ありふれた神様転生の神様の前世の魔王様は異世界に放り込まれる 作:那由多 ユラ
職場体験 001
白で統一された空間。
デーブルを挟み、向かい合って座る宇未とステラ。大量の白い本がテーブルに積み重なっていて、一冊一冊読み耽る。
「ねぇ、宇未ちゃん。『ハイスクールDxD』って知ってる?」
「はいすくーる……タイトルだけは見たことがあります。読まなかったので内容は知らないですけど」
「その『ハイスクールDxD』なんだけどね、ちょっと大仕事になりそうなんだよね」
「大仕事、ですか?」
読み終えた本をテーブルに積み、ステラの話を聞く姿勢になる。
「ブローベルの転生者がそこに複数人送られてるんだけど、もう取り返しのつかない数いるんだよね」
「そんなに沢山なんですか?」
「うん、沢山。
それに厄介なのが、全員じゃないけど自覚がない転生者がいるってところ」
「困るんですか?」
「困るっていうか、やりづらいんだよね。相手からしたら理不尽に襲われるわけだし。こういうのが相手のときは希依ちゃんが羨ましいよ」
「お姉ちゃんだけは自己責任で助けられる、でしたよね」
「ん、そう。
じゃあ行こっか。ブローベルが管理していた『ハイスクールDxD』の世界に」
「はい! 頑張ります!」
「そう気張らなくていいけどね。仕事より観光の方が比率的には長いんだし」
「そ、そうなんですか」
「そーなの」
ステラは一冊の本を真ん中あたりで開き、天へと掲げると二人は光に包まれ、上空へと飛びたった。
やぁやぁ、名も姿もなきどこかの誰かよ、俺だ。
偉大なる俺こと俺の名は中川昭一。豚とか牛みてぇな神様に転生されてやった、所謂神様転生オリ主ってやつだ。
当然、転生特典も貰っている。あぁ、わざわざ教えてやると思うなよ? 俺たる俺は俺たる為に俺の力は誰にも教えねぇと誓ってんだ。
当然、偉大なる俺に。
ステラと宇未が降り立った地はどこかの学校の屋上。ステラは何事もなく着地したが、宇未は突然現れた地面に驚き腰から落ちてしまった。
「いったたた……」
「にゃはは、大丈夫?」
「ステラ様、ありがとうございます。大丈夫です」
ステラが差し出した手を取り立ち上がる。
「ここ、何処ですか?」
「んー、私立駒王学園。主人公ほか主要人物が通う学校」
ステラは白い本を読みながら答える。
「学校、まぁハイスクールDxDって言うくらいですから、学園ものなんですよね」
「んー、そうとも言えるかな、うん」
「なんか曖昧な言い方ですね」
「そんなつもりはないんだけどねぇ」
ステラは本を空間に開けた裂け目のようなものに放り込むと、屋上から出る扉に手をかける。
「ねぇ宇未ちゃん、屋上っていい場所だと思わない?」
「そう、ですかね。私はあまりいい思い出はないんですけど」
「それは残念。観光スポットと言ってもいいんじゃないかなって思ったんだけど」
「私にとっては自殺の名所ですよ」
「そっか」
軋みながら開く扉。バタンと立ち入り禁止の立て札が倒れた。
「そんな名所を立ち入り禁止にするなんて、人間はやっぱり愚かだよ」
「……ステラ様?」
授業中で騒がしいのに誰も居ない廊下を歩くステラは満面の笑みを浮かべて振り返った。
「にゃはは! 宇未ちゃん、まずはドーナツ屋さんだよ!」
「は、はい?」
「ドーナツは有と無を両立させたお菓子なの」
「そんなに凄いものだったんですか!?」
「凄くなんてないよ、凄そうに言っただけでね。
これから学ぶべき教訓は、どんなものも言い方次第、見方次第で価値は変わってくるってこと」
「は、はぁ」
「なんてね、言ってみただけだよ。騙ってみたと言うべきかな。
ねぇ悪魔さま、貴女は自分をどう魅せる?」
「っ、何者ですか。学園関係者以外の方はまずは受付で入校許可証を貰ってから校舎に入ってください」
教室の扉が開いて、眼鏡をかけた黒髪の少女が二人の前に立ちはだかった。
「それは悪かったね。屋上に降りちゃったせいで飛び降りるか校舎内を通るしかなかったんだよ」
「……生徒会室に案内します。ついてきてもらえますか」
「……」
「……ステラ様?」
「ステラ、ドーナツが食べたいな」
抱きつき、上目遣いで見つめるステラから少女は目を逸らしながら頷いた。
「分かりました、用意させます」
道中、ドーナツを買ってきた少女の使い魔にステラが一目惚れして欲しがったり、ヤキモチを焼いた宇未が龍化しようとしてステラが止めたりと、紆余曲折ありながらもなんとか生徒会室に辿り着いた三人。
ステラと宇未は出されたドーナツを頬張りながら少女との会話に花を咲かせる。
「改めて、聞かせてもらいましょうか。あなた達が何者なのか。なんのためにこの学園に近づいたのか」
「にゃははは、質疑応答の前には自己紹介をするべきじゃないのかな? 可愛い悪魔さま?」
「……この学園の生徒会長、支取蒼那です。」
「ん、ソーナ・シトリーちゃんね。ステラはステラ・スカーレット。この子は眷属の宇未ちゃんね」
「なぜ私の名をっ!」
「にゃははー、話さない理由はないけれど、わざわざ話す理由もないよね?」
「……私にはあなた達を殺すという手段もあります。正直に話してください」
「にゃは、にゃははははは!!」
ドーナツを食べ終え、ステラは立ち上がる。
「す、ステラ様?」
「ステラを殺すなんて、ロケット鉛筆で宇宙旅行に行くようなものだよ。ソーナちゃんじゃムリムリ」
「そんなこと!」
「でもまぁ、この学校には何回か来ることになると思うから、恩の一つや二つ売っておこうかなっ!」
ザスッ!
ステラは巨大な釘のようなものを創り、扉に突き刺した。釘は赤熱し、扉を溶かす。
「いきなり何……を……」
「やぁソーナ、俺だ。偉大なる俺のソーナに手ぇ出してんじゃねぇよ吸血鬼」
扉の向こうに、一人の男がいた。学校の制服を着ていて、身体中から煙が吹き出ている。
「……中川昭一」
「ソーナ、偉大なる俺を呼び捨てにしてんじゃねぇよ。偉大なる俺こと俺の名は俺に親しみを込めてショウちゃんと呼びやがれ」
「今更なにをしに来たのです、はぐれ悪魔が」
「偉大なる俺を裏切り者みてぇに言うなよ。ソーナが俺を切り離したんだろぅ?」
「……っ」
ソーナは男に怯え、ガタガタと震えている。
「罪状、ソーナちゃんを拉致して集団レイプ、後輩に強引なナンパ、幼女に性器を見せつけ欲情、満員電車で中学生に痴漢etc……、宇未ちゃん、仕事だよ。殺して」
「はいっ!」
「ぁん?」
宇未は右腕のみを龍化して、握り潰そうとするがすぐに手を離してしまう。
「熱っつ、ステラ様、これの転生特典はなんですか?」
「
「はっ! いぃぜ? 誰だか知らねぇがてめぇらも偉大なる俺様の性奴隷にしてやるよ。俺様に感謝しやがれ」
「巫山戯るな!! 悪刀 黄泉送り!」
手足を龍化して、背中の羽を巨大化させて、必殺の刀、黄泉送りで切りかかる。
「偉大なる俺こと俺様に金属製の武器は効かねぇよ! 凍る火柱!」
「よくもまぁ、こんなに綺麗に汚く地雷を踏みつけられるよね。宇未ちゃん、手助けいる?」
「必要ありません! 私の黄泉送りは、」
──セラミック製ですから。
切ったものを殺すその白い刀は、その場の音すらも殺した。
音はあと数分で戻ります。死体は私が処理しておきますから、あなたはせいぜい幸せに生きてください。
宇未はソーナにそう伝え、二人は校舎から出ていった。