ありふれた神様転生の神様の前世の魔王様は異世界に放り込まれる   作:那由多 ユラ

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第12話

散々、愛子が吠えた後、他の客の目もあるからとVIP席の方へ案内されたハジメ達。そこで、愛子や園部優花達生徒から怒涛の質問を投げかけられつつも、ハジメは、目の前の今日限りというニルシッシル(異世界版カレー)。に夢中で端折りに端折った答えをおざなりに返していく。

 

 

 

Q、橋から落ちた後、どうしたのか?

A、超頑張った

 

Q、なぜ白髪なのか

A、超頑張った結果

 

Q、その目はどうしたのか

A、超超頑張った結果

 

Q、なぜ、直ぐに戻らなかったのか

A、戻る理由がない

 

 

 

 そこまで聞いて愛子が、「真面目に答えなさい!」と頬を膨らませて怒る。

 

希依はハジメの答えに大爆笑し、ついに腹筋の限界を迎えて床に崩れ落ちて痙攣している。

 

ハジメは柳に風といった様子だ。目を合わせることもなく、美味そうに、時折ユエやシアと感想を言い合いながらニルシッシルに舌鼓を打つ。表情は非常に満足そうである。

 

その様子にキレたのは、愛子専属護衛隊隊長のデビッドだ。愛する女性が蔑ろにされていることに耐えられなかったのか、拳をテーブルに叩きつけながら大声を上げた。

 

「おい、お前! 愛子が質問しているのだぞ! 真面目に答えろ!」

 

ハジメは、チラリとデビッドを見ると、はぁと溜息を吐いた。

 

「食事中だぞ? 行儀よくしろよ」

 

全く相手にされていないことが丸分かりの物言いに、プライドの高いデビッドは、我慢ならないと顔を真っ赤にした。そして、何を言ってものらりくらりとして明確な答えを返さないハジメから矛先を変え、その視線がシアに向く。

 

「ふん、行儀だと? その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ? 少しは人間らしくなるだろう」

 

侮蔑をたっぷりと含んだ眼で睨まれたシアはビクッと体を震わせる。

思いの他ダメージがあったのか、シュンと顔を俯かせるシア。

 

よく見れば、デビッドだけでなく、チェイス達他の騎士達も同じような目でシアを見ている。彼等がいくら愛子達と親しくなろうと、神殿騎士と近衛騎士である。聖教教会や国の中枢に近い人間であり、それは取りも直さず、亜人族に対する差別意識が強いということでもある。何せ、差別的価値観の発信源は、その聖教教会と国なのだから。デビッド達が愛子と関わるようになって、それなりに柔軟な思考が出来るようになったといっても、ほんの数ヶ月程度で変わる程、根の浅い価値観ではないのである。

 

あんまりと言えばあんまりな物言いに、思わず愛子が注意をしようとするが、その前に俯くシアの手を握ったユエが、絶対零度の視線をデビッドに向ける。

 

が、先に手を出したのはさっきまで腹を抑えて床で悶えていた希依だった。

 

デビッドの首をギリギリ閉まらない程度に締め、まるで愛する子を殺された親が放つような強烈な殺気を騎士たちに向ける。

 

「ちょっと黙れよ無能騎士共。シアちゃんみたいなケモ耳美少女は神すら霞む世界の宝だ。あろうことか耳を切り落とせだぁ?だったらまず耳削いで指詰めて内蔵ほじくり出して、それからテーブルマナーを学び直して出直してこい」

 

希依の激怒。

それは二ヶ月という決して短くない時間の中でと愛子たちは一度たりとも見たことの無いものだった。

 

ガシャン、と既に食べ終えたハジメの皿にデビッドの顔面を叩きつけたあと、希依の殺気にあてられて動けないでいる金髪幼女、ユエを膝の上に抱き抱えて席に座る。

 

「…シアちゃん」

 

「は、はい!」

 

「こんなクズみたいなやつでも、それでもこれが一般的な思考だからさ、ハジメくんに耳を隠せるような帽子をプレゼントしてもらいな」

 

「は、はぁ。やっぱり、人間の方には、この耳は気持ち悪いのでしょうか」

 

「ん、シアの耳は可愛い」

 

ユエが手を伸ばしてシアのうさ耳を撫でようとするが希依に抱きつかれていて届かない。見かねた希依はユエの脇に手を入れてもちあげ、シアの耳に届く所まで持ち上げる。

 

「ユエさん…えへへ」

 

 

 

「ハジメくん、お願いがあります」

 

「却下」

 

「シアちゃんとユエちゃんを娘にください!」

 

「あぁ?誰が…娘?ど、どうぞ?」

 

「ハジメさん!?」

 

「シアが妹…」

 

「ユエさん悩まないでください!」

 

「希依さんまで二股、いえ三股ですか!?」

 

「愛子ちゃん?何言って…、まさか、愛子ちゃんが私の娘に!」

 

「あ、いえ、これは貴女が良く娘とかお母さんとか言うから、つい」

 

「優花ちゃん!愛子ちゃんがついにデレた!」

 

「ずるい!私も!」

 

 

 

「「「「なんだこれ…」」」」

初めて、男子生徒達と騎士達、ハジメの意思が一致した瞬間である。

 

 


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