最後のボーダー   作:初音MkIII

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一万字超えたので二話に分けてます。
そろそろストックが尽きそうだ。
今回もオリジナルマップが舞台となります。


第22話 B級ランク戦 四日目①

 

 三雲修に新たな武器を授けたソフィア率いるアンデルセン隊は、次の試合までに残った時間を全て隊の強化に当てた。

 個人の強化は元より、連携の強化や様々な状況に対応するためのフォーメーション、それぞれが孤立した場合の動き……それらの事を確認し、全員で共有。

 急拵えの代物とはいえ、もはやお馴染みとなったスパルタ式で叩き込んだので使い物にはなったはずだ。

 

 

 今シーズンの試合を全勝で終えるつもりのソフィアは、一切手を抜かない。

 多少負けた程度で腐るような隊員は、少なくともB級以上にはいないと知っているからだ。

 

 

「準備はいいわね? これがわたしたち新生アンデルセン隊の初陣よ。華々しく勝利して凱旋しましょう」

「はい!」

「頑張りますぅ!」

「了解です~」

 

 

 そして、観戦席では──。

 

 

 

『お待たせ致しました! 時間ギリギリになってしまい申し訳ありません! 実況を務めます、嵐山隊オペレーターの綾辻です! B級ランク戦四日目夜の部。非常に高い注目度を誇る試合が、遂に始まります!

 解説席には“ぼんち揚げ食う?”でお馴染みの実力派エリートこと迅さんと、A級1位部隊太刀川隊の太刀川隊長にお越しいただいています!』

 

『『どうぞよろしく』』

 

『今回の組み合わせは何かと話題のアンデルセン隊が、B級の頂点に立つ二宮隊を含む上位の精鋭に挑む四つ巴という事になりますが……』

 

『なんというか、まずアンデルセン隊が増えてますよね。それも二人も。ルール上問題は無いけど、連携などの関係から落とされやすく、シーズン途中で新たな隊員を迎える事はそうそうない。それが二人もとなると、尚更でしょう』

 

『だな。まあ俺は全然知らん奴らだが、あのソフィアさんが引っ張ってきたって事は相応に曲者なんだろう。そうそう簡単に落とされるとは思えないな』

 

『そうですね! さあ、ただでさえ強いと噂のアンデルセン隊長に加え、二人の新メンバーを迎えたアンデルセン隊を、二宮隊、生駒隊、東隊の各隊はどう攻略するのか!』

 

 

 あのアンデルセン隊に新たなメンバーが加わったと知り、ざわつく観客たち。

 太刀川も言った通り、異常な強さで知られるソフィアが連れてきた隊員とあらば、否が応でもその期待値が上がり、警戒される。

 

 

 様々な憶測が飛び交う中、冷静に眺めるのは影浦と鋼。そして、急用が入らずに済んだファンクラブの面々だ。

 

 

「あいつらがソフィ姉の指揮下でチームとして戦うのを見るのはこれが初めてかァ。果たして何をしでかしてくれるやら」

「そうだな。正直嫌な予感しかしないが、楽しみでもある。前情報無しで当たるニノさんたちはかわいそうだけどな」

「ハッ、いい気味だぜ。あの野郎がどんな無様なやられ方をするか楽しみでしょうがねえ」

「ただ、今回はあの東さんがいる。あの人がどう出てくるか……」

「問題ねえだろ。ソフィ姉を怒らせたアホだし」

「それもそうか」

 

 

 影浦と鋼。

 この二人がわざわざ観客席でランク戦を見るというのはかなり珍しい。

 周りが興味津々になるのも無理はなかった。

 

 

 

 そして、アンデルセン隊と戦う各隊は──。

 

 

「……何?」

「うわ、アンデルセン隊が二人増えてる! やっぱりあの時の子たちはそういう事だったのかー」

「どうします、二宮さん」

「……好都合だ。ソフィアさんは落とせないからな。二点、奪いに行くぞ」

「了解です」

「生駒隊と東隊はどうします?」

「いちいち聞くな。作戦通りだ」

「はい、了解ですっと。ひゃみちゃん、オペレートしっかり頼むよー?」

「わかってます、犬飼先輩」

 

 

 一人ならまだしも、二人も増えた事に驚きこそしたが、ランク戦では誰を落としても一点は一点である。

 二宮隊は次元が違う強さのソフィアを避け、アンデルセン隊の新人二人を狩る事でポイントを頂く事にした。

 そして、生駒隊や東隊からもポイントを奪えば充分に勝ちの目が見えてくる。

 

 特に、東隊の小荒井と奥寺は連携さえ封じれば明らかに浮いた駒となり、獲りやすくなるのだ。

 その他には生駒隊の面々も狙い目だろうか。

 

 

 ソフィアと東は狙うだけ無駄なので、逃げの一手だ。

 

 

 

 

 

「うわっ、マジか!? この時期に二人も新しい隊員を加える!? ソフィアさん、強気だなあ!」

「……どう思います、東さん」

「俺はあいつとそんなに仲がいいわけじゃないし、むしろ怒らせたわけだが……ソフィアは意味の無い事はしない。俺と同じタイプだと思う」

「えーと、つまり……?」

「──部隊に入りたての新人と甘く見るな。あのソフィアに鍛えられているとすれば、相当な強さに仕上がっている可能性が高い。狙う時は必ず連携しろ」

「了解でっす!」

「俺は……作戦通りまずは生駒隊を狙う。はっきり言ってこの中ではあいつらは浮いてるからな。二宮も狙ってくるだろう」

「……あの生駒隊が獲物扱いとか、この試合魔境すぎません?」

「正直に言うと、お前らもだぞ。二宮もソフィアも、狙い目だと考えているはずだ。一瞬も気を抜くな。この修羅場じゃ、一手の遅れが命取りになる」

「「りょ、了解」」

 

 

 かつて最強の部隊を率いた頃に戻っている東は、冷徹に言葉を放つ。

 足手まとい扱いされていると感じる小荒井と奥寺だが、事実その通りなので文句を言うつもりは無い。

 東がいるからこそ東隊はこうして上位に居られているのだから。

 

 足にしがみついてまで引き入れた甲斐があったというものである。

 

 

 

 

 最後に、各隊から獲物扱いされている生駒隊は。

 

 

 

「うわ、やばない?」

「やばいっす」

「この時期に二人も増えるなんて珍しいですね。そんだけ自信があるんやろか」

「隊に入りたての蟻元チャンと八十神チャンは俺が落としますよ!」

「どっちもめっちゃかわいい」

「「「そっち?」」」

「アホな事言うてないで対策の一つも考えんかい! 美少女隊長とか、ギャグみたいに強いらしいで!?」

「ソフィアちゃんな。めちゃくちゃかわいい。あのかわいさは犯罪やわ。俺あんなん斬れへん」

「じゃ、ニノさん東さんコンビに任せたらいいんとちゃいます?」

「それやな」

 

 

 比較的真面目に作戦会議をしているが、それでもやっぱりお笑いの雰囲気が漂っている。

 主犯は生駒だ。

 奴がこの空気を作っている。

 

 

 獲物扱いされているとは知らず、呑気なものである。

 

 

 

 

 そして場面は戻り──。

 

 

 

『さあ、全部隊転送完了! 選択されたマップは……!? さ、“山岳地帯”!? 天候は、雪!!』

 

『うおっ、マジか。選んだのは小荒井か? 東さんにしては変わり種すぎるもんな』

 

『どうかなー。東さん、作戦室にこもって真剣な表情でソフィアさん対策を練り込んでたみたいだから』

 

『……これ、東さんが選んだマップって事か? 嘘だろ?』

 

『どうかなー。あ、ちなみにこの試合の未来は見えてないから。ソフィアさんがどうなるか読めん』

 

『『!?』』

 

 

 雪が降り積もる山岳地帯。

 迅によれば、この特殊すぎるマップを選んだのはあの東だという。

 彼の堅実さを知る太刀川と綾辻、そして観客席の面々は一様に目を丸くした。

 

 

 あの東が、信じられない。

 

 

 ただその一言である。

 

 

 更に、あの迅ですら試合結果が読めないという。

 これは、ソフィアの未来を見る事ができないからなのだが、場が混乱に陥ったのは間違いない。

 

 

 

「……なんだと」

「意外なところで来ましたねー。ちょっと読みが外れちゃったかな」

「どうします、二宮さん。とりあえず合流ですか?」

【警戒。四人、レーダーから消えてます。たぶん東さんと隠岐くんの狙撃手組に、小荒井くんと奥寺くん】

「…………チッ。合流を目指すぞ。狙撃とソフィアさんに注意しろ」

「狙撃はともかく、この雪でソフィアさんを警戒するんですか?」

「ああ。この程度はあの人にとって何の問題にもならんだろうからな」

((ほんとソフィアさん大好きだなこの人))

 

 

 あの東なだけに、てっきりオーソドックスなマップを選んでくるとばかり思っていた二宮は、いきなり予想を外した事に少しばかり動揺し、敬愛する師の狙いを考える。

 もちろん、その最中でも部下へ指示を出す事は忘れない。

 

 どこぞの狂犬野郎とは違い、二宮はデキる隊長なのだ。

 

 

 

 

「うせやろ。なんやねんこのマップ。楽しすぎやん」

「イコさん。はしゃいでると撃たれんで」

「でも気持ちはわかりますわ。片栗粉踏んでるみたいで楽しい」

「ははっ! すげー楽しい! めっちゃ滑るし!!」

【何遊んでんねん!!】

 

 

 

 安定の生駒隊。

 

 

 

「…………」

「そ、ソフィアさん? 無言だと怖いんですけど……」

「あのぉ、指示を……」

【んー。とりあえず合流ですかね~? 地味に四人も消えてるんで奇襲に注意です~】

「「りょうか──」」

 

「待ちなさい」

 

【んえ?】

「「ふぇ?」」

 

 

 

 二宮と同じく、東の狙いを考えるソフィア。

 雪は確実に自分への対策だろう。多少スピードは落ちるとはいえ、大した問題にはならないが。

 わたしのバランス感覚を甘く見たわね、と内心ドヤ顔な一方、何故山岳地帯なのかが分からない。

 

 

 

 

 まあ、何はともあれ。

 

 

「わたしが運ぶわ。その方がすぐに合流できるから」

「「!?」」

【はい?】

 

 

 

 疑問符を踊らせる部下たちを無視し、ググッと強く踏み込む。

 そして、矢のような鋭さで空中に飛び出し、グラスホッパーを使って空中を雷の如きスピードで飛んでいく。

 

 

 

『お、おおー……。アンデルセン隊長、相変わらず人外じみた動きをしますね……』

 

『……うん、俺も驚いた。グラスホッパー持ってたんだね、あの人』

 

『いやいや普通にグラスホッパー使ってもあんな速くならないからな? どうなってんだ今更だけど。土下座したら教えてくれるかな? すげー楽しそうあれ』

 

 

 これにはモニター越しに見ていた実況と解説の三人も唖然である。

 更に、グラスホッパーをセットしていた事を知らなかった影浦たちファンクラブの面々までもが呆気に取られていた。

 

 

「車椅子で生活してる人があんな動きをするとか誰が予想できるかってんだ」

「……ああ。あの人、空中でも速いんだな……膝下のあたりまで雪が積もってるのに、全く関係ないって感じだ」

「あのソフィ姉ですら勝てねえ近界の国宝使いって奴ァ何者なんだよ」

「さあ……老人らしいけどな」

「元気すぎんだろ」

 

 

 影浦たちの中のヴィザ像がどんどん化け物染みていくが、いくらヴィザでもここまで機敏に動き回る事はたぶんできない。たぶん。

 

 できるかもしれない。

 

 

 

 そして──。

 

 

『…………え、えーと。アンデルセン隊長、雪山の空を縦横無尽に移動し、瞬く間にチームメイトたちを回収、再びの空の旅で全員合流しました……』

 

『あの人だけ別ゲー感がすごい』

 

『迅に同意。回収された新人二人は白目剥いてたけどな。たぶんあれ本邦初公開ってやつだろ』

 

 

 雪が降りしきる山岳地帯を飛び回り、無理やり合流を果たしたアンデルセン隊。

 あまりのパワープレイに見る者全てが唖然とし……。

 

 

 

「「は??」」

「ちょ、なんでもう合流してんの? これたぶんアンデルセン隊だよね? すごいスピードで動いてたし」

【え、えーと……何が起きたのか、わからない】

 

 

 さすがの二宮隊もポカン。

 大口を開けて呆ける二宮という絵はかなりのレアだろう。

 しっかりと観客席から見ていた加古にからかわれる事は確定した。

 

 

「……なあ。なんでもう合流しとるとこあるん?」

「グラスホッパーやないですか」

「いやいやそれでも速すぎますって」

「なんかオレら挑んじゃいけない相手と戦おうとしてません??」

【あかん。アンデルセン隊の美少女隊長さん、思った以上に人外やったわ】

 

 

 

 さらにプレミアものだが、生駒隊ですら思わず真顔になるほどである。

 生駒はいつも真顔だが。

 

 

 

「あ、東さん!」

「イカれてますって!! なんすかあのスピード!? レーダーバグったのかと思いましたよ!」

「──問題ない。予想の範囲内だ」

【本当ですか、東さん? 地上でも空中でもオペレート追いつかないほど速いってちょっと頭おかしいですよこれ。強がってませんよね?】

「いやいや、隊長を疑うなよ。本当だって」

「「えぇー…………」」

 

 

 ある程度は行動が予測できていた東隊の面々も、雪で機動力を制限されている中で、空を超スピードで飛んでいく、などという人外じみた力技を披露されては冷静でいられない。

 

 

 

 ただ一人、東春秋を除いては。

 

 

 

 彼はこの一週間、徹底的にソフィアのデータを調べていた。

 その結果、“この程度の事”はできて当然だと、本当に予測できていたのである。

 

 

 

 小荒井と奥寺はそんな東にドン引きした。

 東しかり、ソフィアしかり、トリオン体での戦いを極めた人間というのは全員がこんな風に人間を辞めているのだろうか、と。

 

 

 

「俺を信じろ。さあ、急いで合流しつつ生駒隊の奴らを落としに行くぞ。モタモタしてるとアンデルセン隊に取られる」

「「了解ですっ!!」」

 

 

 

 それはさておき、味方であればこれほどに頼もしい。

 自分たちの隊長について行けば、きっと怪物染みた魔王ソフィア・アンデルセンですら落とせる。

 

 そう信じ、少年二人はおっさんについていく。

 

 

 

 その前に、合流しなきゃいけないけどね。

 

 

 

 

『あ、アンデルセン隊はさておき。二宮隊、生駒隊、東隊の三隊も雪をかき分けつつ進み、道中で合流する構えか!』

 

『それっぽいですね。生駒隊が集中狙いされているようですが、当の生駒隊は二宮隊の方に向かってます』

 

『東隊はバッグワームを使ってる上、マップの見通しが悪すぎてとても見つけられるような状況じゃない。アンデルセン隊に突っ込むのはもう自殺行為だと分かっただろうし、そうなると残るのは二宮隊しかいないからな。だが、何が悪いわけじゃないが生駒隊はキツイぞこれ。開始早々に全滅も有り得る』

 

『マップを選択した東隊の面々はグラスホッパーを使って移動するかと思いきや、普通に走っていますね。これについてはどう思いますか?』

 

『うーん。東隊長がグラスホッパーをセットしていなくて、彼と足並みを合わせるために他の二人も使っていない、とかそのあたりでしょうかね?』

 

『いや、他の三隊がぶつかるのを待ってるんじゃないか? その方が東さんも点を獲りやすいだろ』

 

『なるほど、御二方ともありがとうございます! あっと、ここで一旦東隊の足が止まった?』

 

 

 

 実況と解説を聞きながら、東の狙いを推測する観客席。

 

 ちなみに。非常に悲しい事だが、風間隊は任務が入っていてここにおらず、風間は大層悔しがったそうな。

 絶対素晴らしい試合になるのに、直接見れないとは……!! と呻いていたとか。

 

 

 そして──。

 

 

『ここで東隊が分かれた!! 小荒井隊員と奥寺隊員がグラスホッパーを使って飛び上がり、移動していきます!』

 

『いつも通りのフォーメーションですね。奥寺と小荒井が前線に出て掻き回し、生まれた隙をすかさず東隊長が狙い撃つという』

 

『その割には二人がしばらく東さんと一緒に足を止めていたのが気になるな。絶対何か仕掛けたぞあれ。さて、跳ぶのはいいが射線に入れば隠岐に撃たれるぞ?』

 

『太刀川さんの仰る通り、東隊の二人は生駒隊の狙撃手、隠岐隊員を警戒してか比較的ゆっくりと、時折着地しながら徐々に進んでいっていますね』

 

『隠岐もグラスホッパーを持っていますから、位置につくのが早い。下手を打てばもう撃たれる時間です』

 

 

 雪の山岳地帯という特殊なマップだからか進行スピードが少し遅いが、それでも各隊が合流を果たし、それぞれの作戦を遂行するため再び分かれて行動するか、固まったまま行動し。

 

 アンデルセン隊はずっと合流したまま、全員がグラスホッパーで跳んで速やかに移動している。

 

 

 

『だいぶ距離が縮まってきたな。そろそろ生駒隊が捕まるぞ』

 

『そうですね。さあ、果たして先制はどの隊になるのか──!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

 

 

 

 

「誰が落ちた?」

「思ったより早かったですね」

「これは──」

【い、いったいどこから!?】

「落ち着け氷見。狙撃か?」

【────】

 

 

 

 

 

 

「やられたわね」

「もう射程圏内って事は、気をつけないとですね」

「はうぅ、怖いなぁ……」

【どうします? 突っ込みますか~?】

「そうねえ……そうしようかしら。行くわよ」

「「了解です!」」

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、何やられてんねん」

「ちゅーかどっから撃たれたん? 全然わからへんかったで」

「やー、珍しい事もあるもんすね!!」

【何やっとんねん、隠岐ィ!!】

【いやいや、ほんまいつの間に撃たれたんやって自分でも不思議に思うとるぐらいなんすわ。あれ、東さんですよね?】

「まあ、せやんな。気をつけようや」

「はいよ」

 

 

 

 

 遂に試合が動いた。

 しかし、いろんな意味で意外な展開である。

 

 

『先制は東隊!! 東隊です!』

 

『ちょ、今の東さん何した? ファーストコンタクトが東さんで、しかも相手の狙撃手落とすとか、今の隊になって初めてじゃないか!?』

 

『お、落ち着いてよ太刀川さん。たぶんだけど──』

 

 

 

 東が点を狙う時は、その前に必ず小荒井と奥寺が相手と接触し、隙を作っていた。

 しかし今回はそれが無く、東単独での得点なのである。

 

 

 これには太刀川も大興奮であり、見ていた影浦や観客たちもまたどよめいた。

 

 

「なんだ今の!? あんなの避けられるわけねえぞ!」

「あ、ああ。驚いたな……」

 

 

 

 影浦と鋼は、たまたま目撃していた。

 故にその興奮と動揺も一入である。

 

 

 

 そして迅による解説が入る。

 

 

『東さんが逐一イーグレットのスコープを覗いて隠岐の場所を確認していたのは分かるよね?』

 

『おう。それぐらいはな』

 

『で、その後に周囲を見回してましたね』

 

『そそ。あの時、木々を挟んで隠岐と直線上に並ぶ場所を探してたんだと思うよ。で、無数の木越しにアイビスで超遠距離スナイプ。届くギリギリの距離だったね』

 

『『…………はぁっ!?』』

 

『東さん変態すぎだろ!! 木の裏から!? ってことはスコープ覗いても見えねーじゃん!』

 

『す、すごい事しますね……ソフィアさんといい勝負なのでは……? あっ、し、失礼。取り乱しました』

 

『あくまで俺の予想だけど、まぁそんなに大きくは外れて無いんじゃないかな。じゃないとあの行動の意味が分からないし。で、木の裏から撃たれたから隠岐は何が起きたか分からなかったというわけ』

 

『そりゃ、撃つ時の光も見えねえからな』

 

『マップ選択権を持つからこそできたわけだけど、それでも十分人外だと思うよ、俺も』

 

『同意』

 

『私も同意です。あ、狙撃手を失った事で生駒隊が後退していきます!』

 

 

 酷い言われようだが、そういうことである。

 最初のスナイパー、東春秋。

 

 本気を出した彼は、狙撃手の中でもぶっちぎりのド変態であった。

 

 

 

 

 そして、そんな波乱から幕を開けたこの試合は、まだまだ始まったばかりである。

 

 




というわけで雪山での戦い。
東さんならどんだけ盛っても許される。
許される、はずなんだッ!
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