TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

51 / 55
はい、前回22時投稿って言ってから一か月は経ってます。コジマ汚染患者です。
……なして?
面白いって……何なんでしょうね……。


第48話

「回避!」

 

「ガブァ!」

 

咄嗟の指示に反応して、ガバイトが私を抱えて全速力で跳び退った。

そのほんの数瞬後、先ほどまで私とガバイトの立っていた場所へと鳥ポケモンたちが群れを成して襲いかかる。

逃げられたことに気づいたのか、たちこめた砂埃の中から再び鳥ポケモンたちが羽ばたき飛び出してくる。

 

回避し、少しずつ逃げていた私たちに気づくと、彼らはすぐに群れを成して追いかけてくる。

彼らが飛び立った後には、爆弾でも落としたのかと思うほどの大きさの陥没ができていた。

それは彼らが、何の躊躇いもなく地面へと突っ込むという自殺行為に近い攻撃をためらいなく行った証拠だろう。

 

少しでもガバイトの回避が遅れていたら、あれに巻き込まれていたかもしれない。そう思うと背筋が凍る。

あのポケモンたちは痛みとか、恐怖といった感情をどこかへ置いていったのか……?

 

「ガバイト!煙幕を!」

 

「ガッ!」

 

ガバイトは私の指示に短く叫んで応じ、全力の突きを地面に向けて放つ。

勢い良く放たれた一撃により、先程の彼らの突撃の時のものより更に大量の砂塵が舞い、私たちと鳥ポケモンの群れを包み込む。

周囲は見えなくなったが、彼らもその条件は同じ。あちらこちらから、鳥ポケモンたちの慌てた鳴き声が聞こえてくる。

 

「今よ!お願い!」

 

「ガブ!」

 

今しかない。ガバイトは私の指示を受けて、全速力で駆け出した。少数での威力偵察に、群れで上空の制空権を確保。それに気づいて足が止まった相手への奇襲、そして先ほどの迷いのない突貫。明らかにこれまでの野生のポケモンとはレベルが違う。

彼らは本能だけじゃない、知性を持ち、相手を観察し、隙を突いて狩りに来る。

その有様は、なんとも厄介で、なんとも危険。

 

街に出すわけにはいかない、このままでは、彼らは私たちを追いかけて街に出てしまう。

街であんな数のポケモンが統率されつつ暴れたりなんてしたら、警察では手が付けられない。かと言って今の私たちにもこの群れを倒したり、せき止めるような力は残念ながら無い。

現状のままでは、間違いなく戦力不足……!

 

「カァ」

 

「なっ、嘘!?ガバイト、左!」

 

「ガブ!?」

 

逃げながらそんなことを思考していた時、背後から例のボスポケモンの声が響いた。

次の瞬間、砂埃の向こう側から耳障りなほどの数の羽ばたきが聞こえ、突風が吹き荒れて砂埃が飛ばされていく。

私たちを守ってくれていた煙幕が晴れ、視界が広がる。私たちにとってそれは都合の良いことでは無かった。

視界が開け、獲物の位置を特定したボスポケモンの指示で再び数匹のポケモンたちが襲い掛かってきた。今度は砂埃を警戒してか、翼をはためかせ、目に見えない風を飛ばす攻撃を繰り出してくる。

絶望的な数の不可視の攻撃を、ガバイトは我武者羅に躱していく。当たりはしなかったが、それによって思うように逃げる事は出来ず、気がつけばまた黒い壁のように迫る群れに取り囲まれてしまう。

 

「ガバイト!」

 

「カァ!」

 

「ガ!ガブァ!」

 

再び逃げ出したいところだが、鳥ポケモンたちは今度こそ逃がさないとばかりに波状攻撃をガバイトへと仕掛けてきた。

突進してくるもの、風をぶつけてくるものなど、一切の容赦も隙も無い攻撃にさらされたガバイトは、みるみる傷だらけになってしまう。

ガバイト一人だったのなら、あるいは地中に逃げるという手段があっただろう。……それをしないのは、私がここにいるから。私を、守るために……!

 

もはやガバイトは無事なところを探す方が難しいくらいに傷だらけ。自らを犠牲にして守ってくれているその姿に、私は……私の心は耐えられなかった。

 

「ガバイト、逃げて!あなただけなら、地面を掘り進んで逃げられるはずよ!警部と、それとポケモン保有者の応援をお願い。……ガバイト?」

 

「ガブ!ガブァ!」

 

「ガバイト!?」

 

逃げて、と指示を出したにもかかわらずガバイトは首を横に振った。鳥ポケモンたちに囲まれ、爪や翼に打ち据えられてもなお、頑としてその場を―――私の目の前を離れようとしない。

一切の慈悲もなく襲い来る攻撃に晒され、より一層傷だらけになっていくガバイト……しかし、倒れない。急所や顔を腕でガードしながらも、その身を盾にして私を守るように鳥ポケモンたちへと立ち塞がる。

 

「ガバイト!もういい!今は逃げるのよ!」

 

「ガブガブ!」

 

「……!こんな時に、わがまま言わないで!逃げなさい!」

 

「ガブ!!」

 

どれだけ指示を出しても言う事を聞いてくれないガバイト。私を助けようとしてのことだと分かってはいる。でも、私はこれ以上傷つく貴方を見たくない……!

最後の手段として懐からボールを取り出し、ガバイトを戻して遠くへ投げる、そんな考えを思い浮かべる。

しかし、敵はそんな隙を逃さなかった。

ボスポケモンの声がまた響き、今度はフラつくガバイトと私の間に鳥ポケモンたちの壁が構築され、その向こうからは容赦ない攻撃の音だけが響く。

それを呆然と、絶望と共に見るしかない私は、ここに来てついに膝から力が抜け、崩れ落ちる。これが数の暴力、これが群れと戦うという事なの……?

辛うじて隙間から時折見えるガバイトは、もう立ってすらいない。

ガバイトの目は死んでない。だが、もはや気力だけではどうしようもない状況だった。体はとうに限界を超え、彼は地に伏している。それでも尚苛烈になる蹂躙は、ガバイトが倒れたことでは止まらない。

もうだめだ、これ以上は彼も、私の心ももたない。そう思い私はボールを持った手を相棒へと向ける。

 

「カァ」

 

「カァ!」「カァ!!」「カァ」

「カァ」「カァ」「カァ」「カァ!」

 

「な、なんでよ……!お願い!反応して!」

 

無情にも、ボールは反応してくれない。距離の問題なのか、鳥ポケモンたちが壁となっているからなのか。どちらにしろ変わらないのは、ガバイトはもはや逃げられないという事だけ。

私に何もできないのだということを悟ったのか、鳥ポケモンたちは私から視線を外し、ガバイトへとより苛烈な攻撃を加えていく。

どうしよう。どうすれば。必死に思考を回すが、行き着く結論は全て変わらず、ガバイトを助けられないという結果のみであった。

 

(何も……できないの……?ガバイトを、置いていくしかないというの!?)

 

感情が嫌だと叫び、理性が逃げるべきだと警鐘を鳴らす。せめぎ合う考えをまとめる事が出来ず、また立っていることすら辛くなり膝をつく。

届かないと分かってはいるが、ガバイトへと手を伸ばし、私は無力感に押しつぶされていった。

ああ、誰でもいい。どうか、お願いだから……!

 

「助けて……」

 

何もできない、何もしてやれない己への無力さを呪いつつ、思わず零れた弱音。その、次の瞬間だった。

不意に攻撃が止んだ。襲い掛かってきていた鳥ポケモンが一匹、また一匹と離れていく。

鳥ポケモンたちの突然の行動に訳も分からず、ただ呆然とするしかなかった。鳥ポケモンたちは、私どころか、倒れ伏すガバイトすら、もはや見ていなかった。

鳥ポケモンたちを統率し、少し離れたところで眺めていたボスポケモンもだ。彼らの視線はまっすぐ、ガバイトを超え、膝をついた私をも超えたその先を見ている。

 

「ヤミカラスを見た時点で予想はしてたけど、ドンカラスか……街中にも出没するポケモンだけど、普段は森の中に巣を作るんだった気がする。というか、進化条件はどうやって……あぁ、カラスなんだから光物集めたりしててやみのいし拾ったのか?どんなレアケースだよ……」

 

後ろから聞こえてきたのは、聞こえるはずのない、しかし聞き覚えのある、幼いながらもどこかしっかりした意思を感じさせる声。ありえない、だって、大学の場所(ここ)は教えていない。あの娘がここに、来るはずが、第一理由がない……!

ありえないと思いつつ振り返って見れば、ゆっくりと歩いてくるのは想像通りの銀のキラキラとした髪をなびかせる少女の姿。

初めて出会った時と同じ、帽子を深めに被り、体格に対しややサイズが大きすぎる気もするリュックを背負った彼女は、ブツブツと何かを呟きながら冷めた視線を鳥ポケモンたちへと向けていた。

 

 

「う、み、ちゃん……?なんで……!?」

 

「来るのが遅れちゃいました。あ、でもごめんなさい教授とか警察の人にはバレないようにこっそり入ってきちゃったんで内緒でお願いしますね!?」

 

「いや、ごめん待って、色々と追い付かないわ」

 

うみちゃんの雰囲気が変わり、いつもの――と言ってもまだ数日の付き合いだが――ほんわかとした抜けた表情へと変わり、あたふたと胸の前で手を振り、シー、と指を口元へ持っていく。いや、そこじゃない。そこじゃないわ私のツッコミたい所は。

 

「っ!うみちゃん話は後!逃げて!ここに来ちゃダメよ!」

 

「カァ!」

 

突然のうみちゃんの乱入に固まっていたが、そもそもここは危険地帯であるということを思い出し、叫ぶ。

しかしそれと同時に、ボスポケモンのするどい鳴き声が響き、群れから飛び出した三匹の鳥ポケモンが、うみちゃんへと迫っていた。

 

(しまった!)

 

思わず歯噛みし、背後に現れたうみちゃんをかばうように立ち上がる。ガバイトはすでにボロボロで、うみちゃんへと向かう鳥ポケモンたちを抑える事が出来ない。私が、私しか今あの娘を助けることのできる者はいない……!

何ができるという訳でも無い。でもせめて、盾になって逃げる時間を……!

そう思いながら、懸命にうみちゃんへと手を伸ばす――――――――――――。

 

「ライ、『ボルト』」

 

「チュゥ!」

 

瞬間、閃光が弾けた。

 

「……は?」

 

「「「グェェェェ!?」」」

 

向かっていた先、うみちゃんの背後から元気な鳴き声がしたと同時、強烈な光と轟音が轟く。思わずしりもちをついた私の横へ、その光の中から若干焦げた鳥ポケモンたちがうめき声を上げながら転がってきた。

 

「改めて、ごめんなさいシロナさん。俺としては、仕事の邪魔をするつもりはなかったんですけど……」

 

「うみ、ちゃん?」

 

倒れ伏す鳥ポケモンを見ていた私の横を、うみちゃんが通り過ぎていく。その足元で、今まで見たことのない黄色いポケモンがこちらを見つめていた。興味深そうな、それでいて歯牙にもかけていないような視線を向けられ、思わず固まる。

ポケモンは、そんな私を見て興味を失ったのか首をこてんと傾げてからうみちゃんの前へと進み出て、鳥ポケモンたちへと正対する。

 

「……緊急事態みたいでしたし、見過ごせなかったので。余計なお世話かもしれないけど……手、出させてもらいます」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「余計なお世話かもしれないけど……手、出させてもらいます」

 

「ライライ!ライ、チュゥ!」

 

「!……ガブ」

 

ライがシロナさんのポケモン……ガバイトへと何か声をかける。ヤミカラス達は、どうやらライが圧倒的格上であることは気づいているみたいだ。いそいそとボスのドンカラスのもとへと下がっている。

ガバイトはボロボロの体を引きずりながら、ライの呼びかけに素直に頷いてシロナさんのもとへ戻っていく。

横目でそれを確認しながらも、ヤミカラス達からは意識を外さない。

スピアーたちを相手したときから心がけるようにしている鉄則だ。野生のポケモン、特に群れているポケモンからは意識を外さない。何ならそのまま周囲への気も配り、伏兵という名の横やりも警戒する。

 

()()()()()()()()()()()()()()悠長に一回一回素早さが高い順にわざを交互に出すことなんてしない、他のポケモンが戦ってるからって、一対一で戦ったりなんてしてくれない。

入れ替えの隙を待ってくれないし、何ならトレーナーをダイレクトアタックしてくる奴だって平気でいる。ルール?何それ?状態である。

野生のポケモンだって必死で、こちらを倒すためには手段を選ばず来る。不意討ちだまし討ち上等、ゲームの様なターン制バトルなんて無い。

そんな対野生ポケモン戦。ソースは日本での戦闘経験だ。

辞退した身だったもんで肩身は狭かったが、何度かレンジャーの仕事を手伝い、実践で学んできた。全ては、こういう時の為に。

 

(ヤミカラス達はとくに問題じゃないかな。問題なのは、やっぱりドンカラスの方か)

 

相手の群れと、ボスであるドンカラスを見てそう判断する。不意に現れた俺たちに対して、ヤミカラス達の反応は戸惑い半分、さっきの電撃への恐怖半分といった様子だ。

対してドンカラスはと言うと、興味1割怒り6割、警戒3割……かな?だめだ、まだ俺じゃ正確には分からないや。でも、雰囲気からそんな感じがする。ライを見てもまだ戦意が衰えている様子は無い。

 

こういう相手の表情とか仕草から情報読み取るのはキョウさんとかタケシさんが得意なんだけどなぁ……。いや、顔とかないはずのデオキシスの感情の機微まで解るような人らレベルにはちょっと……。

 

そんなくだらないことを考えていたからだろうか、不意にヤミカラス達が羽ばたきによる見えない攻撃……『かぜおこし』かな?……を群れ総出で繰り出してきた。

 

「ライ、あの子らは気にしないでいいよ。狙うのはアタマだけでいい」

 

「ライ!」

 

強風の吹き荒れる中、俺の一言でライは目にもとまらぬ速さで駆ける。レベル差と練度のごり押しによって行われるそれは、シロナやガバイト、ヤミカラス達には捉える事すらできないものだった。

 

「っ!嘘でしょ……!?」

 

「ガァッ!?」「グェ!?」「ギャッ」「アイエ!?」

 

かぜおこしを強引に突破したライは、その勢いのままにヤミカラス達の中へと突っ込む。オレンジ色の軌跡が走るたびに、群れの中から悲鳴やうめき声が響き、一匹、また一匹とヤミカラス達がきぜつして堕ちてくる。

ライは俺の指示通り、アタマ……つまり、ドンカラスを狙っていく。途中できぜつして堕ちていくヤミカラス達は、まぁ、うん。多分だけど、足場にしてるんだろうな。『ボルテッカー』で電気を纏っているライにひき逃げ食らってるんだ、ひとたまりもないのだろう。

そんな様子を少し離れた上空から見ているドンカラスは、露骨に顔をゆがめつつ逃げるように高度を上げる。

相当いら立っているな。これは、ライのでたらめさ加減になのか、自身の群れのふがいなさへなのか。

 

「まぁどっちでもいいけどね。さて、これで君は裸の王様だ。そろそろ降りてきてくれると手間が省けるんだけど」

 

「……」

 

時間にしておよそ1分。群れは全滅していた。夜になったのかと見紛うほどの規模の群れだったことを考えれば驚異的な速さだが、ライと俺からすればこんなものは分かり切った結果だ。

というか、ドンカラスを狙えって言ったのにライの奴……。

周囲には、呻いたり、呻く余力も無かったりするヤミカラスの群れが転がっている。

まぁ、放っておいて俺の指示通りドンカラスを攻めても良かったけど、シロナさんを人質にされたりしては面倒なので、とりあえず群れを全部しばいたってのがライの判断だろう。

 

俺の足元に戻ってきたライにありがと、と伝えながらドンカラスを見上げ、降伏を呼びかける。

しかし、残念ながらドンカラスは何も言わずに翼をはためかせ、そのままどこかへと飛び去ってしまった。

 

「な、追わなきゃ……!」

 

「いえ、逃がしましょう。今はシロナさんとガバイトの手当てが先です。どっちにしろあいつは群れを失ってる。今回みたいな騒動をまた起こすのはしばらくは無理でしょうから」

 

実は既に()()()()()()のだ、ということは言わない。今頃、ドンカラスはクロバット―――俺のてもちの一体、名前はクロ―――に叩きのめされているだろう。ここに来る前に、逃げる奴を倒しておくよう指示しておいたし。

でも、俺のてもちは密輸して持ってきてるやつだから、おいそれとネタバラシはできない。

 

「でも!……っつぅ!」

 

「!シロナさん、大丈夫ですか!?」

 

ドンカラスを追いかけようと立ち上がったシロナさんだったが、やはり怪我が酷かったみたいで、すぐに倒れこんでしまう。地面にぶつかる前に何とか俺の体を滑り込ませて抱きかかえ……っとぉ!?

 

「う、ごごご……!シ、シロナさん、気をしっかりぃぃぃ……!」

 

流石に少女の体で支えるのは不可能だったみたいで、ぶっ倒れるのは阻止できたけどそのままシロナさんに押しつぶされるような形で倒れてしまった。

慌てて声をかけるが、戦闘が終わって緊張が切れたのか、完全にシロナさんは意識を失っている。

力をありったけ込めてみるが、全く動かない。希望を求めてガバイトを見るが、そっちももう限界だったみたいで、倒れそうなところをライに支えてもらって壁に寄りかかっていた。

 

「ラ、ライ!ちょっとシロナさんを持ち上『シロナくーん!!』っげ!?」

 

ライに代わってもらおうとしたその時、遠くからナナカマド教授の叫ぶ声が聞こえてくる。辛うじて動く首を持ち上げると、遠くから警察らしき格好の人を引き連れてやってくるのが見えた。

……ってぇ!ライ見られたらマズい!!

 

「ライ、ボール!ボール入って!」

 

「ラ、ライ!」

 

慌てて叫ぶと、ライは急いで俺のリュックにしまってあるボールへと入っていく。ギリギリのタイミングだったが、ナナカマド教授達が来た時にはなんとかバレずに済んだ。

 

「な、うみ君!?なぜここに!?」

 

「い、いやぁ、あはは……み、道に迷いました!」

 

「何をバカなことを言って……!いかん!シロナ君!」

 

『どうなってるんだ……。カラスどもが全員ぶっ倒れてる!?』

 

『……総員、カラスを確保し檻にぶち込め。それと!救護班と救急車!急げ!』

 

到着した教授は、俺を見て驚いていたが、俺の上に倒れているシロナさんを見て、血相を変えて持ち上げて地面に寝かせる。

ついてきていた警察の人は、なんか上司っぽいおじさんが指示を出したのを聞いてヤミカラス達を捕獲していた。

ライの電撃にやられたんだからしばらくはきぜつしてるだろうし大丈夫、だとは思うけど……。

 

『……で?教授さんよ、そのガキは誰だ?』

 

「……」

 

あ、あれ?なんか警察のおじさんがすごい形相で睨んできてるんだけど。こわ……。というかよく周囲を見れば、ヤミカラスの捕獲に参加していない警察の人に囲まれてた。

あれ、なんで囲まれてるんです?その手に持ってる銃はなんですか!?ナズェミテルンディス!?

教授!?なんか言ってよ!?

 

『よしてくれ!……危害を加えるような子では、無いんだ……』

 

『この惨状を見てもか?』

 

「……」

 

な、なんか教授がシロナさんを介抱しながらおじさんと話してる、んだけど……な、なんでおじさんが周囲を見渡したら黙り込むんですか?

というか、なんで周囲の警察の方々は一歩包囲網を狭めたんですか……?

 

『……ま、なんにせよこの嬢ちゃんには話を聞かないといけない。それは分かってるよなアンタ』

 

『ああ。正直に言うと、私も聞きたいことは山ほどある』

 

『オーケイ、オーケイ。んじゃ、話は早いな。おい、連れて行け。ガキだからさすがに手錠はいらん。が、それはそれで厳重に警戒して連れて行け』

 

『了解』

 

「え、あの、あれ?教授!?なんでおれ捕まってるんですか!?」

 

「すまない、うみちゃん。今はおとなしくついていってくれ……」

 

え、何その沈痛な面持ち!?さっき英語で何話してたの!?まさか俺これ、逮捕!?

 

「ちょ、待って!いや、アーーーーー!?」

 

こうして俺は、屈強な警察の人二人に両手をもって引きずられるという、何とも言えない体勢でズルズルと連行されてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いやあああああキョウさんに怒られるぅぅうううう!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

うみが未知との遭遇めいた連行をされていた頃。空港では、一人の青年がげっそりとした表情で降り立っていた。

 

「ここがイギリス……な、長かった……」

 

キャリーケースを転がしながらため息をつく青年……ワタルは、肩をポキポキと鳴らしながら目的の少女の写真を取り出す。そこに映っているのは、オレンジ色のねずみポケモンと嬉しそうにほおずりしている銀髪碧眼の少女、うみ。

今回の捜索のため、特別にガンテツから借りてきた写真の一枚である。なお、紛失した場合命の保証はないとのこと。

 

「さっさと見つけて帰らねぇと……うみちゃん割とトラブルメーカーだからな、何か騒ぎを起こす前に捕まえないといけないな……キョウさんが怖いし」

 

そうしてワタルは、頬を張って気合を入れなおし、腰に巻いたモンスターボール付きのベルトをひと撫でしてタクシー乗り場へと向かうのだった。

 

 

 

……もはや、手遅れであることなどつゆ知らず……。




一応ストックができてるから明日も更新できるな!
……それ投稿したらストック切れるの何でですか?(現場猫)

基本的には、22時を投稿の目安にします。仕事終わるのは22時半やけど。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。