ありふれた神様転生の神様の前世の魔王様は異世界に放り込まれる 作:那由多 ユラ
真っ白い天井に、知ってる顔が二つ。
刺青の入った顔に、可愛らしい笑みを浮かべた顔。
「……終わりましたよ」
「っ!? 彩織!」
「お姉ちゃん! 生きてる!?死んでない!?」
目覚めてすぐの私を、二人は抱きしめてくれた。
「カイン……りんごちゃん……」
「おう、カインだ。本名
「りんごは
「えぇ、えぇ、覚えてます、覚えてますよ。何時だって、あなた達のことが気がかりでしたから」
ナーヴギアを被ったまま上半身を起こし、抱きついてる二人を思いっきり抱き返す。
「うおっ!?」
「アハハッ! 痛いよ、お姉ちゃん」
「心配掛けたんですから、これくらいさせなさい」
「ったく、二年も寝ててなんでこんな強いんだよ……」
「たかが数年寝込んだくらいでへばる筋肉していませんよ」
「バケモンかよ。いや、そうだったな」
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なんですか?」
「お姉ちゃん、雨の日のわんちゃんみたいな臭いする」
「「!?」」
私とカインが驚愕した理由は、多分同じ理由。
「りんごお前……」
「まぁ、二年もお風呂に入れてませんからね。カイン、私の着替えってあります?」
「あ、ああ、あるぞ。おまえのおふくろさんが定期的に取り替えに来てるやつ」
カインは私に紙袋を手渡した。最低限の下着、上着もある。おまけに財布まで。これは好都合ですね。
「とりあえず銭湯か温泉に行きましょう。お風呂に入りたいです」
「待て待て待て待て待て。彩織、おまえ状況分かってる?」
「無人島から帰還した、みたいなものでしょう?」
「とりあえず病院が混乱するからこっから出んな」
「りんご、お医者さん呼んでくるー」
結局、その日外に出られたのは夜の八時頃だった。
ソードアート・オンライン攻略翌日、プレイヤー達に待ち受けていたのはリハビリ地獄。
キリトこと桐ヶ谷和人、カオリこと白神詩織は偶然にも同じ病院でリハビリに励んでいた。
そしてノイントこと白神彩織はというと……。
「やぁやぁ、無様にも這いつくばる様を嘲笑いに来て差し上げましたよ」
「ふつーに差し入れだけどな」
ノイントは既に退院していて、今日はカインこと祈和歌夢とお見舞いに来ていた。
「い、いおりー……たす……けて……」
「諦めて走りなさい」
「鬼ー、悪魔ー、ノイントー」
「詩織、実は余裕あるだろ……」
自然に詩織を名前呼びしている和人も息切れしていて倒れそうだった。
「おいおい大丈夫か
「くっそだまれ、てか誰だ……」
手すりに捕まって脚をプルプルさせている二人を相手に煽り倒す不良(ガチ)二人。
この煽りは休憩時間が来るまで続いた。
「……で、彩織、なんで来たの?」
「嫌でしたか?」
「そんなことない、嬉しいけど……」
「煽られて嬉しいって、お前の姉貴マゾなの?」
「そうですよ。元カレが超ドSでしたし」
「違うからね!? ハジメくんそんなんじゃないから!」
「そうでしたね。流石に脳内彼氏のことまで話すのは確かに卑怯でした」
「ちっがーーう!!」
「どうどう、分かったから落ち着け。ゼリー食べるか?」
「うぅ……、彩織の彼氏さんが優しい……イレズミマンなのに……」
「次それ言ったら左顔面だけに育毛剤塗りたくるかんな」
「どういう意図があって!?」
「……とりあえず病院では静かにしようぜ」
「何をいい子ぶってんだよ
「次それ言ったら右眉毛だけピンクに染めるぞ」
「はっ、痛くも痒くもねぇぜ」
「カイン、私は右眉毛だけピンクの男が彼氏というのは嫌ですよ」
「オーキードーキー、悪かったな話し合おうか黒の剣士」
「頼むから普通に呼んでくれ……名前でいいから……」
「いや、お前の名前知らねぇし」
「……桐ヶ谷和人だ。SAOだとキリト」
「
「女の子の名前みたいで嫌なんだそうです」
「オーケイ、よろしくな
「はっはっはっ、鼻毛を顎に植毛してやろうか」
「なんでさっきから仕返しに顔の体毛をいじろうとしてるのかな?」
「詩織、男子というのはいつでもハゲとかヒゲとかではしゃげる珍獣なんですよ」
「へー」
「「おい待てそこ」」
「はいはい白神さん桐ヶ谷さん、そろそろ休憩は終わりですよ」
パンパンと手を叩きながらナースが会話を中断させた。
「「休まってません!」」
「最近の子は元気ねー」
ナースに引きづられて行ってしまった。
「彩織、ナースって戦闘職だったりするのか?」
「それはまぁ、医療現場を戦場と称することもありますから」
「ほーん。……もう昼か」
「そろそろ帰りましょうか。今日のお昼はハンバーグがいいです」
「昨日ステーキ食って吐いただろうが。大人しくお粥とかにしとけ」
「肉体が肉を求めてます」
「胃が肉を拒んでんだ」
「血が足りません」
「卵粥作ってやるから」
「…………仕方ありません」
「んな泣きそうな顔すんなよ。プリン買ってこうぜ」
「コーヒーゼリーがいいです」
「ガキっぽいんだか大人っぽいんだかはっきりしやがれ」
「あなたとの子どもが欲しいです」
「聞いてねぇよ。……こんどな」
「知ってますよ。それ駄々こねる子どもをあしらう親の台詞ですよね」
「よく知ってんじゃねぇか。彩織の夕飯だけプリンかけご飯な」
「ごめんなさい私が悪かったですせめてお醤油下さい」
スーパーに寄り、夕飯の材料とデザートを買って帰宅した私たち二人は、キッチンに並んで昼食を作っていた。
カインは現在、私の家に居候している。どうやら、私たちよりも一足先に帰還したら身内全員が儀式殺人ならぬ儀式心中したらしく、家すらもなかったらしい。
そもそもカインの実家、祈和家はとあるカルト宗教と根深い関係にあったらしく、その彼も儀式の副産物として産まれたそう。顔の刺青は産みの親が語るには《但し落書き》という意味があるらしい。
「で、どうやって私の家を見つけたんですか」
「んー、あれだよ。俺が起きたときにやたら偉そうな奴が来たからついでに彩織とりんごが居る病院を聞いた。なんだっけ、菊岡だか、茎岡だかって名前だったと思う」
「あー、そっから先の展開はなんとなく予想出来ます」
「多分予想通りだ。ナーヴギアの中の画像データを印刷して、アルバムに綴じて見舞いに行ったら羽織さん(彩織、詩織の母親)に逢って、元プレイヤーだとか、彩織の彼氏だとか色々話して、なんやかんやで居候することになった」
「アルバムとは、随分洒落た物を持ってきてくれたみたいですね」
「だろ?」
「ええ。正直似合いません」
「正直に言ってんじゃねぇよ。塩取ってくれ」
「どうぞ」
「ん。次醤油」
「そっちに置いてありますよ。塩私にもください」
「あ、わりぃ。ほれ」
「あと胡椒ください」
「そっちに置いてあるぞ」
「いえ、そこのミックスの奴です。透明の、ゴロゴロするやつ」
「これ、胡椒だったのか……」
「黒胡椒に白胡椒、他に赤、緑、ピンクの胡椒が入ってるんです」
「ほーん。あ、そのゴリゴリ回すやつやりたい。入れてもいいか?」
「卵粥には合わないと思うのでやめてください」
「ちっ。夕飯はコンソメベースのパン粥にしてやるから覚悟しろ」
「パンのお粥って食べたことないので楽しみです」
「基本的に離乳食だからな」
「子ども扱いはやめてください」
「離乳食必須の胃になっておいて何言ってやがる」
「カインのチャーハンにザラメ入れますよ」
「やめろ。照りをつけようとすんな」
「冗談です。こっちは完成しましたよ」
「こっちもあと少し煮込んで完成だ」
昼食には、私がカインにチャーハンを作り、カインが私に卵粥を作ってもらいました。お互いに恋人の料理が食べたいという意見がぶつかりあった最善策です。
どうやら流石に、体力がかなり衰えているみたいで、昼食後の私は白神彩織の全盛期からは想像つかないくらい疲労感と眠気に襲われました。
「おいおい、食ってすぐ寝ると身体に悪いぞ」
「ふわぁ、……。カイン……」
「おい引っ付くな、羽織さんに見られたら不味いだろうが」
「……、膝枕」
「あぁ?」
「ノイントちゃんは、膝枕をご所望です」
「っ……(ヤバい可愛い抱きしめたい撫でたい可愛い抱きつきたい)」
「……ダメ?」
「……ソファで寝てろ。食器洗ってからならしてやる」
「やたー」
「ほんとにリーダーかよ、お前」
「スゥー……スー……」