ありふれた神様転生の神様の前世の魔王様は異世界に放り込まれる   作:那由多 ユラ

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本編
第1話


「やばい。だれ?猫の手も借りたいとか言ったやつ。猫の手なんて借りたら仕事がもっと遅くなるじゃん。大惨事だよもぅ。

…遊びたいなぁ」

 

白い机、白い椅子、白い紙、白い本棚、白い本、白い地球儀、白い空間。

 

全てが白いその空間に一人、金髪幼女は目に隈をつくり、髪をボサボサにしながら机に向かう。

 

彼女の名はステラ。星と世界を司る神、星神、幼神、名も無き神の寄せ集めetc…

様々な呼び名があるがれっきとした神である。

 

白い紙に白いインクで何かが書かれた紙に白いボールペンでなにか白い文字を書き、書き終えたものを床へと放り投げる。投げられた紙は床に落ちることなくどこかへ消えて行くので、そこらじゅうが紙だらけなんて自体にはなっていない。

 

一枚、一枚、と処理していくステラだったが手が止まる。

 

その書類は警告をするかのように黄色の紙に黒色の文字が書かれていた。

 

「いや、いま招待状なんて貰ってもそんなとこ行ってる暇ないってのに」

 

幸いと言うべきか、それはただのステラに向けた招待状で、不吉な配色はただ目立つようにしただけのようだ。

 

「…そういえば希依ちゃんって同じような経験してるんだっけ。

それなら…

出典『不遇な少女達の魔王道』より『喜多希依(きた きい)』を出力」

 

ステラはそう呟くと、ボサボサになった長い金髪から一本が抜け、机の向かいにピンと立ち上がった後、膨らんで人型となる。

 

肩にかかる程度の茶髪、鋭い目付きながらも見るもの全てを魅了する美貌、148cmという低く小柄な体格、白い空間に擬態でもするかのように白いパーカーに白いジーンズ。

顔も身体も美しいというほかない肉体であるにもかかわらずファッションに喧嘩を売っているかのような服装を見事に着こなす少女がステラの髪の毛から生まれた。

 

名を『喜多(きた) 希依(きい)

誰よりも不遇であったにも関わらず幸運と偶然により異世界で幸せを手にした魔王様。

ステラの前世であり、人間に恋した這いよる混沌を父に持つ出生も死後も特異な運命をもつ何処にでもいる少女。

 

「はろー、希依ちゃん。今暇?てか暇だよね?」

 

「…書類仕事は手伝わないよ?」

 

「初めからそんなこと頼む気ないってば。希依ちゃんは現場に立って指揮した方が楽ってタイプでしょ?

そうじゃなくてほら、これちょっと行ってきてくれない?」

 

ステラが希依に手渡すのは先程の招待状。希依は受け取ると一通り読み、目を細めてステラに告げる。

 

「絶対めんどうなやつだよね?行かないよ」

 

希依は招待状をその辺へ放り投げるとステラに背を向けて歩き出す。

 

「あ、希依ちゃん。床に落ちると自動で受理されちゃうから」

 

「ちょっ!?」

 

既に招待状は床に消え、希依の足元には目が眩むほどの眩い光を放つ魔法陣が生成される。

 

希依は飛び出そうとするも時すでに遅く、次の瞬間にはもう影も痕跡も無くなっていた。

 

「希依ちゃん、帰って来れるかな?

ま、最悪ステラが自分で迎えに行けばいっか」

 

そう言いながらステラは書類の処理を再開した。

 

 

 

 

 

魔法陣でどこかに飛ばされた希依が目を開けてまず飛び込んで来るのは30人いない程度の制服姿の高校生達。

 

「あの金髪合法美幼女め、そのうち犯して愛でて撫で回す」

 

希依の卑猥かつ物騒な発言は騒がしかった空間にスっと通り、その場の全員の耳に届いた。

 

周囲を見渡すと学校の教室のようで、皆各々の弁当を出しているのを見るに今は昼休みなようだ。

 

希依の発言を聞いて静まり返った空間。

その地面は先程も見たような強烈な光を放つ魔法陣がより大きくなって現れる。

 

「二回目は予想外ってかこんなん逃げられるか!」

魔法陣はその教室にいた全員を巻き込み光が止んだ頃にはそこは教室では無くなっていた。

 

 

 

 

今度の到着先は台座の上のようで、台座の下には三十人以上の人間が囲んでいて、祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好をしていた。

彼等は一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏まとい、傍らに杖のような物を置いている。その杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。

 

その内の一人、烏帽子のような物を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。

 

「ようこそトータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

「んー、天ぷら?」

 

天ぷら?と、高校生たちは疑問符を浮かべながらこの事態の原因かと疑うべき希依に視線を向ける。

 

「あ、間違えた。テンプレって言いたかった」

 

希依の訂正を聞き、皆ズコーと前時代的な転け方をする。

 

「いったい君は誰なんだい?制服ではないし、うちの高校の生徒ではないようだが」

 

高校生達のなかから代表して、我こそが爽やかイケメンの模範例とでも言いたげな男子生徒が希依に尋ねた。

 

「私?私って今どんななのかな…

とりあえず、一応神のお使いってことだし天使様とかでいいんじゃない?」

 

「て、天使?」

 

予想外な解答にイケメンは首をかかげる。

 

一応、上下真っ白な格好をしている希依はものすごく頑張れば天使にも見えないこともない。

 

「天使って、パーカーとか着るのかしら」

 

ふと呟いたのは170cmはある高身長で髪をポニーテールに結った少女。

少女の言葉を聞いた希依は目を輝かせて少女に詰め寄る。

 

「君、名前は?彼女とかいる?」

 

「へっ、は?…八重樫 雫です。あの、え?」

 

「あぁ、天使ね。うん。天使、ね。大丈夫。最近の天使は悪魔を右手に、神を靴下に装備したりするからパーカーくらい普通だって。ふつーふつー」

 

「あの、」「あ、野郎に興味はないから。素敵なおじさまになってから出直してきて」

 

希依の発言に意外とダメージを受けたのかイケメンは膝をつく。

 

「あ、あの!結局どこのどなたなのですか?うちの生徒では無いみたいですけど」

 

先程と似たようなことを希依に聞くのは希依と同じく制服姿ではなく、スーツに身を包んだ希依より背の低い、うっかり幼女の域に達しかねない少女。

 

「スンスン…」

 

希依は即座に反応し、少女の右腕を持ち上げて脇に鼻を押し付けて匂いを嗅ぐ。

 

「あのっ、へっ!?」

 

右脇の次は左脇。その後はあろうことか少女のスカートの中へと頭を入れ、股間部に鼻を押し当てる。

 

「スンスン…」

 

「ちょっ、やめ、ンッ、」

 

少女が嬌声をあげそうになったところで頭を出し、一言。

 

「その外見で25歳?マジで?」

 

「なんで今ので分かるんですかぁ!」

 

パシーン、と希依の頬へと綺麗なビンタが炸裂するもダメージを受けず、少女の右手が赤くなるだけだった。

 

高校生達は希依が堂々とセクハラをしたことよりも、彼女の年齢をピタリと当てたことに驚愕し、目を見開き唖然としていた。

 

「ウウンッ、皆様、場所を移動しても構いませんかな?」

 

「「「「「あっ、はい」」」」」

 

「25歳美少女のビンタ。ちょっと元気出たかも」

 

「えっ…」

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