TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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どーも、32話です(´・ω・`)
寒くなってきました。
ハロウィンに閑話でも投稿しようと思っていたらハロウィン終わってた。何を言ってるかわからねぇと(以下略
そんなわけで普通に続き。完成度と文字数が反比例するのなんでなん・・・?
ではドゾー(´・ω・`)


第32話

「はいどーもです、うみです」

 

『キター!』『遅かったじゃないか・・・』『興は帰って、どうぞ』『ホモもいらないんだよなぁ・・・』

 

合宿が終了した翌日の朝、うみは久しぶりに1人での配信を行なっていた。相談室用のメールが大量に溜まっており、中にはあらゆる形での配信に関する要望メールもあったため、折角だからそれらを活用しようと思い立ったのだった。

 

「今日は皆さんからのメールを見て、相談に答えていこうと思います。取り敢えずランダムでメールを開いていきますね」

 

『wktk』『相談室復活ッッ!』『さーて、今回のお題は・・・!?』

 

「よし、これです!・・・えーとなになに?『うみちゃんのお兄ちゃんになるにはどうすればいいですか?』・・・いや、無理ですね」

 

『しょっぱなから草』『はいはいシベリア行きますよー』『(´・ω・`)ソンナー』『でもその願いもわからなくもない』

 

「まったく、こういう質問のためにこの配信をしているんじゃないんですからね!では次!・・・『うみちゃんのお父さんになるためには年収がどのくらい入りますかね?』っていやだから!なんでこんな色んな意味でスレスレなものがきてるんですか!」

 

『いや、そうしたい理由は分かるけどダメやろ』『もう大草原不可避』『私もうみちゃんを養育したい!』『久しぶりだな変態、ここがお前の死に場所だ』『警察ニキ今日は殺意高いな』

 

コメント欄は冗談まじりに和気藹々としているが、他のメールを開いて確認しため息をつくうみ。メールの大半は、何故かうみに関するくだらないものばかりであり、まともに質問しているものは3件のみだった。

 

「と、とりあえず絞り込めました・・・次からこの手のメール送ってきた人のメアドはブロックしますからね!」

 

『はーい』『まぁそうなるよな』『うみちゃんの可愛さの前に散れ』『それはもうしてるから』『散っていったニキ成仏してクレメンス』

 

「えーっと、まず一件目は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・取り敢えず様子見ですね。でも、あまりにもしつこいようなら虫除けスプレーとかで追い払うのも一つの手ですね」

 

『ありがとうございます』『もう終わりか』『そりゃアホみたいなメールばっかでまともに質問してるやつ少ねーもん』

 

「さて、質問メールも終わりましたし、雑談でもしますか」

 

『雑談!いいね!』『蘇る初期うみの記憶』『フヒヒアババ(ボソッ』『あれは笑った』

 

メール画面を消し、配信画面へと向き直るうみ。視聴者のからかいに若干むくれるも、すぐにドヤ顔になる。

 

「あの頃の俺とは違うんですからね!どれだけ配信してきたと思うんですか!」

 

『セヤナ』『ソヤナ』『ソレナ』『ほんま』『ワカル』『ワカル(確信)』『ワカル(認識)』『知らんけど〜』

 

「・・・それでは雑談というわけで、何か話題ある方質問どうぞ」

 

視聴者の適当な返事に少しジト目になるうみ。そんなうみの表情をからかう視聴者に、うみのむくれ顔がさらにプクッと膨らむ。

 

『うみちゃんって学校とか行ったことある?』

 

「ありますよ。楽しいところでしたね〜」

 

『急にぶっこむな、凹む』『闇が・・・』『いや、まだ大丈夫、そんなにやばいもんじゃない・・・』『うみちゃんって趣味何かある?』

 

「ポケモンの世話とかこの配信ですかね。色々とありましたけどやってて楽しいですから」

 

『あんだけポケモンに囲まれてればそりゃなぁ』『可愛いのとかもいるし』『可愛いけどヤベーやつばっかやんけ』『ロr・・・少女1人での暮らしって大変じゃない?不審者とか』

 

「隣のおじいちゃんとかお世話になっているんでそこまでは。それに、ライ達もいるんで」

 

『あー、ライニキいるのは心強いな』『うみちゃん家は多分個人の家で日本一安全だろうな』『俺ならあんな魔窟には侵入しようとは思わんわ』『うみちゃんってゲームとか実況しないの?』

 

「結構聞かれますね・・・まぁ気が向いたら実況ってのもいいかもしれません」

 

そうして他愛もない雑談を続けていたうみだったが、突然スマホに着信が入る。

 

「?すいません、ミュート入ります」

 

相手はキョウだった。こんな時間に一体なんだろう、と思いつつうみが出ると、切羽詰まったキョウの声が聞こえる。

 

『もしもし!?うみちゃん、今大丈夫か!?』

 

「え?は、はい何ともないですけど・・・」

 

『良かった・・・』

 

盛大にため息をつくキョウにますます首を傾げるうみ。するとキョウが、焦りつつも話し出す。

 

『現在滋賀県の琵琶湖で巨大なポケモンが発見された。幸いなことに一般人に被害が出る前に避難が完了しているようだが、それでも危険なことに変わりはない。それと、マスコミの人間が居座ってポケモンの映像を生放送で流しているようだ』

 

「・・・!」

 

思わず息をのむうみ。湖、巨大という単語から瞬時に該当しそうなポケモンを脳内で探し出す。

しかし、キョウからの更なる情報で驚愕が焦りへと変わる。

 

『それだけじゃない・・・!確認しているのは琵琶湖だけでなく、東京の上野動物園、広島の宮島にもポケモンらしき謎の生物が出現している!東京の方は象のような形状の大型ポケモン、広島は鹿のようなポケモンの群れが現れている!』

 

「な!?」

 

『うみちゃん、どうすればいい!?』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時は遡り、騒動が起きる数十分前。署内の対策本部にて事務仕事をしていたキョウは、一通り終わった所でコーヒー片手に一息ついていた。

 

「・・・ふぅ」

 

「だぁぁぁ!くっそまた読まれなかった!なんでだよぉうみちゃーん!」

 

「・・・」

 

優雅に過ごしていたキョウだったが、反対側の席に座りイヤホン片手にスマホを凝視しているタケシの叫びに少しずつ額の青筋を増やしていく。

 

「お!?読んでくれるか!?・・・っだぁぁぁ!はっ、そうだ!今から連絡して読んでもラブハァ!?」

 

「やかましい」

 

「バイ、ぶみばぜん」

 

((((((またやってるよ・・・))))))

 

怒り心頭のキョウに顔をアイアンクローされ宙吊りになるタケシ。そんな2人を見ている他のメンバーももはや日常として受け入れているようだった。

 

「全く、なんなんだお前・・・仕事終わってないだろうが」

 

「ブハッ、死ぬかと思った!いやいや、うみちゃんの久々の配信ですよ!?ファンとしてはなんとしても見ないと!」

 

ドヤ顔のタケシにため息をつきつつ、スマホ画面を覗くキョウ。そこにはうみが楽しげに喋っている動画と、その下で流れていくコメントがあった。

 

「ほぉ・・・こんな風になっているのか」

 

「うみちゃん、割と古い機材使ってるんで画質はやや荒いっすけど、それでも分かるくらい楽しそうですよね」

 

「・・・本当にな」

 

どこか眩しいものを見るように微笑むキョウと、嬉々として変態粛清文をコメントし、度が過ぎた視聴者を容赦なくBANしていくタケシ。

 

「お前そんなことやってたのか」

 

「さっきも言いましたけどうみちゃんのパソコンスペック低いんですよ。それの関係上ウイルスとかハッキングには弱いんでこっちから遠隔でシャットアウトしてる状態ですね。こうでもしとかねーと特定厨がうざいですしねー」

 

「・・・はいてくな時代になったもんだなぁ」

 

タケシの言葉によく分からんがまぁうみに問題がないならいいか、と思考放棄しコーヒーを啜るキョウ。すると突然、他の職員の1人が声を上げる。

 

「キョウさん、通報入りました!」

 

「場所は!」

 

「上野動物園からです!象の檻の中に正体不明の生き物が入っていて、興奮した様子で暴れている、檻付近に一般人多数、避難が遅れており被害が出る前に救援をとのこと!」

 

真剣な表情で自身のデスクに駆け戻るキョウと、即座にパソコンのタブを変更し高速でタイピングを始めるタケシ。にわかに騒めき動きが活発になる対策課。

 

「公安に連絡!それと、パトカー用意しろ!俺とタケシで行く!」

 

「了解!」

 

「それと、捕獲用にモンスターボールの使用を上に申請!取りに行け!」

 

「はい!」

 

「!?キョウさん、これ!」

 

「・・・!?おい、何処だこれ!」

 

声を上げたのは、ポケモンに関する情報収集を仕事とするタケシの部下の1人だった。職員が指さしたのは生放送でどこかの湖を中継しているテレビ番組。そこには、興奮した様子で捲し立てるリポーターと、ズームで映し出される巨大なポケモンの姿があった。

 

『皆さま、ご覧になっているでしょうか!信じられません!まるで龍!それも水色の龍です!このような生物が、かつて見られたでしょうか!世紀の大発見です!』

 

『ちょっと離れて!危険です!』

 

『ちょっと、どいてよ!いい絵が撮れないじゃない!・・・皆さん、これはCGではございません!ご覧ください!真っ青な体表に、強面の凶悪な風貌!まさに、東洋風の龍です!』

 

『すげー、なんかの撮影?』

 

『良くできてるなーあれ。ネッシーみたいな奴?』

 

『ママー、あれ何ー?』

 

『もうちょっとこっちに来なさい、落ちたら危ないわよ』

 

 

「くそ、どこの局だ!急いで下がらせろ!映像も止めさせるんだ!」

 

「無理っすよ、生放送です!」

 

テレビでは、興奮したレポーターが喚くように喋る中、興味本位でスマホを向けている若者や恐怖からか泣き出す子どもを抱えて足早に去る母親の姿などが映し出されている。野次馬は増える一方で、誰も彼もがただのテレビの企画か何かだろうと考えているようで特に深刻な感じではない。

通りがかったお巡りさんが慌てて避難を促しているが、レポーター達は意に介さず撮影を続行しているようだった。

肝心のポケモンはと言うと、体を水面から出して困惑しているかのように周囲を見渡しており、その後ろでは慌てて逃げるモーターボートが見える。

 

「・・・取り敢えずうみちゃんに連絡を。あのポケモンの正体を突き止めて、滋賀県警に対策を・・・」

 

「キョウさん!ヤベェっすよ、今度は広島だ!」

 

「!?」

 

一旦うみから情報を得ようとスマホを取り出したキョウだったが、タケシがパソコンから目を離さず焦りの声を上げる。

 

「三件同時だと・・・!?どうなってる!」

 

「どうなってるも何も、俺らには分からんすよ!広島の方はなんか鹿みたいなポケモンの群れが集まってて困ってるってくらいの軽いもんです!でも、市民が刺激して暴れ出したらマジでやべーっすよ!」

 

猛烈な勢いでキーボードを叩くタケシ。宮島の観光客からの通報を受けた付近の交番からきたお巡りさんが対応しようとしているが、見たことのない生き物に下手に手を出せず簡単な避難誘導しかできていない状態だった。

 

「!キョウさん!テレビ!テレビ!」

 

とその時、琵琶湖を移していたテレビに異変が起こる。龍のようなポケモンがその大きな口を更に大きく開いたかと思うと、そこから水流を発射した。

 

『きゃぁぁぁ!?』

 

『に、逃げろ!』

 

『機械とかじゃないのかよ!なんだよあの化け物!』

 

水流はレポーター達の近くに着弾し、湖の岸がえぐれる。えぐれた岸辺を見て、恐怖に駆られた野次馬がクモの子を散らすように逃げ出した。

 

『皆さん、見ましたでしょうか!?あの謎の龍は、なんと水流を放ちました!その威力も見ての通りです!あ!な、なんと龍は、またしても水流を放っています!信じられません!出鱈目に先程の水流を放ち、暴れています!』

 

『な、何をしているんだ!早く逃げないか!』

 

『カメラに入ってしまうので、ちょっと下がってください!』

 

「何バカなことしてんだこいつ・・・!?」

 

ところが、他の人間が逃げ出す中レポーターとカメラマン達は逃げることなく撮影を続行する。興奮した様子のレポーターは、滅多やたらに水流を撃ちまくる青い龍の様子をカメラに向かってまくしたてている。必死に避難を促しているお巡りさんがカメラに入るが、他のスタッフが引きずっていき、撮影が止まる様子はない。

 

「早く逃げろってバカどもが・・・!県警に連絡を急げ!」

 

「はい!」

 

「キョウさん!上野の方も面倒なことになった!ポケモンが檻から逃げ出して動物園内を爆走してる!」

 

「!くそ、対応が追いつかん・・・!」

 

キョウが指示を飛ばす中、上野でも更に問題が発生する。てんやわんやな中、それでもできることを、と必死に指示を飛ばすキョウ。

 

「キョウさん!パトカー用意出来ました!」

 

「よし、タケシ!行くぞ!」

 

「ちょっと待ってください、なんか電話・・・もしもし・・・ふぁ!?」

 

「どうした!?」

 

急いで出て行こうとするキョウだったが、突然妙な声を出して固まるタケシ。またしても問題か、と慌てるキョウに、タケシが苦笑いしながら振り返る。

 

「・・・琵琶湖に、ワタル君いるそうです」

 

「・・・えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし、取り敢えず届けといたよ母さん」

 

『悪いねぇ、帰って早々にこんなおつかい頼んじゃって』

 

「別にいいよ、気にしてないし(おつかいってレベルの距離じゃねーと思うけど・・・)」

 

琵琶湖の騒動が起こる直前。ワタルは母親からの頼みを受け、琵琶湖の近くにある知人の元へとやってきていた。

・・・東京から滋賀までという長距離おつかいに少し思うところはあったようだが。

 

「じゃあ帰るから。・・・うん、それじゃ」

 

通話を切り、スマホを納めるとともにため息を溢すワタル。

 

「・・・まぁ、こいつのためにもちょうどよかった・・・って事にするか」

 

そう言ってモンスターボールを手に取る。その中には、とぐろを巻いてふてくされているハクリューがいた。

 

『・・・』

 

「すまないって。ほら、もうすぐ琵琶湖に着くから、人気のないとこで泳げばいいさ」

 

タシーンタシーンと尻尾の先でボールを中から叩くハクリューに、苦笑しつつ宥めすかすワタル。

ハクリューはワタルとともに家に帰った際、少しトラブルを起こしていた。

 

「まぁそりゃ大きくなったんだしなぁ。ああなってもしょうがないさ」

 

『・・・』

 

家に着いた際、ワタルはミニリュウの時と同じ感覚で何も考えずボールを放った。ここで補足しておくと、ミニリュウは全長1.8mであり、ハクリューは更に大きく、4.0mもあるのだ。重さも16.5kgになる。

 

『・・・そいつを家の中で出すのは禁止!いいね!』

 

『・・・はい』

 

代償は、ワタル家の床と一部の家財だった。涙目になりながら説教をする母親に何も言えなくなったワタルとハクリューは、ただ静かに頷くしか出来なかった。

そんなわけでハクリューは人目を避けるためと、家を壊さないためにモンスターボールの中で過ごすこととなってしまったのだ。いくらモンスターボールがポケモンを長時間入れていても大丈夫だと言っても、限度がある。その為、おつかいのついでにハクリューのガス抜きとしてワタルは琵琶湖に来たのだった。

 

「さて、着いた・・・なんだ?」

 

琵琶湖に着くと同時に謎の光景を見つけるワタル。大慌てでこちらへ走ってくる大勢の人ににギョッとするが、そばを通っていく男性を1人捕まえて、話を聞く。

 

「すいません。何かあったんですか?」

 

すると、男性は手を離せばすぐに逃げ出しそうなほど焦りながらまくし立てる。

 

「変な龍みたいな奴が出たんだ!凶暴だし、青いし、口からなんか出すし・・・あんなの普通の生き物じゃねぇ!君も早く逃げろ!」

 

「・・・!ありがとうございます!」

 

「お、おい!そっちじゃないぞ!?何やってるんだ!」

 

男性の話は滅茶苦茶で分かりづらかったが、断片的な情報で嫌な予感がしたワタルは人の逃げてくる方向へと走り出す。

 

(普通の生き物じゃない何か、青い、口から何か吐く・・・)

 

モンスターボールの中のハクリューを見て速度を上げるワタル。人が少なくなり、湖に近づいていくと、暴れる青い何かを見つける。

 

「見えた・・・!あれか!」

 

湖の岸にやってきたワタル。そこには、移動して岸に近いところまでやってきた青い龍のようなポケモンと、そこから少し離れた場所でお巡りさんに引っ張られながらもカメラに向かって喋り続けるレポーター達取材班を見つける。

 

「何やってるんだ・・・っ!不味い!」

 

ワタルが呆れながらレポーター達を見ていると、ポケモンがレポーター達へと大きな口を開けて襲いかかる。そこでようやく身の危険を感じたのか、レポーターの顔が恐怖で引きつる。カメラマン達取材班も恐怖で動けないのか、足をガクガクさせながら見上げるだけである。

 

「まにあ・・・えぇぇえ!!」

 

ワタルは咄嗟にモンスターボールを振りかぶり、全力で投げる。ある程度飛んだところでボールが割れ、ハクリューが光とともに現れる。

 

「ハクリュー!『ドラゴンテール』!」

 

「フゥ!!」

 

ワタルの指示で力を尾に溜めたハクリューが鞭のようにしなるそれをポケモンの横っ面めがけて振り抜く。反応できなかったポケモンがクリーンヒットを受けて吹き飛び、岸に体を強かに打ち付けられる。

レポーター達のポカンとした顔を横目に空中で態勢を整えたハクリューが着地する。

 

「・・・行けるか、ハクリュー!」

 

「フゥ!」

 

ハクリューの元へと駆け寄り、ポケモンに正対するワタル。ハクリューはボールから出ることができて心なしか生き生きしており、好戦的に相手を睨みつけている。

一方のワタルは、その目線は青い龍のようなポケモンを見つつ駆け寄る際に見えたカメラを思い出し冷や汗をかくのだった。

 

(・・・ものすごくやらかした感がすごい)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『・・・というわけで、今少し大変な事になっているんだ!頼む、うみちゃんの力を貸してくれ!』

 

事のあらましを上野へ向かっているキョウから聞いたうみは、大慌てで動き出す。

 

「は、はい!少しだけ時間ください!俺は広島の方を見てきましょう。釣り師ニキにはそのまま湖のポケモン・・・青くて龍みたいって言ったら多分ギャラドスかな・・・そのまま対応してもらって、キョウさん達は上野をお願いします!」

 

『すまない!』

 

一旦切ります、と通話を切り配信部屋へ向かううみ。ミュートを切り、急いでいる為重要なことだけを捲し立てる。

 

「すいません!今ポケモン関連の問題が起きた為、その対応に向かいます!今日の配信はここまで、急で申し訳ありませんが、さようなら!」

 

『アイエエエ!?』『まじか』『せっかくリアルタイムで見れるいい機会だったのに!』『えー(´・ω・`)』『よしその事件、今すぐ調べるぞ!』『スレに向かえ!』『不謹慎だが楽しくなってきた!』

 

配信を切った後も不平不満のコメントや視聴者間の情報交換が始まっていくが、うみはそれらを全て無視してパソコンの電源を落とし、タンスから帽子とリュックを持ち出す。

 

「ライ、ミロとバンギラス、それとゾロアークを連れてきて!」

 

「ライ!」

 

「スピアー達は、出かけてくるから防犯よろしく!」

 

「スピッ!」

 

着替えつつ自身のポケモン達へと指示を飛ばすうみ。階段を駆け下り、マサキのいるリビングへと向かう。

 

「マサキさん!」

 

「おう、取り敢えず3個、試作やけど出来たで!ってなんや、出かけるんか?」

 

目の隈がすごいマサキがうみに生気の感じられない笑みで弱々しく手を振る。そんなマサキの横に置かれたやや小ぶりな機械をすぐにひっつかむうみ。

 

「出来たんですね!じゃあこれ持っていきます!」

 

「え、ちょ、まだ試運転が!?」

 

「緊急時です!仕方ないです!」

 

そう言って今度はリュックからボールを取り出すうみ。

 

「・・・頼んだよ、デオキシス!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「状況は?」

 

「はい、現在目標はライオンの檻付近にいます!今のところは大人しいですが、数分前には突進で檻を破壊して周囲に甚大な被害を出していました」

 

上野動物園へとやってきたキョウとタケシ。先に到着していた警察官に状況を説明してもらいながら、バリケードテープをくぐり園内へと入る。

 

「現在地をドローンで追いながら監視を続けています。しかし、飼育員の話ではあんな象は見たことがないと・・・」

 

「ああ、問題ない。こちらで把握している」

 

「は・・・?」

 

疑問符を浮かべる警察官を置いて、防弾チョッキに身を包み、アタッシュケースを持ったキョウとタケシがポケモンのいる場所へと歩き出す。

 

「先輩、大丈夫なんですか?ただの警官2人であの妙な象を捕まえられるとは・・・」

 

「俺もだ。・・・だが、あの人らは外来種対策課だ」

 

「えっ、あのよく分からない課ですか!?」

 

「ああ。この手の事件は全部あの課で対応することになっているらしい」

 

「でも、今いた2人ってキョウさんとタケシさんですよね?『人間最終兵器のキョウ』と『ウィザード級もとい将来魔法使いのタケシ』のコンビですか・・・」

 

「そのあだ名、絶対本人達の前で言うなよ?」

 

心配そうにキョウ達を見送る警察官2人。一方のキョウは、そんな警察官達の呟きにため息を溢すのだった。

 

「はぁ、うちの課はやはり妙なものとして扱われるか・・・というか俺のあだ名なんなんだ・・・」

 

「当たり前のように聞こえてるっぽいですけどもう10メートルは離れてますよね?なんで聞こえるんすか・・・」

 

「鍛えたからな」

 

「鍛えりゃあできるようになる次元じゃねぇ!?」

 

軽口を叩き合い少し空気が和む中、キョウがタケシにスマホを渡す。

 

「うみちゃんから情報が来た。一応見ておけ」

 

「うっす。どれどれ・・・?」

 

『送ってもらった写真から、ポケモン名ドンファン。よろいポケモン、タイプじめん。頑丈な皮膚を持っていて、並大抵の攻撃は弾きます。丸まってのころがる攻撃は民家もバラバラにするくらい強力なので気をつけてください』

 

「うっへー、民家バラバラとか食らいたくねー」

 

嫌そうに表情を歪めるタケシ。すると、キョウが曲がり角の所で人差し指を口元に持っていき静かにするよう指示する。

2人がそっと曲がり角を覗くと、そこには動物園内をうろつく不機嫌そうなポケモンがいた。

象のようなシルエットと、鼻から背中までを覆う黒い皮膚。口の横から出た鋭い牙が特長的なそのポケモンを見て、2人の雰囲気が変わる。

 

「・・・写真と一致。奴がドンファンだな」

 

「んじゃまぁ早速・・・」

 

タケシがボールを握りしめるが、キョウが手を押さえて止める。

 

「待て、もう少し様子を見る。このまま奴が歩いて行けば、上手いことこの袋小路に行ってくれそうだ」

 

園内の地図を見せながらそう言うキョウに、渋々タケシがボールを納めた時だった。

 

「うぁ〜〜ん!かぁさん、どこ〜!」

 

「!?」

 

「な!?」

 

「・・・」

 

キョウ達のいる場所とは反対、行き止まりの方から泣きながら男の子がやってくる。最悪だ、と真っ青になるキョウ達。泣き声に反応したドンファンは、ゆっくりと男の子の方へと歩き出す。

 

「不味い!」

 

「くっそ、避難くらいしっかりさせろよ!」

 

悪態をつきながらも飛び出す2人。それぞれにボールを取り出すと、ドンファンの目の前に向けて放る。

 

「ズバッ!」

 

「・・・!」

 

ズバットとヒトモシがドンファンの前に立ち塞がり、それぞれに威嚇する。そんな二匹を睨みつけ、ドンファンが唸り声を上げる。

 

「ブルルゥ・・・」

 

「ズバット、頼むぞ!」

 

「ヒトモシ、持ち堪えてくれ!」

 

動物園でも、今まさにバトルの火蓋が切られたのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

【緊急事態】ポケモン、テレビ生放送【釣り師ニキ】

 

12:名無し

 

すげー、まじで生放送だよ

 

13:名無し

 

あれなんて言うポケモンなんだ?

 

14:名無し

 

さあ、うみちゃんの紹介したことない奴だな

 

15:名無し

 

あれ見るからに何かの強化体みたいなんだけど、ひょっとして進化したやつなのかな

 

16:名無し

 

きっと進化前も凶悪な面してんだろうな

 

17:名無し

 

というかなんでこの生放送終わんねーの?

 

18:名無し

 

マスゴミのことだ、いいネタ程度にしか考えてねーんだろうよ

 

19:名無し

 

まぁそのマスゴミのおかげで俺らも見れてるんだがな

 

20:名無し

 

うわ、カメラの方来てんぞ!?

 

21:名無し

 

流石に逃げろって!

 

22:名無し

 

レポーター根性すげーな!?って思ったがこれ腰抜けてるだけか

 

23:名無し

 

カメラマンカメラブレブレ、無能

 

24:名無し

 

化け物みてぇなやつに迫られててもブレが許されないとかプロカメラマン涙目だな

 

25:名無し

 

ああっ!龍ポケモン、吹っ飛ばされたー!

 

16:名無し

 

ん?なんか見覚えある奴じゃね?

 

27:名無し

 

ハクリューじゃん!ってことは・・・

 

28:名無し

 

釣り師ニキキター!これで勝つる!

 

29:名無し

 

いやでも行けんのか?相手の方がでかいし怖いぞ

 

30:名無し

 

ハクリューニキはカッコいいから負けねーよ!

 

31:名無し

 

せや!カッコいいやつは負けないんだよ!

 

32:名無し

 

えぇ・・・

 

33:名無し

 

というかこれ一応は全国放送で生放送だろ?この流れはポケモン害獣認定待った無しな気がする

 

34:名無し

 

 

35:名無し

 

 

36:名無し

 

 

37:名無し

 

ま、待て!釣り師ニキが勝って捕獲すればワンチャン有耶無耶に・・・

 

38:名無し

 

その場合は解剖と研究のために科学者連中が動くんだろうなぁ

 

39:名無し

 

あかん

 

40:名無し

 

詰んだ

 

41:名無し

 

いや、まだだ!まだうみちゃんという砦がある!

 

42:名無し

 

せ、せやな!

 

43:名無し

 

ってか、なんか広島の方でも騒ぎ起こってるんやけど

 

44:名無し

 

なんか宮島行きのフェリーが欠航してるんだけど。しかも原因が未確認生物の群れって・・・

 

45:名無し

 

おわた・・・

 

46:名無し

 

諦めがはえぇよ!

 

47:名無し

 

ごくu・・・じゃなかったうみちゃーん!!早く来てくれー!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ポケモン騒動が連鎖し大事となっている頃。とある港町のとある建物に、黒服の日本人がやってきていた。

男が中に入るとそこには、当たり前のように酒やトランプの横に拳銃が転がる世紀末な酒場があった。当然そこに座る者達も一般人ではない。その目には狂気が宿っており、奥の方では殴り合いの喧嘩すら起きていた。まさに無法地帯である。

 

「ヘイ、こっちだゼ!」

 

ふと、喧騒の中でも不思議と通る陽気な声が聞こえ、カウンターを見る。するとそこには、迷彩柄の軍服のような服を身に付けた欧米人の男が座っていた。躊躇いなくその男の元へと向かい、横に座る。黒服の男が座るとともに欧米人の男は饒舌に喋り出す。

 

「呼び出しといて遅れてくるなんテ随分ひでぇじゃねぇカ」

 

「仕方ないだろう。少々気になることがあったのでな」

 

「気になる事?」

 

「・・・火傷顔が日本へ向かったそうだ」

 

「oh・・・それは確かにビッグニュースだナ」

 

「全くだ。この街にしばらく滞在するつもりだったんだが、おかげで予定が狂ってしまった」

 

「Never mind。・・・ほら、折角だから一杯飲めヨ」

 

そう言ってグラスに注がれた酒を受け取ると、黒服の男はそれに口をつける。

 

「・・・ほう、たまにはこういうのも悪くない」

 

「だろウ?ここは結構気に入っているんダ。・・・じゃ、本題に入ろうカ。それデ、話ってのはなんダ?」

 

「そうだな・・・。現在起きている動物への異変には気付いているか?」

 

「異変?あア、妙な生き物が増えていってるっていうあれカ。知ってはいるサ、だがあれがどうしタっていうんダ?」

 

グラスを煽りつつ聞く軍服の男に、黒服の男はなんて事もないように告げる。

 

「アメリカ。君の祖国でその妙な生き物・・・ポケモンが多数出現し、今尚パニックが起きている事もか?」

 

「・・・何?」

 

終始笑っていた軍服の男の顔から笑みが消え、ポケットから端末を取り出し何処かへと連絡し始める。

黒服の男は、隣に座っていた中国系アメリカ人の女と日本人の男の喧嘩を見つつ男を待つ。

 

「・・・shit」

 

通話を終え、苦々しくそう呟いた軍服の男は、勘定を済ませ立ち上がる。

 

「行くのか?」

 

「当然ダ。それで、何が目的ダ?」

 

「まさか。俺がどうこうしたわけじゃない。今回のこれは純粋な善意さ。・・・これを持っていくといい。きっと役に立つ」

 

黒服の男が懐から取り出したのは、赤と白の二色に分かれた丸い機械・・・モンスターボールだった。

 

「これは?」

 

「ポケモンだ。奴らに対抗するには絶対必要になる。これを君が使うのか、軍で研究するのかは好きにするといい。ただ一つ、私から言えることは『ポケモンにはポケモンでしか対抗できない。普通なら』と言うことだけだ」

 

そう言って黒服の男は酒を注ぐ。しばらくモンスターボールを手に取り眺めていた軍服の男だったが、ぐっと握りしめニヤリと笑う。

 

「・・・とりあえず礼を言っておくゼ、サカキ」

 

「・・・礼はいいさ。また会おう、マチス」

 

軍服の男・・・マチスが去っていくのを横目に見つつ、黒服の男、サカキはゆっくりとグラスを傾けるのだった。

 

「・・・『次』は失敗しないさ」

 

その顔には、酷薄な笑みが浮かんでいるのだった。

 




次回もお楽しみに
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