それと、今回はオリジナルマップが舞台となります。
近界にありそうな「なにもない荒野にぽつんと佇む廃城」がテーマのマップです。中央にボロボロの城がある以外、本当に何もないところ。
非常に注目度が高いこの試合。
何せ、今シーズンにおける台風の目である新人部隊、玉狛第二とアンデルセン隊が「B級不動のツートップ」の一つである影浦隊に挑むという組み合わせなのだ。
かつてはA級にいた事もある影浦隊は、降格こそしたものの隊員は一人も欠けておらず、その力は全く衰えていない。
つまり。
彼らに勝つ事ができた部隊は、A級でも充分にやっていけるだけの力があるという事になるのだ。
もっとも、作戦次第で上位が食われる事もあるのがチーム戦というもの。
実際は一度の試合結果で判断できるほど単純ではないのだが、まぁそれは置いておくとしよう。
要は、この試合を見に来た隊員は非常に多いという事なのである。
『さあ、本日も始まりました! B級ランク戦三日目、昼の部! 実況は私、海老名隊オペレーターの武富桜子がお送りします! 解説席には嵐山隊の嵐山隊長にお越し頂きました! 嵐山さん、よろしくお願いします!』
『どうも皆さん、嵐山です。早速ですが、今回の組み合わせは非常に興味深く、ランクを問わず非常に多くの隊員が観戦しに来ていますね。やはり、最も注目されているのはアンデルセン隊でしょうか』
『うー……アンデルセン隊には苦い思い出が……一人だけ超スピードで動く人がいて、あっという間に試合終了……あの時は何が起こったのか分かりませんでした……』
『ああ、海老名隊はアンデルセン隊と一日目で当たっていましたね。そんな武富さんから見て、今回の戦いはどうなると思いますか?』
『……正直、アンデルセン隊が負ける様子が全く想像できないんですよねー。あの動きに人間が対応できる気がしないというか。失礼ながら、ちょっと人間離れしていると思いますよ、あの速さは』
『なるほど。しかし、影浦隊の影浦隊長には感情受信体質というサイドエフェクトがありますからね。実力もトップクラスですし、どうなるかは分かりませんよ』
『あー、たしかに。問題はあの速さに反応できるのかってところですね……っとと、全部隊転送完了! 選択されたマップは……“城塞C”!? こ、このマップは中央の城以外のほぼ全域で非常に射線が通りやすく、アンデルセン隊としてはかなり不利かと思われますが……?』
『そう、ですね……影浦隊と玉狛第二には優秀な狙撃手がいますが、アンデルセン隊は戦闘員がアンデルセン隊長一人しかおらず、彼女は狙撃手ではありません。少なくとも、これまではほぼ弧月一本しか使っておらず、他に使ったのはメテオラが一発だけ……狙いがちょっと読めませんね……』
試合が始まり、アンデルセン隊が選択したマップを見て、実況の武富と解説の嵐山を含む観客全員が首を傾げる。
本来、その試合の中で最も順位が下のチームが、相手に不利な条件を押し付けたり、自分たちが有利に戦える場所を選ぶために存在するのが“マップ選択権”である。
にも関わらず、今回マップ選択権を持つアンデルセン隊が選んだのは、逆に相手を有利にし、自身を不利にする場所なのだ。
そして、首を傾げているのは彼らだけではなく。
「あァ? ここじゃ射線が通り放題じゃねェか。おめーにとっちゃ嬉しい誤算じゃねェか? ユズル」
「……まあ、たしかに。どういうつもりなんだろう」
「ゾエさんもかなりやりやすいよ? 中央の城に敵が固まってれば、メテオラでまとめて吹っ飛ばせちゃうしね」
【あのソフィ姉がどっちにも狙撃手が居るって知らないようなマヌケだとは思えねーしなー。何を狙ってんだかさっぱりだ。逆にそれがこえー】
「そりゃ言えてんな。いいか、おめーら。絶対に油断すんなよ。どこに居てもソフィ姉が飛んでくる可能性があるってー事忘れんじゃねェぞ」
「おお、カゲが隊長っぽい事言ってる……ゾエさんちょっと感動」
「んだとコラ!! ちゃんとやらねーとソフィ姉にどやされんだよ!」
【玉狛にも忘れずに注意しろよー】
「わかってるよ」
影浦隊もはてなマークを浮かべ。
「どういう事だ……? ここじゃ撃ち放題じゃないか。いくらソフィアさんでも不利なはず……狙いはいったいなんだ……?」
「気をつけろよオサム。足を止めるな。射線がよく通る開けた場所って事は、ソフィアさんからも発見されやすいって事だ。絶えず動くようにしないと食われるぞ」
「……! あ、ああ」
「修くん、とりあえず作戦通りに合流すればいい?」
「そうだな。万が一敵が接近してきたらすぐに教えてください」
【おっけー! なんせ今回は相手が相手だからねー。こりゃ私も気を抜けないぞー!】
修が思わず足を止めて考察に耽り、それを通信越しに察した遊真がすかさず注意する。
チカが指示を仰ぎ、栞が気合を入れる。
どうやら、遊真が一番現状を理解できているようである。
【うはっ、ソフィアさんの目すごすぎる~。こんな遠いところでも見えちゃうんですか~?】
「ええ。うふふ、次々とレーダーに表示が増えてくわね」
【そりゃね~、各隊員だいたい等間隔で転送されてますから、ある程度の初期位置は普通に分かっちゃうんですよね~。その上今のウチはソフィアさんだけしかいないわけですから~】
「ええ」
「【動く的は、全部敵】」
影浦や遊真がサイドエフェクトを持っているように、ソフィアもまた非常に強力なサイドエフェクトを持っている。
その恩恵で彼女はいっそ気持ち悪いほどに視力が良く、非常に見通しがいいこのマップにおいては、各隊の面々を見つけるのはそう難しい事ではない。
レーダーで何者かがそこに居るという事は分かっているので、あとはその地点をじっと眺めるだけで索敵ができてしまうのである。
だいたい。
これまでの試合でソフィアが飛び回っていたのは、建物が邪魔で敵が見えなかったからなのだ。
それが無いのであれば、わざわざ派手に動き回る必要もまた、無いのである。
「……ソフィ姉にしちゃ静かだな」
「たしかに。これまでの二戦とも、最初っから派手に動いてたのにね。なんだか不気味でゾエさんブルブル」
【ん? おい、一人だけ初期位置から少しも動いてない奴がいるぞ。もしかしてソフィ姉か?】
「んだと? いったいどういうつも──!?」
「? カゲさん?」
とりあえず合流するべく動いていた影浦隊。
雑談に勤しみつつ周囲を見回す彼らだが、隊長である影浦が急に言葉を切った事で意識を切り替える。
「……そういう事かよ!? やべェぞ、ソフィ姉に場所がバレてやがる!! 早く合流すんぞ!!」
「えぇ!? どういう事!?」
「ふわふわした感情を感じた! 間違いなくソフィ姉だ!! そのすぐ後にゾッとするぐれェおっかねェ“殺気”に変わったしこえーっつーの!!」
「了解、急いで向かう」
【ソフィ姉ってすごく目がいいんだな!? マサイ族かよ!】
最後に発見された影浦がサイドエフェクトでソフィアを感知し、彼女の狙いを察する。
このマップは確かに射線がアホなほど通りやすいが、見通しが良すぎて、“いい目”があれば敵の発見が非常に容易いという顔も合わせ持っているのだ。
つまり、ソフィアは自分たちをすぐに見つけ、そして狩るためにこのマップを選んだのだ。
「合流地点は……クソが、あそこしかねェ!!」
彼らが向かう先は──。
視点を変え、玉狛第二の面々。
「本当に静かだな……ソフィアさんなら、また飛び回って荒らしていくのかと思ったけど……」
「これまではそうだったもんね」
「気を抜くな、オサム、チカ。いつでもどの方向にでもシールドを向けられるようにかまえておけ。これだけの時間があれば、もう誰か見つかっていてもおかしくない」
【んー、一人だけ動いていないのがいるけど、これがソフィアさんなのかなー? あれっ、三人同時に動き出した。影浦隊?】
「かげうら先輩たちか……」
栞から聞いた情報を元に、走りながら考える遊真。
そしてすぐに気付く。
さすがは歴戦の猛者である。
「……やばいな」
「空閑? どうした?」
「おれたちも早く合流しよう。たぶん、全員もうソフィアさんにみつかってる。かげうら隊もそれに気付いたから走り出したんだ」
「なんだって? しかしまだ敵なんて影も形も……」
「オサム。急がないと食われるぞ」
「……わかった。合流地点は……」
「かげうら隊が向かう先はたぶんあそこだ」
そして遊真が示したのは──。
「灯。動いたわね」
【動きましたね~。ソフィアさんの言った通りに~】
「散開していてもわたしに各個撃破されるだけ。かといって広いところに集まってもわたしの速さについてこれずにまとめてやられるだけ。カゲくんも遊真もわたしの実力をよく分かってるから、勝つには乱戦を選ぶしかない。となると、合流地点も限られる」
【両部隊とも、中央の城に一直線です~】
「そうなるわよね」
完全に思い描いた通りに試合が進んでいる。
そう確信したソフィアは、ニッコリと笑った。
影浦隊と玉狛第二。
両部隊とも、アンデルセン隊との交戦を避ける事を選択している。加えてエースが双方ともに近距離で戦う攻撃手であり、射線がよく通るだだっ広い屋外よりも、狭い屋内の方が戦いやすい。
玉狛に限ってはチカの“大砲”で味方ごと敵を吹き飛ばす、という手も有り得そうなものだが、彼女は人が撃てないので絶対にその手は使ってこない。
影浦隊としても、既に全員が見つかっているだろうという影浦の確信から、撃って隙を晒した瞬間ソフィアに狩られる玉狛の大砲は、封じられたも同然と分かっているし、場所がバレバレな外に居てはソフィアに狩られてしまうので退避せざるを得ない。
故に。
戦場は必ず、マップ中央の城となるのだ。
そして──。
「よォ、チビ。てめェも来たか」
「やっぱり居たか。急いであんたを倒さないと、あの人にやられる」
「そりゃこっちのセリフだぜ。ゾエ、ユズル! 他はおめーらに任せる!」
「ほいほい了解ー。だってさユズル」
「わかったよ」
「影浦隊……!」
中央の城に影浦隊と玉狛第二が集合し、戦い始める。
迫り来る魔王の威圧感をひしひしと感じながら。
この場において、最も不利なのは……。
間違いなく、総合力で劣る玉狛第二である──。
「うふふ……」
【玉狛と影浦隊が戦闘開始しました~。入り組んだ城内での戦いとあって、両方とも狙撃手はやりにくそうですね~】
「そうでしょうね。でも、ユズルくんならその程度、問題にもならないでしょう。放っておけば負けるのは間違いなく玉狛よ」
【ですか~。で、どうするんです~?】
「そうね……」
狙撃手も含め、ソフィア以外の全員が城内へ逃げ込み、そしてそこで鉢合わせとなり戦う展開。
このマップの特徴である巨大な城は、意外な事に外見上の高さに反して建物内部は二階までしか無く、一階と二階の間がとても広い。
そして、迷路のように入り組んだ複雑な形をしている。
要は、一つの階層が非常に広大な建物である。
このマップはソフィアが最も得意とする場所の一つであり、そこら中にある壁を蹴って縦横無尽に移動する事で、あの忍田ですら捕捉不可能な程のスピードで動き回る事ができる。
こちら側以上に猛者が集う“向こう”では、ソフィアはこのマップで無敗を貫いた。
仮にここで彼女を倒せるとしたら、あのアフトクラトルの剣聖、ヴィザぐらいであろう。
「玉狛を揺さぶろうかしらね」
【と、言いますと~?】
「──あの子の場所、分かるわよね」
【……あっ、はい。姿は確認してますんで、予測は付きますよ~】
「そう。行くわよ」
【りょ、了解です~。なんかソフィアさん怖い……】
なんだかいつもと違うソフィアの様子に、本気で怯える灯。
しかしながらも仕事はきっちりやる。プロである。
間もなくして、ソフィアはまるで瞬間移動でもしたかのような、圧倒的すぎるスピードをもってその場から掻き消えた。
そして──。
【……!? はやっ……警戒!!】
「「!?」」
「あァ?」
【お? ソフィ姉があっち狙ったっぽいぞ】
「あ、だから一旦退避してったのね」
「狙われたのは誰?」
【そりゃたぶん……】
玉狛第二のオペレーター、栞が慌ててソフィアの接近を報告し、警戒を促す。
それを受けて修と遊真はすぐに後退し、迷路のような城内を縫うようにして影浦隊から逃げていく。
少し距離を置いていたチカもまた、急いで逃げようとするが──。
「──こんにちは。そしてさようなら」
「あ……」
《トリオン供給器官破損。緊急脱出》
「千佳ぁ!!」
「……くそっ。やっぱり場所がバレてたか」
【うそぉ……速すぎてオペレートが追いつかない……こんな、こんなのって、アリ……?】
「チッ、先制されたか」
「仕方ない仕方ない。切り替えてこ」
「急がねーと俺らもやべェな」
そう。
ソフィアが真っ先に狙ったのは、持たざるメガネこと修でも玉狛の白い悪魔こと遊真でもなく、トリオン怪獣の異名を持つ少女、雨取千佳であった。
確かにチカは距離を置いていたが、そんなものはソフィアにとって何の意味も成さないのだ。
……これはあくまでソフィアの個人的な考えという事を念頭に置いてほしいが、“この時期の玉狛第二”では、チカがお荷物にしかなっていない。
単独では弱い修とて、遊真とのコンビネーションはなかなかのものであり、サポーターとしては既に十二分に仕事をしている。点取り屋である遊真に至っては言うまでもない。
しかしチカはどうだろう?
彼女の願いである「兄と友人を近界へ助けに行く」という目的を修たちが叶えるため奔走しているにも関わらず、当のチカ本人は“人が撃てない”という理由で、一切点が取れない。
今の彼女にできることなど、そのトリオンを活かした破壊力で地形を変えるという、使える状況が非常に限られる事ぐらいしかない。
これをお荷物と言わずして何と言う。
おまけに、せっかく圧倒的なトリオン能力を持っているというのに本人の戦闘力は極めて低いのだ。
言葉を使わずとも、その事をハッキリと突きつけられたチカは、緊急脱出先の作戦室でボーッと天井を見ていた。
「……せめて、修くんと遊真くんの戦いを……見届けなきゃ……皆に、謝らないと……」
のそのそと歩き、モニターを睨む栞の元へ近付く。
しかし余裕が無い栞は、チカに気付いてはいても振り向かない。
「あの、栞さん……」
「チカちゃん、ごめんねえぇ……私がもっと早く知らせてあげられてれば……でもまだ終わってないよ! 二人を応援してあげて!」
「あ、はい……ごめんなさい……」
応援してあげて。
緊急脱出したのが仮に修や遊真だったならば、栞はきっと「指示してあげて」と言ったはずだ。
緊急脱出した以上、もう君にできる事は何も無い。
言外にそう告げられた気がして、俯く。
──真っ先に脱落し、沈むチカを他所に、試合は進んでいく──。
「オサム、どうする」
「……はっきり言って、一番弱い部隊はぼくたちだ。チカを落として終わり、何てことはない。この先も狙われるだろう」
「正直に言うと、そうだな」
「──落とされる前に、少しでも多く点を取る。それしかない。頼むぞ、空閑。サポートは任せろ」
「──了解。やるぞ、相棒」
「ああ! 行くぞ、相棒!」
【影浦隊の現在地はあっちだよ! ソフィアさんがいる場所も出しておくね!】
「(このままじゃ、修くんたちの邪魔にしかならないよね……どうにか、どうにかしなきゃ……。せめて、わたしが人を撃てれば……!)」
元々勝ち目が無いに等しい戦いだ。
修はこうなる事も想定していた。
故に、チカほどの動揺はない。
遊真や栞も同様である。
そして玉狛第二は再び影浦隊と激突し、激しく競り合う。
しかし、実力は向こうが上。
修と遊真は徐々にトリオン体を削られていく。
そして。
「二人目」
「……やらせるか」
「お?」
「チィ!! バカ野郎、ゾエ! 下がれ!!」
「げっ……マジぃ?」
「あら。さすがね、遊真」
《トリオン供給器官破損。緊急脱出》
【うわちゃー……やられやがった】
「あのバカが!!」
「……上手い」
再び揺らりと現れたソフィアにギリギリで気付いた遊真が、自身が狙われている事を察してダメージ覚悟で影浦隊の北添へと突撃し、そのまますれ違う事で彼を盾に。
哀れ盾となった北添は、ソフィアの弧月によって真っ二つにされ、緊急脱出した。
それを見て影浦は北添に怒り、オペレーターの光は頭を抱え、ユズルは遊真の素早い判断に感心した。
「空閑!」
「だいじょうぶ。ちょっとばかし食らったけど、真っ二つにされるよりはマシだ。それより、スマン。逃げるのが精一杯で点をとる余裕がなかった」
ついでに。
「巻きゾエで真っ二つ。ゾエさんだけに」
「……お前後でカゲにしばかれんぞ」
「せめて笑って!! 苦笑いでもいいから!」
影浦隊の作戦室にて、緊急脱出した北添がそんなオヤジギャグを光に披露し、冷たい視線を受けたりした。
彼はまだ若いはずなのだが。
尚、ばっちりと聞こえていた影浦によってボコボコにされたのは言うまでもない。
そしてソフィアは姿を晦まし、残された影浦とユズル、修と遊真の四人は、不気味に思いながらも点を勝ち取るべくそれぞれを狙う。
北添が落ちた事で多少はやりやすくなったはずの玉狛だったが、エース影浦がピンピンしている事から戦況はあまり変わらず、押され続ける。
なかなかに粘った修と遊真だったが……。
「悪いね」
「しまっ……」
【修くん!!】
《トリオン供給器官破損。緊急脱出》
虎視眈々と狙っていた狙撃手、絵馬ユズルによって修が落とされ。
「ハッ! なかなか楽しかったぜ、チビィ!!」
「……やるね」
《トリオン供給器官破損。緊急脱出》
しばらく後。
度重なるダメージが祟ったか、僅かに隙を晒した遊真を、影浦が「マンティス」で落とした。
遊真にとって、記録でしか知らない影浦のマンティスはまだ馴染みが薄い。故に食らってしまったのだろう。
本来の歴史とは違い、影浦は陰険な隊員と揉める事なく遊真と出会ったため、直接披露する機会が無かったのだ。
個人ランク戦でソフィアにボコボコにされた時も、影浦は常に張り付かれていたため、マンティスを使う余裕が無かった。
そして。
遊真が落ちた瞬間。
姿を晦ましていたソフィアが現れ、弧月ではなく射撃トリガーのキューブを展開する。
尚、ソフィアは一切バッグワームを使っていないのでレーダーには一応映っているのだが、何せ移動が化け物じみた速さなのでオペレートが追いつかず、狙われた隊員にとっては突然現れたようにしか見えない。
「あァ? 弧月じゃねえのかよ」
「【アステロイド……いや、バイパー!?】」
「ごめんなさいね、カゲくん。わたしの勝ちよ」
戦いを見守っていた観客が全員驚愕する。
モニター越しに、光と北添も。
「射撃トリガーなんざ俺には……って数多いわっ!!」
「うふふふふ」
「クソが、こんなん避けきれるわけねえ……!!」
これまで弧月しか使ってこなかったソフィアが、バイパーのフルアタックを披露した。
これだけでも影浦は頑張ったと言える。
多少時間をかければ弧月でも充分であった可能性については、まあ置いておくとしてだ。
一本道に居るという状況で、影浦から見て左右両方からバイパーが飛んでくる。
これを完全に避けろというのはいくらなんでも厳しい。迂闊に跳べばソフィア本人に斬られるし。
故に、シールドを選択したわけだが……。
「は?」
パキン、と。
影浦のシールドは、呆気なく砕け散った。
「おいおいおい、死んだわ俺」
「楽しかったわよ♪」
ドドドドッ、とバイパーをその身で受ける影浦。
哀れ彼のトリオン体は穴だらけ……を通り越して粉々になってしまった。
《トリオン供給器官破損。緊急脱出》
影浦が緊急脱出し、これで残るはユズルのみ……なのだが。
「あら?」
【ソフィアさん。ユズルくんに逃げられましたよ~】
「……素早い子ね」
実は、修を落としたユズルはすぐに城を脱出し、影浦を囮にして、自発的に緊急脱出できる距離まで逃げていたのである。
勝てない相手には無理に戦わず逃げる。
元A級部隊に相応しい引き際である。
何はともあれ、これにて試合終了。
生存点を含め、5対2対0でアンデルセン隊の勝利という結果に終わった。
というわけで、今回は原作で玉狛第二が対二宮隊&影浦隊&東隊戦でぼろ負けし、上位の厚みを知る場面の代わりとなる試合でした。ここからはオリジナルの組み合わせとなります。
ちなみにこれで玉狛第二は中位落ちです。