最後のボーダー   作:初音MkIII

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短め。
ストックが残り少ない上にアイスボーンの発売日が近付いてきてる……


第24話 彼らの様子

 

 

 ソフィアから授けられた修の武器を活かす新戦術を引っさげ、アンデルセン隊&影浦隊と相対したラウンド3での敗戦で取り損ねたポイントを取り返すべく、ラウンド4に望んだ玉狛第二。

 しかし、同じくアンデルセン隊に敗北し、取り損ねたポイントを取り返すために新戦術を引っさげてきた鈴鳴第一と激闘を繰り広げ、倒しこそしたものの生存点を含めても獲得ポイントが同じ、という事でドローになってしまった。

 

 上位に再び返り咲く事ができたので、そこはよかったのだが……やはり勝っておきたかったというのが正直なところである。

 

「うーん。6位に上がったのはいいけど、むらかみ先輩たちも上位についてきちゃったんだよな? まだ四試合あるし、また当たるかもしれん」

「そう、だな。僕達も鈴鳴も新戦術を初披露した試合だったから、次に当たった時には他の部隊も対策を練ってくるだろうけど……」

「鋼さんが守って他の二人が攻撃するっていうシンプルな戦術だけに、対策が難しいんだよねー。アンデルセン隊も新メンバーを加えてきたみたいだし。みんな、記録はもう見た?」

「はい。なんというか、すごい試合でした……」

 

 

 二部隊の新戦術によってボコボコにされた香取隊と那須隊はご愁傷さまとしか言いようがない、点の取り合いとなった試合だったが、相手を落とした数は鈴鳴第一の方が多い。

 やはり新メンバーの加入が必要だ、と感じる修だったが、唯一に近い第一候補だった迅には既に断られてしまった。なんでも、今は修たちに協力する余裕が無いらしい。

 

「今シーズン加わった新部隊であるにも関わらず、もう単独1位になってる。アンデルセン隊から順位を奪うのは厳しいな」

「まあそっすね。修たちには悪いが、アレはお前たちが敵う相手じゃない。幸い遠征選抜の条件は2位以内に入る事だから、なんとか2位に滑り込む事を目標とするしかないと思うぞ」

「アリスちゃんは落とされてたけど、動きがすごかったもんな。個人ランク戦でやるときより全然つよく見えたけど、あれどういう仕組み?」

 

 

 ある意味同期部隊とも言えるアンデルセン隊が既に1位となっているため、話題がそちらに向く。

 中でも遊真は、友人でもあるアリスが、記録で見た限り妙にいい動きをしていた事が気になっていた。

 

 それに答えるのは、文句を言いつつしっかり記録を確認していた、遊真の師匠でもある小南だ。

 

 

「きっと風間隊と同じ手口よ。アンデルセン隊の誰か……たぶんソフィアさんだと思うけど、相手の動きを見切れるタイプのサイドエフェクトを部隊で共有していたんだと思うわ」

「サイドエフェクトを共有!?」

「ふむ、なるほど。そういうことだったのか。となると、チーム戦で当たったら、個人ランク戦のときとは段違いのつよさになると思った方がよさそうですな」

「そういう事もできるんですね」

「できる限り当たらない事を祈りたいな。アンデルセン隊との点の取り合いは分が悪すぎる。正直言って僕達じゃ勝算が無い」

 

 

 

 ふぅ……と、皆でため息。

 彼ら玉狛支部の面々に共通して思う事は、「なんであんな部隊がB級なんだろう……」という嘆きであろう。

 

 

「まあそれはさておき、次の試合も楽観視できるわけじゃない。二宮隊も生駒隊もかなりの強さだし、王子隊も同様だ。全て上位の常連部隊だからな」

「二宮隊があの試合で得点無しで終わったのが意外でしたね。ずっとB級1位を守り続けてきたあの部隊が」

「はい。もちろん記録を見て対策を立てようと思ってます。何としても勝って影浦隊との差を縮めないといけないですし」

「かげうら隊はアンデルセン隊と当たるから、差を縮めるチャンスだしな。すずなりもいるとはいえ、アンデルセン隊に勝てるとはおもえん」

「なんかアンデルセン隊ってゲームの即死ギミックみたいね。当たった部隊は大抵他の部隊に抜かれてるし」

「言い得て妙だな、こなみ先輩」

「よくそんな言葉知ってるわねあんた」

「えっへん」

 

 

 気持ちを切り替え、次の試合へと目を向ける。

 何せ、修たちの目標は2位以内に入って遠征選抜部隊への参加条件を満たす事なのだ。

 

 まあ、アンデルセン隊とは当たらない事を祈るという微妙にネガティブなところもあったりするが。

 相手が相手なので仕方がない。

 

 

 

 そして、二宮隊は──。

 

 

 

 

「このチビは人が撃てない。極論放置で構わねえ……と言いたいが、チクチク手を出してくるのが鬱陶しい。仕留めるチャンスがあれば仕留めて点を奪え」

「了解です。また四つ巴なんで、アンデルセン隊ばりの大量得点チャンスですねー」

「ああ。だが、面倒なことにまた生駒隊がいやがる。奴の旋空弧月に足を掬われるなよ」

「はい。もう無得点で脱落は御免ですからね」

「了解、オペレートの優先対象にします」

「こっちのメガネはザコだが小細工が面倒だ。真っ先に落とすべきだろうな。かと言ってコイツに固執して時間を浪費してちゃ世話がねえ。臨機応変に対応しろ」

「となると、玉狛第二を最初に潰します? もちろん転送地点次第ですけど」

「ああ、そうだな。ハマれば厄介だが、若い部隊なだけに脆さが目立つ。つまりただの餌だ」

「アンデルセン隊も若い部隊ですけどねー」

「犬飼先輩……」

「あそこにはソフィアさんがいる。だから例外だ」

 

 

 やはり無得点で真っ先に脱落するという醜態を晒したのが堪えたらしく、いつになく大真面目に次の試合の対策を全員で練っていた。

 特に、二宮の表情はかつて無いほど真剣である。

 

 それもそのはず、先日の試合が終わった直後、わざわざ作戦室にやってきた加古にエラくからかわれ、屈辱のあまりチワワのようにプルプル震えるという一幕があったのだ。

 その上、ファンクラブ関係で親交が深い影浦や鋼まで現れ、「どんな気持ち? ねえ今どんな気持ち?」とめちゃくちゃうざい絡まれ方をした。鋼はそれを止めようとしていたが、半笑いだったのを二宮は忘れない。

 

 

 更にソフィアまで来ていたらいよいよもって二宮は再起不能に陥っていたかもしれないが、そこは彼女が気を遣って放っておいてくれたので助かった。

 

 

 やはりソフィアは女神なのだ、と信仰を深めた瞬間である。

 

 

 

 

 ── 生駒隊作戦室 ──

 

 

「なんでやねん」

「いやなにがやねん」

「なんでまた二宮隊相手やねん! しかも絶対ニノさん殺す気で来るやん! そんなんもう慢心を捨てた慢心王やで!? あかんに決まっとるやろ!」

「イコさんの気持ちは分かりますけど、ぎゃーぎゃー言うても何も変わりませんて。対策の一つでも立てた方が有意義っすわ」

「俺がニノさんを倒しますよ!」

「「「寝言は寝て言えや」」」

「ひどい!?」

「……なんかあんたらが真面目に作戦会議してると気持ち悪いわ……いや、真面目か? ほんまに真面目かこれ?」

 

 

 

 彼らはいつも通りだった。

 間違いなく真面目ではない。

 

 生駒は真面目なつもりなのかもしれないが。

 

 

「はぁ……ソフィアさんに会いたいわ……」

「現実逃避すんなや」

「もしかして、恋」

「なんで会いたいんすか?」

「旋空弧月で斬り合いたい。試合ん時のやつ、めちゃくちゃ楽しかってん」

「「サイコか」」

「あかん、やっぱり真面目ちゃうわ」

 

 

 

 マリオちゃんの言う通りである。

 結局、その後もいつも通りぐたぐだとクソどうでもいい世間話に落ち着く、生駒隊であった。

 ナスカレー。

 

 

 

 

 ── 王子隊作戦室 ──

 

 

 

「うーん……」

「どうした王子? 難しい顔をしているが」

「いや、次の試合はどう動こうかと思ってね。玉狛の新戦術は厄介だし、加えてマップの選択権まで持ってる。下手を打てば最初からペースを持っていかれかねない」

「なるほどな。二宮隊までいるのが辛いところだ」

「そうなんだよね。次の試合で一番強い駒は間違いなくニノさんだから、ぼくらはプリンセスのように強気でいく事ができない。更に玉狛は放っておくと厄介だ。となると二宮隊はまず玉狛を狙うだろうけど、ぼくらも玉狛を狙いたい……困っちゃうよ」

 

 

 真面目な顔で語る王子隊隊長、王子一彰。

 彼の相棒である射手、蔵内和紀は、王子がさらっと放った一言に固まった。

 

 

「待て王子」

「ん、なんだい?」

「プリンセスって誰だ」

「決まってるじゃないか。アンデルセン隊の隊長、ソフィアさんだよ。あの美しさと強さはまさにぼくのプリンセスさ」

「…………」

「ああでも、噂じゃあのニノさんもプリンセスのファンクラブとやらに入っているらしいね。となると、ますます負けられないな」

 

 

 蔵内は王子に宇宙を見た。

 何言ってんだこいつ……と頭を抱えても仕方がないだろう。

 こういうちょっと変なところさえ無ければ、普通に良い奴なんだけどなぁ……というのが正直なところだ。

 

 

 

 そしてそのプリンセスことソフィアは──。

 

 

 ボーダー本部基地にて。

 

 

 

「ごめんなさい、お待たせしたかしら」

「東春秋、参上しました」

 

「いや、仕方ないさ。車椅子に乗ったままで構わないから、テーブルについてくれ。東もご苦労だったな」

 

 

 

 城戸司令に忍田本部長、一部A級部隊の隊長たち、そして迅。

 錚々たるメンバーが揃う広大な会議室に、車椅子を東に押されてやってきていた。

 

 三輪あたりは、ソフィアを「なんでいるんだこの人」と訝しんでいるが。

 

 

 

「それでは、緊急防衛対策会議を始めよう」

 

 

 

 迅が予知し、ソフィアがサラッと予言した近界民……「ガロプラ」の侵攻。

 今回行われるのはその対策会議だ。

 

 無論、捕虜であるアフトクラトルの元黒トリガー使い、エネドラからも証言をとっている。

 

 




地味に王子初登場。
あだ名をどうするか悩むよね、この人……。

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