのドラゴンじゃん!』『かっこかわいいポケモンとか釣り師ニキ裏山』

 

「いやー、指示を出すのはなかなかに難しいものだな。ああ、進化おめでとう」

 

「ありがとうございます。俺自身びっくりですね」

 

「・・・おいチャラ男、農家ニキ!俺らも早く進化するぞ!とりあえずバトルだ!」

 

「はいはーい、今日はもうポケモン達もいい加減きのみ使っても疲れてますから、終了ですよー」

 

「だぁぁぁ、うみちゃん!そこをなんとか!」

 

対抗意識を燃やしたのか、タケシがやる気に満ち溢れているが、流石にポケモンの疲労を考慮して終了とするうみ。必死に頼むタケシだが、パートナーのズバットは終了宣言にホッとしている。

 

「だめです。ポケモンの体調管理はトレーナーの重要な仕事ですよ?ちゃんと相棒の状態を鑑みて行動するんです」

 

「うぅ・・・了解」

 

『警察ニキ怒られてやんの』『はい無能』『勝率1割とかマ?』『警察ニキ雑魚乙w』

 

「クッソがぁぁぁ!見てろよお前ら、明日は絶対勝ちまくるからな!」

 

コメントに対して怒りながら家へと戻っていくタケシ。キョウや農家ニキ、チャラ男もそれぞれパートナーを連れて戻っていく。うみは配信を一旦終了し、パソコンを閉じるとワタルを呼ぼうと振り向く。しかし、ハクリューを撫でながら嬉しそうに戯れるワタルを見て、何も言わずに微笑みながら家に戻るのだった。

 

ーーーーーーーーーー特訓合宿1日目、終了

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時は遡り、うみ達が合宿を開始した頃。〇〇空港にとある国の工作員が降り立った。

男は、人目につかない場所へと移動して携帯を取り出すとどこかへ連絡をする。

 

「ーーー、ーーーーーー。ーーーーーーーー?」

(俺だ、予定通り到着した。それでターゲットはどこに?)

 

『ーーー、ーーーー。ーーーー、ーーーーー』

(〇〇県の、〇〇町だそうだ。いいか、くれぐれも怪我させないように攫ってくるんだ)

 

「ーーーーー。ーーーーーーーーーーーーーー」

(分かっている。また何か分かり次第連絡する)

 

『ーー』

(了解)

 

通話を終えると、男は歩き出す。懐から一枚の画像を取り出す。そこに写っていたのは、銀髪に蒼い瞳と、顔立ち以外はおよそ日本人には見えない少女が、笑顔で笑う姿があった。

 

(・・・我が国を救えるのがこんな子供だけとはな・・・にわかには信じられないが、やるべきことをやるだけ、だな)

 

顔をしかめながら画像をポケットへと戻し、男はタクシーに乗り込むのだった。




あ、前半は完全に作者の趣味です。
ポケモン、遊戯王、SAOと来て現在さらに二つ短編を執筆中・・・バカなのかな?(自虐)

サイドンは畑仕事ばっかやってたのでパワーは高いですがスピードが無いです。スピアーは奇襲攻撃やダンボールを用いた隠密能力が向上してます。
バンギラスは翌日に備え感謝の正拳突き中です。既に半日で終わるレベル。
ミロは寝てます。

次回、うみちゃんズブートキャンプ本番開幕
次回もお楽しみに
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