TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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やあ (´・ω・`)
ようこそ、ポケモン大好きクラブへ。
そこに置いてあるポフレとポフィンとポロックはサービスだから、まず食べて落ち着いて欲しい。
うん、「10月」なんだ。済まない。
仕事はいいわけにはならないからね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、このssの最新話の通知を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「遅いわ!」と言うツッコミみたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この最新話を投稿したんだ。
じゃあ、本編に行こうか。


第31話

特訓2日目、山からキョウ達が戻り、現在全員で昼食をとっていた。

 

「うめぇ・・・うめぇよぉ・・・めっちゃ頑張った後のカレーェェェェ・・・」

 

「なに泣きながら食ってんだよお前・・・取り敢えずティッシュ、ほれ」

 

「うみちゃん炊事出来たんだな。結構美味いよ」

 

「ありがとうございます。これでも一人暮らし長かったんですからね」

 

「・・・そうだな・・・うん」

 

モモンの実とキズぐすりをフル活用してコラッタを休ませている間、パートーナーが心配で泣きながら食っているチャラ男に軽く引きながらティッシュを差し出す農家ニキ。その横では、うみの作ったカレーを褒めようとして地雷(うみ本人に自覚なし)を踏み抜き表情が暗くなるキョウ。そんな様子を見ながら、一人黙々と食べるワタルの横に、おかわりを持ってタケシが座る。

 

「何1人寂しく食ってんだよ、辛気臭せぇ」

 

「・・・いや、少しだけ反省してた」

 

「さっきの1人でどうにかしようとしたことか?ばっかみてぇ。んなもん気にする必要ないね、お前さんくらいの年齢ならそんくらいの自信過剰具合が丁度いいよ」

 

そう言ってカレーをかきこむタケシ。そんなタケシの言葉に、ワタルも少し憑き物の取れた表情でかきこみ始めるのだった。

 

「・・・」

 

「キョウさん?」

 

「!何かなうみちゃん」

 

2人の様子を見ていて、安心した様子のキョウにうみが話しかける。さっきまで微笑んでいたキョウだったが、うみが真剣な表情をしていることに気づき自身も表情を引き締める。

 

「実は、少し気になることがあって・・・ご飯の後に説明はするんですが、先にキョウさんには教えて置こうと思って」

 

「なんで先に・・・ああ、『こっち』に報告しろ、ということかな」

 

黙って頷くうみに、キョウも頷き返す。

 

 

 

 

 

「・・・で、話ってなんだい?」

 

昼食を終え、全員を集めたうみは、自身が見たキュレムについて話し始める。

 

「・・・先程、少し頭痛を発症したのですが、その時に妙なものを見ました」

 

「頭痛?」

 

「ああ、さっきのやつやな。どしたん?やっぱマズかったか?」

 

マサキが心配げに聞くが、うみは首を振る。

 

「いいえ、それ自体はもう大丈夫です。・・・けど、その時に見たものがかなり厄介です」

 

「何を見たんだ?」

 

「ポケモンです。それも、特別強大な力を持つ、伝説とされている筈のポケモンでした」

 

伝説のポケモン、と聞いてピンとこない男性陣。其れもそのはず、伝説ポケモンとはポケモン世界において伝説になっているのであり、この世界では伝説どころか他のポケモンと同列に考えられるからだ。

ポケモンとして最も凶暴なものとしてはバンギラスしか見たことのないワタル達にとっては更に微妙である。キョウはゲンガーを見たことがあるためそれが基準となっているが、同じように伝説ポケモンの危険性というのがピンときていない。マサキに至ってはお察しである。

 

「・・・まぁ、うみちゃんがそこまでいうほどだ、よっぽどマズいんだろう」

 

「はい。多分純粋に戦闘になれば俺だけだと勝てるかどうか、ですね」

 

「うみちゃんが!?」

 

驚く男性陣に頷いてみせるうみ。実際レベル的にはこちらの方が上の可能性が高いが、ここはゲームの世界ではない。

 

(現実にバトルをするってなれば多分あの冷気とか、フォルムチェンジに苦戦するんだろうなぁ・・・)

 

「そ、それってどーすればいいんだ?うみちゃんが現場の最高戦力である以上、勝てないぞ」

 

不安げにそう聞くタケシに申し訳なさげにうみが答える。

 

「・・・これはもう皆さんにも強くなってもらうしかないでしょう。そのための合宿ですしね」

 

「でも今回の合宿って今日が最後ですよね?それももう午後ですし・・・」

 

そう言って不安げにコロを撫でる農家ニキ。すると、不穏な空気の流れる部屋でキョウが手をパンパンと鳴らす。

 

「・・・とりあえず、今は俺たち自身の戦力強化に集中しよう。うみちゃん、別にそのポケモンは今すぐにでも動き出すってわけじゃあ無いんだろう?」

 

「た、多分・・・」

 

「なら今するべきこと、出来ることをしよう。マサキ、お前はうみちゃんのその装置をどうにか複製できないか調べてみてくれ。それがあるとないとではだいぶ違うだろうからな。他の男性陣はうみちゃん指導のもと時間ギリギリまで特訓再開と行こう」

 

キョウの提案に全員が動き出す。とにかく今は時間の許す限り力をつけるのが先決。そういうわけで、全員が庭へと移動し昨日のように模擬戦を行うのだった。

 

 

 

「コラッタ、『ひっさつまえば』!」

 

「コロ、『ほのおのうず』!」

 

必殺の一撃を狙いながら撹乱するという自身の戦闘スタイルを確立したコラッタとチャラ男は、昨日までの弱さが嘘のように生き生きとバトルしている。農家ニキの方は、元々飼い犬だったコロとの連携が良いので的確な指示とそれに即座に反応するコロでいい具合に戦っている。

そんな模擬戦の様子を見ながら次はどの様にして特訓するか考えるワタルとタケシ。

 

「・・・ところで、うみちゃんどこ行った?」

 

「なんか、あのでかいやつ・・・バンギラスだっけ?のとこに行ったぞ」

 

「ほーん。まぁ、うみちゃんだって特訓したいだろうしなぁ」

 

「・・・あれ以上強くなるのか?」

 

ライ達パソコン組の強さを思い出して身震いするワタル。同感だな、と苦笑いするタケシだったが、あることに気づく。

 

「そーいえば、キョウさん居ねーな」

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし」

 

『あら。あなたがこんなに早く連絡をくれるなんて珍しいわね』

 

特訓中の裏庭から離れ、玄関先へと移動したキョウはとある相手へと連絡をとっていた。

 

「そんなことはどうでもいい。例の情報についてはどうなっている?期日はとっくに過ぎたと思っていたんだが」

 

『極東の情報なんてこちらにはなんのメリットも無いもの。集めるのも手間だし、何より使い道がない。それがたった1人のなんの噂もない少女の情報なら尚更ね』

 

「・・・」

 

相手方・・・声からして気の強そうな女性の「そんなすぐにわかるか」と言う言外の文句が透けてきて黙り込むキョウ。しばらく沈黙が流れたが、すぐに電話先から苦笑が聞こえてくる。

 

『・・・まぁいいわ。それよりもビジネスの話をしましょう。「ポケモン」なる生物・・・あなたの予想通りの結果だったわ』

 

「やはり・・・」

 

『ええ。ポケモンは、ヨーロッパ・アメリカ・アフリカ・・・日本どころか世界各国でその痕跡、あるいはその姿が確認されたわ』

 

その言葉に、キョウは予想していたこととはいえ重いため息をつかざるをえなかった。たっぷり3秒間、精神を落ち着かせる時間を有したキョウは電話先へと話し始める。

 

「そいつはまた随分とくそったれな話だな」

 

『全くね。ここだけの話、うちのシマでもポケモンらしき姿が目撃されているわ』

 

さらりと語られたその言葉に、ふと嫌な予感がしたキョウは恐る恐る尋ねる。

 

「・・・そのポケモンはどうした?」

 

すると、クスリと笑う気配がする。

 

『逃げられたわ。罠も銃も効きやしない。あんな生き物が今後増えるなんて、全く持って面倒ね』

 

「・・・それは災難だったな」

 

『ねぇ、近々私は「そちら」に行くのだけど、あなたのご執心のうみと言う少女には会わせてくれるのかしら』

 

「・・・」

 

唐突な申し出に躊躇うキョウ。電話の相手は、そんなキョウの考えが分かったかのように話題を変える。

 

『・・・アメリカとドイツは既にポケモンに対して「相応の対応」をするみたいよ。こちらから教えられる情報はここまで』

 

「・・・ああ、すまない。恩に着る」

 

『それと・・・これは少し確度の低い情報。そちらの隣国が騒がしいようね。あなたの方でも調べてみるといいわ』

 

「なに?」

 

『さて、この借しはまた後日返してもらうとしよう。失礼するわ』

 

その言葉とともに通話が切られ、キョウはゆっくりと手を下ろすと、渋い顔で呟いた。

 

「・・・面倒なことになってきたな」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・」

 

キョウとの通話を切った女性は椅子にもたれかかると、ため息をつく。

 

「よろしかったのですか、大尉」

 

「同志軍曹。あれでもあの男は使える男だ、この程度の労力で良い関係を保てるなら安いものだよ」

 

側に付き従う巨漢の男にそう返すと、女性はすくと立ち上がり、部屋を出る。男もそれについていき、やってきたのはとある部屋だった。

 

「しかし、この生き物・・・ポケモン、でしたか。一体どんな環境であればこんな生き物が成立するのでしょう」

 

「どんなに考えても分からないことに思考を費やす必要はないぞ軍曹。どちらにしろ情報は手に入った。あとはモンスターボールとやらさえ押さえればこいつもどうにかなるだろう」

 

そう言う2人の目の前、マジックミラー越しに見える部屋の中では、ここから出せと言わんばかりに暴れる灰色の犬のようなポケモンがいた。

 

「あれを制御出来るとは思えませんが」

 

「あの男の話ではボールさえあればどうにでもなるそうだ。無駄な嘘をつくような男でもない。期待しておくとしようじゃないか」

 

そう言って葉巻を取り出した女性は、何かを思い出したように再度懐へ手を入れる。

 

「・・・そういえば、もう一つの情報を教え忘れていたな」

 

懐から一枚の写真を取り出す女性。そこには、黒いサングラスをかけ、白い口髭を蓄えた坊主の研究員と、怯えながらもその研究員に近づく茶色の犬のような姿で、複数のオレンジの尻尾を持ったポケモンがいた。

 

「それは?」

 

「・・・さあな」

 

男の質問には答えず、女性は写真をしまい部屋を出る。

 

「さて、この世界はどこへ向かうのだろうな」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

男性陣が模擬戦を行なっている頃、うみはバンギラスが特訓と言う名の正拳突き修行をしている森の中へ入っていた。

普段はバンギラスが拝み、構え、放つという修行をしている筈のそこでは、バンギラスと正対するライがいた。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・はじめ!」

 

「・・・ッ!!」

 

「ライ!」

 

うみの合図でライが素早さを生かしてバンギラスの周囲を走り回る。以上なまでの速さに砂埃が加わり、ライの姿が完全に消えてしまう。しかしバンギラスは、静かに佇むだけで動こうとしない。

 

「チュゥ!」

 

「!」

 

そこへ、高速で走り続けるライが背後から襲いかかる。高速移動しつつの『かわらわり』がバンギラスに当たる、という瞬間だった。

 

「ゴァ!」

 

「!?」

 

「・・・へぇ」

 

バンギラスが突如ライに迫るほどの速さを見せ、背後からの奇襲を躱す。そのまま突っ込んでくるライへと拳を合わせたバンギラスは、力の限り腕を振り抜く。

 

「・・・チュゥ」

 

「グルゥ・・・」

 

驚きの表情を浮かべるライと、ニヤリと笑うバンギラス。ライの頬には、バンギラスの拳が掠った跡ができていた。

 

(『しんそく』・・・いや、まだ『みきり』かな?何にせよ、これで検証は一応成功ってことでいいかな?)

 

メモを取りながら頭の中で整理していくうみ。冗談から始まったバンギラスの特訓だったが、スピアー達への戦術の影響を知った頃からうみはバンギラス等ほかのポケモンにも何かしらゲームの頃には出来なかった何かが可能になるのでは、と検証を続けていた。

バンギラスが今回身につけた『みきり』も、本来なら習得することのないわざである。しかし、一定の修練を積むことで、習得不可能な筈のわざを身につけることは可能であると証明されたのだった。

 

「・・・でもこれ、よりイレギュラーの発生もあり得る話になってきたってことだよなぁ・・・」

 

そう呟くうみの目の前では、高速で攻めるライに対して『みきり』を使いつつ反撃を続けるバンギラス。

ゲームの頃の知識や情報が、今後自身の首を絞める要因になりかねない可能性が出てきた。

 

「今後の活動に際して注意・・・と。ライ、バンギラス。今日はそこまでにしよう」

 

うみの言葉に、攻めを止め戻ってくるライ。バンギラスは肩で息をしながら戻ってくる。

 

「大丈夫?」

 

「グルゥ」

 

問題ない、というようにそっぽを向くバンギラスだが、うみから見ても明らかに無理しているのがわかるくらい疲労していた。

 

(・・・負担とかが普通よりも大きいのかな?何にせよ、少し気をつけるべきかな)

 

バンギラスの様子を確認しながら家に戻るうみ達。すると、庭に作られたバトルフィールドから轟音が聞こえてくる。

 

「な、なんだなんだ?」

 

急いで戻ってみると、そこではワタルのハクリューとタケシのズバットがバトルをしていた。

 

「『つばさでうつ』!」

 

「『たつまき』!」

 

「ズバッ!」

 

「フゥ!」

 

上空から襲いかかるズバットを避け、即座に攻撃を仕掛けるハクリュー。しかし、ズバットは相手の攻撃の届かない上空へとすぐに飛び上がることで躱していく。

 

「いくぜおら!『ちょうおんぱ』!」

 

「当たるな!『こうそくいどう』!からの『ドラゴンテール』!」

 

ズバットのちょうおんぱを避け、今度はハクリューが強靱な尻尾での一撃を狙う。

 

「ズバット!『あやしいひかり』!」

 

「!しまっ!?」

 

素早さや火力ではハクリューが優勢であり、もしここがポケモンのゲーム世界であるならば、勝負はわかりきったものだっただろう。しかし、ここは現実世界。平面な世界でも、ターン制で進むバトルでもない。ズバットは制空権を取れるという強みを最大限生かし、ハクリューへとしつこくちょうおんぱやあやしいひかりを放ち翻弄している。未だ遠距離攻撃を持たないハクリューは、必死になってそれをかわしているが、タケシの指示の下戦うズバットは上手い具合に相手をコントロールしていた。

ワタルもハクリューへ必死に指示を出すが、今ひとつ決定打が打てていない。

 

「・・・お?うみちゃん、おつおつー」

 

そんなバトルを観戦していたチャラ男が、戻ってきたうみへ手をあげながら笑いかける。

 

「どーも。・・・あの2人、どのくらい戦ってますか?」

 

「うみちゃんがバンギの方見に行ってからずっと。まじで凄いねー、2人とも」

 

「・・・あれ止めなくていいのかな」

 

ヘラヘラと笑うチャラ男の横で、眼鏡をクイっと上げつつ呟く農家ニキ。うみは、うーんと唸っていた。

 

「・・・とりあえず止めましょうか。あんまりやっててもらちが飽きませんし。・・・ワタルさーん、タケシさーん、そろそろ終わりましょうー!」

 

「「まだだ!まだ、俺もこいつもいける!」」

 

「・・・ダメですねこれ」

 

気迫のこもった叫びをあげる2人と、気合十分のパートナーを見つつやれやれだぜと首を振るうみ。結局、その日は帰る時間になるまでずっと2人のバトルが続いていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーうみちゃん、今回はありがとう。いい経験になったよ」

 

特訓最終日の夜、うみの家の玄関には疲労困憊状態の男性陣がならぶ。ワタルとタケシは言わずもがな、農家ニキとチャラ男はうみを相手にバトルをするというハードな特訓でヘロヘロだった。キョウだけがどうにか元気なため、代表して礼を言う。

 

「いえ。俺としても有意義な特訓でした!またいつかやりたいですね!」

 

うみの言葉に一部の人間がビクッとしているが、それには触れないでキョウが封筒を差し出す。

 

「そうだ、これを渡しておく」

 

「?何ですこれ?」

 

封筒を手に取り、裏表を確認しながら首を傾げるうみに、キョウは首を振る。

 

「すまないが、重要案件だと言うことしか知らされていないんだよ。中身はうみちゃんだけにしか見ることを許されていない。・・・さて、そろそろお暇しますか」

 

「じゃあね、うみちゃん。いい特訓だったよ」

 

「自分、もっと強くなるっすよ!」

 

「またやるときは呼んでくれ、今度はうみちゃんとも戦えるくらいにはなっておく」

 

「まー、仕事で会うだろうけど、とりま今日はありがとな」

 

 

キョウ以外の面々からも言葉をもらい、帰っていく男性人を見送ったうみ。全員が見えなくなったところですぐ家に戻り、リビングへと向かう。

 

「・・・で何でワイは帰れへんねん!?」

 

そこには、タイピングの手を一切止めずに喚くマサキがいた。

 

「しょうがないじゃないですか。預かりシステムの複製が終わってないんですから」

 

そう言って苦笑いするうみ。マサキは、キョウから仕事として預かりシステムの解析及び複製を依頼されていたのだが、これが天才を自称するマサキですら音をあげるような難易度の仕事であったのだ。

 

「言うなれば『セーブ機能なしで常にデバフかかったままレベル1縛りで長編RPG短時間クリアしろ』って言われるくらい鬼畜なことやで・・・」

 

「つまりマサキさんがRTA勢になればいいんですよね?俺としてもシステムの複製は結構必要なんで、早めにお願いしますね。3台くらい複製出来たらいいんで」

 

「・・・うみちゃん、綺麗な笑顔でそがいなこと言うのはやめてーな・・・」

 

にっこりと天使のような笑顔をするうみに癒されつつも頬がひきつっていくマサキ。

結局彼はその後、翌日の朝までキーボードとパソコンしか目にしていなかったと言う・・・。

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。マサキさん、俺パソコンの使い方に興味があるんですが、教えてくれませんか?」

 

「この状況で!?うみちゃんドSにもほどがないか!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とある研究所。最高峰の設備と人員を持ちながら、あらゆる形で秘匿され非合法な実験すら行われるその施設は現在、けたたましく警報が鳴り響いていた。

 

「いたか!?」

 

「いいや!」

 

行き交う研究員や警備員は慌ただしく何かを探している。そんな中、無数のモニターが配置された監視ルームで、研究所の主任責任者の男はギリギリと爪を噛んでいた。

 

「まだ見つからんのか!」

 

「それが、カメラの位置は全て知られているようで、死角を上手いこと移動しているようです」

 

「くそっ!使えん奴らが!」

 

困り顔の警備員を罵りながら、主任は1人の研究員を思い出す。

 

「くそっ・・・カツラめ!貴重な実験台を持ち逃げしよって!研究の独占など、絶対に許さんぞ・・・!」

 

 

 

 

 

 

研究所の外、監視カメラと警備員があちこちを探し回っている中を、上手く隠れながら逃げる1人の男がいた。

 

「ハァ・・・ハァ・・・なんとか外へ出たか・・・!」

 

息切れしながらもその足を止めず研究所を覆っている森へと入っていく男。しばらくの間ひたすら走り続け、研究所から遠く離れた開けた場所まで来ると、一旦立ち止まり背負っていたリュックを下ろし、中へと語りかける。

 

「もう大丈夫だ・・・絶対助けるからな!」

 

「・・・」

 

中にいたポケモンは弱々しく頷くが、すぐに目を閉じぐったりとしてしまう。

 

「どうにかしないと・・・!」

 

リュックを背負い直すと、男はサングラスをかけなおし、白衣を翻して再び走り出した。

頭に思い浮かべるのは、助手が見せてくれた動画に出ていた1人の少女。

 

「うみ・・・どうにか彼女に出会わなければ・・・!」

 

そう言って男ーーーカツラは、背中にかかる重みを気遣いながら、最寄りの都市へと走り出すのだった。




今回電話で出てきた女性とかはあくまで作者の趣味で登場しています。知っている人もいるかもしれませんが、あの漫画組み合わせたら面白いかな・・・と個人的に思いました(小並感)
今後しばらくは本編にはそんなに絡まないです。多分、きっと、maybe・・・タグ追加しないとまずいかな・・・

バンギはもうすぐ新たなステージへと向かいそうです。
・・・感想欄の方々はカイロスになんの恨みが・・・?

次回、
うみちゃん久々の配信
日本大騒動
タイの港町から火傷顔襲来
の三本の予定です。

次回もお楽しみに

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