最後のボーダー   作:初音MkIII

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これでひとまずアンデルセン隊が揃うので、今BBF風のデータ集を書いてます。

弓場ちゃんリスペクトのオリキャラと修リスペクトのオリキャラが出現しますので、コミック派の方だと「えっ、弓場ちゃんてそういうスタイルなん?」と驚かれるかも。ご注意。


第11話 仲間探し

 

 影浦をボコボコにし、愉快なギャグキャラに仕立てあげた翌日。

 確実に魔王の名が広がっているソフィアは、とある目的のため個人ランク戦ブースを訪れていた。

 

 

 ここが本部基地であるにも関わらず、私服であるゴスロリ服でブースを練り歩くソフィアを、多くの隊員が見つめる。

 実年齢はさておき、その姿は非常によく似合っており、漫画に出てくるお姫様ですら霞むほどの美貌は、酷く人目を集めるのだ。

 実年齢はさておき。

 

 

 今日も影浦や鋼、荒船や遊真といった面々が個人ランク戦に勤しんでいるが、ソフィアが来る頃には誰もいなくなっていたので、今日の彼女は一人である。

 尚、荒船は最近になって狙撃手側の訓練室だけでなくこちら側もよく利用するようになった。

 玉狛第二に負けた事で何か思うことがあったのかもしれない。

 

 

 そんな彼女が、何もかもを見透かすかのような得体のしれない碧眼を向ける先。

 

 

 二丁拳銃スタイルの少女が、見事な成績を収めていた。

 

 

《トリオン供給器官破損。緊急脱出。7-3。

勝者、蟻元》

 

 

 勝利を告げるアナウンスを聞いた少女は、しかしどこか不満気に俯いている。

 見覚えのないその顔に興味が湧いたソフィアは、ニコニコ笑顔を貼り付けて声をかけてみる事にした。

 

 

「こんにちは。随分と不満そうね?」

「……え、私?」

「ええ、そうよ。わたしはソフィア・アンデルセン。気軽にソフィアと呼んでね」

「は、はぁ。えっと、私は蟻元だよ。蟻元アリス」

「よろしくね、アリスちゃん」

「ええ……って、アンデルセン? 最近噂になっている、アンデルセン隊の?」

「そうね、そのアンデルセンよ」

 

 

 蟻元アリス。

 本部所属で部隊を組んでいないフリーのB級隊員であり、通信制の高校に通う16歳との事。

 

 そんなアリスは、規格外の戦闘力を誇り、チームでのランク戦において一度も緊急脱出していないどころか、一度も被弾した事すらないという驚愕の事実と、既にファンクラブが存在する事で有名な、あのソフィア・アンデルセンが自分に声をかけてきた事に驚いた。

 ちなみに、ファンクラブの会員として有名所といえば鈴鳴第一の村上鋼や、昨日加入したばかりの影浦などがいる。

 会長は諏訪らしい。知り合ってすらいないのに。

 

 

「し、失礼しました! まさか年上だなんて思わなくて……本当に、噂通りお若いんですね」

「あら、ありがとう。でも別に言葉遣いなんて気にしないわよ? カゲくんなんてかなり乱暴だし」

「カゲくん……ああ、影浦隊の……」

「彼みたいなタイプは苦手?」

「えっ」

「顔に出ていたわよ」

 

 

 そう言われて、慌てて自分の顔を触るアリス。

 その様がおかしかったのか、ソフィアはくすくすと上品に笑いだした。

 それがなんだか恥ずかしくて、顔を赤くしてしまう。

 

 

「うふふ。さて、と。なんだか不満そうな顔をしていたけれど、どうしたの? さっきの勝負には勝っていたみたいだけど」

「ああ、えーと……弓場さんって知ってますか?」

 

 

 しばし悩んだアリスだったが、既に“ボーダー最強”との呼び声も高い目の前の魔王に、思い切って話してみる事にした。

 自分一人で抱えていてもどうにもならないし。

 

 

「弓場ちゃん? ええ、もちろん。そういえば、弓場ちゃんも二丁拳銃スタイルだったわね」

「そうなんです。実は私、C級だった頃に教官として教えて頂いた弓場さんに憧れていて……。あの人と同じ近距離銃手での早撃ちの戦闘スタイルを練習しているんですけど、思うようにいかなくて……」

「そう? 勝っていたのに?」

「ポイントが4000や5000ポイント台ぐらいの相手になら勝てるんですけど、6000以上ともなると安定しないし、マスタークラスにもなればとても……こんなんじゃ、弓場さんにも呆れられちゃうって思うと、焦ってしまって。でも結果が出なくて……」

「ふむ、なるほど」

「さっきの相手は6000ちょっとだったんですけど、たぶん次やったら勝てないと思います。手の内が割れているし……」

 

 

 アリスの悩み。

 それは、憧れの弓場隊長と同じ戦闘スタイルを目指してひたすら戦っているのに、一向に上達する気配が無いという事。

 ただし、才能がある者の贅沢な悩みではあるのだが。全く勝てず、C級で燻っている者たちが聞けば憤慨する事しきりである。

 

 

「まあ、クイックドロウは一朝一夕で出来るようなものではないわね。弓場ちゃんだって、今の強さに至るまでには何千何万と戦ってきたのだし」

「うっ……やっぱり、ひたすらやり続けるしか、無いんですかね?」

「そうねえ……ちょっとわたしとやってみない? あなたの練度、見てあげるわ」

「え? もしかして……できるんですか? 早撃ち」

「ええ。ボーダーの隊員が出来る事は大抵わたしもできるわよ」

「えぇ……あ、いや。お願いします……」

 

 

 ボーダーの隊員が出来る事は大抵できる。

 ソフィアのとんでもない才能マン発言に、ドン引きするアリス。

 実際は“向こう”で長年ボーダーとして戦ってきたソフィアの、圧倒的なまでに豊富な経験があってこそなのだが、そんな事をアリスが知る由もない。

 

 

 

 そして、試合後──。

 当たり前だが、アリスの必死の抵抗も虚しく、容赦なく10-0でソフィアの勝ちである。

 

 

「……は、速い……いつ、撃ったんですか……?」

「まぁわたしの事はいいじゃない。それよりあなたの事だけど、妙なクセがあるわね。それがトリガーの取り出しを阻害しているんだわ」

「癖、ですか?」

「ええ。いい、よく見ててね?」

 

 

 

 あのソフィア・アンデルセンが、弧月ではなく射撃トリガーを、それもリボルバー型を使って個人ランク戦をしていると聞いた隊員たちがわんさか集まって観戦したりという事もあったが、まぁそれは置いておくとして。

 

 

 ソフィアの早撃ちは、アリスの記憶が正しければだが憧れの弓場のそれと同等か、あるいはそれを上回る程に速かった。

 この人に弱点は無いんだろうか、とアリスが思ったのも無理はないだろう。

 

 

「これがあなたの撃ち方」

「そ、そっくりです」

 

 

 

 非常に覚えのあるフォームでトリガーを構え、ばーん、と撃つ真似をするソフィア。

 妙にかわいいが、実際に撃つと規定違反になってしまうためこうなっただけである。

 

 フォームだけでなく、撃つまでの速度すら完璧に自分と同じだ、と目を丸くするアリス。

 

 

 

「次。これが──」

 

 

 

 

「へ?」

 

 

 

 たった一言。

 気付けば、アリスの目の前にリボルバーが突きつけられていた。

 

 

 

「わたしのフォーム」

「……見えないです」

「そう? ならゆっくりやるわね」

「……ッ」

 

 

 ゆっくり、スローモーションで動く。

 それを自分のフォームと比べると──。

 

 

 

「!!」

「わかったかしら」

「わ、わかりました!! えっと、ここをこうで、こうして、こう……!」

 

 

 慌てて、忘れないうちに自分もやってみる。

 妙な色気を出さず、見た通りにやるのだ。

 

 

 

 そして構えると。

 

 

「……速くなってる」

「そ。才能あるわよ、あなた」

「あ、ありがとうございますっ!!」

「まあ、元々経験はかなり積んでいたみたいだからね。フォームさえ矯正してあげれば弓場ちゃんには及ばなくてもかなり速くは撃てるわよ。後はそれでマスタークラスとか実力者を相手に戦っていけばいいわ」

「すごい、私が、こんな速く……! 本当に、ありがとうございました!」

 

 

 嘘みたいである。

 まるで手品だ、と感動するアリス。

 小さな子供のようにクイックドロウをチャカチャカと繰り返す様を見て、笑うソフィア。

 

 

 ──そして、本題に入る。

 

 

 

 

「じゃあ、あなたわたしの隊に入りなさい」

「…………はい?」

 

 

 

 タダでこれほどの事を教えて貰えるわけがないのである。

 アリスは、今日それを学んだ。

 そして、ソフィアはやっぱり魔王である。

 

 

 

 

 

 更に、一時間ほど後の事。

 次の獲物を求めて、魔王は再び個人ランク戦ブースを徘徊していた。

 ちなみに、真顔で迫るソフィアに対しアリスは半泣きになってコクコクと頷き、アンデルセン隊への加入が確定した。

 さすがに明日の影浦隊&玉狛第二戦には間に合わないので、その次……ラウンド4からの参戦となるが。

 アリスと早々に挨拶を交わした灯は、微妙にゲスい手口で仲間入りしたアリスに対し、かなり同情的であったという。

 

 

 

「うーん。さすがにそうそう逸材はいないか。出直すべきかしらね……?」

 

 

 

 個人ランク戦ブースを徘徊するソフィアは、しかしなかなかアリスのような気になる人材を見つける事ができず、仲間探しは後日に持ち越しだろうか、と考え始めていた。

 

 

 そして、せっかく来たのだし一戦だけやっていこうかしら、と個人ランク戦に潜り。

 

 

 

 いつも通り10-0で完勝した相手に、才能を見た。

 

 その人物は射手で、こそこそと隠れてはスパイダーを巡らせ、罠を仕掛けた上でアステロイドやメテオラを使い攻撃してくるといういやらしい手で向かってきたのだ。

 そしてそれを生かせるだけのトリオンもあり、生成したトリオンキューブはそこそこ大きめであった。

 

 

 当然、どこぞのトリオン怪獣やソフィア自身ほどではなかったが、スーツ姿で戦う面白真顔隊長、二宮に迫る程のサイズである。

 

 

 何故これほどの逸材が埋もれているのか? と疑問に思ったソフィアだったが、話しかけてみると一発で分かった。

 

 

「あなた、ちょっといいかしら?」

「ぴぃっ!? ご、ごめんなさいごめんなさい! 身の程知らずに挑んで無様に負ける豚でごめんなさい!! もう絞られるほどポイント無いですぅ!」

「……大丈夫? 別にまだ戦おうってわけじゃないわよ」

「そ、そうですか? よ、よかったぁ……」

 

 

 戦闘中のいやらしい手に反して、ものすごくビビりな少女だったのだ。

 この分だと、トリオン兵に出くわした日にはパニックを起こしそうである。

 というか、たぶん実際に起こしてやんわりと部隊を追われたとかそんなオチだろうと察する。

 

 

「わたしはソフィア・アンデルセン。あなたは?」

「アンデルセン!? 巷で噂の女神様!? ははぁ~!! あっ、私は八十神(やそがみ)万理華(まりか)と言いますぅ! わー、お会いできて光栄ですよぉ~! 皆に自慢……あ、友達いませんでした……」

「……そ、そう」

 

 

 八十神万理華。

 ビビりにしてぼっちでロング桃髪の巨乳という色々と盛りすぎな、本部所属でフリーのB級隊員を務める少女であった。

 歳はアリスと同じで、高校生である。

 これには珍しく、あのソフィアも押され気味だ。

 

 

「万理華ちゃん。あなたの戦い方、面白いわね。気に入ったわ」

「え!? そ、そうですか!? いやらしい戦い方しやがってこの豚野郎、とか思ってませんかぁ!?」

「聞こえなかったかしら。気に入ったと言ったの」

「……あ、ありがとうございますぅ……えへへ、初めて言われた気がしますぅ。気に入った、なんて……」

「そう? 大方ポイントが低くて弱いくせに態度だけはでかい輩にばかり当たってしまったのね」

「そ、そこまで言わなくても……」

 

 

 俯いてえへえへと髪をいじり始める万理華を不憫に思ったソフィアは、結婚詐欺師の如く甘い言葉を吐き始めた。

 

 

「いい? あなたは優秀よ。その証拠に、このわたしが罠にかかりそうになったわ。だから、有象無象の戯言なんて気にしなくていいの。今度言われたら黙れこの豚野郎、とでも返してやりなさい。それでも噛み付かれたらアンデルセン隊長が地の果てまでもお前を追いかけて狩るぞ、と脅すのよ。実際にやるけど」

「は、はい……」

「そして、わたしならあなたの才能を最大限に活かしてあげられる。自分で点を取りたいというのなら少し考えるけど、味方に点を取らせるサポートをメインにするなら、あなたはA級でも通用する」

「そ、そうですかぁ? えへへ」

 

 

 若干不穏な空気を漂わせるソフィアに、周りの人々は逃げていく。

 えへえへ言って照れている万理華は気付かない。

 

 

 

 ついでに、それを遠くから眺めるアリスと灯がいた。

 

 

 

「うわぁ……丸っきりよからぬ輩だよ、ソフィア隊長……」

「捕まったあの子もかわいそうですね~。いえ、気分はいいでしょうし、魔王……げふん、ソフィアさんがいればまず負ける気がしないし、いい事なんでしょうか~?」

 

 

 こうして。

 エヘ顔ダブルピースを決めながら、八十神万理華のアンデルセン隊入りが確定した。

 隊の思想としては、万理華とアリスがコンビを組んで後衛と前衛となり、前衛のアリスがクイックドロウで点取り屋を、後衛の万理華がそのサポートをするという流れである。

 

 隊長のソフィア?

 彼女は好きに暴れる事でしょう。

 

 

 

 尚、この時点のアリスと万理華は知る由もないが、最低限ソフィアの足を引っ張らないようにと、地獄のわくわくブートキャンプが始まる。

 

 

 一人部隊からまともな部隊へ。

 

 

 

 新たなアンデルセン隊の犠牲者となるのは、ラウンド4の対戦者からだ。

 つまり、明日のラウンド3で当たる影浦隊と玉狛第二は、一応、辛うじて、難を逃れたのである。

 

 

 二回目に当たったら?

 お祈りします。

 

 

 




万理華は元々修じみた嫌がらせスタイルであり、修リスペクトから急遽練習を始めたわけではないです。
戦闘スタイルがトリオン強者な修っぽいのはたまたまであり、それが縁であのメガネに注目するようになりました。
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