最後のボーダー   作:初音MkIII

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生駒隊書いてて楽しい……。
けど、勝手に思わぬ方向にカッ飛んでいく問題児。


第23話 B級ランク戦 四日目②

 

 

 あまりにも変態的すぎる木の裏スナイプによって先制した東隊。

 その一手により、ゆっくりと進んでいた試合が急速に展開していく。

 

 

『あっと、狙撃手を失い後退していた生駒隊が、遂にアンデルセン隊に捉えられた!! すかさずフォーメーションを展開し、応戦します!』

 

『アンデルセン隊が一人足りませんね。これは仕掛けの匂いがしますよ。放っておくと危ないぞ、生駒隊』

 

『八十神だったか、あいつがいないな。とはいえ、あのソフィアさんを前にして背を向けるなんて自殺行為だ。その上、変態スナイプを披露した東さんまで狙ってる。こりゃ、逃げ切れねえぞ』

 

 

 

 遂に始まった本格的な戦闘に、沸き立つギャラリー。

 しかし、当の生駒隊本人たちにしてみればマジで洒落になっていなかった。

 

 

 

「あかんやろこれぇ!! 速すぎて見えへんて! なんで雪に足を取られてる中でこんなのと戦わなあかんねん!」

「あっちにはグラスホッパーあるからやろ」

「冷静にツッコミ入れてる場合じゃないっすよ水上先輩!! こんなところにいられるか! 俺は逃げるぞ!!」

「アホォ!! 何跳んで逃げてんねん海ィ!!」

【あんたらもうちょい落ち着いて戦えや!!】

 

 

 お得意の生駒旋空を放つ隙が無く、騒ぎながらもなんとか耐えてみせる生駒。

 射手の水上がそれを援護し、しかし攻撃手である南沢海がグラスホッパーを使い脱兎のごとく逃げ出す。

 

 

 が。

 

 

 

「──旋空弧月」

「……は?」

「えっ」

 

 

 

 

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

 

 

 

 空中に飛び出し、明らかに40メートルは地上から離れた南沢が、ソフィアに斬られて真っ二つになった。

 当然、緊急脱出。

 生駒隊、早くも二人目の脱落者である。

 

 

 そしてこれには実況席も黙っていない。

 

 

『ここで生駒隊から再び脱落者が出ました!! 空中に飛び上がり、距離を取ろうとした南沢隊員が、アンデルセン隊長の旋空弧月によって真っ二つに!』

 

『ちょっと待て。いやいやちょっと待て』

 

『……あの人本当になんでもありだな……ああ、でも前に使えるって言ってたっけ……』

 

 

 ボーダー内で抜群に人気が高い傑作トリガー、弧月には「旋空」というオプショントリガーがある。

 これは、トリオンを消費して弧月の射程を伸ばすという効果を持つのだが、A級1位部隊の隊長にして攻撃手1位、そして個人総合1位の凄腕である太刀川でも15メートルまでしか伸ばす事ができない。

 

 しかし、ソフィアが斬った相手との距離は明らかに40メートルは離れていた。

 

 

 

『あれ、生駒旋空じゃねえか!! あの人アレまで使えるのかよ!? どこまですげーんだ! やばい、めちゃくちゃワクワクしてきたぞ!』

 

 

 生駒旋空。

 その名の通り、今まさに戦闘中である生駒隊の隊長、生駒達人の代名詞であり、ボーダーの中でも彼しか使えない凄技である。

 

 

 簡単に言うと、旋空の効果時間を太刀川の五分の一にまで絞り、卓越した剣速をもってタイミングよく振る事でおよそ40メートルもの範囲を斬る事ができる、という技なのだ。

 

 

 そんな、自身の代名詞を目の前で使われ、それどころかチームメイトを落とされた生駒はというと……。

 

 

 

「あかん……」

「イコさん?」

 

 

 

 

「ソフィアさん、今なら生駒さんをやれますよ!」

「ダメよ。下がりなさいアリス。斬られるわよ」

「……は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「燃えてきたわ」

 

 

 

 

 

 ──旋空弧月。

 

 

 

 

『ここで本家生駒旋空が炸裂!! しかし、これは来るのを読んでいたか! アンデルセン隊長、蟻元隊員、共に回避しました!』

 

『うおー! 楽しそうだなあ!! 俺も混ざりてえ!』

 

『抑えて太刀川さん。えー、これはもしかしなくても、生駒旋空合戦になりそうですね。二人を援護する水上隊員と蟻元隊員は大変でしょう』

 

 

 

 本家生駒旋空を読み切り、難なく回避したソフィアと、かなり危うかったアリス。

 それを見た生駒は再び構え──。

 

 

 

「「旋空……弧月ッ!!」」

 

 

 

 

 ソフィアもまた、“空中で”生駒旋空を放って応戦する。

 それを見た生駒は内心感動していた。

 

 

 自分の技である生駒旋空を、自分よりも使いこなしている達人と出会えた事に。

 

 

 

『両者の“生駒旋空”が衝突!! しかし、両者とも斬られる事はなく、斬撃は逸れていきました!』

 

『うおー!! いいぞー!!』

 

『太刀川さんはもう使い物にならないな、うん。生駒旋空は……というか旋空弧月はつまり弧月が伸びてるだけなので、ああして打ち合う事も可能なんですよね。意図的にタイミングを合わせないとまず起き得ない事なんですけど』

 

『えっ? それはつまり……』

 

 

 

 と、迅が解説を続けようとしたその時。

 ソフィアが生駒を抑えている内に、浮いた水上を狩るべくアリスが動いていた。

 

 

 

「げっ、あかん!! 来んなや!」

「……見える。あの地獄の訓練は、無駄なんかじゃなかったんだ……!!」

「ちょ、どうなってんねん!? 当たらへんねんけど!! この近距離やぞ!? バケモンかい!!」

 

 

『おおっと!! 生駒隊長とアンデルセン隊長が熾烈な“生駒旋空合戦”を繰り広げる横で、蟻元隊員が水上隊員に肉薄!! 弾を全部避けている!?』

 

『これは……仕組みがありそうですね。手元のデータによると、蟻元隊員の個人ポイントは8000を超えたり下がったりしていて、アンデルセン隊長に比べれば突出して強いというわけではないはずですから。ただ、あの身のこなしはもちろん蟻元隊員の自前のものですが』

 

『なるほど。仕組み、ですか……。想像はつきますが、あえて今は語らないでおきましょう!』

 

 

 迅の解説を聞いて、彼の言う「仕組み」にすぐに気付いた綾辻だったが、この試合はとにかく見ている者が多い。

 その中で暴露するのはちょっとかわいそうだと思い、内緒にしておく事にした。

 

 もっとも、勘のいい者ならば気付いているだろうが。

 

 

「面白ェ……!! あいつ、あんなに動けたのかよ! あの状態ならいい勝負ができそうだ!」

「たしかにな。だけど、アレはたぶんソフィアさんがいないとできないぞ」

「わかってんよ。なんとかならねェかなァ?」

 

 

 そう。

 例えば、影浦や鋼とか。

 

 

 

 ちなみに、太刀川は生駒とソフィアの戦いを見て「うおー! いけー!! そこだー!!」などとうるさいので、迅にそっとヘッドセットを外されている。

 まさかの解説途中降板である。

 

 風間あたりが知れば絶対怒るだろう。

 

 

 

 そして──。

 

 

 

「チェックメイト」

「……くそっ!! すんません、イコさん! 先に落ちますわ!」

 

 

 

「えっ、うせやん」

 

 

 

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

 

 

 

 

『遂に水上隊員が落とされた!! 蟻元隊員は銃手のようですけど、攻撃手とほぼ同じ間合いで戦うんですね。弓場隊の弓場隊長みたいです』

 

『そうですね。彼女の戦闘スタイルは弓場ちゃ……ごほん、弓場隊長から来ているようですから。なんにせよ、これで生駒隊はもう後がありませんよ』

 

 

 

 ソフィアとの戦いに熱中していた生駒だったが、さすがにチームメイトが緊急脱出すれば気が付く。

 そして、だらー……っと汗を滝のように流した。

 ギャグのように。

 

 

 

「あかん、これ死ぬ」

 

 

 

 

 

「──そうか。だったら死ね」

 

 

 

 

 

「ちっ……退避!」

「は、はいっ!!」

 

 

 

 

 ここで、満を持して彼の登場である。

 四面楚歌すぎる生駒は泣いていい。

 

 

 

『遂に二宮隊が到着!! と、同時に二宮隊長のフルアタックハウンドが炸裂します!』

 

 

「ぬおおおおーーーっ!! あかんあかんあかん、マジであかんてニノさんーー!!」

 

 

 

 必死にフルガードで凌ぐ生駒。

 既にアンデルセン隊の二人は忽然と姿を消しており、残ったのは彼と二宮隊の面々だけ。

 

 

 どうあがいても詰みです、本当にありがとうございました。

 

 

 

 

『あ、よかったな生駒っち。助かったぞ、たぶんだけど』

 

『え? あっ!!』

 

 

 

 しかし、忘れてやしないだろうか。

 この試合は四つ巴なのだという事を。

 

 

 

【警戒!!】

「「!」」

「……チッ、来やがったか」

 

「あーらら、犬飼先輩の片腕だけか……」

「できれば仕留めておきたかったけど、まあいいさ。東さんがいるんだから」

 

 

 

 そう。

 東の変態的スナイプの影に隠れて忘れられかけていた、東隊のダブル攻撃手である。

 

 

「すいません、二宮さん。利き腕もってかれました」

「見れば分かる。東さんの狙撃に注意しろよ」

「辻、了解」

「犬飼、了解」

 

「ここで二宮さんを落とせればだいぶ勝ちに近付くよな。他の二人は東さんが落としてくれる」

「ああ。気張りどころだぞ、小荒井」

 

「なんや、三つ巴かい。これならまだ俺もいけそうやな。どうせ逃げても追いつかれるだけやし、覚悟決めたわ」

 

 

 

 三人対二人対一人。

 

 

 

 ……いや。

 

 

『ここで行方を晦ましていた東隊の攻撃手二人が二宮隊を奇襲! 犬飼隊員が利き腕を落とされ、少し厳しい展開となったか! 意外なことに、もう後がない生駒隊長も逃げずに戦うようです』

 

『二宮隊長がいる以上、二宮隊が圧倒的に有利……と言いたいところですが、東隊の背後には当然あの東さんがついています。あの変態スナイパーであれば、戦局をひっくり返すのは容易でしょう。太刀川さん、ヘッドセットそこに置いてあるよ』

 

『お、あったあった。なんで俺ヘッドセット外されてたんだ? ま、いいか。いやー、せっかく熱くて面白い戦いだったってのに、二宮の野郎邪魔しやがって。ま、言うまでもなく生駒がダントツで不利だが、それ以上にアンデルセン隊が消えてるのが不気味だな。またとんでもない事をしでかす気がするぞ』

 

 

 三人対三人対一人、である。

 迅の言う通り、小荒井と奥寺のバックには東がついているのだから。

 

 尚、はしゃいでいた太刀川はようやく復帰した。

 綾辻が若干白い目を向けているが、気にしない。

 

 

 

 そして──。

 

 

 激闘は、一発の弾丸により始まる。

 

 

 

 

「……は? うそ、だろ」

 

 

 

 

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

 

 

 

 

 

『『『は??』』』

 

 

 

 

 観客席、実況席、共に目が点になった。

 

 

 

 

「くそ、射線に入ってたか」

「二宮さん。今のはどこから……?」

「……分からん。とにかくシールドをいつでも張れるようにしておけ」

「……了解」

【東さんって本当に何者……】

 

 

「おいおい、すげえなうちの隊長は」

「今更言うことか? なんにせよ、これでだいぶやりやすくなったぞ」

 

「またアレかい。でも、なんとなく分かったわ。俺は当たらんで」

 

 

 

 再びの狙撃。

 撃ち抜かれたのは、利き腕を落とされた犬飼である。

 

 

 

『東隊長、またもワンショットキル!! 最初のスナイパー、未だ衰えず、ということでしょうか!?』

 

『いや、すごすぎるでしょ。たぶん同じ手を使ったんだろうけど、東さんの事だから場所を変えてるはず。それでもサラッとやってのけちゃうんだもんな』

 

『なんにせよ、これで状況が動くぞ。いくら二宮でも、のんびりしてりゃ東さんに撃ち抜かれる』

 

 

 

 そう断言した太刀川の言葉通り、辻が前に出て弧月を振るい、二宮がそれを援護する形で戦いが始まった。

 しかし、東の狙撃に意識を割かざるを得ない二宮隊のキレは悪く、逆に小荒井と奥寺は地の利も相まってのびのびと戦う。

 

 ただでさえ雪でいつもより踏み込めないという状況なのだ、多少の戦力差であれば十分に逆転しうる。

 

 

 そして。

 

 

「旋空弧月」

 

「チィッ!!」

「くっ……」

 

「よっ、と!」

「危ない危ない、イコさんの射程距離だった」

 

 

 地味に、生駒の斬撃が鬱陶しい。

 雪に足を取られて避けにくいのだ。

 

 

 

『意外にも二宮隊が苦戦する形! これはいったいどういう事でしょうか、迅さん』

 

『そうですね。やはり先程の狙撃が大きかったのでしょう。恐らく、二宮隊はまだ東隊長の場所を掴めていないはずですし。だからこそ小荒井隊員と奥寺隊員にも押されている。加えて、ただ一人生き残った生駒隊長が振るう生駒旋空もいやがらせとして非常に効果を発揮している。これは、東隊の勝利も十分有り得ますよ』

 

『俺にも聞いてくれん? やっぱり狙撃に意識を割かれてるのが大きいな。東隊の二人は個人ポイントこそ低いが、連携して戦えば格上も食える。犬飼が落とされたのが効いてるよ』

 

 

 個人としては歯が立たなくとも、チームとして戦えば勝つこともある。

 それがランク戦の面白いところである。

 

 

 

 しかし、またも戦況が変わる。

 東隊の一人勝ちを許すわけもない、あの部隊が現れる事によって。

 

 

 

「バイパー」

 

 

【【【警戒ッ!!】】】

 

 

 

 

 馬鹿みたいに大きいトリオンキューブから放たれる、バイパーによるフルアタック。

 

 

 そう。

 

 

 

「来たか、ソフィアさん……!」

「こんにちは、ニノくん。残念だけどさよならよ」

 

 

 

 

 アンデルセン隊である。

 

 

 

『ここで姿を晦ましていたアンデルセン隊長が再び降臨!! しかし、蟻元隊員の姿が見当たりませんが……?』

 

『別行動してるのか、隠れてるのか。これまた相手を揺さぶるいやらしい手だな。二宮隊と生駒はそっちにも意識を割かないといけない。東さんを警戒しなくて済む小荒井と奥寺はまだ楽だろうが……さすがに相手が悪い。ソフィアさんには生駒の旋空も通用しないし、グラスホッパーがあるから雪の影響もほとんどない』

 

『ほんと、意外なほど二宮隊が追い詰められてますね。姿を現さない八十神隊員の事も気になりますし』

 

 

 

 実況席も観客席も、まだ二宮隊はこれからだと思っている。

 何せ、まだ一ポイントも取れていないのだ。

 射手の王が率いるあの強豪部隊が、このままで終わるわけがない。

 

 

 

 

 そう、思っていた。

 

 

 

 しかし、既にソフィアは勝利宣言をしている。

 

 

 

 

 既に、終わっているのだ。

 

 

 

「これは……!? くそ、最後の一人か……!」

 

 エスクードがニョキニョキと生え、二宮と辻の周囲を囲む。

 二宮であればこの程度の壁は容易に破壊できるが、彼が射手である以上ほんの少しだが確かな時間を浪費する。

 

 

 その隙が、命取りだ。

 

 

 

 

 

 

「旋空弧月」

 

 

 

 

 

 

「……!!」

「こんな、まさか……」

 

 

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

 

 

 

 

 

 エスクードをセットしてある隊員。

 それは、この試合において一人しかいない。

 

 

「いぇーい!! やりましたよぉ~!!」

 

 

 ずっと姿を隠していた少女、八十神万理華である。

 

 

 

 

「おいおい、まじか」

「取られちまった……すんません東さん……」

 

 

「よし。さっきの続きをやろうや」

 

 

 

 

『こ、こ、これは……!! 驚き、まさに驚きの展開!! 辻隊員と二宮隊長がアンデルセン隊長によって同時に落とされ、かつてはA級部隊であった経験があり、あの二宮隊長が率いる強豪部隊、二宮隊がまさかの無得点で真っ先に脱落しました!!』

 

『うわー、これ、二宮相当へこんでそう。つーか最後の旋空弧月やばかったな。エスクードで閉じ込められた上にあんなの食らったら避けれるわけがない』

 

『忍田本部長を彷彿とさせる旋空弧月の乱れ打ち……あの鋭さは本部長を超えていますね。さすがに生駒旋空ではなかったようですが』

 

 

 

 二宮隊の脱落。

 それも、無得点のまま真っ先に全滅という、最悪の形で、だ。

 これには観客席も騒然としていた。

 

 

 

 

 そして。

 不思議な空気の中、小荒井と奥寺が動く。

 無論、点を取り返すためだ。

 

 

 

「バイパー」

「アステロイドぉ!」

 

 

 

「ぬおおおっ!! きっつ! これきっつい!!」

「喋ってる暇があったら避けろ!!」

 

「ちょっ、俺までさらっと狙うのやめへん!?」

 

 

 

 が、しかし。

 ソフィアのバカデカく、高威力なバイパーに追い回され、二宮ばりにデカイ万理華のアステロイドに追い詰められる。

 

 

 地味にいやらしく生き残ってきた生駒も狙われており、逃げきれずに被弾。左腕を失った。

 

 

 

「あっ」

「えっ?」

 

 

 

 ここで小荒井、奥寺、共に痛恨の転倒。

 尚、雪のせいではない。

 

 これまた万理華が姿を晦ましている間にたんまりと仕掛けていた、スパイダーに引っかかったのである。

 ソフィアと万理華がわざわざバイパーとアステロイドで彼らを追い詰めたのは、ハナからこのエリアに誘い込むためだった。

 

 

 もちろん、この好機を……。

 

 

 

「「旋空弧月」」

「あっ」

 

 

 

 

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

 

 

 

「…………とられた」

「やったった」

 

 

 逃す、ソフィアだった。

 

 

 

「………………あっ」

「えっ? あっ。やってもうた」

 

 

 

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

 

 

「へ」

 

 

 

『こ、これは!? 一瞬の間に一気に三人が落ちた!! 誰が誰のポイントだ!?』

 

『たぶん、小荒井と奥寺は生駒のポイントだな。生駒とソフィアさん、両方の生駒旋空に斬られた二人だけど、生駒の方が近かったし』

 

『で、生駒っちはマヌケにもうっかり八十神隊員の仕掛けたメテオラトラップを踏んづけて爆死、という流れでしたね。彼らしい結末でした』

 

 

 

 生駒は最後まで生駒であった。

 迅の解説を聞き、せっかくちょっと格好良かったのに、と脱力する綾辻。

 しかし、すぐに気を取り直す。

 

 

 何故なら──。

 

 

 

 

《トリオン供給器官破損。緊急脱出》

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

『な……あ、蟻元隊員が緊急脱出!? いったいどこで!?』

 

『なっはっは。なるほど、厄介な最後の生き残り、東さんを一人で狩ろうとしてたのか。で、返り討ちにあったと。ちょっと焦りすぎたな』

 

 

 

 

 結局最後まで全員無事に切り抜けるかと思われたアンデルセン隊の一人、蟻元アリスが緊急脱出したからだ。

 

 

 犯人は当然、最後に残された敵。

 東春秋しかいない。

 

 

 

 そして──。

 

『あっ!? ここで東隊長が自発的に緊急脱出!』

 

『まぁそうでしょうね。さすがに前衛がいない独りぼっちの状態でソフィアさんに立ち向かうのは、いくら東さんと言えど無謀と言う他ない。妥当な判断でしょう』

 

『何にせよ、面白い試合だったなー!! 後で記録見直そっと。永久保存版だぞこりゃあ』

 

 

 

 終始各隊を脅かし続けた“最初のスナイパー”、東が自発的に緊急脱出し、試合終了となった。

 

 

 

 

『えーと、アンデルセン隊の生存点も含めまして──』

 

 

 

 

 7対3対2対0で、アンデルセン隊の勝利となった。

 

 

 ちなみに内訳は──

 

 アンデルセン隊、7点。

 東隊、3点。

 生駒隊、2点。

 二宮隊、0点。

 

 

 ──という事になる。

 これにより、遂にアンデルセン隊が単独1位へと躍り出た。

 逆に、終わってみれば散々な結果となった二宮隊は影浦隊にも抜かれて3位へと降下。

 

 生駒隊は二宮隊の煽りを受け4位へ降下。

 東隊は奮闘したにも関わらず玉狛第二と鈴鳴第一に抜かれ9位に下がり中位落ち、という推移となった。

 

 ちなみに8位は昼の部で影浦隊に食われた弓場隊である。

 

 

 四日目終了時点での順位の推移、及び得点は以下の通りだ。

 

 

 ↑ 1位 アンデルセン隊 28点

 → 2位 影浦隊 27点

 ↓ 3位 二宮隊 25点

 ↓ 4位 生駒隊 24点

 ↓ 5位 王子隊 22点

 ↑ 6位 玉狛第二 22点

 ↑ 7位 鈴鳴第一 21点

 

 ↓ 8位 弓場隊 20点

 ↓ 9位 東隊 20点

 

 

 こう言ってはなんだが、これ以下の順位にある部隊は上位争いに加わる事は戦力的にも難しいので割愛する。

 

 

 

 次節、B級ランク戦五日目、上位の組み合わせは──。

 

 

 

 暫定1位、アンデルセン隊。

 暫定2位、影浦隊。

 暫定7位、鈴鳴第一。

 

 

 この三つ巴と。

 

 

 暫定3位、二宮隊。

 暫定4位、生駒隊。

 暫定5位、王子隊。

 暫定6位、玉狛第二。

 

 この四つ巴となる。

 

 

 二宮隊と連続で当たる事になった生駒隊は泣いていい。

 特に、二宮は首位に返り咲くべく闘志を燃やしているはずである。

 

 

 

「うげっ、またソフィ姉と当たんのかよ」

「よかったな。あの状態のアリスとやれるかもしれないぞ。俺もいるけど」

「……まあ、たしかにそう考えりゃ悪くもねえか。ハハッ、楽しみになってきたぜ!」

 

 

 

 五日目の組み合わせを見た影浦と鋼は、そんな会話をしたとかなんとか。

 

 




二宮隊ファンの皆さんにごめんなさいする話。
東さんは二宮を使ってソフィアを落とすつもりでしたが、それを察知したソフィアが二宮隊を先に落とした感じです。
尚、アリスと万理華を加入させていなければアンデルセン隊は東隊にポイント負けしてました。
ちなみに、ひっそりと落とされたアリスですが、東さんが前話で仕掛けていた小細工によって発生した小規模な雪崩に巻き込まれ、顔をなんとか出したところを撃ち抜かれて緊急脱出しました。ひでぇや。
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