TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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やあ(土下寝)
ええ、言い訳する気などありません・・・遅くなり申しました。
書きながら「これ面白いのか?」とか考えては消し、考えては消しを繰り返し、とうとうゴミができました。正直迷いましたが、心の中で「なにやっても基本二次創作だから気にするな」と悪魔から囁かれましたので投稿です(´・ω・)


第39話

朝の日差しを受けながら、庭へ用意された物干し竿へと洗濯物を掛けていく。その横では、お手伝いとして器用にしっぽで洗濯カゴを持ってくれているミロと、風で飛んでいかないよう干した洗濯物へと洗濯バサミをつけていくデオキシスがいた。

少女の体になってからというもの、こういった家事の中で身長的な問題でみんなに手伝ってもらうことが増えた。・・・いつかは、いつかは成長するんだ、うん。

 

「よっし、終わり!二人ともありがと!」

 

「フゥ!」

 

「ーーー」

 

朝する家事を全て終え、手伝いをしてくれた二人へ労いの意味も込めて手製のクッキーを渡す。感情の読めないデオキシスはペコリとお辞儀をし、ミロはというとそれはもう嬉しそうに尻尾をビタンビタンと振っていた。

その後ろでは、尻尾が地面を強打するたびにバンギラスがビクッとしていたけども。

 

「さてと。それじゃあ、少し実験といくか」

 

そう言って、ジラーチ以外のいま家にいる全てのポケモンの中から、種類別に1匹づつを庭へと集める。

先日のマサキさん襲撃に関する事で、現在確認できているポケモンを持つ一般人は警察によって保護・監視を受ける事になった。ワタルさんやチャラ男ニキ、農家ニキの様に元から協力的な人だけでなく、家族でジグザグマ(未確認)を餌付けしたであろう人たちまで、かつて配信で確認されたポケモンを飼い始めた全ての人間が対象となっている。

 

そんな中、俺はポケモンの総数が多く、練度が高いこともあって警護の優先度は低く、家で待機する事になっている。警護はいらなくても重要人物に変わりはないらしく、たまにキョウさんやタケシさんが様子を見に来るが今のところ襲撃を受ける気配はない。そして、俺は俺にしかできない役割もある。

 

「スピアー、ライ。二人ともよろしく」

 

「スピッ」

 

「ライ!」

 

元気に返事する両ポケモン。バトルする様な構図で向き合った二人がそれぞれに技を放つ。

 

「ライ、『じゅうまんボルト』、スピアーは『ミサイルばり』!」

 

 

「チュゥ!」

 

「スピッ!」

 

時折こちらからも指示を出しつつ、様々な検証を重ねていった。

昼になり、バトルしてもらったポケモンたちを休ませつつ昼食を取っていると、玄関でインターホンが鳴る。

 

「うみちゃーん、来たぜー」

 

「あ、はーい」

 

一瞬警戒し、隣で食べていたライがピンと耳を立てる。しかし聞こえてくるここ最近で聞き慣れた声に問題ないと判断したのか、まったりと食べ始めた。

 

「どうも、わざわざ有難うございます」

 

「いやいや、こっちも仕事だから気にしなくてもいいよ」

 

玄関を開けると、そこには刑事らしくスーツを着込んだタケシさんが立っていた。朗らかに笑うタケシさんを家に上げ、リビングの机で向き合う。昼食だったカレーを差し出すと、何故かタケシさんは震えながら拝んできた。

 

「おぉ・・・これはうみちゃんの手作りカレー・・・!」

 

「そこまで凝ったものじゃないですよ?」

 

「いやいや、うみちゃんが作った、っていうのが重要なんじゃないの。・・・うん、旨い!」

 

大口で本当に美味しそうに頬張るタケシさんに苦笑しつつ自分の分を食べる。少しの間無言の時間が過ぎた時、徐にタケシさんが口火を切った。

 

「それで、うみちゃんが言ってた確かめたいことってのは分かった?」

 

「ええ、朝の検証で大体分かりました」

 

口元をティッシュで拭いながら、真剣な話のモードに入る。

 

「俺の持っていた知識は、およそ9割方正しいだろうと思います。ライ達へのケアや戦い方等、俺の知っている通りでした」

 

「・・・残り1割は?」

 

「わざのことやポケモンごとの生態、ですかね」

 

検証では、ポケモンが使える技の数についてをまず調べた。ゲームの頃は、どんなに頑張ろうとポケモン1匹の使える技は最大で4つが限界だった。しかし、ふと俺は考えた。ポケモンのわざは、本当に4つが限界なのだろうか、と。覚えている技をぽかんと忘れ、直後であろうとすぐに使えなくなる。ゲームならそれはそうだろうが、現実でそんな簡単に忘れたりできるのか。

そこで俺は、今いる全てのポケモンを対象にひたすらわさを使わせ、そのポケモンが覚えるだろうわざを片っ端から指示してみた。

そうして分かった事が二つ。

 

・ライ、ミロと言ったパソコン組は4つが限界。

・こちらの世界でゲットしたポケモンは、個体によって違うが4つ以上持つ個体もいる。

 

恐らくライ達はゲームの世界出身であるため、ゲーム内で育てる際4つのわざしか使ってこなかったからだろう。かつて使えていたわざであっても、指示した際には戸惑っている様だった。

一方のパソコン組以外のポケモンはというと、大体5つか6つほどわざを覚えていた。

数の多いスピアーでは、『ミサイルばり』『どくばり』『みだれづき』『こうそくいどう』などに加え、時折『どくづき』や『いかり』を覚えている個体がいた。

どうやら成長過程で覚えたわざをどうやってか取り捨て選択している様だ。つまり野生のポケモンでも同じ事で、想定していなかった戦法を取る個体がいてもおかしくない。

 

他に、生態面ではゲーム内では図鑑の説明にあるというだけだった設定が、ポケモン達に反映されている事だ。バンギラスはマジで暴れた時の『はかいこうせん』で山を崩しかねなかったし、集団生活をするスピアー達も異様に統率力がある。ライはわざ以外でも器用に電気を使うため、たまにスマホの充電をしてもらったりもする。

 

「以上が、俺の検証での見解ですかね」

 

「・・・ふむ」

 

話を終え、考え込んでいるタケシさんを黙って待つ。少ししてから、タケシさんは俺を見据える。

 

「うみちゃんの知識が重要なことには変わりないな。これからも検証は必要だろうけど、まぁ今のところは気をつけるだけでいいだろう」

 

「分かりました。こっちでも逐一情報は報告するつもりです」

 

「頼むよ。・・・で、今日はその話で俺を指名したのかい?」

 

ある程度話が終わったところで、タケシさんが尋ねてくる。そう、今日は本来キョウさんがやってくる予定だったのだが、俺が急遽話があるということでタケシさんと代わってもらったのだ。

 

「いえ、別件で一つ、渡すものがあったので」

 

「渡す物・・・?」

 

疑問符を浮かべるタケシさんに、一つのモンスターボールを渡す。不思議そうにこちらをチラ見したあと、そっとボールを手に取り眺めている。

 

「これは?」

 

「ポケモンです。名前はイシツブテ。最近山の方で見つけた奴です」

 

そういうとタケシさんは驚きの表情を浮かべる。手に持ったボールを放ると、光と共に岩から手が生えたような姿のポケモン、イシツブテが姿を表す。

 

「シャッ!」

 

「・・・何で俺にこいつを?」

 

「襲撃の話を聞いた時から考えていたんです。俺にできて、最も有効な対策というか、トレーナー強化案を」

 

イシツブテを撫でながら聞いてくるタケシさんに、説明する。マサキさんの襲撃から色々なことを考えたが、これが一番シンプルでやりやすい。

 

「単純な事です。トレーナーのポケモンを増やせばいい。一体だけでなければならないなんて理由はないですし。それに、複数のポケモンがいれば不測の事態にも耐えられるでしょう」

 

「なるほど・・・でも、なら何でキョウさんは呼ばなかったんだ?俺もそうだが、あの人もポケモン持ちだし、狙われると・・・」

 

「・・・キョウさんが、襲われてどうにかなると思います?」

 

「・・・ああ、うん。えっと・・・」

 

俺たちの間に微妙な空気が流れる。なんかキョウさんなら、生身でもテロリストとか捕まえてそうな気がする。まぁ、また今度ポケモンは渡すつもりではあるんだけど。話しながら涼をとるために庭に面した縁側へと歩き、座る。

 

「それに、ただ漠然とポケモンを渡してるわけじゃあ無いんですよ?」

 

「ほお?」

 

「タケシさん、今の手持ちの様子はどうですか?」

 

そう聞くと、タケシさんはニヤリと笑いながらボールを二つ取り出す。

 

「・・・出てこい!」

 

そう言ってボールを放ると、青っぽいコウモリとゾウのようなポケモンが飛び出してくる。

 

「わぁ・・・!ゴルバットに、ドンファン!」

 

「どうよ、俺の手持ちも進化してるんだぜ?」

 

誇らしげなタケシさんの突き出した腕に逆さに止まるゴルバット。・・・こいつ結構重いのに、タケシさんは問題なさげだ。警察はみんなマッスルなのか・・・?

ドンファンも暴れていたところを取り押さえたと言っていたが、見ていると嬉しそうにタケシさんへと鼻を伸ばしている。

 

「タケシさんやキョウさん、ワタルさん達は皆さん共にポケモンを優しく世話してくれているみたいですから。流石に何するか分からない人にポケモンを託したりはしませんよ」

 

「なるほどねぇ・・・今のところポケモンを持っている一般人へは、警察の方で護衛的な形で保護を継続してるよ。今のところあれから襲撃があったなんて報告はないね。でも、考えると俺たちのポケモン常備は妥当な判断なんだろうなぁ」

 

そう言ってボールを手で弄ぶタケシさん。少しの間静かな時間が流れ、のんびりと空を見上げいつのまにか膝に乗っていたライを撫でつつ、体に巻きつくようにとぐろをまいているミロに寄りかかる。

周囲では、生まれたばかりなのかまだ小さいビードルが縁側で日向ぼっこをしており、スピアーが落ちないよう見ている。サイドンは畑から戻ってきて庭に生えたスピアーの木の下で昼寝をしている。

池ではゾロアが水を浴びてはしゃぎ回っており、ゾロアークはそんなゾロアを嬉しそうに見ている。バンギラスはまた修行でもしているんだろうか、姿は見えない。

 

「・・・うみちゃんのとこは、どのポケモンも楽しそうにしてるな」

 

「ええ、嬉しいことに。この生活だけは、壊したく無いですね・・・」

 

まったくだ、と言ったきり静かに自分のポケモンを愛でながらタケシさんも空を見上げて微笑む。晴れた空に浮かぶさまざまな雲を眺めながら、静かで和やかな時間が流れていた。

 

 

その時だった。

 

 

ガン、ガンガン!ガンガンガン!

 

 

「!なんでしょうか・・・」

 

庭の反対側、玄関から戸を乱暴に叩く音がした。まるで切羽詰まっているかのように、叩く音の間隔は短く、音は激しくなっていく。

 

「・・・うみちゃんは、そこにいて。俺が出る」

 

真剣な表情でそう言いつつゴルバットに目配せをするタケシさん。ゴルバットは頷くと、タケシの肩からうみの近くへと飛び移り、タケシはそのまま玄関へと向かった。

 

「・・・ライ、ミロ。もしもの時は」

 

「ライ!」

 

「フゥ」

 

タケシさんが玄関へと向かうのを見送りながらも、もしもの時は戦えるようライとミロへ声をかける。他のポケモン達もなんとなく察したのか俺から離れたり、羽音を響かせたりと、いつでも動けるようにしている。

 

(こんな真っ昼間から襲撃しにきたのか・・・?でも、怪しい人物がいれば外を飛んでるスピアーが知らせてくれるはず)

 

襲撃にしては妙なタイミング、しかもスピアーの警戒網に引っかからないという訳の分からない訪問者に対して思考を深めていく。

すると、突然何かの倒れるような音とともに玄関からタケシさんの叫び声がした。

 

「うみちゃん!頼む、力の強いポケモンを連れてきてくれ!」

 

「!サイドン、表に回って!」

 

「ゴァ!」

 

サイドンがドスドスと玄関へと向かい、俺もライを連れて靴を脱ぎ捨て縁側から家の中へと入る。

 

「タケシさん、なに、が・・・」

 

玄関には、一人の男性が倒れていた。横には手荷物であろう大きめの鞄と、ペットを入れる用のカゴがある。

 

「結構衰弱してる!病院へ連れていくにしても一旦寝かせたい!」

 

男性を抱き抱えながらタケシさんがそう指示を出すと同時に、サイドンが玄関へとやってくる。

 

「ゴァ!」

 

「!と、とりあえずその人をうちに上げましょう!サイドン、お願い!」

 

「うみちゃん、冷たい飲み物とかある!?この人、多分熱出してる!」

 

「冷蔵庫に!ライ、布団取ってきて!」

 

「ライ!」

 

にわかに騒がしくなる我が家、そんな中タケシさんの背負った男の人が、ボソリと何か呟いた気がした。

 

「・・・ソラくん、すまない・・・」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「にしても、ずいぶんとハードワークっすねぇ」

 

うみ家にて少々問題が発生している頃。警察署内に用意されたポケモン特訓用の仮道場にて、ぼけっとしながらチャラ男・・・シゲルが呟く。

 

「ん?別にそんなことはないと思うけどなぁ。それよりも緑君、なんかコラッタの動きが鈍くなってたけど回復させないで大丈夫か?」

 

「グ、リ、ー、ン!農家ニキちょっとしつこいっすよ!?」

 

怒り心頭のシゲルをまぁまぁと宥めながら、回復のために用意されたオレンの実を手渡す農家ニキ。両者のポケモンは疲れ切った様子で寝ており、回復には時間がかかるだろう状態であった。そんな相棒達を気遣いつつ、二人の視線は未だバトルを続ける男達に向いている。

 

「まぁ、ワタルさんは確かになんだかやる気っていうより焦りっぽい感じだけどなぁ。さっきからポケモン達と一緒に連戦してばっかだし」

 

二人の見据える先、道場の中心ではワタルとキョウがポケモンバトルをしていた。

 

「ハクリュー!『りゅうのいぶき』!」

 

「ランプラー、『えんまく』!」

 

ハクリューのブレスを、ランプのような姿のポケモン、ランプラーが煙幕で煙に巻き回避する。連戦の影響で既に相当疲労している状態のハクリューは、ブレスを躱され睨み合いとなり荒く息を吐く。

 

「ハクリュー、まだいけるか?」

 

「・・・フゥ」

 

「ランプラー。まだ気を緩めるなよ?」

 

「!」

 

両者ともに気合十分、いざ尋常にと互いにブレスと炎を構えた時だった。

 

「あー、すまないが今大丈夫かな?」

 

「「!」」

 

道場の入り口から声がかけられる。その場にいた全員がはっと振り返ると、そこには警察の制服を着込んだ初老の男性が立っており、その姿を確認した瞬間キョウは慌てて敬礼する。

 

「はっ、警視総監殿!御足労いただきありがとうございます!」

 

「ああ、楽にしていい。私はただ見学にきただけなのでね」

 

そう言ってキョウへと笑いかける警視総監。ニコニコと笑いながらスッと道場へと入ってくるその姿に、何となく全員の緊張感が上がる。

 

「君達も、わざわざ立たなくてもいいよ。疲れているだろう」

 

「!あ、はい・・・じゃない、失礼します」

 

言われて初めて、シゲルと農家ニキは自分が無意識に立ち上がって不動の姿勢をしていることに気づいた。警視総監に言われ休憩へと戻るが、チラチラとワタル達を見つつ小声で話をする。

 

「・・・なんでお偉いさんが?キョウさんに用事でもあったのかねぇ?」

 

「さあ・・・というか、あれ見ろよ緑くん」

 

「シゲルです」

 

農家ニキがそっと指差した先にあったのは、警視総監の腰に提げられた、赤と白の紅白玉だった。

 

「警視総監殿、それは・・・」

 

「ん、ああ。私も一警察の人間として持っておくべきだと思ってね。少々手間取ったが部下も連れて捕獲したんだよ」

 

そう言って警視総監がモンスターボールを手に取り放る。

光が形を作り、黒い体に厳つい表情の犬のようなポケモンが現れる。

 

「ガァ!」

 

「それは・・・見たことのない種ですね」

 

「そうか、私もうみちゃんから受け取った資料は見たのだが、いかんせん総数が多くてね。見つけるのも一苦労だよ」

 

ポケモンをマジマジと観察するキョウの横で、口元へ手を当てながら考え込んでいたワタルがボソリと呟いた。

 

「デルビル、ですね」

 

「!分かるのかい?」

 

「ええ、うみちゃんの資料のポケモンの名前と絵は全部頭に入れたんで」

 

「ほぅ・・・それは凄い」

 

感嘆のため息をこぼす警視総監とキョウ。照れ臭そうに頬を掻く。そんな中、道場へと慌てたような足音がバタバタと聞こえ、扉を開けて警官が一人飛び込んでくる。

どうやら、対策課の警官のようだった。

 

「キョウさん!ポケモンが出ました!通報も来てます、出動お願いします!」

 

「分かった!すぐ行く!ワタルくん達は準備急げ!」

 

「「「了解(っす)!」」」

 

即座にキョウの指示に従い動き出す3人。既にポケモン関連の事案であれば並の警官以上に対応できる3人は、それぞれにポケモンをボールへ収めつつ道場を飛び出す。

それを見送る警視総監は、悲しそうな、それでいて嬉しそうな表情を浮かべていた。傍で「なんだったんだ?」と首を傾げるデルビルを撫でる。

 

「・・・ままならんな、何もかも」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

謎の男性を保護した俺たちは、布団に包まれ苦しそうに呻く男性を看病しつつ話し合っていた。

 

「病院には連れて行きます?」

 

「そのほうがいいだろうね。身元を証明するものもない、どうやら日本人っぽいけどそれだけじゃあ信用に足るとは言えないし・・・」

 

チラリと寝ている男性を見る。見事なハg・・・スキンヘッドで、かけていた丸メガネのようなサングラスは枕元へ置かれている。来ていたのは普通の服だが、持っていた荷物の中には白衣が入っていた。俺には分からない妙な器具や聴診器もあり、そこから考えられるのはこの人が医者か、それとも科学者かということくらい・・・。

 

「とりあえず、俺が連れていくから。車持ってくるから少しの間看病お願い。・・・ああ、警戒はしっかりね」

 

「はい」

 

タケシさんが念押しをしつつ足早に出て行く。それを見送りながら、そっと男性の横に座る。

 

「・・・」

 

「にしても、本当に誰なんだろう・・・こんな人見たこ、と・・・っ」

 

不意に頭痛に襲われ、手で頭を押さえる。しかし、頭痛は一向に止む気配はない。

 

(いっ・・・なん、だよこれ!?)

 

「ライ!?」

 

「ラ、ライ・・・ごめん、タケシさん、をーーーーー」

 

側で慌てて支えてくれようとしたライに、タケシさんを呼んでくれるよう言う。だが、とうとう痛みに耐えるのも限界がきて意識が遠のいていった。

 

 

 

 

 

(なにが、起きたんだろう)

 

意識が途切れてどのくらい経ったのか。俺は真っ暗な空間に一人、ポツンと立っていた。あたりを見回しても、人どころか何かが落ちていたりもしない。真っ暗なのに、何故か俺の視界ははっきりしており、俺自身の体は普通に見えている。

 

「どこだよここ。というか、ライは?タケシさんは!?」

 

俺の言葉に、答えてくれるものはいない。嫌になるくらいの静寂の中、ジッとしていても仕方ないと、足を踏み出す。

 

ぺた、ぺた、ぺた。

 

フローリングの床を歩くような感触がなにも履いてない足裏からひんやりと伝わってくる。ひたすら真っ直ぐに歩くが、壁にぶち当たることも、何かに出会うこともない。段々と不安と焦り、恐怖が心に渦巻いてくる。

 

「落ち着け、今はただ歩くしかないんだ。早く戻って、タケシさんに・・・」

 

『君は相変わらずだな。また一人で食事かい?』

 

「!」

 

背後から聞こえてきた声に、とっさに振り向く。そこには、いつの間に現れたのか、古いブラウン管テレビが置かれていた。若干ノイズの混じった映像が流れており、今の声もそれから流れたようだった。

 

「・・・」

 

ゴクリと息を呑み、そっとテレビの前へと座る。この謎の場所へ来て、初めて起きた変化だ。不安ではあるが、これを見逃す手はない。

 

『・・・』

 

『おいおい、無視しなくてもいいだろう。一応私は君の上司だよ?』

 

テレビの映像には、見たことのない部屋でひたすら黙々とスプーンを動かし食事をする女性がいた。黒い髪に若干の銀のメッシュの入った不思議な髪のその女性は、研究者のような白衣を纏い、その下はどうやらツナギのようだ。しかし、その服装に関わらず美人という評価を受けるであろう美貌の持ち主だった。

 

『それに君、もう少しファッションの方もどうにかならんのかね?いくらここにいるのが研究者ばかりだとはいえ・・・』

 

『私はここにやるべきことがあって来ているんです。それに必要なこと以外する気はありません。第一、「彼ら」へと接する上で服なんて選ぶ余裕はないと思われますが』

 

『・・・これは手厳しい』

 

女性に対してかけられる言葉とともに、画面は忙しなくいろんなところを映す。たまに見えてくる手や足などの位置関係から、この映像は誰かの視界が映されているようだ。もう一人の、女性へと声をかけている人だろう。おそらく男性。

基本無視を貫いていた女性だが、一瞬男を睨みつけ、スプーンを置き反論する。それに対して男も聞く耳を持たないな、と判断したのか視界が少しだけ上下する。肩を竦めたのだろうか。

 

『じゃあ、今日の予定の話にしよう。今から20分後、ミーティングの後に実験の開始だ。まぁ、君の資料が正しければーーーまぁ正しいのだろうけどーーーすぐに終わるだろうね』

 

『・・・』

 

『後悔、してるのかい?』

 

男の一言で、女性は下唇を噛み俯く。寸前に見えた表情からは、悔しさと悲しみが見えた。

そんな女性に対し、最初のようなフレンドリーな声色を取り払った男の問いが刺さる。

 

『正直にいって、私は君を恨むよ。いくらあの子のためと言っても、あんなことをここに持ち込むべきじゃなかった』

 

『・・・黙りなさい』

 

『君だって気付いてるだろう?彼は君との取引を守る気は』

 

『それでも!』

 

「『!』」

 

女性の叫びに、画面内の男と俺は思わずビクリと固まる。叫んだ後、ハッとして弱々しく笑い、女性は立ち上がる。

 

『・・・ごめんなさい。貴方達には、この世界にはとても悪いことをしたと思う。けど、それでも私はあの約束に、すがるしか・・・』

 

フラリと立ち上がると、女性は男へと近づいてくる。その顔は、悲壮な決意を決めたような真剣な表情だった。

 

『お願い、カツラさん。頼みがあるの』

 

『・・・なんだ?』

 

カツラと呼ばれた男へと、そっと何かを握らせる女性。そのまま握ったのを確認し手を離すと、女性は儚げに笑いながらそっと耳打ちした。

 

『あの子を、おn』

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・」

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・お、おい!?嘘だろ!?このタイミングで!?」

 

まさかのタイミングで完全に砂嵐にしやがれを放映し出したテレビに飛びつく。おい、色々と待て!?まだ何にも分かってないんだぞ!?

 

「おい!お・・・?」

 

しかし、テレビをガンガン叩いているとまたしても頭痛に襲われる。今度は先ほどよりもはるかに強い痛みとともに、意識が急速に落ちていく。

 

「ちくしょう、ちく、しょ・・・」

 

そうして俺の意識は、またしても頭痛とともに途切れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「本当にこれを放送(や)るんですか?」

 

とあるテレビ局。大手と呼ばれるそこのディレクターへと、一人のADが台本片手に詰め寄っていた。一方のディレクターは、それにニヤリと笑い頷く。

 

「ああ、当然だろ。今話題のタイムリーな最高のネタだ。ただ専門家連中を呼びつけて議論させるだけじゃつまらないだろう?」

 

「いやいや・・・大木戸教授とか生物学の権威の空木博士呼ぶのはわかりますけど・・・だとしても、ケーサツからも呼ぶって、正気っすか?しかも、要請するのが少女って聞きましたけど」

 

「馬鹿野郎、むしろ警察が本命だよ」

 

「はぁ・・・」

 

生返事を返すADに舌打ちしつつ、デスクに放られていた写真を手に取る。

 

「トウキのやつが、いいネタ掴んでくれたしな」

 

「え、あの人がですか?」

 

驚愕の声を上げたADが、ディレクターの持っている写真を覗き込む。

 

「・・・女の子、っすか?」

 

「ああ。まぁ、これだけならただの盗撮なんだがな」

 

「普通に犯罪じゃないっすか・・・って、ええ!?これ、この人らって!?」

 

そこに写っていたのは、どこかの料亭の入り口。そこで、少女と3人の政治家が向き合っていた。3人のうちの一人・・・大和大臣と握手をする銀髪の美少女を睨みながら、ディレクターは自然と頬が上がる。

 

「いいねぇ・・・ビックなネタの匂いがするぜ」

 

写真を持つ手に力が入るのを感じながら、その目は企画書を睨んでいるのだった。

 

 

 

『徹底解明!謎の生物の謎とは!緊急討論スペシャル!』




次回、うみちゃんパソコン組が出揃う予定。というか、もう自分がさっさと出したいです。(せっかち)
ポケモン。未知の生物。人々はその実態についに触れることになる。その時うみに向けられるのは、好意か、猜疑の目か、それとも悪意か。
次回「うみちゃん、TVデビュー」次回もお楽しみに

現在の世間でのポケモン認知
都会:なんか変な生物出てるってか増えてる。怖いよねー
田舎:農作物が!野生の獣がああああ!?
一部のネット民:うみちゃん配信まだかなー。というかポケモンやばいな。世界滅ばね?
報道系:最高の番組ネタ美味しいです(^q^)
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