ストックが割とたまってきたので、自分がチキらない内に投下します。
主人公は大体ヴィザと同格ぐらいの強さ。
※ただしヴィザは原作より強化されている模様。
死体となって転がる見知った顔。
敗者である事を示す、破れた“ボーダー”の隊服。
廃墟となった街。
闊歩する巨体の怪物。
崩落した本部基地。
首のない最高司令官……そして幹部たちの身体。
あの日、人類は“近界”に敗北した。
「おや──」
そして。
「──散々暴れてくれましたな。ほっほ、随分と活きがいいお嬢さん“でした”」
わたしが、最後……。
わたしこそが、最後の“ボーダー”だ。
「何を遊んでいる、ヴィザ」
「おや、前線に出てきてよかったので?」
「……そいつで最後だからな。あの時といい、手こずらせてくれたが……おかげで俺は本国の実権を握る事ができた。その点に関しては感謝せねばなるまい。わざわざ出向いた甲斐があったというものだよ」
「左様で……。しかし、惜しいですな。これ程の実力を持つ若者を手にかけるというのは」
「ふむ。最大の功労者であるお前の我儘ならば、聞いてやらん事もないが」
「──ほう」
ヴィザ。
これまでにボーダーが手に入れた知識によると、侵略してきた近界民の国……アフトクラトルでも屈指の実力者であり、国宝とされる黒トリガー“星の杖”の所有者でもある。
何より、かつての戦いとは比べ物にならない程の大戦力を持ち出してきた今回の戦いにおいて、「緊急脱出」を封じられたボーダー隊員たちを、最も多く殺した怨敵だ。
「では、この子の身柄を貰い受けたい」
「よかろう」
──冗談じゃない。
皆、命が尽きるまで戦い抜いたんだ。
わたしだけ仇に尻尾を振って、惨めに生き延びるなんて嫌だ。
お願い……あと一回、たった一回でいい。
わたしに、力を──!
「……待て。そいつが持っているそれは、もしや黒トリガーか? そういえば、報告にあったな」
「そうですな。これが恐ろしく厄介でして、思わず斬ってしまいました」
「ふむ、そうか。お前が言うのならばそれは仕方の無かった事なのだろう。文句は言わんよ」
根元から真っ二つにされ、力を失ってしまった黒トリガーを……“あの人”を握り、願う。
あと一回だけ、一回だけでいいんだ。
だから、お願い……!
もう一度、やり直したいの──!
「光……? 馬鹿な、あの状態で動くはずが……!? くっ、ヴィザッ!!」
「ええ。“星の杖”」
国宝の刃がわたしの身体を両断する──
「…………これは」
「ふむ……」
──直前。“あの人”は、最後の最後に応えてくれた。
わたしを、近いけれど遠い場所へと「飛ばす」という形で。
「逃げられましたな」
「その、ようだ。まぁいい、目的は達した。もはや玄界には我々に抗う力は無い。帰るぞ」
「承知しました。お嬢さん、また何処かでお会いしましょう。その時を、楽しみに待っております……ほっほっほ……」
第三次近界民大規模侵攻、終結。
界境防衛組織「ボーダー」、壊滅。
三門市、壊滅。
死者、行方不明者、計測不能……。
……生存者、一名。
そして──。
「──い、おい! 遊真、ちょい手貸してくれ!」
「ん? どうした迅さ……ケガ人か」
「酷いなんてもんじゃない。急いで病院に運ぶぞ。こっからなら俺らで運んだ方が早い」
「わかった」
わたしの、“二度目の物語”は、ここから始まる。
◇ ◇ ◇
「ん……」
目を開けると、見知らぬ天井があった。
いや、よく見ると少し懐かしい気もする。
まわりを見渡してみる。
「病院……?」
信じ難い事に、わたしが寝ていたのは病院のベッドだった。
おかしい。
三門市はあいつらに壊し尽くされたはずだし、病院なんて残っているわけがない。
まさか、アフトクラトルの……?
でも、あっちとは建物の雰囲気が違う。
そうしてしばらく混乱していると、少し重々しい雰囲気を纏う青年が病室に入ってきた。
え……?
あの顔、あの姿は……。
「やあ、お目覚めのようで。もう目が覚めるなんて、見た目ほど傷は深くなかったんだな」
「……迅?」
「……どこかで、会ったっけ?」
「…………」
間違いない。
早々に切り替えたあの飄々とした雰囲気。
最上さんの形見であるサングラスを常に着けている……というか頭に乗せている、あの容姿。
かつてはボーダーのS級隊員であり、“彼”に後を託して死んだはずの男、迅悠一だ。
おかしい。
どうなって──。
……もしかして!?
「迅。ここは三門市?」
「……そうだけど? ところで君は……」
「──近界民に何回大規模な侵攻を受けた? 相手はどこの国?」
「お、おっと? 今回で“二回目”だよ。ところで君はなにも……」
「二回目……そう、そういう事……相手はアフトクラトルね?」
「!?」
「やっぱりそうなのね。うん、理解した」
「いやいやいやちょっと待って、こっちは全く理解できてないから……」
ボーダーが表に出るきっかけとなった第一次大規模侵攻からおよそ四年後、こちら側の世界は二回目の大規模な侵攻を受けた。
その時はなんとか退ける事ができたのだけど、ね。
わたし、過去に戻ったんだわ。
ただ、迅がわたしの事を知らないようだから、恐らくこの世界にわたしは存在していない。要するにパラレルワールドのようなもの、と考えた方が良さそう。
できる事なら元の世界の過去に戻りたかったのだけど、ほぼ壊れていた状態で無理矢理使ったんだから、仕方ないか。
さて、これからどうするか……。
と言っても、最初から決まっているけれど。
「迅。わたしをボーダーに入れてくれる?」
「この子こっちの話を全く聞いてくれないんだけど!?」
あ、ごめんなさい。
ちょっと考えるのに夢中で。
なんというか、昔からの顔馴染みなのに向こうはわたしの事を知らないって、やりづらいわね。
「どうしたらわたしを入れてくれるのかしら」
「とりあえず君は何者なのか教えて欲しいんだけど」
「うーん、そうねえ。嘘を言っていないと信じてくれるのなら話してあげる」
「嘘……よし、ちょっと待っててくれ。適任が居る」
「ええ、いつまででも待っていてあげる」
「お、おう」
適任……。
ああ、遊真ね。
夢みたいだわ、死んだ皆にまた会えるって事よね?
この時期の遊真は……まだこちら側には不慣れだったかしら。
でも、きっと“同じ”ではないのよね。
だって、あの迅がわたしを知らないんだもの。
わたしは、皆にとって見知らぬ人でしかないのよね。
少し、寂しいわ。
そして……。
「どうしたの、迅さん。この病室に用事?」
「まぁね……っと、連れてきたぞ。こいつは嘘を見抜ける体質で……って知ってたり、する?」
「知ってるわ。お久しぶりね、遊真。修くんは元気?」
「…………はじめまして。誰だあんた」
ああ、やっぱり。
しばらくして迅が連れてきた子はやっぱり遊真で、この子もまた、わたしの事を知らないみたい。
それどころか、きっと“強い血の匂い”がするわたしをかなり警戒している。
修くんの名を出したからっていうのもあるかしら?
って、ああ……。
「ごめんなさい、修くんはまだ起きていないのね」
「……遊真」
「当てずっぽうでもなんでもない。こいつは確実にオサムの事を知ってる」
「そうか」
わたしとした事が。
もう結構昔の事だから、忘れていたわ。
修くんは第二次大規模侵攻で瀕死の重傷を負って入院するんだった。
きっと、この世界でも同じなのね。
……よく見ると、もしかしてわたし若返ってる?
いえ、今は全く関係ないんだけど。つい気になって。
「そうね、そうだわ。自己紹介をしましょう? まずは言い出しっぺのわたしから。名前はソフィア。ソフィア・アンデルセンよ。こう見えて日本育ちだから、普通に日本語で話してちょうだいね。じゃないとわからないもの」
「……空閑遊真」
「実力派エリート、迅悠一。よろしく」
「知ってるわ、二人ともよく知ってる。レイジや京介くん、小南に陽太郎。栞ちゃんに林藤さん。そして、チカちゃんと修くん……。ボーダー玉狛支部のみーんな、知ってるわ」
「「…………」」
懐かしいわね。
二人の顔からして、皆元気でやってるはずだし、是非とも会いたいわ。
例え今のわたしが部外者でもね。
あら。
おかしいわね、迅が真面目な顔になったわ。
あのセクハラエリートが。
「聞かせてもらうよ。君は何者だ? 一般人にしてはあまりにも深く知りすぎてる。特に、今回攻めてきた近界民の正体なんて、絶対に知っているはずがない」
「そんな事まで知ってるのか、こいつ」
「ああ。アフトクラトルっていう国名までピシャリ」
「…………」
あ。
これ、もしかして奴らのスパイか何かだと疑われてる?
少なくとも遊真からは敵視されてるわよね。
いけない、ちょっとはしゃぎすぎたみたい。
「わたしはボーダーよ。最後の、ね」
「……最後の?」
「嘘は、言ってないのか?」
「みたいだ」
「……どういう事だよ……」
珍しい。
迅がぐしゃぐしゃと頭をかいて困惑するところなんて、軽くプレミアものね。
いつもこっちを振り回してばかりだもの。
さて、と。
とりあえず全部聞かせてあげないと信用されないわね、これは。
そんなわけだから、たっぷりと時間をかけてわたしの正体について説明してあげた。
二人とも終始困惑していたけど、嘘を見抜ける遊真が居る以上、真実だと受け止めるしかないのよね。
「マジか、俺そっちじゃ次の大規模侵攻の前に死ぬの?」
「ええ」
「あの爺さん、また来るのか……たしかに、二回目は勝てないかもしれん」
「一回あの化け物を倒しただけで勲章ものよ?」
なんとか……信用、されたのかしら?
砕けた黒トリガーの破片を見せた事も大きいかも。
──最後までありがとう、本当に。
「で、だ」
「うん?」
「アフトクラトルがまた侵攻してくるのは、いつなんだい?」
「まだ先の話よ。わたしが知っている歴史通りにいけばだけど、四年後ね」
「「四年後……」」
うん、なんとか信用してくれたみたいね。
よかったよかった。
尤も……完全に、とはいかないでしょうけど。
二人とも割とシビアな性格だし。
プロというか、なんというか。
歴戦の勇士だもの、当然よね。
「ソフィアちゃんには悪いけど、この事はあんまり口外しない方がいいな。ボーダーと三門市が壊滅するかもなんて、辞める人間が大量に出かねない」
「ええ、わかっているわ。レイジと林藤さん、あとは城戸司令ぐらいかしら。教えるべきなのは。あ、こう見えてわたし、あなたより歳は上よ? 迅」
「……おっと、そりゃ失礼。レイジさんにも教えるのかい?」
「彼なら漏らさないから大丈夫よ。現役隊員の中にも一人は事情を知る人間が欲しいの」
「んー……まあ、あの人なら確かに問題ないだろ」
「迅さんが言うならだいじょーぶだな」
元よりわたしもぺらぺらと喋るつもりは無いわ。
今回は迅が相手だし、ボーダーに入るコネを得るためだからノーカンよ。
遊真もきっちりしているだろうし。
何せ本物の戦場を知っている子だもの。
強いて言うなら後は城戸司令以外の幹部ぐらいか。
まあそこは司令が判断するでしょう。
「ところで迅さん」
「どうした遊真?」
「今からでもボーダーに入れるのか?」
「……まあ、なんとかする」
「お願いね、迅」
「……簡単に言ってくれるなぁ。間違いなく、絶対に怒られるぞ、俺……はぁ」
「うふふ。頼りにしているわ」
その後、すんなりとはいかなかったけど、なんとかわたしはボーダーへの入隊が許された。
それも、いきなりB級からだ。
A級ではないのは、チーム戦でのわたしの実力が不明だったから。それと、他の隊員との間で起こるだろう揉め事を防止するためかな。
これに関しては、当たり前のようにあった一悶着が関係してくる。
まあさっくり言うと。
互いに弧月一本でわたしが忍田さんと十本勝負をし、実力を認めさせたのよ。
さすがボーダーにおけるノーマルトリガー最強。
この時点でも強さは一級品だったわ。
まあ、他のトリガーも使えていればもっと楽だったと思うけど。
だって、わたしは最後のボーダー。
元の世界では、わたしがノーマルトリガー最強と言われていたのだもの。
黒トリガーを得てS級にもなったしね。
さて、これから忙しくなりそう。
楽しみだわ。
未来の事は、もちろん不安だけれど。
大規模侵攻終了直後なので、レプリカは既に向こうに行ってしまっている状態。しばらく出てこれない……。
あ、原作読んでないと分からない部分が色々出てくるかも。