ありふれた神様転生の神様の前世の魔王様は異世界に放り込まれる   作:那由多 ユラ

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第20話

 

「今度は希依さんと宇未ちゃんが行方不明です!」

 

「…ごめん、愛ちゃん先生、宇未ちゃんって誰?」

 

「希依さんと一緒にいた黒髪赤眼で羽根の生えた女の子です!」

 

 

騒動のあった翌日。昼食を食べながら愛子は生徒たちに希依と宇未が行方不明になったという報告をした。

 

「それってあれじゃないの?アルバイト。ほら、料理の」

 

「…居ませんでした。いえ、美味しそうなお味噌汁は作り置きしてありましたが」

 

「あれ喜多さんが作ったんだぁ…。負けた。女子力的に」

 

「騎士の方たちに町中の捜索をお願いしたんですが、ウルの町やその周辺には居なかったみたいです」

 

「また人探しか~」と男子の誰かが文句を言いながら項垂れてると、食事を終えた愛子の目の前に手紙が落ちてきた。

驚いて上を向くも、そこには照明と天井があるだけで、誰も居ないし落とすような隙間もない。

 

「あ、愛ちゃん先生それ!まさかラブレター!?」

 

「えぇ!?まさか、そん、な…」

 

手紙はピンク色の封筒に入っていて、ハートマークのシールで封をされている。

 

「と、とととりあえず開けてみますね」

 

生徒たち、特に女子生徒は固唾を飲み込み手紙を焼き焦がさんばかりの視線を向ける。

 

中には一枚、手紙が入っていた。何の変哲もない、元の世界では見慣れたルーズリーフが入っていた。

 

「よ、読み上げますね。

 

愛子ちゃんと生徒のみんなへ

ちゃお、愛子ちゃん。可愛い子の手作りお味噌汁で少しは回復出来たかな?なんとあれ、私が教えて宇未ちゃんが作ったんだよ?凄いでしょ。

 

さてさて、今はきっとお昼頃で、私と宇未ちゃんが行方不明って優花ちゃん達に伝えて、一通り町中を騎士共に探させた後かな?

これ、当たってたら「なんで分かるんだよ!」ってつっこみ入れるんだろうけど間違ってたらめちゃ恥ずいね。

 

まぁ、文字数稼ぎはこの辺にして私達が今どこにいるのかだよね?気になるのは。

今ちょっと帰ってるから。実家というか、職場というか。上司って訳じゃないんだけど、同一体というか、本体というか、ステラちゃんっていう、赤と白のオッドアイでユエちゃん以上の金髪美女美少女な子なんだけど、その子に宇未ちゃんのことを紹介しなきゃいけないんだよね。

 

って訳だから、テキトーにそっちの世界に戻るからそっちはそっちで旅に出ていいよ。

 

あぁ、私が別世界に行けるからって、これは君たちを元の世界に帰すには使えないから、期待してたならごめんね。

 

ps.手紙書く時ってps.って使いたくなるよね!

 

愛子ちゃんのママより。

 

…以上が希依さんからの手紙です。誰がママですか誰が~」

 

「ねぇ、愛ちゃん先生。あの二人って何者なの?なんか、喜多さんに五円玉渡したりしてたし。知ってるなら教えてよ、先生」

 

ウンウンと、他の生徒たちも頷きながら愛子に目を向ける。

 

「…べつに、口止めをされてる訳では無いですしそういう発言もしていたので言ってもいいのですが、私も話を聞いただけです。それでもいいですか?」

 

「「「「はい」」」」

 

口を揃えて返事する生徒たちに愛子は苦笑いを浮かべる。

 

「では」

 

コホンと、わざとらしく喉を整えてから希依と宇未について知っている限りを語る。

 

「希依さん。喜多 希依さんは、先の手紙にもあったとおり、ステラ・スカーレットという星と世界を司る神様だそうです。ここには、旅行と仕事で来たと言っていました。

また、希依さんは以前にも私達のようにクラスメイトの方たちと召喚され、勇者の方と共に旅して魔王を倒すように命じられたそうです。が、魔王を倒すどころか14代目の魔王になり、希依さんは就職と言っていましたね。魔王に就職し、忌み子と呼ばれ虐待されている子や両親に捨てられてしまった子、家族を殺された子等を保護する孤児院を作ったりしていたそうです。

そこから、約二万年の時が経ち、この辺はあまり知らないのですが死亡し、ステラさんという神と融合?したそうです」

 

神や元魔王を自称したりしていたのを実際見ていたのだが、予想以上の内容に絶句する。

 

「宇未ちゃんは、街ぐるみのいじめにあい、自殺をした後この世界に龍人種となって昨日転生したそうです」

 

皆、いじめで自殺するなんてニュースで見たりはしたものの周囲にそのような人間が居なかったのもあって半ば冗談だと思っており、今の話を聞いて口を抑えてしまう。

 

「いじめの原因は、天之河君に性格がとてもよく似た人物だそうです。名前は知りませんが、希依さんは彼を『勇者』と呼んでいました。

曰く、彼が悪といえば無害な子でも悪になり、いじめというのも烏滸がましいような恐ろしいいじめにあうそうです。そんな人を、宇未ちゃんは『人畜無害で善良な悪党』と言っていました。希依さんも、そして宇未ちゃんのお姉さんも。

運動も勉強も苦手な宇未ちゃんを、努力すら出来ないように追い詰めてから『勇者』は、努力不足だと罵り、街中の、学生や大人、家族までもが『勇者』に賛同していったそうです。

努力しようにも教科書は破り捨てられ、本を買おうにもお小遣いを全て奪われ、外で運動しようとしたら蹴飛ばされ。

楽しみであり生きる理由であった図書館での読書も出来なくなり、お姉さんとの会話も、お姉さんが追い詰められて引きこもってしまい出来なくなり、生きる理由を無くした彼女は自殺したそうです」

 

愛子は聞いた話とはいえ、壮絶さに気分を悪くし、水を一気に飲み干して続きを話す。

 

「宇未ちゃんの目的は、天之川君を見極め、殺すことだそうです。八つ当たりとは分かっていてもやらずにはいられないという宇未ちゃんの意志は固くて強く、先生には、…止められそうにありませんでした」

 

なんでそんなことをと思いつつ、それを伝えたい人が居ない以上口にしたところで意味が無い。

 

「それっ、てさぁ。今の状況不味いんじゃないかな?ここに帰ってきて、天之川君を直接殺しに行ったり、しちゃうんじゃない?」

 

「「「「あ…」」」」

 

女子生徒の言葉に、気付かされてしまった。

この世界に帰ってくるとはいえ、直接愛子達のもとへ帰ってくるかは分からないということに。

 

 


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