TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・   作:コジマ汚染患者

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ども、6話です(´・ω・`)
お盆も終わりですね。今年も暑すぎだった・・・
皆さん熱中症にはお気をつけて(´・ω・`)


第6話

「ここだったよね・・・」

 

日がもうすぐ沈み夜になる寸前。俺はライに匂いを辿ってもらい、共に初めてサナギラスと出会った渓流付近まで来ていた。

 

「ライ、準備お願い」

 

「ライ!」

 

よしきた!というような感じで一声鳴き、ライがいつでも戦えるよう臨戦態勢に入る。そして、俺は昼と同じ位置で焚き火をし、煙と明かりが最大限に出るようにする。

 

(あのタイミングで出てきたってことは、サナギラスは多分ここをナワバリにしてるんだろう。ならまたここで同じように侵入者がいることがわかるようにすれば・・・)

 

と、ライの尻尾がピクリと動き、山の奥に向けて威嚇する。

 

「フーッ!ライライ!」

 

「!来たか!?」

 

ライの見据える先、山の奥から地響きが近づいてくる。直ぐに逃げれるように料理以外の荷物を片付け、遭遇に備える。

 

「・・・なんか、振動がでかい?」

 

若干の違和感を覚えたうみが思考を巡らせていると、前方から石の礫がいくつも飛んでくる。

 

「ライ!」

 

しかし、それらはライが尻尾で叩き落とす。すでに地響きは直ぐそばまで来ており、思考を一旦置いて戦いに備えるうみ。

 

「グラァァァァァァ!」

 

「なっ!?」

 

現れたのは、サナギラスではなかった。緑の巨体を持つそのポケモンは、サナギラスの進化形にして、山すら破壊するという規格外。

 

「バンギラス・・・!?」

 

「グアァ!!」

 

バンギラスはうみとライチュウを視認すると、怒りの形相で襲いかかる。とっさにライがうみを守ってバンギラスの前に出る。バンギラスはそれを御構い無しにドスドスと突っ込む。

 

(別個体・・・!?それともあのサナギラスが進化したのか・・・?だけど!)

 

「そいつは悪手だろ!ライ!『かわらわり』!」

 

「ラァァイ、チュゥゥゥ!!」

 

「ガッ!?」

 

馬鹿みたいに突っ込んできたバンギラスに、ライが素早さを生かした速攻を叩き込む。バンギラスが驚愕の声を上げつつ後退する。サナギラスの時はこちらにとって不利ないわ・じめんタイプであったが、バンギラスはいわ・あく。でんきわざも効くようになったため、むしろ好都合だ。

 

「ライ!動き続けて撹乱しろ!」

 

「ラッ!」

 

俺の指示に合わせて、ライが木々や岩を使い三次元的な高速機動を行う。バンギラスは確か、すばやさがかなり低い部類のポケモンだった筈。こうしてライが動き続ければ、相手の攻撃は当たらない。

 

「グゥ!」

 

「!来た!」

 

どれだけ腕を振り回しても当たらないライにイラついたのか、俺に狙いを変えるバンギラス。ライを無視してこちらへと近づいてくるバンギラスだが、

 

(狙い通り!)

 

バンギラスは、渓流の川を挟んだ対岸にいた。川幅はかなり小さく流れも緩やかなため、ためらいなく渡り始めるバンギラス。そこへ、ライが枝を飛び移って真上を取る。

 

「!」

 

ライに気づいたバンギラスは、空中なら逃げられないと判断したのか、川の途中で立ち止まりライに向けて口を開ける。そして、一瞬のタメの後、強力な熱線が放たれる。その熱線はおそらくノーマルタイプのわざである『はかいこうせん』だろう。ライへと向かうその光線は、ライを撃ち抜いてなお空高くへと放射されていた。

『はかいこうせん』を撃ち終わり、相手を倒したことに満足したバンギラスは、次はお前だ、という風にうみの方を向く。

 

「残念でした」

 

「ライ!」

 

「!?」

 

そこには、ドヤ顔のうみとピンピンしているライがいた。最初から飛び上がっていのは『かげぶんしん』で出た偽物だったのだ。

 

「グォア!」

 

バンギラスは一瞬だけ驚いていたが、すぐに怒りの声を上げ再度『はかいこうせん』を撃とうとする。

 

「ライ、行くぞ」

 

うみの言葉に頷くと、ライがもちものを取り出す。

それは、黄色い宝石のような形をしていた。

 

「それだけ濡れてれば、電気もかなり通るだろ?」

 

バンギラスは川を渡っていた。かなり乱暴に歩いており、当然ずぶ濡れだ。ライが宝石・・・でんきのジュエルを砕くと同時に、バンギラスのはかいこうせんが発射される。

 

「ライ!『10万ボルト』!」

 

「ラァァイ、チュゥゥゥ!!」

 

渾身の電撃が、寸分違わずバンギラスを撃ち抜く。

 

「ガガガガガガガガガ!?」

 

はかいこうせんはうみのすぐ横を掠め背後にあった木々を数メートルほどなぎ倒していく。

バンギラスの方はというと、濡れた状態でジュエルに強化された電撃を受け、苦悶の声を上げる。電撃が終わると共に前のめりに倒れるバンギラス。しばらく警戒して離れて見守るが、起き上がることはなかった。

 

「・・・ふぅ」

 

安堵のため息を一つつき、背後を見る。そこには、はかいこうせんによって破壊された後が道のようになっていた。もしこれが直撃したら、と思うとゾッとする。

 

「にしてはバトル中はなんともなかったな・・・そうだ、バンギラス!」

 

慌てて駆け寄り倒れたバンギラスの容態を診る。危険なポケモンであるということ、おじいちゃんに怪我をさせたということから能動的にバトルを仕掛けたが、懲らしめることが大事なのであり、バンギラスを殺してしまいたい訳ではない。

 

「・・・専門家って訳じゃないけど、ダメージだけで後遺症とかはない・・・といいけど」

 

当然というべきか驚くべきか、バンギラスは倒れ気絶してはいたものの、死んではいなかった。いわゆる「ひんし」状態である。

 

「人間の薬がどこまで効くのかわからないけど・・・あれ?」

 

持ってきていた救急箱から薬を取り出そうとした時。その中に入れた覚えのないものがあった。

 

「これって・・・」

 

それは、蓋ではなくスプレー式で、紫の容器に入った謎の液体だった。一つではなく複数個がまとめて束になっている。

 

「これ、ポケモン用のキズぐすり・・・!?なんにせよ有難い!」

 

急いでバンギラスの傷のある部分にスプレーしていく。

 

「グッ・・・」

 

「痛いのか?悪いが我慢してくれ」

 

染みるのか、時折呻くバンギラスに声をかけつつ、ひたすらキズぐすりをかけ、患部に包帯を巻いていく。どうやらライとの戦闘時以外にも、いろんなところにぶつけていたようだった。そして、その中にはだいぶ前からできていたと思われる深い傷があった。

 

「・・・これ、サナギラスの頃からあったのか?」

 

進化しようとも、ダメージは残る。ひょっとしたらサナギラスの頃からこの怪我で気が立っていたのかもしれない。

 

「・・・ふう、出来た・・・」

 

どうにか全てのキズへ処置を終えると、疲労感から倒木を椅子がわりに座り込む。バンギラスへの治療中に周囲へ警戒してくれていたライも戻ってきて、膝の上に飛び乗り甘えてくる。

 

「よしよし、ありがとうねライ」

 

「ラァイ!」

 

もっと褒めて!という風にじゃれつくライを撫でながら、未だ寝ているバンギラスを見る。

 

(こいつはどうしよう・・・サイドンの時も思ったけど、いつまでも倒したら放置、なんてしてられないしなぁ・・・特にバンギラスは、放っておいたら山壊しそうだし・・・)

 

全てにおいてモンスターボールが無いのが悔やまれる。と、その時、茂みから音が複数近づいてくる。

 

「・・・!またか?ライ!」

 

「ライ!」

 

連戦で申し訳ない、と謝りつつライに前に出てもらう。すると茂みから、沢山の巨大な蜂がとびだしてくる。

 

「スピアー!」

 

それはどくばちポケモンのスピアーの群れだった。両手とおしり、三箇所の毒針を持って素早く攻撃してくるポケモンであり、何より群で襲ってくるという習性。これが今、一番厄介だった。

 

「スピッ!」

 

数えるのも難しい数のスピアーが『どくばり』で襲いかかる。しかしスピードならライも負けていない。

 

「ライ、10万ボルト!」

 

「ライ!」

 

「ス、スピッ!?」

 

電撃によるなぎ払いにより感電し、倒れていくスピアー達。しかし、相手はたくさんのむれである。どうやらどこかにある巣を刺激していたらしい。今まで出てこなかったのは、バンギラスを警戒してのことか。

 

「!ダメ!」

 

そんな考えをめぐらしていると、ライの電撃を躱した一匹が眠っているバンギラスへと向かう。

 

(今のバンギラスは無防備だ!それに怪我も完治してない!もし今スピアーの毒を食らったら本当に死ぬかもしれない!)

 

「やめろ!」

 

「ライ!?」

 

咄嗟にバンギラスとスピアーの間に入り、両手を広げて立ちふさがる。驚くライの声の方を向くと、どくばりを躱しながらこちらを心配そうに見ている。

 

(・・・ごめん、ライ・・・!)

 

バカなことをしている、と自分を嗤いながら目を瞑る。

 

「・・・っ!」

 

「スピァ!?」

 

「・・・え?」

 

しかし、どくばりは刺さってこず、スピアーの悲鳴が聞こえる。そっと目を開くと、俺の後ろから腕が伸び、スピアーを鷲掴みにしていた。

 

「・・・バンギラス?」

 

「・・・」

 

俺の呼びかけには答えず、スピアーをライが足止めしている群れに向かってぶん投げるバンギラス。突如飛んできた仲間にぶち当たり混乱するスピアー達。と、ゆっくりと起き上がったバンギラスは、怒りの形相で口を開くと、はかいこうせんを放つ。

 

「グ、ガァァァァァァ!!!」

 

咄嗟に群れからライが離れると同時に、スピアーの群れに直撃したはかいこうせん。文字通り蜂の巣をつついたような騒ぎが起こるスピアー達。結局、群れはどこかへと撤退していった。

 

「・・・!そうだ、バンギラス!大丈夫か!?」

 

その一部始終を呆けて見守っていた俺だったが、慌ててバンギラスに駆け寄る。

 

「・・・」

 

しかしバンギラスは俺をそっと押しのけたちあがる。こちらを見る目には、もう怒りも敵意もなかった。

問題ない、というかのような仏頂面のバンギラスに、少しだけ苦笑してライを抱き上げる。

 

「一緒に来ないか?」

 

「・・・!?」

 

俺の言葉に驚いたような顔をするバンギラス。次いで躊躇うようにそわそわしていると、俺の腕の中にいるライが話しかける。

 

「ライ!」

 

「・・・グル」

 

「ライライライ!」

 

「・・・」

 

なにやらよく分からなないライとバンギラスの会話はしばらく続き、その後バンギラスの方が諦めたようなため息をつく。

 

「・・・?うわ!」

 

首を傾げていると、おもむろにバンギラスが俺を担ぐと、やまのふもとへ向けて歩き出す。

 

「・・・ひょっとして、承諾ってことか?」

 

「・・・」

 

好きに受け取れ、という風に仏頂面を崩さないバンギラスだが、後ろでバチンバチンと尻尾が揺れていた。

 

「ははっ!よろしくな!バンギラス!」

 

「ライ!」

 

素直じゃねぇな、と思いつつ新しい家族に挨拶する俺とライ。そんな俺たちを担いだままふん、と鼻息で返事するバンギラスの尻尾は、やはり上機嫌にブンブン振られているのだった。

 

 

 

 

「あ、でもおじいちゃんにはちゃんと謝ってもらうからな」

 

「・・・グルゥ・・・」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おーい、〇〇!ちょっとこっち来んか!」

 

「あいよー・・・」

 

とある海域、漁師が網の引き揚げをしている時のこと。〇〇こと『釣り師ニキ』は自身の祖父に言われ、漁の手伝いにきていた。

 

「ったく、こっちはまだレポートも課題もあるってのに・・・」

 

ぶつくさ文句を言いつつ、これ以上何か言われる前に、と急いで祖父の元へ行く。

 

「で、どうしたの?」

 

「見たこともないハリセンボンが網にかかっとるんじゃ!ほれ!」

 

祖父の指差す先を見ると、ハリセンボンがかかっていた。しかし、たしかにそこにいたハリセンボンは、見たことのない種類であった。

 

「まじで分かんねーな。これ最近よく聞く新種じゃね?」

 

そう言って作業に戻ろうとするが、祖父がまたしても声を上げる。

 

「待て!!なんじゃぁ、あれは!?」

 

またかよ、と思いつつ祖父の見ている方を向いた〇〇は、言葉を失った。

 

「・・・は?」

 

漁船のすぐ近く、海面から何かが頭を出している。鯨か、とも思われたがそれよりさらに「青い」その何かは潜ったかと思うと、一瞬の間をおいて海中から飛び上がる。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

「落ち着け!船を安定させるんじゃ!」

 

同じ船に乗っていた他の漁師達が慌てる中、その超巨大な何かは、漁船の上を軽々と超え海の中へと入っていく。

 

「うお!波が!?」

 

「生簀を閉めろ!さっさと逃げるんじゃ!〇〇!はよう動け!」

 

祖父が叫ぶが、〇〇はぼうっと海を見続ける。

 

「・・・目が、あった・・・」

 

その何かが飛び上がり、ひねりを加えて飛び上がり漁船の真上に来た時。〇〇はたしかにその生き物と目があったのを感じた。深く青い海の底を見ているかのような気分になり、またその異様に見とれていた。

祖父の指示が響く中、〇〇はその何かが海の底へと帰っていくのをずっと見ていたのだった。




次回、配信回です(´・ω・`)

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