ありふれた神様転生の神様の前世の魔王様は異世界に放り込まれる   作:那由多 ユラ

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姉妹転生 017

 

頬をかすめる凶弾。鼻腔にこびり付く油と埃の臭い。聞こえてくるのは走る足音と火薬の爆ぜる破裂音。両手に握る二丁の散弾銃の重い引き金がどこか心地いい。

 

仲間への警告を叫び合う男四人の集団に対して、私は一人駆ける。

 

ダァン!!

 

二丁同時に中距離から放たれた無数の弾が集団を襲う。距離を置いて放ったため、全員に命中はしたもののHPゲージを半分削る程度に収まってしまう。

 

「クソっ! ショットガンの二丁拳銃とかどんなステしてやがんだ!」

「足も速いぞ! 多分防御力は低い!」

「距離詰められる前に撃て! ショットガンなら距離とれば届かない!」

「ひたすら撃てぇ! GO! GO! GO!」

 

四丁からなる弾幕を躱すため、私は相手から距離をとる。岩陰に隠れ、狙撃銃のように構え引き金を引く。

 

ダァン!! ダァン!!

 

「あまり知られていないことですが、ショットガンでも弾の形状次第で距離五十メートルほどなら狙撃可能です」

 

まぁ、聞こえていないのでしょうけど。

 

四人の銃士が上半身を赤く染めて死亡した。

 

私はキルした四人のドロップアイテムを確認していたら、私の直感が何かを察知した。

 

ガシュン!! ドスッ

 

咄嗟に散弾銃を盾のように構えた直後、何かが銃身を貫き、頭の真横を掠めた銃弾が岩肌に突き刺さった。

 

ほほぅ、私に狙撃で挑みますか。

 

弾丸の飛んできた方向を凝視すると、一キロ程度離れた位置のビルに、ポカンと口を開けた女性を発見した。

 

……私の手持ちは散弾銃一丁とサブのハンドガン。名前は覚えてませんし、思い入れがある訳でもないですし、まぁいいでしょう。

 

私は散弾銃を振りかぶり、狙撃手目掛けて投擲する。

 

あらゆるゲームで最上級を誇る筋力値で放たれた散弾銃はさながら砲弾。見事命中し、女性の頭蓋を粉砕。

 

街に戻りましょうか。流石に今の状態で襲われたら対処が面倒ですしね。

 

人外じみた殲滅を成し遂げたプレイヤーの名はneunt(ノイント)、他のMMORPGの多くで猛威を振るう、元ラスボスである。

 

 

 

 

 

 

 

 

待ち伏せして、通りかかったプレイヤーに襲いかかるだけのはずだった。パーティを組んだ四人は前線に出て、一人のプレイヤーに全滅させられてしまった。

 

距離千二百、おまけに相手は私に気づいていない。外すわけがない、はずだった。

 

察知すらされないはずの狙撃を察知し、あろうことかショットガンで軌道を逸らした!?

 

私はあれがNPCなのかとすら疑った。人間がやっていいことじゃない。

 

……まて、あのプレイヤー何をしているの?

 

裸眼では良くは見えないけれど、少なくとも狙撃するポーズではなかった。

 

スコープを覗くと、野球のピッチャーのようにショットガンを振りかぶる、銀髪の女性プレイヤーが見えた。

 

直後、私は死亡した。

 

 

…………はぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メインウェポンを二丁とも失った私はガンショップで失ったものと同じ散弾銃と、各種銃弾を購入しながら、このゲームに来た目的を思い返す。

 

きっかけはカインから誘われたデートだった。銀座なんていう似合わない場所を選んだかと思ったら、カインからのサプライズが待っていた。

 

サプライズワーク(急な予定)が待っていた。

 

高そうなスイーツ店に連れられて、カインのアルバイトの雇い主である菊岡という方との対談。

 

話は、今プレイしているゲーム、GGO、ガンゲイル・オンラインでの不可解な事件のことだった。

 

曰く、《死銃(デスガン)》と名乗る不審なプレイヤーがいるとか。

曰く、そのプレイヤーはモニターに映るプレイヤーを打ったとか。

曰く、そのプレイヤーに撃たれると死亡するとか。

曰く、死亡とはゲーム内のことではなくリアルでのことだと。

曰く、プレイヤーはナーヴギアではなくその後継機、アミュスフィアでログインしているとか。

曰く、そのためリアルに干渉、殺害は不可能であるとか。

 

曰く、曰く、曰く。詳しい話を聞いていて、私とカインはハッキリとした既視感を感じた。SAOで行われた、遊び要素のある、遊び甲斐の無い殺人劇。知ってはいるが、イタズラにも使えない手品だった。

 

今後のVR界隈のため、私とカインは二手に別れて犯人の捕獲を買って出た。

 

私は茅場晶彦お手製のチートアバター、neunt(ノイント)でGGOにログインし、死銃と接触。及び、可能な限りのプレイヤーの護衛。

 

カインはリアルで待機。死銃の片割れ、リアルで活動している殺人犯の居場所がわかり次第突撃することになっている。

 

 

 

 

――ちょっと! ねぇってば!!」

 

「っ!! おや、あなたはたしか……」

 

他に使えそうなものがないか探していたら、このゲームでは珍しい女性プレイヤーから話しかけられていた。

 

「さっき、私をキルしたの、あなたよね」

 

走って来たのか、息を切らしながら言う。

 

「さっき……、あぁ、あの私の銃をお釈迦にしてくれた狙撃手ですか」

 

女性でスナイパー、色素の薄い青髪……、もしや……。

 

「もしや、冷血の狙撃手(コールレッド・スナイパー)ですか」

 

「まってその呼び名知らない」

 

「それはともかくとして、何か用ですか? 冷血の狙撃手(コールレッド・スナイパー)

 

「その呼び方確定なの? シノンでいいわよ。長いでしょ」

 

「カッコイイじゃないですか。私のことも銀翼と呼んでくださって構いませんよ」

 

「まさか厨二病ってやつ……?」

 

「それは私の後輩ですね。で、何か用事があったのでは?」

 

「大したことじゃないわ。時間も取らせない」

 

「時間はかけてくださって構いませんよ。明日のBoBまでは基本暇なので」

 

「なら、その辺の酒場に行きましょ。お金は私がだすわ」

 

「へぇ、いいですよ。珍しくもなくナンパには積極的な私です」

 

「なっ、ナンパて!?」

 

「申し遅れました。私の名はノイント、反逆を生業としております」

 

「は、はんぎゃく? ……さっきも言ったけど、私はシノン。スナイパーよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンショップ近くの人気のない酒場に私は連れられた。

 

「で、なにか聞きたいことがあるのでしょう? ここでは珍しい女性同士なわけですし、今なら口座番号すらも答えるかもしれませんよ?」

 

「それはやめなさい。危険だから」

 

「それはともかく、時間は有限ですよ。お喋りで今日を潰すのは賛成ですが、用事を先に済ませましょう」

 

「そうね。……じゃあ、遠慮なく聞くわ。私をキルした攻撃、一体何をしたの」

 

「見えませんでしたか? 銃弾の弾道を辿ってあなたの場所を特定し、全力で散弾銃を投げました」

 

「距離千二百はあるのよ!? それに私はビルの屋上! 有り得ない!!」

 

「そんなことありませんよ。リアルの私なら目視可能位置であれば砂粒でも命中させられます」

 

「私よりよっぽどスナイパーじゃない……」

 

「私の名はノイントです。戦闘において、物理的に可能なことはおおよそ可能です」

 

「……どうしたら、どうしたらそんな強さが手に入るの」

 

「そうですね……」

 

考えたこともなかった。私が最も強かった全盛期は産まれた時のことですし、……。

 

「なにか目的を持ってみては如何でしょう?」

 

「目的?」

 

「例えばムカつくあいつを殺したいとか、気になるあの子にいいとこ見せたいとか、彼氏と肩を並べて立ちたいとか、奈落の底に落ちた彼を助けたいとか」

 

「なんで四分の三が恋愛なのよ。最後の妙に具体的だし」

 

「恋は人を強くする、らしいですよ? 私の姉がその典型例でしたし」

 

「お姉さんの彼氏に何があったのよ……」

 

「あなたも落としてみては?」

 

「それはどっちの意味でかしら?」

 

「お望みとあれば私が背を押しても構いませんよ。日本にも奈落はともかく、滝つぼくらいはありますし」

 

「それ意味無いでしょ。復讐鬼に目覚めて強くなるってルートも無いし」

 

「へぇ、あなたは意外と少年漫画な思考をしてらっしゃるのですね」

 

「それ、女子に言っていいセリフじゃないわよ」

 

「それは失敬。お詫びにひとつアドバイスを差し上げましょう」

 

「アドバイス?」

 

「これは後輩にも聞かれたのですが、殺しの責任の上手いやりすごし方、とでも言いましょうか。あなたの目はそれに近いものを求めている気がします」

 

「っ!! あなた、どこまで知って……」

 

「私は何も知りませんよ。あなたが知っているのです。あなただから知らないのです」

 

「はぁ?」

 

「数えることです。殺した数を。そして、生かした数を」

 

「生かした、数?」

 

「口よりも目が語っています。あなたは決して殺してはならない、善良な一般市民を殺せるような人間ではありません」

 

「そんなこと!」

 

「事情は全く知りませんが、推測するにあなたは殺人犯、または強盗犯でしょうか。そのような輩を返り討ちにしたのでしょう?」

 

「だからって、殺しが許されるって言うの……? ふざけないでよ!」

 

シノンは般若のように顔を歪めて怒鳴る。

 

「あなたの今の怒りは、罪悪感からなるものでしょう? ……本当に恐ろしい人間というのは、私のような罪悪感を持たずに人を殺せる人間だそうです」

 

「殺せる人間はどうあろうと恐ろしいわよ」

 

「……むぅ、案外話の通じない人ですね。ついでに日本語のお勉強も教えてあげましょうか? 偏差値カンストさせて差し上げます」

 

「馬鹿にしないで。そして偏差値は基本的にカンストしない」

 

「冷静になったようですし、わかりやすく簡潔に言いましょう。あなたが殺した人間は、確実に誰も殺さない人間でしたか? 悪意をもって、殺意を向けて、法から目を逸らして、他人に迷惑をかける人間ではなかったのですか?」

 

「どういう意味」

 

「分かっていることから目を背けないで下さい。やれやれ、日本人は罪の意識にばかり敏感で困ります。数えましょう、殺した数と、生かした数を。あなたは一人を殺したことで、何人の人間を生かしましたか?」

 

「生かしたって……」

 

「世の中、弱肉強食なんかじゃ終わりませんよ。焼肉定食です」

 

「……は?」

 

わけがわからない。そんな顔をしている。国語の教科書にすら載っているような言葉遊びですが、伝わりませんでしたかね。

 

「シノン。死ぬべき人間がいるのなら、それは死ぬべき人間です。殺すことで救う者がいる。死ぬ事で救う者がいる。あなたが前者であり、あなたが殺した者が後者であった。ただそれだけのことです」

 

「殺して、救う。だけのこと……」

 

「つまりはさっさと忘れてしまうことです。殺した家畜の顔を覚える肉屋はいませんよ」

 

「それが出来たら苦労なんて……」

 

「人殺しは最悪の行為です。許すとか許さないとか、許容云々以前の問題です。……だからといって、人を殺したからといって、幸せになってはいけないというわけでも無ければ、他人に気を使う必要もないんです。だって、誰にだってあるでしょう? いわゆる法律とか常識とか、そういったものが吹っ飛んでしまう瞬間って」

 

「…………」

 

「私はそろそろ行きますよ。BoBのエントリーを忘れていました」

 

「そう……。あ、私もだ」

 

「聞かないと思いますが、一応忠告です。今回のBoB、やめたほうがいいですよ」

 

「分かってるなら言わないでちょうだい」

 

「これまた失敬。……シノン、殺しあったのも、ここで話したのも、何かの縁です。困ったことでもどんなことでも、何かあったら我々反逆者を頼りなさい」

 

「はん、ぎゃくしゃ?」

 

「全てを敵にしてでも救済を。我々反逆者はあなたを勝手ながら味方します。……では、縁があったらまた逢いましょう」

 

 




やっちまったやっちまったやっちまったやっちまった。



以下感想催促

感想なんて無くたって、書くけれど、たった一言でも貰えたら、私とっても嬉しいわ。(デレ極振りのクーデレ風)

今度は間違いなく催促だ。うん。感想ください!

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