TSしたらなんか相棒たちがいるんですけど・・・ 作:コジマ汚染患者
第7話でございます。
ふふふ・・・ま、まだまだ話のストックはあるゼェ・・・_:(´ཀ`」 ∠):
(満身創痍)
バンギラスとのバトル、スピアーの撃退から夜が明けた。おじいちゃんは入院中のため、近所のおばあちゃんが朝ごはんを作ってくれた。
「しかし、ガンテツ爺さんが怪我してしまうなんて災難だったねぇ」
「ええ、まぁ・・・」
本当のことを言うわけにもいかず、苦笑いするうみ。しかしそんなことは御構い無しに話し続けるおばあちゃん。どうやら話し相手ができて嬉しいらしい。
「ライちゃんも、まだたくさんあるけえね〜」
「ライ!」
ライにもご飯を出してくれるというのはありがたい。・・・けどライや。それキャットフードだぞ。お前はそれでいいのか。
「うみちゃん、お代わりいるかい?」
「あ、はい。お願いします」
茶碗を持って台所へ行くおばあちゃんを見つつ、ちらりと窓の外を見る。
「・・・」
(ごめん・・・けどそんな目でこっち見ないで・・・!)
窓の外では、こちらを恨めしそうに見ながらキャットフードをもそもそと食んでいるバンギラスがいた。
いやまあ家に入ったら床抜けちゃうし・・・。
そんな言い訳のようなことを考えていると、おばあちゃんがお代わりを持って戻ってくる。
「それにしても、最近の熊ってのは随分おかしな形してるねぇ」
「ははは・・・ソウデスネ」
「おお、うみちゃん!どこに行ってたん・・・なんじゃぁ!?」
バンギラスに乗って山を下った時。住民達が集まっている所に合流した。話を聞くと、どうやらおじいちゃんに頼まれて俺のお守りをするつもりだった人が、俺が家にいないのに気づいて探そうと人手を集めている所だったらしい。
「あの・・・えと・・・これは・・・」
上手いことバンギラスのことを説明できず、挙動不審になるうみ。住民達はそんなうみの横で所在なさげに立っているバンギラスを見ている。
「ほぇー、最近外来種がなんだと騒がれとるが、こんな熊は見たことがないなぁ」
「・・・え?」
その言葉にキョトンとするうみ。その後も住民達(備考:年寄りばかり)は感心したようにバンギラスを叩いたり撫でたりしている。
「にしても随分とおとなしいもんじゃなぁ。・・・硬いのぉ!」
「うみちゃんを乗せてたってことは、うみちゃんのペットかい?」
「え?・・・あ、はい!そーなんですよ!あ、あはははは・・・」
(いいのか!?それでいいのかあんたら!?)
あまりの老人達の無頓着さにある意味戦慄するうみであった。年寄りが周囲に群がっている間、バンギラスは黙ってなすがままとなっており、後で若干不機嫌そうなバンギラスのアフターフォローに苦労するうみの姿があった。
そんな昨夜の珍事件を回想しつつ朝食を終えたうみは、食事を作ってくれたおばあちゃんにお礼を言うと、家に帰る前に地域の公民館へと向かった。
「・・・そうか、山の中にそんな巨大な蜂が・・・」
そう言って頷くのは、うみ達の住む地域の山でマタギのようなことをしている老人だった。他にも、周囲の山や森の管理をしている所有者のおじさんも来ている。スピアーが巣を作り、山に潜んでいると言うことは、今後山に入った人が被害に遭う可能性が高い。しかも今回のバンギラス騒動やサイドン騒動をうけて、山の調査に入ることが検討されていることがわかったのだ。
そのため、昨日集まっていた人の中から、いろいろなことを決める立場にある人を見つけ、話があるということで呼んでおいたのだ。
「信じろっちゅうんか?子供の与太話じゃろうに」
どうやら山の所有者の人は信じてくれてないようだ。しかし、もしなんの準備もなしにスピアーと鉢合わせでもしたら、どくばりによる一撃で簡単に殺されてしまうだろう。
「お願いです、信じてください!本当に、今の山は危険なんです!」
「熊や猪ならそこにおるマタギの爺さんがどうにかする!そもそも、でかかろうが蜂は蜂、刺されることには気をつけんと言っんじゃろうが、そもそも近づかんかったらええ話じゃ。嬢ちゃんは心配せんでええ!まったく、ようわからん生き物を飼っとると飼い主までおかしうなるんか・・・」
所有者の人の言葉に、連れてきていたライが反応する。パチパチと頰の電気袋から電気が漏れ、今にもぶっ放しそうだ。
「・・・それで、その蜂にはどんな対応をすればいいんだい?」
「・・・!」
「爺さん、あんた信じるんか?」
所有者の人は信じられないものを見る目でマタギの人を見る。
「わしも本気で信じとるわけでは無か。ただ、山っちゅうんは舐めてかかるとえらいことになるけぇのう。できる準備はすべきじゃろうが」
マタギの人の言葉に、所有者も唸る。その様子を見つつ、マタギのおじいさんがこちらに話を振る。
「それで、どうなんだい?」
「あ、はい、ええと、とりあえずそれらしき姿を見たら、何もせず近づかないようにしてください。縄張りに入った存在に対しては容赦ないですが、逆に言えば入りさえしなければ積極的に襲ってくることはないはずです」
それに、と続けて俺は公民館の窓の外を見る。それにつられて外を見た2人は絶句していた。
「な、な、な・・・!?」
「・・・これは」
外ではこちらの様子を伺うようにバンギラスが覗き込んでいた。所有者のおじさんは腰を抜かし、マタギのおじいさんも目を見開いている。
「この子をおじいさんと一緒についていかせます。もしもスピアーに襲われたら、助けてくれますので」
「・・・この獣は一体何かな?」
先に復活したおじいさんがバンギラスから目を離さずに聞いてくる。俺はどうせ信じないだろうとわかっているが、ポケモンとしてのバンギラスについての説明をする。
「・・・山を崩せるほどの怪物・・・か」
説明を聞いたおじいさんは何かを考えるようにして黙り込む。代わりに、所有者のおじさんが慌てたように叫ぶ。
「じょ、冗談じゃない!あの山を崩されでもしたら・・・!」
そう言って慌てるおじさんに、緊張で引きつりそうな顔を務めて引きしめながら、安心させるように説得する。
「大丈夫です、この子は俺の家族です。・・・ですがそうですね。もし仮にこの子が山を崩してしまったとしたら・・・」
その先を一旦溜める俺。固唾を飲んで次の言葉を待つおじさんに、笑いながら言う。
「俺をどのようにしてもらっても構いません」
(だって身寄りもないから村八分的なことになったら俺生きていけないし、責任取りようがないしね)
「どう思うんじゃ」
うみが言いたいことを言って、当日の話を進めて帰っていってから。無言で2人残っていた中、マタギの老人が呟く。
「はっきりいって理解できん。・・・しかし実際にようわからんもんを見せられて正直半分くらいは信じ始めとる」
そう言って吐き捨てるのは、うみが入った山を管理している男。最初は少女のよく分からん世迷言と一蹴するつもりだった。しかし最後の言葉に込められた覚悟が、少女の言葉を戯言と断じさせない。
「何があそこまであの子を動かすんじゃろうか。何にせよ、調べることは確定しとるし、好きにさせたらええ」
「甘いのう、やはり子どもができるとそうなるんか」
「あんたの方がよっぽど甘いわ。わしはただ山に異常がなければそれでええ」
そう言って立ち上がる男に、老人が再度呟く。
「あの生き物・・・クマだ何だと言われているが、どのクマにも特徴は当てはまらん」
その言葉に男が振り返る。老人は続ける。
「そもそもわしの知る山の生き物、そのどれにも当てはまらん。あれはまるで・・・」
「やめてくれんか爺さん」
化け物じゃ、と続けようとした老人を男が遮る。
「・・・うまくは言えんが、あの子はあれを家族とまで断じた。それに自分をどうとでもせえ、とも言った。そこまでの覚悟があるんじゃ。あれが何であれ信じてあげんとかわいそうやろが」
そう言って立ち去る男の背を驚きの表情で見送った老人は、くっくと笑う。
「まったく、やはり甘いんはお前じゃ」
そんなやりとりがあったことはつゆ知らず、うみは配信部屋で配信の準備をしていた。
「よし、準備はオッケー。あ・・・人がもう来てる」
準備をし、配信サイトにログインすると、すでに配信前から2、3人の視聴者がやってきていた。そのことに少し嬉しくなりながら、うみは配信を始める。
「はい、どーもこんばんは。うみです」
『わこつ』『わこつ』『配信やっぱ来たー!わこつ』
「始まる前から来て下さるとは、ありがとうございます!」
『釣りのことまで教えた仲だしな』『また緊張してガチガチの雑談でもする?w』『はぁー!やはり今日もカワユス』『おう変態、東京湾とオホーツク海、沈むならどこがいい?』『素直に死んで♡』『あるぇ!?』
「釣り師ニキでしたか。その節はお世話になりました。最初の配信については忘れてくださいよもう・・・。あ、変態さんはお断りです。でも聞いて行くだけなら問題ないですよ〜」
『ん?』『あれ?』『グフゥ!?あ、でもうみちゃんにならそう呼ばれてもいいかも・・・ってかなんかあしらい方が上手くなってね?』
「何を言いますか。元からお話は得意ですよ?最初がまずかっただけで」
そこまで話してから、少しずつ初見さんが混じり、話が盛り上がってくる。
『結構可愛いけど、何歳なの?』
「女性に年齢は聞くもんじゃないですよ?」
『銀髪ってことは、ハーフ?』
「秘密です」
俺の個人的な情報を抜き出しにくる奴もちらほら現れる。しかし最近調べて知っているぞ!そう言う特定厨とか言うやつに情報を渡すのはアウトだってことはな!
「結構人もきてるみたいですし、雑談でもしますか」
『なるほどリベンジってことか』『どゆこと?』『初見は第一回放送を探してみろ。そしてうみちゃんの成長を感じ取れ』『何話すんだ?』
「俺からの話題として少し、みなさんに聞きたいことがあるんですが・・・皆さんの中に、最近見られる、外来種を目撃した人っていますか?」
『?』『ああ、ニュースによく出てる・・・』『なになに?最近ニュース見てない』
パソコンで検索する限りの情報では外来種というのがポケモンなのか本当にただの外来種なのか分からない。けど、真偽不明ではあるけど、様々な情報を持った人が集まるここなら、ポケモンらしき情報も出るかもしれない。
『ニュースで見るくらいのことしか知らね』『俺も』『最近外来種っぽい奴なら見たぞ』『!?』『釣り師ニキまじか!』
「!そ、そのことを教えてくれませんか!?できるだけ詳細に!」
『うみちゃん必死だな』『釣り師ニキ、責任重大だぞ』『え、まじかよ』
釣り師ニキのコメントに注目し若干前のめりになる俺に、視聴者が少し戸惑っている。しかし、この情報によっては、今後のポケモンについての問題解決に必要になるかもしれないのだ。非常に気になる。
『爺さんの漁について行ったときに、網にかかってたんだよ。なんかハリセンボンみたいだったんだが、今まで見たことのない種類でな。多分日本近海で獲れるもんじゃねぇよあれ』
「・・・そうですか。ちなみにもっと特徴とかなかったですか?」
『思ったより食いつくなぁ』『つまり外来種についての情報があればうみちゃんと話せる・・・!?』『シベリアはこっちよ変態』『またシベリアかよ!もう行かないっつーの!』『おまいらもちつけ、釣り師ニキにコメントさせろ』
『特徴っつても・・・なんか普通のハリセンボンっぽいんだが、よく分からんけど水揚げしたときに突然針を滅多やたらに飛ばしまくったり、口から水をぶっ放してきたりしてたわ。水の方はともかく針はなんか鉄板とかにもぶっ刺さってたぞ』
『怖っ!?』『けが人とかでなかったの?』『幸いにもすぐに海に投げ捨てられたからけが人はいなかったわ。ただ船やらリフトやらに棘が刺さりまくって大変なことになったわ』『ほえー』
コメント欄で談義が始まる中、俺は肩を震わせ俯く。
『うみちゃんどした?』『お腹痛いか?』『というか泣いてる?』『ちょっ、釣り師ニキ謝れよ』『なんで俺!?ごめんなさい!』『謝んのかいw』
「それ!ハリーセンじゃないですか!?」
『は?』『え?』『ほい?』
コメント欄が疑問符だらけになる中、俺は興奮のあまり喋り続ける。
「ハリーセンはふうせんポケモンで、タイプはみず・どく。体を膨らませるために水をたくさん飲み込んで、その水の勢いを使って針を飛ばすんです!あ、針には毒があるんで刺された人がいなかったのは良かったです!」
『毒あんのかよ!?』『セーフゥ!?』『というかポケモンって何?』『前回の放送からうみちゃんが言ってるよく分からない生物』『ああ、妄想的な?』
「妄想じゃないです!それとハリーセンは、泳ぐのは得意じゃないんですよ!」
『魚なのに?』『アホの子かな?』『でも毒あるんだろ?』『うみちゃんが言ってるだけかもしれんぞ?』
コメント欄ではポケモンを信じてくれてる人は少なく、大半は俺の創作だと思っているようだ。しかし、ここではあえて否定はしない。今重要なのは、情報を持ってきてくれる可能性を作ることだ。
「もし皆さんの中で、外来種にあったことのある人が近くにいたりしたら、ぜひそのお話を俺に聞かせてください!力になるかはわかりませんが、俺ができる限り相談に乗りますので!」
『ちょっと外来種探してくる』『確か親戚が外来種の話ししてたはず』『うみちゃんの外来種相談室開設かw』
「相談室・・・いいですね!それ採用です!今度から、配信で「ポケモン相談室」やっていきます!宜しくです!」
『おk』『なんか知らんがうみちゃんカワイイヤッター!』『うみちゃんカワイイヤッター!』『信者できるの早すぎだろw』
こうして、「ポケモン相談配信」というジャンルでの俺の活動が決まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うみが配信で相談室を開くことを宣言した頃。とある研究室では主任の怒号が響いていた。
「きさまら、これで何度目だ!」
「す、すみません!」
怒り心頭の主任と平謝りする下っ端研究員。その前には、頑丈な特別性ガラスでできていたはずのモルモットケースが、何かで削られたかのような跡を残していた。
「またしても実験用のモルモットに逃げられるとは・・・これで何回目だと思っている!」
主任の怒声に完全に萎縮してしまっている研究員達。そんな部下の姿を見てさらにイラついたのか、「さっさと片付けて、探せ!」と言って主任室へと戻る主任。慌てて研究員達が片付けを開始する中、最近になって増えている実験用動物の脱走に頭を悩ませるのだった。
「くそっ、最近面倒続きだというのに・・・!」
未知のきのみの成分分析に、実験用動物の脱走。相次いで起こる問題と課題に、やり場のない苛立ちを覚えるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
深く暗い海の底。人はおろかポケモンですら近づかない海の底にある海流。本来ならそこに生物などいるはずもない激流の中を、そのポケモンは泳いでいた。その姿は暗い深海では何者にも気づかれることはない。ふと、その生き物は何かを感じ取ったのか、海流から外れて上を見上げる。そうしてしばらく海の底から海面を見上げ続け、少ししてまた海流の中へと戻っていくのだった。
なんか楽しくなってきた
( ᐛ )<ばなな!