TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

39 / 55
今回少し短めです。
外出自粛してるとついつい手が菓子類に伸びてしまう・・・
体重がヤバい(確信)
皆さん体調管理はしっかりと。コロナ怖いですから


第37話

「うみちゃん、だいぶかかったが、とうとう出来たぞ」

 

「おお、ありがとうおじいちゃん!」

 

政府関係者との対談を終えた次の日。若干目元に隈のできたガンテツおじいちゃんが、3つのボールを持ってくる。それぞれこれまでに確認されている自然発生したモンスターボールとは大分気色の違うボールだった。

 

「こっちは『ダークボール』・・・これは『ネットボール』で、これは『クイックボール』・・・!これどうやって作ったの?」

 

「それがのぉ、自分でもよく分からんというのが実情なんじゃ」

 

「わからない?」

 

話を聞くと、なんでも俺がスピアーたちに頼んで捜索し、やっと見つけたボングリを渡して作成を依頼して数日後、おじいちゃんがボールを作ろうと触った瞬間、頭にふわっとやり方が浮かんできたそうだ。まるで最初から知っていたかのようなその記憶を頼りにボールを完成させると、何故かそれからぱったりと記憶が消えて思い出せなくなってしまったのだと言う。

 

「なんでじゃろうかのぉ?」

 

「うーん・・・俺にもちょっとわからないかなぁ。まぁ、出来ないことはない、って言うのが分かっただけでも良かったよ。本当にありがとうねおじいちゃん」

 

おじいちゃんはニカっと笑い、頭を撫でてくれる。

・・・なんだかおじいちゃんの撫で方って安心するな。

 

「ところで、そっちのは新しいお友達かい?」

 

「あっ、うん。俺の大事なポケモンなんだ!」

 

ふとおじいちゃんの視線が俺の後ろに向く。そこにいるのは、赤い穴だらけの体に黄色い足と首がニョキッと出てきたような妙なポケモン。こいつこそ、俺のパートナーの中で最もたちの悪・・・テクニシャンなポケモンだ。

 

「つぼっちって言うんだ。ほら、挨拶してみな」

 

「・・・」

 

「・・・寝とらんか?」

 

「え!?いつの間に!?」

 

気づくと、ポケモン名ツボツボことつぼっちはスヤァと心地良さそうに寝息を立てていた。お、おかしいな!?さっきは嬉しそうに俺とじゃれてたのに!?

 

「まぁええわ、挨拶はまた今度でいいじゃろう。それよりも、何やらまた東京に呼ばれとるんじゃなかったか?」

 

「あ!そうだった、もう来ちゃう!ごめんねおじいちゃん、またあとでー!」

 

「おうおう、気をつけてなー」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「すいません、うみというのですが・・・」

 

「ん?ああ、対策課の・・・どうぞ、通っていいですよ」

 

「ありがとうございます」

 

受付にいた婦警さんに礼を言い対策課へと向かう。何やら不思議そうな視線を受けるが、中にはあああの子か、というような顔の警官もいる。

 

(まさか警視庁内を歩くことになるなんてなぁ)

 

そんなことを考えていると、対策課の部屋の前に到着する。

 

「すいませーん、うみですけどー」

 

そう言ってノックをしてガチャリとドアを開ける。中には前と同じように対策課の人たちがデスクワークをしており、応接用の曇りガラスの仕切りが置いてある場所からニュッとタケシさんが顔を出す。

 

「ああ、うみちゃんもう来たのか。入って入って」

 

「お疲れ様ですタケシさん。それで、今日はどう言ったご用件で?」

 

手招きするタケシさんに呼ばれ、応接室でソファに座る。机を挟んで対面に座るタケシは、困ったような顔で親指を背後に向ける。

 

「?・・・わぁ!」

 

タケシさんの横を通り抜ける。するとそこでは、サメのようなポケモンとワタルさんが戯れていた。

 

「すごい、フカマルですね!」

 

「なるほど、フカマルってのか。今日きてもらったのは他でもない、こいつワタルくんのポケモンになってるんだが、やんちゃすぎていうこと聞かないんだよ。うみちゃんならなんとかできねぇかなって」

 

タケシさんの言葉を聞きながらも、目はフカマルから離れない。ポケモンのタイプとしてはみずタイプとかの方が好きだが、やはり元男、カッコいいポケモンにはコーフンするもんだ。

 

「せいかくがやんちゃなんですか・・・なるほど、多分発散したい・・・オブラートに包まずいうなら暴れたいんだと思います」

 

ワタルさんの頭に噛み付いているフカマルと、それに慌てながら痛い痛いと走り回るワタルさん。まぁ、フカマルが本気で噛んでいたら速攻あの世行きだろうし、甘噛みだ。・・・多分。

 

「うーん、じゃあ一階の特訓場に行こうか」

 

「特訓場?」

 

「ああ、ホントはそこに武道系の鍛錬ができる畳張りの道場もどきがあったんだけど、対策課ができてしばらくしてから所長がポケモンをとっくんするために頑丈で開けた空間にしてくれてるんだ」

 

なんと、俺の家でいうところの庭みたいに、ポケモンを戦わせられる場所ができたのか。それなら存分に遊ばせられるだろう。・・・あ、そうだ。

 

「なら、俺とワタルさんでポケモンバトルしましょうよ!ちょうど初対面の子を連れてきてますし!」

 

「ん?」

 

「お?」

 

「ガブッ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・何があった」

 

うみが警視庁へとやってきている頃。キョウは突然連絡を受け、マサキの寝ぐらへとやってきていた。そこには、荒れに荒れた部屋と、腕から血を流し憔悴した様子のマサキと、見たことのないポケモンがいた。マサキは腕に包帯を巻いているが、出血が酷いのか血が滲んでいる。ポケモンの方は心配そうにマサキに寄り添い、キョウを警戒していた。

 

「・・・おっさんか。ま、ざまぁないわ、まさかあんなことしてくる思うとらんかったからなぁ」

 

「・・・いつからだ!」

 

「・・・昨日の夜や。おっさんはうみちゃんとこいっとったやろ、せやから連絡は控えとったんや」

 

「アホ!」

 

部屋に入って一瞬思考が飛んだキョウだったが、すぐに服を脱ぎ、マサキの腕をさらにきつく縛る。苦悶の呻き声を上げるマサキ。それを見てもう喋るな、と言うキョウだが、マサキは悔しげに呻く。

 

「電気を落とされて、暗闇やったからよぅわからんかったけども、多分相手は二人。暗闇に乗じて、窓割って入ってきよったんや」

 

「お前を狙ったのか?なんのために・・・」

 

「いや、うみちゃんが作ったポケモンの情報紙を持ってかれた」

 

「!」

 

マサキのその言葉に、驚愕と疑惑、そして戸惑いの感情がキョウの中に渦巻いた。

 

「・・・何故そいつらはその存在を知っていた・・・!?うみちゃんはまだそれを公にはしていないんだぞ!?」

 

キョウですらその存在を初めて知ったそれを、的確に狙った。様々な考えが頭によぎる中、ふとある可能性を思いつく。

目を見開くキョウにマサキは気づいたか、と頷く。

 

「そうや。多分ワイらかうみちゃんのどっちか、最悪両方ともが、」

 

「「何かからの監視を受けている」」

 

最後の一言が重なり、一瞬の静寂が訪れる。

 

「・・・まぁ、ワイも殺されそうになったんやけど、こいつが来てくれたおかげでどーにかなったわ」

 

「そうだ、こいつは・・・?おそらくポケモンだろうが、見たことがない」

 

「fjうfjsfんxjdjf?fjdjfksんgjしぇhxj!」

 

意味不明な鳴き声で鳴くそのポケモンを見て訝しむキョウ。薄い赤と水色の配色、角ばったそのフォルムは、まるで昔のゲームのキャラのようだった。

 

「連中が襲ってきたときに、パソコンから現れたんや。なんかよー分からんがワイに懐いてくれとるし、こうして夜が明けるまで一緒にいてくれるし、気性は荒くないみたいや」

 

「とにかく、お前は病院へ行け。こいつに関しては、今はお前が持っていていい。ほら、モンスターボール」

 

マサキにボールを渡し、119へと連絡を入れる。しばらくして救急車がやってきて、マサキは病院へと搬送されることとなった。

 

「おっさん。うみちゃんを、頼んだで」

 

「・・・ああ」

 

マサキの突き出した拳に自分の拳をそっと合わせたキョウ。救急車が去っていくのを見送り、自分の車へと戻りアクセルをふかす。

 

「・・・俺だ!大至急警視庁へうみちゃんならびにポケモン保持者、トレーナーたちを集めろ!うみちゃんは今どこにいる!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『こちら黒星。そちらはどうなっている』

 

『こちら青星。ダメだ、持っている火器では突破できない!ぐぁっ!?』

 

『こちら赤星。総員撤退準備に入れ。目標Aは諦める。痕跡を残すなよ!』

 

『黒星、了』

 

『青星、了!』

 

「問題はない。既に十分な情報は得た・・・こちらも祖国へ帰投する」

 

「了」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うみちゃん、本当にいいのか?」

 

「はい!」

 

警視庁、所長により作られたポケモン特訓場へとやってきたうみ達。ウッキウキのうみと、不安げなワタル、それを横で眺めているタケシ。野郎二人組には何故そこまでテンションアゲアゲなのか分からないが、まぁ美少女の笑顔が見れるんだから役得、と思うことにした。

 

「ルールは説明した通り、一体ずつ、三体までを用いるシングル戦。交換は任意で行なってOK。戦闘不能は本来ジャッジが行いますけど、今回は俺が判断します。構いませんか?」

 

「問題ない。というか、うみちゃん以外にその資格持てる奴がいないぞ」

 

「間違いねぇな。俺だってまだ自分のポケモンを把握するので精一杯だし」

 

二人の言葉に一つ頷き、ボールを取り出すうみ。対するワタルも、ボールを手に取・・・ろうとしたところでフカマルが勝手に前に出る。

 

「あ、おい!戦いたいのはわかるけど、今は戻れって!」

 

「ガブガブッ!」

 

「・・・あーもう!いけ、フカマル!」

 

「ガブゥッ!」

 

譲る気がないと分かり、やけくそで初手をフカマルとしたワタル。そんなワタルを見ながらニヤリと悪い笑みを浮かべたうみは、青いボールを取り出す。今日はライとつぼっちの他には家で保護しているポケモンの中からワタルさん達の相手にちょうど良いポケモンをチョイスして持ってきたから、ミロとデオキシスは留守番中である。しかし、

 

「・・・建前でフカマルの為って言ったけど、ひょっとしたらフカマルは不完全燃焼で終わるかもな」

 

そう呟くとともに、思いっきりボールを放る。

 

「いけ!つぼっち!」

 

「・・・クォ?」

 

ボールから光とともに現れたつぼっちは、寝ぼけ眼で周囲を見て、首を傾げている。

 

「確かに見たことないポケモンだ・・・でも、強そうには見えないけどなぁ」

 

「・・・油断はするなよフカマル。相手はあのうみちゃんだ」

 

「ガブガブッ」

 

「では、始めましょう!ポケモンバトル・・・スタート!」

 

俺の宣言で、久しぶりの対トレーナー戦バトルが始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・ダメだ、どうしたらいいんだ!」

 

一方その頃、うみと会いポケモンという存在を知った政治家、大和大臣。彼は今後の日本の為にもポケモンとは共存しかないと知り、次期国会でその事について言及するつもりであった。しかし、

 

「どうあがいても頭がおかしくなったと思われかねんぞ・・・」

 

そう言って頭を抱えてしまう。現在彼が作成しているのは、ポケモンに関する対処の予算を得るために必要な答弁の草案だった。普段なら一部だけでも部下に任せるところだが、内容が内容のため自身で作るしかなかった。しかし、ポケモンを知らない他の政治家に対し何を言ったところで響かない。

 

「全員が一度でいいからポケモンを見ていれば話は違うんだろうが・・・待てよ?」

 

うんうんと唸っていた大和大臣だが、ある策を思いつく。しかし、彼は苦虫を噛んだような顔になる。

 

「・・・ダメだ、この手は本当に最後の奥の手だぞ。考えろ、もっと別の方法があるはずだ・・・」

 

頭に浮かんだその案を振り払い、再度思考の海へと落ちそうになったときだった。

 

「・・・私だ」

 

『大和さん、お電話です。森本キョウと名乗っていらっしゃいますが』

 

「!繋げ」

 

鳴り響いた電話にワンコールで受話器を取る。相手はどうやらキョウという、うみという専門家の少女といた男だ、と思い出す。大和大臣は何があったのかと電話を繋いだ。

 

「もしもし」

 

『もしもし!森本です!緊急の用件でお電話いたしました!』

 

「何かあったのですか?」

 

『うちで預かっていたポケモン保持者が、何者かから襲撃を受けました!』

 

「なんだと!?」

 

思っても見なかった用件に思わず立ち上がる大和大臣。しかし直ぐに心を落ち着かせ、冷静に努める。

 

「それで、その保持者は無事なのですか!?」

 

『幸い、ポケモンが襲撃者を撃退したようです。しかし、負傷しておりましたので病院に』

 

「そうか・・・」

 

ひとまず無事であるということがわかりホッとする大和大臣。

どんな流れになるにせよ、国内のポケモンを既に持つ人材は貴重である。そのためその報告に安堵する大和大臣だったが、気を引き締めざるを得ない言葉が続く。

 

『ですが、襲撃者はどうやらうみちゃんが作成したポケモンの資料を盗んで行ったようです』

 

「なんだと・・・?」

 

その言葉に、眉を潜める大和大臣。数瞬の間思考し、指示を出す。

 

「とにかく今は、ポケモン保持者の保護を行うべきだ。中でも、うみちゃんの身柄は最優先しろ」

 

『了解です。既にこちらの人員を動かし、保持者の保護を開始しました』

 

「話が早くて助かる。それと、うみちゃんを含めた全保持者を集めたら再度連絡をくれ。私もそこに向かう」

 

『大臣がですか!?』

 

「今はポケモンに関することで少しの憂慮も残せない。頼む」

 

『了解!』

 

通話が終わり、受話器を下ろした大和大臣はため息をつき椅子へと倒れ込む。

 

「・・・どうなっているんだ。何が始まろうとしているんだ」

 

天井を見上げ、大和大臣は呆然とそう言ったのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「フカマル!『たいあたり』!」

 

「ガブガブッ!・・・ガッ!?」

 

「『からをやぶる』」

 

「くそ、あれをさせたらまずい・・・!フカマル、『すなじごく』!」

 

「お、やりますね。じゃあつぼっち、『ねむる』」

 

「なぁ!?またか!」

 

「・・・zZZ」

 

「くそぉ!」

 

そこには、異様な光景が広がっていた。周囲には重力を無視したかのように浮遊する岩。それらは決して攻撃とは言えない。しかしそれのせいでワタルは視界を遮られ、さらにはその岩の持つ「効果」に苦しめられていた。

そんな中、これまでのやり取りから想像もつかないほどワタルの指示を忠実に守っているフカマルが必死に突撃を繰り返す。

 

「ガブッ」

 

「・・・zZZ」

 

「な、なんで・・・!」

 

うみとワタルのポケモンバトル。ワタルは感じたことのない恐怖と、一向に倒れないうみのポケモンへの畏怖を感じていた。

フカマルは既にボロボロ、手もちのハクリューは既にひんし判定を受けており、琵琶湖の件で預かっていたギャラドスに至っては、「出すと負けが決まる」状態まで追い込まれており実質戦闘不能。

観戦していたタケシは何が起きているのか全く理解が及ばず、その異様な光景に冷や汗を流していた。

 

「これは・・・一体!?」

 

「なんなんだよ、そのポケモンは!」

 

驚きの声を上げる二人に対し、うみは悪い顔でニシシと笑った。

 

「さぁ・・・何でしょうか?」

 

そこには、どこか似合っているようにも見える岩のようなヘルメットを被り、

畏怖堂々とした佇まいでどっしりと構え、

何者をも寄せ付けないと言わんばかりの、

厳のような、

鉄壁を体現したかのような、

難攻不落の要塞と化した

・・・安らかな寝顔のつぼっちがいた。

 

「・・・zZZ」

 

・・・つぼっちがいた!




つぼっち(ツボツボ)♂ のんき
よく寝る。パソコン組で、うみちゃんのパーティーでの先鋒役。しょっちゅう寝る。対トレーナー戦特化型で、あまり使ってもらえない。かなり寝る。

次回もお楽しみに

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。