TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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どうも、遅くなり申した(帰還)
べ、別に怠けてたわけじゃないですよ?
ただちょっとモルモット兼お兄様としていそがしかっただkゲフンゲフン

今回から新章?になります。亀更新ではありますがエタらせる気はないですヨー


第二章 海外編
第44話


「はぁ!?欠航ですって!?全便!?」

 

「は、はい・・・例の生き物についての問題が発生しまして、現在全ての旅客機の運航を取り止めております」

 

広い空港の中、ある女性が職員へと食ってかかる。その声は大きく、周囲の他の人々が振り返るほどだった。それに気づいた女性は慌てて口をつぐむ。尚も問いただそうとした女性だったが、一瞬会話が途切れたことをこれ幸いと職員は一礼してそそくさと去ってしまっていた。それを再度大きな声を出して呼び止めるわけにもいかず、ため息をつきつつ見送った女性は伸ばした手を所在なさげにポケットへと伸ばし、予定を書いたメモ帳を開くと再び、今度はさっきよりも大きいため息をついた。

 

「もう、久しぶりに叔父さんが私を頼って呼んでくれていたっていうのに・・・」

 

このままここにいてもしょうがないと、女性は金色の髪をなびかせ、フンスフンスと怒り気味に空港の外へと歩いていく。空港の出入り口を出ると、他の人々も欠航の影響か出入り口へとごった返しており、電話で知り合いや家族へ連絡をとっている者や近場の宿泊施設がないか案内図を見る者などで賑わっていた。そんな中女性は周囲を見渡し、すぐ近くへと停車していた車へと近づくと、窓を叩き中の人物へと声をかける。

 

「先生」

 

「どうだったかな?」

 

「ダメでした。全便欠航、次の便の目処もたってない。これじゃあ、日本に帰るのなんて無理ですよ」

 

「そうか・・・残念だったね、久方ぶりの帰国予定だったと言うのに」

 

私不満ですと言う態度を隠しもせず口を尖らせる女性に、先生と呼ばれたその男性は苦笑する。女性が今日のこの日を楽しみにしていた事は知っていたためやむを得ない事だろう、と考えつつも理不尽に突っかかられたと思われる空港職員へと心の中で慰めの言葉を残す。

 

「それで、これからはどうするのかね?前に借りていた部屋は引き払ってしまったのだろう?」

 

「当面は研究室をお借りすることになりそうです。はぁ、しばらくはシャワー生活かぁ・・・やっぱりカトレアに頼んだほうがいいかも知れない・・・ん?」

 

女性がため息をつきつつカバンを車へと押し込んでいると、ふと顔を上げた先に気になるものを見つける。

 

「ん?どうしたのかね?」

 

「あー、ごめんなさい七竈(ナナカマド)博士、ちょっと待っててください!」

 

「あ、おい!シロナくん!」

 

突然走り出した女性・・・シロナは車に乗った博士へと声をかけ、颯爽と空港の出入り口へと再び戻って行ってしまった。後に残されたナナカマド博士は、髭を撫でつつ途方に暮れるのだった。

 

 

 

〜シロナ〜

 

今日は日本へと帰国できるいい日になるはずだった。ここ数年ほど研究のゴタゴタで帰れていなかったが、その間で日本でもいろいろあったようだし、家族へと顔を見せる意味でも帰る時期だろうかと思案していた。それが叔父さんからの頼みということもあって早まり、一定のめどが立つところまで研究をまとめていざ帰ろうというところでまさかの飛行機の欠航。理由が理由なのでしょうがないとは分かっていたのだが、それでも私が乗る飛行機の便でちょうど欠航と言うことになってしまったのは流石に文句が言いたい。せっかく久しぶりに母さんの手料理が食べられると思ってたのに。

そんなこんなで、しばらくは少々窮屈な研究室暮らしということにゲンナリしながら博士の車へと乗ろうとした時であった。ふと顔を上げた先、空港の入り口に男が一人立っていた。それだけならば、特に気にする必要もない事だったのだが、問題はその男が熱心に声をかけている相手だ。

 

「あのぉ、そういうのいいから早く行かせてください」

 

「まぁまぁ、ちょっと話するくらいいいだろう?俺なら一番安いタクシー抑えられてるからさ、ね、これくらいでいいから」

 

「いや、だから俺はタクシーは・・・もぉ〜困ったなぁ」

 

(日本語・・・日本人なのかしら)

 

男から声をかけられていたのは、贔屓目にみても可愛いと言える美少女だった。かろうじて聞こえる声から日本語を話していることと、顔立ちから日本人だと分かった。日本人にしては珍しい、というよりはふつうは見ないだろう透き通るように陽の光で煌めく銀髪が目を惹く。不釣り合いなくらい大きい旅行カバンを引きずるように手に持っており、早く移動したい様子だが男からの猛アプローチに若干引いているよう。

・・・というか、周囲に保護者が見当たらないけれどまさか一人なのかしら。

もしそうなら流石に見つけてしまった以上見過ごせない。このままだともしかしたらあの子、そのまま男になし崩しに連れて行かれるんじゃないかしら・・・?

 

「ん?どうしたのかね?」

 

「あー、ごめんなさい七竈(ナナカマド)博士、ちょっと待っててください!」

 

「あ、おい!シロナくん!」

 

ナナカマド博士に一声かけてから、サッと愛用するコートを翻して少女へと近づく。男の方はすぐに此方に気付いて怪訝な表情を浮かべたが、少女は背後の私に気付かないようで男が黙ったことに首を傾げている。

 

「あー・・・お姉さん?」

 

「え?・・・わっ!?」

 

男に後ろを指さされ、少女が振り向く。私を確認して驚く様はちょっと大げさに思うがもとが可愛いからかあざとさは感じず、むしろ見た目以上に年齢が低いように感じ余計に愛らしい。・・・と、そうじゃないわよね。

 

「ごめんなさいね、妹が迷子になっちゃったみたいで。見つけることができてよかったわ」

 

「え、えっと・・・?」

 

少女はきょとんとした顔でこちらを見上げていたが、少ししてはっとしたようにカバンを持ち直し私の手を握る。

 

「お姉ちゃん、どこ行ってたのー心配したんだよー」

 

・・・なるほど、この子演技とか嘘つくの苦手なタイプね。あまりにもあんまりな大根芝居をする少女だったが、私という保護者の出現で男は愛想笑いを浮かべてそそくさとどこかへ行ってしまっていた。それを見て少女は握っていた私の手を離すと、遠ざかっていく男を見ながら不敵に笑っていた。

 

「俺ひょっとして演技上手いのかな・・・」

 

・・・どうやら天然も入っているみたいねこの子。

 

 

 

 

~うみ~

 

 

 

 

「あの、ありがとうございます。いらないって言ってたのにしつこくて困ってたもので」

 

そう言って頭をきっちり直角90°に下げる。空港へついて早々に妙な輩に絡まれて困っていたが、なにやらきれいな女の人に助けてもらえた。幸先は悪かったが、まぁこんな美人な人と知り合えたならチャラだろう。

 

「どういたしまして。ところであなた、一応聞くんだけど日本人よね?」

 

「え?ああ、そうですよ。これはその、色々ありまして・・・地毛ではあるんですよ?」

 

女の人は気さくに笑いながらごく自然に俺のカバンを持ってくれる。引きずっていたのを見てだろうが、優しい人だと分かる。どうやら俺が困っていたのを見かけて一芝居うってくれたみたいだ。髪について言及されたので一房手に取って見せてみる。女の人は一瞬きょとんとした顔をしたがクスリと笑って髪を一撫でだけ撫でてから今度は頭へと手を伸ばしてきた。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

・・・というか、なんかすっごい撫でてくるんだけどこの人。いやまぁそこまで嫌とは思わないんだが、周囲の視線が・・・。

 

「あ、あの?」

 

「っ、ご、ごめんね、ついかわいr・・・撫でたくなっちゃって」

 

周囲の人がチラチラこちらを見ていたためさすがにこれ以上は、と声をかけると微笑みの世界から帰ってきた女の人はハッとして顔を赤らめつつ手をどかした。言い直したのにもっと訳が分からないことを言っていて本人の顔がさらに赤く染まっている。

・・・なるほど、見た目とかは結構クールだけどこの人天然だな?

 

「っと、自己紹介が遅れたわね。私の名前はシロナ。日本からこっちの大学に来て神話や歴史を研究してるの」

 

「あ、俺はうみっていいま・・・え?」

 

え?シロナ・・・?マジで!?

まさかの相手に、思わず自己紹介の途中で固まってしまった。女の人・・・シロナさんはそんな俺を見て首をかしげている。思考停止してしまったが、とりあえず自己紹介は必要と気を取り直し、正面を向きできる限り愛想よく笑う。

 

「俺、じゃないや私はうみって言います!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、じゃあうみちゃんは一人で来たの?」

 

「はい。色々と事情があって、探し物の手がかりがないかなって」

 

立ち話をするには場所が悪く、シロナさんも知り合いを待たせているということでそのまま車へと案内された俺は、そこでまたしても聞き覚えのある名前の人物と出会った。その名はナナカマド博士。なんでも、この国の結構大きい大学で教授をしており、シロナさんの恩師でもあるそうだ。後ついでに何度も賞を受賞しており研究者の中ではかなり有名らしい。自慢げにシロナさんが教えてくれた。快く俺を乗せてくれたし、荷物をトランクへ入れる時も「こんな重いモノを淑女にもたせるのはいかんな」とか言って変わってくれた。なんだこの紳士。現在俺は、ナナカマド博士の運転する車の後部座席でシロナさんと二人並んで座り、お話としゃれこんでいる。まぁ、俺の目的とかは若干はぐらかしてるけど。

 

「それにしても、来るにしても保護者同伴でのほうが良かったのではないかな?君のような子ども一人でというのは少々危ないと思うが」

 

運転しながらもナナカマド博士はそう言ってちらりと俺を見る。その目つきは鋭く若干怖い感じがするが、言葉の端からこちらを心配している感じが伝わってくる。多分この人子どもにやさしいタイプの人だ。そんな博士の言葉に、俺は苦笑しながらつい何も考えず爆弾発言を落とす。

 

「あー、俺親とかいないんですよー。お母さんしか顔も知らないし」

 

「・・・すまない」

 

「え・・・あ!?いや別に大丈夫ですよ!?別に気にしてないです!」

 

だめだ、なんかシロナさんもナナカマド博士もすごい顔になって黙っちゃった。そうだよな、普通こんな快活に親いないとか言わないよな。やっちまったなぁ・・・。少しの間気まずい空気が流れ、元凶である俺はどうすることもできず遠い目で外を眺める。すると、黙り込んでいたシロナさんがそっと俺の頭へと手を置いてきた。

 

「・・・うみちゃん、宿のあてはある?」

 

「え、ああいや、今はまだ決めてはいないですけど・・・」

 

そう言うと、シロナさんがそっと隣に座った俺を抱き上げ・・・って、なんで膝の上にのせてるんですか・・・?唐突にシロナさんに捕獲されてしまった俺は状況が読めないままシロナさんの膝の上で撫で繰り回される。

 

「先生、研究室の件ですが、うみちゃんを一緒に泊めてもいいですか?」

 

「え?」

 

「そうだな。子どもを一人で宿に泊めるよりは・・・いや、二人が良ければのはなしだが二人とも私の家に泊まるかい?」

 

「え?」

 

いきなりの言葉に固まってしまう。ほぼ初対面のはずの俺を、博士は自分の家に泊めようというのか。いや、まぁ俺は別に何か悪さする気はないけども。シロナさんの方は嬉しそうであり、思わずといった感じで博士の申し出に手を合わせて喜ぶ。

 

「いいんですか!ぜひ、ぜひお願いします!」

 

「ああ、もともと君が研究室に泊まると言っていた時から考えていたことだしね。その子という不安材料もあるならなおさらあんな場所には泊められないさ」

 

「ちょ、ちょっと」

 

「ありがとうございます!やったね、うみちゃん!」

 

「・・・はい、お世話になります」

 

・・・。まぁ、宿代浮いたからいいか・・・?そんな感じで、俺の宿が急遽決まったのだった。そして博士の家へと向かう中、俺はずっとシロナさんの膝の上へ置かれたままなでなでを享受し続けるのだった。

 

 

 

 

 

~キョウ~

 

 

 

 

 

「・・・」

 

「・・・どう思います?これ」

 

日本。警察庁の元ポケモン対策課、現「レンジャー」本部には、緊迫した空気が漂っていた。職員は誰も声すら出さず黙々と仕事をしており、皆一様に冷や汗を流している。そんな状況になっている原因は、本部の中でも役職的に高い位置、というかなんやかんやで完全に本部のまとめ役とされてしまったキョウにあった。

 

キョウの机の前にはタケシがうみの家から発見した置き手紙が差し出されており、タケシ自身の顔も能面のようになっておりなにやらまがまがしい雰囲気を漂わせている。

少し前、ようやく発足したポケモンの為の正式な組織。しかしそれにうみは参加できない、そう言った。当然、そんな彼女にその場にいた人々は驚愕し、何故と問うた。だが彼女は決して答えることはなく、ただひたすら謝罪の言葉を述べるだけだった。そのため、その場ではキョウがうみを一度家へと帰し、その他の人々だけで組織の概要や参加についての話し合いが行われたのだが、やはり皆うみが参加しないということが気になるようで会議はあまり進まなかった。その後も、対策課の方へとうみが顔を出すことはあったがどこかぼーっとしており、レンジャーのメンバーと出会う度に申し訳なさげにうつむいていた。

 

キョウやタケシはそんな彼女のことを心配し、仕事の合間にうみの家へと訪れ近況を話し合ったりポケモンの修行と称してポケモンバトルをするなど積極的に関わっていた。そんな中今日、タケシがうみの家へと尋ねたところ、いるはずのうみはおらず、幾つかの小物や着替えがなくなっており、うみが特に好んで連れているポケモンたちがいなかった。まさかすでに次の魔の手が、と慌ててタケシがとびだそうとしたところへ、残っていたポケモンたちが渡してきたのがいま二人の目の前にある手紙である。

 

「・・・家には、これだけだったんだな?」

 

「はい。さっきうみちゃんの家を訪ねたら、バンギラスがすごい気まずそうに渡してきました」

 

二人の見ている置き手紙はうみの字で丁寧に、しかし子どもらしい書き方で書かれていた。

 

『ちょっとイギリスに行ってきます。バンギラスたちはおじいちゃんに任せてます』

 

「・・・」

 

「・・・」

 

二人はなおも静かにそれをしばらく見続けた後、そっと顔を見合わせる。

 

「つまりあれだな?何者かに狙われていたこともありながら、俺達には事前に知らせず、護衛も無しに一人で海外旅行に行った・・・と?」

 

「そうなりますね。あと、なんかたまに俺予定とか聞いてきたこともあったんで多分結構前から計画してやってますよこれ」

 

「ふむ。そうか」

 

「ええ、そうです」

 

そこで二人の会話が途切れ、ちょうどそのタイミングで部屋のドアが開く。

 

「キョウさーん、来ましたよー?」

 

そう言って入ってきたのは、レンジャーの隊服を着たワタルだった。キョウは立ち上がると、そんなワタルのもとへと近づき無言で一枚の書類を手渡した。

 

「なんですこれ・・・休暇届?」

 

「ああ、イギリスに行ってもらいたい。有給扱いにするから」

 

「イギリス!?ナンデ!?」

 

驚愕するワタルへと書類を押し付けながら、キョウは地の底から響くような怒りのこもった声でつぶやいた。

 

「・・・バカ娘を引きずってきてもらいたい。駄々こねるようなら一発げんこつ入れてきても構わん」

 

「帰ったら俺とキョウさんの分も説教と形だけだけど反省文あるって伝えといてねー」

 

職員一同とワタルは、自業自得と思いつつも遠い異国の地にいるであろううみへと心の中で合掌するのだった。




~その後~

うみ「だ、大丈夫ですか・・・?」

シロナ「あ、足が・・・」

ナナカマド「ずっと膝の上にのせていればそれはそうなるだろう」


〜その後〜

キョウ「ああ、あとこれも渡しといてくれ」

ワタル「これは?」

キョウ「反省文の用紙」

ワタル「・・・向こうでも書かせるんですね」


新章に入ったのにポケモンほぼ不在の話という・・・
次回、「うみの主婦力VSシロナの女子力VS何も知らない大泉洋VSダークライ」
次回もお楽しみに

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