ありふれた神様転生の神様の前世の魔王様は異世界に放り込まれる 作:那由多 ユラ
……感想をください。切実に。
モンスターを倒しながら進む道中、バカの更なるバカが露見した。
通常、戦闘時には武器に光が灯るのだが、私たちにはそれがなかった。
「ノイント、ソードスキルはどうしたの?」
「あんな素人くさい技、使っていられませんよ。カオリこそどうしました? 下手くそなくせに、私の真似ですか?」
「いや、スキル取ってないだけだけど」
「はぁ?」この姉は何を言っているんだ。確かに包丁でモンスターを倒せてはいるけど、明らかに時間がかかっている。「ならさっさと取りなさい。熟練度が上がりませんよ」
「いや、そのー、料理スキルとっちゃった」
目を逸らしながらバカは言った。
「…………」もう言葉もない。
「でもほら、料理スキルで戦ってるからレアなアイテムも落ちてるよ?」
アイテムを実体化させて見せてくる。どれもこれも肉や調味料ばかりだが。
「全部、余すことなく全部食材アイテムです! レア度の高いだけで全部食材で何の役にも立たないんですよ! そもそも熟練度上がってるんですか!?」
「そりゃもちろん。いま625だよ」
「まさか抜かれてるとは思いませんでした!」
ちなみに最大値は1000である。そして私の槍スキルの熟練度はまだ100にも満たない。ソードスキルを使わない故の弊害か。
「必要ありませんが、せっかくです。今日の夕飯は期待しておきます。今日食べない分は売ってしまいましょう」
仮にもレアアイテム。それなりの値段で売れるはずです。
「もう村に着きますよ。まずは宿を探していてください。私は本屋様を――
「はーい! あそこに〈INT〉って書いてるよ。あれって確か宿じゃなかった?」
遮るように、挙手してまで私の言葉を遮った。
「仕方ありませんね。今は夜に備えて、英気を養いましょう。英気というか、根気ですけど」
今日の夕食は、イノシシ肉を薄く切ったものに塩で味付け、いくつかのスパイスで香り付けしたものだった。宿に料理をする設備はなかったことを考えると、十分にご馳走と言えるでしょう。美味しいかはともかくとして、生のイノシシを食べるというのは仮想世界でないとできない美味しい経験です。
「さぁ、狩りの時間です。カオリ、今日は寝かせませんよ」
「ノイントこそ、ポーションの貯蔵は十分?」
「武器さえあれば十二分に。蹴鞠のように舞い、蹴鞠のように薙ぎ飛ばします」
イノシシ型モンスター、名はフレンジーボアと言いましたか。夜だからなのか、昼には見られなかったカラスのようなモンスターや大きい蛾のようなものも見られます。
現在レベル8の私ですが、ステータスは
棒高跳びの要領で飛び上がり、槍を半ばで持って回すようにしてカラスや蛾を蹴散らし、脳天を突き刺すようにイノシシに突き刺して着地。この筋力を最大限生かしたイカした移動法ならSTR極振りだろうとそれなりに速く移動が可能です。
「はぁああ!! ぶつ切り薄切りみじん切りー!! オマケにまな板で叩き!」
脳筋おバカなノイントと違って私は
「あっはははははは♪」
買いためた武器を全て使い切ると、夜が明けていることに気が付きました。八時頃から初めて、今は朝の六時ちょうど。十時間槍を振り続けたのですか。我ながら恐ろしい。
「……我が姉、生きていますか」
「ノンたん、呼び方変わってるよ」
「そちらこそ。というか、危ないのでその呼び方はやめてください」
「そう。ノイントたん、とりあえず寝ない? 疲れた」
「そうですね。脳に負荷がかかりまくってる感じがします」
フラフラ、プラプラと、カオリは宿に向かって歩きました。
私は使い切った槍とカオリの分の包丁を買い足してからから宿に向かいましょう。
目が覚めたら既に日が落ちかけていた。四時半。
一晩の戦闘で、私のレベルは23まで上昇していたみたいです。槍の熟練度は450と、まだカオリの料理スキルには届かず。あの調子だとすでにカンストしているのでしょうね。
ステータスはとりあえず
そろそろカオリを起こしましょう。そろそろここを出ないと次の村に着く頃には夜になってしまいそうです。
「カオリ、起きてくださいカオリ!」
「ん……うにゃー、……おはよ、彩織」
「ノイントです」
「あー、んー、んー」
「もう四時半です。そろそろ出ますよ」
「んーおこしてー」
「キスか切開手術、どちらがお望みですか」
「わー! 起きた起きた起きたから私のために買ってくれたであろう包丁を向けないで!」
ソードアート・オンライン、サービス開始から一ヶ月が経ちついに、一層の攻略会議がトールバーナという街で開かれました。
一ヶ月の間に、私はついに本屋様、もうこのボケもいいでしょう。本屋さんを発見し、少ないながらも本を購入したのです。第一層の歴史書を数冊に、モンスターに関する本を数冊。どれもそこそこ高価でしたが、現状消耗品が槍しかないのでお金には無駄に余裕があるんです。
「確か会議をする場所はここですよ。……カオリ、今からでも着替えませんか」
「え、なんで?」
「エプロンで攻略とか、誰から見ても嘗めてるようにしか見えませんから」
「私はノイントとハジメくんにさえちゃんと見てもらえればいいの!」
「私から見ても変で妙で奇天烈な変な姉ですよ」
「変って二回も言ったぁ!」
「不覚ながら、視線が集まってきてます。お願いだから黙っててくださいね」
「えー? ……ぶー」
待つこと数分のうちに、そこそこの人数が集まり、会議が始まりました。
仕切るのは、青髪の自称騎士。名をディアベル。
「はーい! それじゃそろそろ始めさせてもらいます! 俺の呼びかけに応じてくれてありがとう! 俺はディアベル! 職業は気持ち的にナイトやってます!」
声を張り上げ、ハンドジェスチャーも混じえながら上手く仕切っていますね。あれは私には、そしてカオリにもないスキルです。……たしか、主の呼んだ勇者がそのようなスキルを持っているのでしたか。
「今日、俺たちのパーティがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した!!」
やっとですか。いえ、二週間前に私が発見していて、ソロで挑戦したことを報告しなかったのは悪いとは思いますが、それでも遅すぎると思います。
「俺たちはボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームもいつか、きっとクリアできるとはじまりの街にいる皆に伝えなくちゃならない。それが俺たちの義務なんだ!! そうだろ、皆!!」
そうだろ、皆。いい言葉ですよね。いいだけの言葉です。それを言われてしまったら、拒否は許されない訳ですから。集団が許すわけがない訳ですから。
「じゃあまず、それぞれ六人でパーティを組んでみてくれ!」
あの
「おっ、おおおおねーちゃん、おお願いです組んでくだささい」
震える手でカオリの袖を掴むと、カオリは満面の笑みでうなづいてくれました。おねーちゃんマジ天使。
「いいよー。相変わらずの人見知りだね? ノイントちゃん?」
カオリの可哀想な子を見る目はムカつきますが、今は我慢です。なぜ私に感情なんてものを搭載させたのですか!
「私が人見知りなんじゃないです。みんなが私を知らんぷりするんです」
「ケンカばっかりしてるからだよ」
「偉い人は言いました。売られた喧嘩は買うのが礼儀、と」
「偉い人っていうか、エラいこったな人だよね、それ言うの。私が思うに、怒りっぽいからだと思うんだよ」
「それは仕方ないことです。急に感情が芽生えても制御が難しいんです」
「んー、よくわかんない」
「週に一回はスーパーサイヤ人になってました」
「いつから私の妹は学園最強から人類最強に格上げされたの?」
二人でパーティを組んだところ、他にも二人組があったようで、そこと組まされて四人組のパーティになりました。
感想を……感想おぉ……
ギャグ、会話メインだと面白いのかすっごい不安なんです!