ありふれた神様転生の神様の前世の魔王様は異世界に放り込まれる   作:那由多 ユラ

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第28話

 

 

朝食で雫が豹変してから、まず始めたのは慣れない体格で戦うためのリハビリだった。

一体ずつ二尾の狼や脚が発達したウサギを倒し、慣れてきたら新たな技能、天歩を使って立体機動を交えながら魔物達を殺戮していく。

 

「雫ちゃん、立体機動で戦うコツは無理に頭を上、脚を下って風にせず、天井に立ち壁を走るような動き方が大事だよ」

 

急上昇したステータスも合わさり、朝食前は目で置いきれなかったウサギよりも速く動き、追い抜き、正面に回って切るという芸当までやってのけた。

 

「そろそろ次に進んでもいいかな。宇未ちゃーん、おねがーい?」

 

「はーい!」

 

最後のクマの魔物を全力で地面に叩きつけ、下の層への大穴をあける。

 

下の層の地面までは約5mほど。躊躇うことなく三人は飛び降りていった。

 

 

その階層はとにかく暗かった。

穴のあいた天井の下はかろうじて地面が見えるものの、少し離れると暗闇だ。

 

「求めるは視界、もたらすは光源」

 

希依が魔法を使い、三人の目の前に光の球が現れる。

光は隅々まで行き渡り、闇に包まれていた光景を顕にした。

 

光に引き寄せられたのか、2mほどのトカゲの魔物が襲いかかってきた。

 

「っ、バジリスク!こいつの目を見ちゃダメ!」

 

希依の警告を聞いて雫と宇未、そして希依がバジリスクと呼んだトカゲも顔を伏せてしまう。

 

「ここは修行には不向きすぎる。さっさと食べて次に行こうか」

 

希依の言うことを素直に聞いてしまったトカゲを容赦なく輪切りにする。

 

「お姉ちゃん、流石にちょっと…」

 

若干引き気味の宇未はジトーっとした目を希依に向ける。

 

「宇未ちゃん、魔物でも騙し討ちとかするんだから、あぁいう一見こっちが有利になりそうな行動に出たら容赦なく殺すように」

 

「はい。…それでもあれはちょっと……」

 

「ステラちゃんならあのまま手懐けるんだろうけど、私の場合そんな綺麗に上手くいかないからね。具体的にはトカゲが勝手に私の信者になって、いつの間にか魔物達から信仰されるようになって色々面倒」

 

「あなたと魔物の間に何があったのよ…」

 

「お父さんが色々あれな人でね…」

 

希依は遠い目をしながらも包丁でトカゲの肉からよく分からない見た目のよくないものを取り除いていく。

 

「…お姉ちゃん、もう遅かったみたい」

 

「………え?」

 

希依が手元から目を離して周囲を見ると、トカゲの魔物達の他に、サメの魔物が陸地に上がって悶えながらも必死に希依の前で頭を垂れている。

 

「うっそーん……」

 

「なんか、砂糖に群がる蟻みたいね」

 

「雫ちゃんもっといい例えないの!?」

 

「魔王が魔物たちをひれ伏せさせてる図」

 

「ヘルムートでも魔物は基本動物園にしかいなかったっての。

あーもー散った散った。君らに頼むことなんて何も無いよ」

 

手をひらひらとさせながら魔物達を説得すると全員引き下がり、トカゲは闇の奥へ、サメは沼へと帰っていった。

 

「トカゲは蒲焼きかな~」

 

「そういえば、それ食べるの!?」

 

「そりゃそうでしょ。雫ちゃんが石化の魔眼を使えるようになったら面白そうだし」

 

「いや、その…食べたことの無いものを食べるのって怖いじゃない?」

 

「日本人はイナゴの佃煮を食べるような人種でしょ?」

 

「そうだけどそうじゃなくて!」

 

「多分、カエルと似たようなものなのでは?」

 

「宇未さんはカエルを食べたことがあるの!?」

 

「うん。梅雨の時期はおなかいっぱい食べれました」

 

「…帰れたらステーキでもお寿司でもなんでも奢るわ」

 

「それならあなたの血を少しください。お姉ちゃん以外の人の血を飲んだことがないので。…処女の血は美味しいとも聞きましたし」

 

「す、少しなら……大丈夫かな。

ちなみに希依さんの血はどんな味なのかしら?」

 

「はちみつのように甘く、ミルクのようにまろやかな優しい味です」

 

「聞いといてあれだけど血からその味がするのは想像つかないわね」

 

「おそらく母乳に近いのでは?」

 

「…宇未ちゃん、自分の血の味の感想を言われるのって意外と恥ずいのが分かったからやめて」

 

「はい。あ、美味しそうな香りです」

 

「あらほんと。…なんであのトカゲからこんな美味しそうな蒲焼きができるのかしら」

 

「そのままじゃ不味いものを不味いまま食べさすなんてしたくないからね。」

 

「優しい風だけど、食べさせられるのはあくまでもトカゲなのよね」

 

「そりゃ修行も兼ねてるからね。

苦を伴わない修行を努力とは言わせないよ」

 

「…いただきます」

 

目を閉じて鼻をつまみ、盛り付けられた分を一気に流し込む。

 

「…喉に詰まらせないでよ?」

 

ゴクンと音を立てて飲み込む。

 

「…意外と美味しかったわ」

 

「それは良かった。技能はなんか追加されてる?」

 

「えっと、そうね、…石化耐性が追加されてるわ」

 

「…期待外れ」

「…ガッカリです」

「そんなこと言われる筋合いないはずなんだけど!?」

 

「まぁまぁ雫ちゃん。次の層に行くから準備してね?」

 

準備と言っても、立って衝撃に備えるだけなのだけれども。

三人とも立ち上がり、希依が踵を振り下ろす。

 

ミシミシと地面が音を立て、直径が10mはありそうな大穴があく。

 

「あっ、やべ」

 

「「っ!?」」

 

希依の言葉を聞き逃さなかった二人は視線を縦横無尽に動かして状況を掴む。

 

一つ、二つ、三つと、床のようなものが通り過ぎていくのを見届けながら下の見えない場所へと落下していく。

 

「ごめーん!」

 

希依の謝罪が迷宮中に響き渡った。

 

 

 

地面に着くまでに数十秒かかかった。

 

「雫さん、何層通ったか数えられました?」

 

「少なくとも40はあったわね」

 

「てことはだいたい40~50層でしょうか」

 

「残念、ここは62層目だね。…あれ、つまり約60階建てのビルから飛び降りたような感じ?すげくね?」

 

「希依さん、あなたはもっとすげーことをやらかしてるのよ?」

 

「お姉ちゃん、雫さん、話してる場合じゃなさそうですよ」

 

「「え?」」

 

宇未が指さす方向の一本道から数百頭のティラノサウルスのような魔物が頭に花を咲かせて襲いかかってくる。

 

「「はぁ!?」」

 

「悪刀、黄泉送り」

 

かつて天ノ川光輝を殺した刀、黄泉送りを乱雑に振り回しながら宇未が群れに突撃していく。

 

一撃必殺の連撃が一体一体着実に殺していくが、精々間引き程度の成果で焼け石に水にしかなっていない。

 

「はぁぁあああ!!」

 

遅れて雫が抜刀、跳躍しながら突撃していく。魔物達の頭上を駆け、上から刀を振り下ろして致命傷を与えていく。

 

希依は二人の撃ち漏らしをデコピンで破裂させていく。

 

だんだんと撃ち漏らしが無くなり、道を進めるようになると周囲が植物に覆われていることに気付く。

 

花を生やした魔物達を全滅させると、醜悪なアルラウネ、人型の植物の魔物が三人を待ち受けていた。それがいる空間は広い広間のようになっていて、そこからいくつかの通路が続いており、魔物達がこちらに向かってきているのがわかる。

 

 

三人が部屋の中央までやってきたとき、それは起きた。

 

全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできたのだ。雫と宇未は一瞬で背中合わせになり、飛来する緑の球を迎撃する。

 

しかし、その数は優に百を超え、尚、激しく撃ち込まれる。

 

雫と宇未は切り伏せていくが明らかに手数が足りていない。

 

「二人とも!全力で耳を閉じて!」

 

希依の声を聞き、二人は即座にしゃがみこみ、耳に手を当てる。

 

「声量、MAX

だあぁぁああああぁぁぁあああ!!!!」

 

山をも砕きかねない希依の声は無数の玉を粉砕し、部屋の地面や壁に細かいヒビを作る。

 

「行きます!」

 

宇未が立ち上がり、アルラウネに突きを当てる。眉間を貫き、後頭部から緑色の液体を吹き出し、アルラウネは植物のように変色して枯れる。

 

「あらら、流石にこれは食べられないか」

 

 

この後昼食にティラノサウルスの魔物をステーキにして三人で食べ、先に進んだ。

 

 

 

 

 

 

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