ありふれた神様転生の神様の前世の魔王様は異世界に放り込まれる 作:那由多 ユラ
BoB本戦のバトルロワイヤルは同じマップに本戦進出者30人がランダムに配置される遭遇戦である。
開始位置は予選とは違い、他プレイヤーとは一キロは離れて開始する。本線のマップは直径十キロ。山、砂漠、森、廃墟都市などが配置されているためステータスでの有利不利が無い様になっている。
しかし、戦場が広いと漁夫の利狙いで最後まで隠れるというプレイヤーが必ず出るため、プレイヤーには《サテライト・スキャン端末》というものが渡される。十五分に一回、上空をスパイ衛星が通過し、全プレイヤーの位置を端末に表示する、という設定。さらに表示された光点に触れれば名前まで分かる仕様。
……私は今、心底そのサテライトスキャンを恨む。
数にして十五。言い換えて半分。それらが私に向かって銃口を向けている。そのなかにシノンや死銃は居ない。
「耐久面もそれなりに高くはあるのですが、死なない訳じゃないんですよね……」
フルオートとはいえ所詮はショットガン。マシンガンやハンドガンほど数撃てる訳じゃないそれを一丁だけアイテムストレージにしまい、代わりにナイフを取り出す。
「フフフフフッ。作用反作用の恐ろしさ、見せつけて差し上げます」
姿勢を低く、前傾姿勢。右手は逆手にナイフ。左手のショットガンは後ろに向ける。さながら、ロケットのジェットエンジンのように。
「IT'S SHOWTIME!!」
一度に放つ玉の数よりも火薬の量を優先した結果生じる衝撃が、私に速さを与える。
ダァン!! ダァン!!
弾幕を迂回するように接近し、当たれば必殺の部位、すなわち頭や首にナイフを刺し、斬る。
ダァン!!
斬る。
ダァン!!
斬る。斬る。
ダァン!! ダァン!!
斬る。斬る。斬る。
脚が縺れようと、防具に弾がかすろうと、私は止まらず斬り切りkill!
ちょうど十五分。最後のスナイパーの首をはねて廃墟都市のプレイヤーは私を残し消えていった。
「これで何人か、死銃からの被害を免れてくれればいいのですが……」
周囲を見渡せる場所に腰掛け、サテライトスキャンで他のプレイヤーの位置を確認する。
ふむ……。近くにプレイヤーは無し、移動を考えると誰を狙うにしても大差は無い。ひとまずシノンと合流しましょうか。スナイパーなら移動距離は少ないでしょうしね。
「目的を持つ……。ムカつくあいつを殺したい……。」
自身が認めてしまった強者の言葉を反芻しながら、逃げ惑うプレイヤーを追い詰めたプレイヤーの頭部に銃口を向ける。
「まだ……、まだ……、……いま!」
キルしたプレイヤーが一息吐ききったところで引き金を引く。弾は吸い込まれるように防具を突き破る。プレイヤーは倒れ、ポリゴン片になって散った。
「やっと、二人目ね。気が遠くなるわ」
多数のプレイヤーを同時に相手できるあの銀色が羨ましいわね。
「次は、あっちかし――
その場から移動しようと立ち上がった瞬間、全身から力が抜けてその場に倒れた。
なにっ!?
声すら出ない。首も口も舌も動かない。手も足も指も爪も腰も背骨も尻も胸も肺も心臓も胃も腸も震えている。歯がガチガチと恐怖を主張する。
カチリ。セーフティを外す音が聞こえた。コツコツと、足音が近づく。
こんな、こんなところで私は負けるの? 強くなったつもりだった。まだ、足りないっていうの?
敗北を告げる銃声は――
聞こえなかった。
「ギリギリセーフ。……だといいのですが」
聞こえてきたのは聞き慣れた訳でもないのに脳裏にこびり付いた銀色の声。
「聞きたいことがあるのですが、まずは逃げましょう」
胸がヅキヅキと痛む。視界が霞む。
「死銃、あなたとの喧嘩は後回しです」
「……逃がすと、思っているのか」
「はっ、私の名はノイントです。……それに、やはり反逆者と殺人者の戦いに命なんて無粋なものを関わらせるべきではありません」
「……………………今だけだ。次は、殺す」
「私は死にませんよ。あなたが死ぬんです」
カチリ。セーフティがかかる音と共に、死が去っていく。
「なんで、なんで助けたのよ」
全員敵なはずなのに助けられるなんて……。
「死んで欲しくなかったから、ではいけませんか?」
「頼んだ覚えなんか無い!」
「頼まれた覚えもありません。ただ、言ったでしょう。あなたの味方を、勝手にすると」
「……やめてよ。そんな、その程度で、私を助けたつもり!?」
「いえ。ただ、話した人間に死なれたら気持ち悪いじゃないですか」
「関係ないじゃない! ほっといてよ! 私は一人で強くならなくちゃいけないの!」
「人は一人で強くなんてなれませんよ。人は一人で人ではいられませんから」
「だったら、だったらあんたが一緒に戦ってくれるの!? 人殺しと肩を並べて、人殺しに背中を預けて!」
銀色は顔色ひとつ変えず、こくりと頷いた。
「シノン、私があなたを愛しましょう。人殺しだろうと殺し屋だろうと殺人鬼だろうと、私の前ではあなたはシノンです。清廉潔白の聖人だろうと、極悪非道の悪魔だろうと、私はシノンが大好きです!」
はっ!? へっ!? ひょ!??
「はっ!? へっ!? ひょ!??」
「魂に刻みつけなさい。これは呪いです。全人類があなたを人殺しと罵ろうと、ノイントという人間寸前がシノンを呪い続けると」
「なっにゃにゃにゃに言って!?」
「安心してください。わたしはそれなりに浮気には寛容ですから」
「ばっ、ばばバッカじゃないの!? 誰があんたなんかっ」
「私はシノンに愛を求めたりしません。それは求めるものではなく押し付けるものですから」
銀色が、ノイントが私を抱きしめる。愛を、無理やり押し付けてくる。
「世界に、ゲームに、人生に誇りなさい。あなたは美しい」
麻痺はもうとっくに抜けたはずなのに体が震える。呼吸が上手くいかない。頬が濡れる。
落ち着いたシノンに死銃に関する事情を話し、迅速な保護のために住所を訊いた。それを、管理者権限を利用してカインに伝えてシノン宅に向かわせる。いくつか理由はあるが、リアルで活動している死銃はシノン宅、もしくはその周辺にまだ居座っていると考えられる。であるならば、その間に私はこっちの死銃との決着をつけるだけ。
三回目のサテライトスキャン。残りプレイヤー三人だった。私とシノン、そして死銃と思われるプレイヤー。名をsterben。離れた位置にいることから、私たち以外のプレイヤーを倒しに行っていたと思われる。今はこっちに向かって進んできていて、このペースなら次のサテライトスキャンを待つことなく決着はつきそう。
「ね、ねぇ、」
シノンはどこか怯えながら、私の装備の裾を掴む。
「どうしました?」
「思いついたんだけど、いま私たちが自滅してあいつを優勝させちゃうっていうのは、ダメなの?」
「ダメですね。最悪であるシノンが殺される、の、その次に最悪です」
「どうしてよ」
「反逆者もラフコフも、望むところは決着なんです。ここでやらなければ、おそらく次の戦場はリアルになります。埼玉、下手すれば東京や千葉辺りまで血の海、死体の山の阿鼻叫喚な地獄絵図」
「なんで、なんで、そこまで戦えるの」
「まぁ……、結局のところ同じなんです。反逆者もラフコフも、どちらも法や常識から逸脱してしまった集団。だからこそ互いを許容できない。警察官と犯罪者ではなく、殺人鬼と殺し屋。水と油なのではなく、N極とN極。キノコの山とタケノコの里ではなく、ポテトチップスコンソメ味とのり塩味」
「……だんだんよく分からなくなってきたんだけど」
「要は気持ち悪いんですよ。目を逸らしても目に入る。耳を塞いでも臭ってくる。気持ち悪い。長靴の中に雪が入ったまま歩いてるみたいに気持ち悪いんです」
「…………もういいわ。つまり家の中にゴキブリが湧いたから見失う前に殺したい、みたいなことなのね」
「シノンは理解力が高くて助かります。是非ともリアルで語らいましょう」
「一応楽しみにしておくわ」
「こういうのも死亡フラグって言うんですかね」
「この戦いが終わったらってやつ?」
シノンが不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。
「私、この戦いが終わったらシノンに浮気するんだっ!」
ライフルをちゃんと装備したシノンに習い、私もストレージからフルオートショットガンを二丁取り出す。
「まず告白をしなさい」
「もうしたじゃないですか。好きですよ、シノン」
「死ね」
「残念、私の名はノイントですから」
「私はシノンよ」
「くふふ」
「あはは」
さぁ、時は来ました。反逆の時間です。
試行錯誤の末にノイントちゃんの無双ゲーに……。
ノイントちゃんは男女どっちもいける子です。(主に香織の影響)
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