最後のボーダー   作:初音MkIII

27 / 30
弧月キック! 相手はしぬ(違)


第26話 ソフィアのパーフェクト弧月教室

 

 

 対ガロプラ緊急防衛対策会議が終わり、迅と三輪に作戦室まで送ってもらったソフィア。

 多忙な実力派エリートはそそくさと退散していったが、三輪は何故か帰ろうとしない。

 

「どうしたの?」

「いえ。少し作戦室にお邪魔させていただいてもよろしいですか?」

「もちろん構わないし、勝手に出入りしてもいいけど……何か用事?」

「はい」

「ふむ?」

 

 どうやら、用事があるらしい。

 この場で明かすつもりはないようだが。

 

 とりあえず、作戦室の中に入ることにした。

 

 

 すかさず三輪がドアを開け、サッと素早い動きで車椅子の押手の位置に戻る。

 その様が少し滑稽で、ソフィアはくすりと笑った。

 

 

「あっ、ソフィアさんお帰りなさい。あれ? 三輪隊の……」

「おかえりなさぁい。三輪先輩も一緒なんですねぇ」

「誰かを連れて帰ってくるなんて珍しいですね~?」

「ええ、ただいま」

「お邪魔します。それと、少しお時間いいですか、ソフィアさん」

「わたし? なら途中で言えばよかったじゃない」

「いえ、それはちょっと失礼かなと思いまして」

「ふーん……?」

 

 

 わざわざ作戦室にまでついて来るぐらいだから、用があるのはチームメイトの誰かなのかと思いきや、自分だと聞き、首を傾げるソフィア。

 とりあえずテーブルに向かい、三輪にも椅子に座るよう促した。

 

 

「それで、用事って?」

「……ソフィアさん。あなたの腕を見込んでお願いしたい事があります」

「ふむ、なるほど。そのお願いしたい事が何かによるわね。こう見えて忙しいの」

(((暇なくせに)))

 

 真剣な表情で切り出す三輪と、真剣な表情を取り繕って「一度言ってみたかったセリフ」を口に出すソフィア。

 両者の温度差が微妙にひどい。

 尚、実際は暇なので基本的に依頼は請け負うつもりである。

 

 

「同じ弧月使いとして、俺に御教授願えませんか」

「…………いいわよ? なんだ、そんなこと? そのぐらいなら道中にふらっと言ってくれたらよかったのに。気負って損したわ」

「す、すいません。えっと、ありがとうございます」

「どうせ暇だし、早速行きましょう? なんならアリスたちもついてくる?」

「あ、行きます行きます」

「ここの模擬戦で良くないですかぁ?」

「し~っ! ソフィアさんはお出かけしたい気分なんですよ~! 結局基地内だけど」

 

 

 ただでさえ真顔な事が多い三輪が、より一層真剣な表情でいるもんだから何かと思えば、と肩透かしを食らうソフィア。

 トリガーの扱い方程度、いつでも教えてあげるつもりである。

 

 

 彼女はボーダーのトリガー全般を扱えるし、弓場のクイックドロウのような特殊技術も大抵覚えている。

 できないのは、強いて言えば佐鳥のアクロバティックツインスナイプぐらいなのである。アレは紛れもなく変態だ、とソフィアは思っている。

 

 佐鳥からすればあなただけには言われたくない、というところだろうが。

 あと、直近で言えば東の木の裏スナイプもまだ試してないので、できるかどうか不明だ。

 

 

 狙撃手に変態が多いのは何故だろうか。

 荒船あたりが聞けば誠に遺憾である、と返しそうだが。

 

 

「じゃあ俺が車椅子押していきますよ」

「あら、そう? じゃあお願いしようかしら」

「「「ダメです」」」

「え」

「それはわたしたちアンデルセン隊の仕事です。すっこんでてください」

「そうですよぉ。部外者がしゃしゃり出るもんじゃありません」

「これだからシスコンは~」

「やめてあげなさいあなたたち……秀次くんがへこんでるわ」

「シスコン……」

 

 

 車椅子を押そうとしたところ、何故かアリスたちから猛抗議を受け、辛辣すぎる言葉にガチ凹みする三輪なのだった。

 ソフィアガチ勢筆頭であるアンデルセン隊の面々を敵に回してはいけないのだ。

 

 

 とにかく。

 そんなこんなで、個人ランク戦ブースへと移動。

 三輪が隅っこで影を落としているが、誰も気にする者はいない。

 

 

 

「お? ソフィアさん。あと重くなる弾の人にアリスちゃんたち。どこいくの?」

「あら、遊真。こんなところでどうしたの?」

「個人ランク戦をしに」

「……白チビ。俺たちはこれからソフィアさんに弧月の扱いを教えてもらう予定だが、来るか?」

「…………? どしたの重くなる弾の人。なんか変なものでも拾い食いしたのか?」

 

 

 道中で何やらキョロキョロしている遊真と出会い、そんな会話が一つ。

 

 あの三輪がいつものように敵視してくる事なく、まして同行を誘ってきた事に、心底不思議がる遊真。

 危うく「近界民は嫌いなんじゃなかった?」と自身の素性を漏らすところだった程だ。

 

 

「ふん。ソフィアさんのお話を聞いて、少し考え方に変化があっただけだ。今はお前もボーダーの仲間だからな。そう邪険に扱う必要もない」

「へえ……そうなのか。じゃあお言葉に甘えまして。おれはスコーピオン使いだけど、興味がある」

「なんならスコーピオンの扱いも教えてあげましょうか? わたし、大体全部のトリガーを使えるから。あとスコーピオンもセットしてあるしね」

「「!?」」

「ちょ、ソフィアさん! あなたはまたそうやってサラッと秘密を漏らす!!」

「いいじゃないの、別に。秘密にしていたつもりもないし。ただ言う機会がなかっただけよ」

 

 

 全部のトリガーを使えるという言葉と、さらっと付け加えられたスコーピオンをセットしてある、という言葉に激しく反応する三輪と遊真。

 聞いていたアリスたちもびっくりして慌てた。

 

 

 そして、仲良く同時に指を幾つも折って何かを数える三輪と遊真。

 

 

「ちょっと待ってくださいソフィアさん」

「うん?」

「それだと、スコーピオンが単体だとしてもあと一つしか空いてませんよね? ……シールドとバッグワームを入れるスペースが無くないですか?」

「だってセットしてないもの」

「はい!?」

「え、マジか。ソフィアさん、攻撃トリガーしかいれてないの?」

「うん、そうだけど」

 

 ソフィアの返答を聞き、呆然とする三輪と遊真。

 頭を抱えるアンデルセン隊。

 

 

 そうなのだ。

 ソフィアがこれまでに披露したトリガーを数え、更にスコーピオンまで足すとなると、必須とまで言われる防御、隠密トリガー……シールドとバッグワームを入れる枠が足りなくなるのである。

 

「最後の一つもアステロイドで埋まってるわね」

「な、なるほど」

「強気だな、ソフィアさん……」

「なんでバラしちゃうんですかあなたはっ!!」

「ど、どうして怒ってるの? アリス」

「どうしてもこうしても……この人は本当にもおぉ!! ほら、さっさと行きますよっ!!」

「え、ええ……」

 

 

 バッグワームを入れないというのはまだわからなくもない気がしなくもないが、シールドを入れないというのはちょっと意味がわからない。

 それがソフィア本人を除く全員の正直なところである。

 

 

 しかし、ソフィアがシールドを入れていない事にはきちんと理由がある。

 それは、彼女の宿敵であるヴィザの「星の杖」相手ではシールドが無意味だから、だ。

 実際、大規模侵攻にて、あのレイジがシールド越しに斬られて緊急脱出している。

 

 

 まあそんな事は露知らず。

 プンスカと怒るアリスに車椅子を押され、その横を万理華と灯にがっちり固められながら進んでいく。

 

 三輪と遊真は最後尾である。

 

 

 

 そして。

 個人ランク戦ブースに辿り着くと、当然のようにいる影浦と鋼といういつもの二人に加え、加古隊の黒江や緑川と米屋、生駒といったエース格、及びマスタークラスに届かないB級隊員などでワイワイと賑わっていた。

 

 

 そんなところに、あのソフィアがチームメイト+三輪と遊真という異色のコンビを率いて現れれば、あっという間に注目を集めるのは当然の事であった。

 

 

「ソフィ姉じゃねえか」

「本当だ。アリスたちもいるな。それに、空閑と三輪まで。空閑は分かるが、何故三輪が?」

「知るかよ。だが、面白そうなニオイがすんなァ」

 

「あの人は……」

「お、遊真先輩じゃん。十本勝負やりたいなー」

「うちの隊長までいるじゃねえか。いつの間にソフィアさんと仲良くなったんだ、あいつ?」

 

「ソフィアさんやん。これはチャンスやな。早速申し込みにいかなあかん」

「イコさん、ずっとやりたいやりたい言ってましたもんね。でも、どういう組み合わせすかアレ」

「三輪先輩と十本勝負やりに来たとかですかね?」

「なんやそれコアデラ、ずるいわ」

 

 

 有名隊員たちの視線が集中し、万理華がいそいそと遊真の背後に隠れるも、遊真がチビすぎて隠れきれておらず、逆に目立っていたり。

 まあ、本人が隠れたつもりになれてさえいればそれでいいのかもしれないが。

 

 

「目立ってますね」

「いいんじゃないかしら。あ、なんならあの子たちも巻き込んで講習会でも開く?」

「こうしゅうかい?」

「ソフィアさんが先生になってトリガーの扱いに関する授業を……面白そうですね」

「あ、なるほど。そういう」

「わ、私はちょっとぉ……でも、たしかに面白そうだしぃ……うぅ……」

「あ、近付いてきますよ~」

 

 

 そんな会話をするソフィアたちの元に、近付く影が二つ。

 当然、奴らである。

 

 

「どうしたんだソフィ姉。ここに来るなんて珍しいじゃねェか。それも大勢連れてよォ」

「三輪と勝負でもするんですか? 戦いにならない気がしますけど。鉛弾が当たるとも思えないし」

「……影浦さんに、鋼さん。ちょっと話が……」

「あ?」

「なんだ、三輪?」

 

 

 ソフィアを見ればすぐに寄ってくる。

 それが“ソフィアさんとこの三馬鹿”たる影浦と鋼である。

 ちなみに、三馬鹿最後の一人である二宮は次の試合への対策で忙しいので来ていない。

 この場にソフィアが現れた事を後で知れば、死ぬほど悔しがりそうである。

 

 

 そんな二人を三輪が少し離れたところへと連れていく。

 

 

「あァ? てめーもファンクラブに入りたいだァ?」

「ええ、お願いします」

「まあ、構わないよ。ソフィアさんの魅力を知る者は皆兄弟だ」

「ま、それもそうだな。ほら、会員証だ。無くすなよ」

「……会員証なんてあったのか……」

「作ったばかりだからな。知られていないのも無理はない。それと、ファンクラブの存在はソフィアさんには内緒だぞ」

「いや、手遅れなのでは。結構有名ですし」

 

 

 

 バカが増えた。

 つまり、そういうことだ。

 ちなみに会員証は諏訪隊の堤が作ったらしい。

 

 

 

 そして、野暮用を済ませた三人が再びソフィアの元へと戻ってきた。

 それを見て首を傾げるのは、ソフィアだけである。

 他のメンツは皆悟った顔をして頷いている。

 

 まだバレていないらしい。

 自分自身の事には鈍いソフィアなのであった。

 

 

 

 会長の諏訪を除き、ファンクラブの主戦力がだいぶこの場に集まっているが、会員はまだまだいたり。

 

 

 

 そんなこんなで明かされる、「ソフィアのパーフェクト弧月教室」。

 尚、弧月教室といいつつ、遊真と影浦などのスコーピオン使いの事を考慮してスコーピオンも使われる事となった。

 

 

 希望者を募った結果、その場にいた有名隊員であっという間に埋まってしまったので、チーム戦に設定を切り替えた上で適当にチーム分けをし、皆で仮想空間に潜っていく。

 

 

 そして──。

 

 

「おい。おめーは銃手だろうが、アリス」

「攻撃手の間合いで戦うからノーカンだよ」

「ちょっと黙っててくれ、カゲ。ソフィアさんの声が聞こえなかったら困る」

「ちっ」

「弧月はどうもしっくりこなかったんだよな。スコーピオンの方が軽くてつかいやすい」

「空閑くん、静かに」

「もうしわけない」

 

 

 射手や銃手は外からの観戦に回っており、こうして仮想空間に潜っているのはほぼ全員が攻撃手と万能手である。

 銃手なのはアリスだけだった。

 ちなみに万理華は外で観戦組だ。

 

 

「それじゃ、まずは弧月からね。初期からずっとある傑作トリガーなだけに、使用者も多い。この場に参加してくれた子たちも一回は弧月を握ってみた事があるんじゃないかしら?」

 

 

 影浦、鋼、アリス、遊真の四人からなる「チーム(ソフィア)ガチ勢」の面々のうち、弧月を使うのは鋼だけである。しかし、影浦たちも一応使おうとしてみた事はあるらしく、ソフィアの言葉に頷いていた。

 尚、遊真だけは別にソフィアガチ勢ではない。尊敬はしているが、あえて言うなら彼は修ガチ勢なので。

 

 

「使用者が少ないから今回は対象外って事で、レイガストは置いておくとして。スコーピオンと比較して弧月が優れている点は何かしら。秀次くん、どう?」

「はい。古くから存在する刀……特に木刀あたりで我々日本人にとって馴染み深い形をしているので、動きがイメージしやすく、使用者の多さから師を見つけやすい。また、スコーピオンと比べて硬く折れにくいのが特徴です。加えて、オプショントリガーである旋空を使用する事で誰でも間接攻撃をこなす事ができます」

「ありがとう、秀次くん。それでだいたいあってるわ。旧ボーダーが使っていたのもそんな理由から……でしょうね」

 

 ソフィア、三輪、生駒、緑川の四人からなる「チームソフィア」の面々を代表し、話を振られた三輪がハキハキと答えていく。

 それを聞いて、ソフィアも満足気に頷いて微笑んだ。

 

 

 ちなみに、米屋は「教室」という言葉に二の足を踏んだ結果、チームの枠に入りきれず外で観戦組となった。

 

 

 

「生駒くんやわたしのように、旋空を昇華した広範囲斬撃を繰り出す事ができるというのも利点の一つね」

「俺の旋空弧月やんな。ソフィアさんが使ってきたのはほんまびびったで。しかもたぶんその気になったら俺以上の射程距離にもできるやろ」

「あら、バレた?」

「タイミング合わせて旋空を逸らされる、なんてやられりゃそらな。あれ、俺より振るの速くなかったらできひんやろ?」

「ええ、そうね。まあそんな感じで、頑張れば旋空弧月を旋空弧月で弾く事もできるわ」

 

 

 それはあなたにしかできません。

 観戦組も含め、全員の心が一つになった。

 

 

「では、スコーピオンの方が優れている点は何かしら。カゲくん」

「あァ。弧月はスコーピオンより重いし、手で持って振るモンだから、両腕を奪われりゃおしまいだ。だが、スコーピオンは切られた腕の断面をはじめ、身体中いろんなとこから生やせる。射程もスコーピオンとスコーピオンを繋げてマンティスをやりゃあ補えるかんな」

「ええ、そうね。ありがとう。カゲくんが言ってくれたように、スコーピオンは弧月よりも幅の広い攻撃ができる反面、使い手の想像力が重要になるわ。ただ斬り合うだけなら、折れやすいスコーピオンよりも折れにくい弧月の方が強いから」

「うんうん、たしかに。弧月だとちょっときゅうくつだったんだよな」

 

 

 影浦とソフィアのやりとりに遊真が頷き、緑川が真剣に聞きつつ心のメモに書き留める。

 そして、もっといろんな攻撃を試してみよう、と決意するのだった。

 

 

「じゃあ、ちょっとここでわたしが弧月とスコーピオンを組み合わせた小技を見せようかしら」

「「おっ?」」

 

 

 ガタン、と前のめりになる一同。

 特に、スコーピオン使いである影浦と遊真、緑川の三人は興味津々である。

 弧月使いである鋼たちも同様だ。

 

 アリスだけは、弧月やスコーピオン対策を考えるために参加したので、少々異なる。

 

 

「カゲくん。ちょっと前に出てくれる? 他の子たちはちょっと下がっててね」

「あいよ」

「「了解」」

 

 

 きちんと見えるように遅くするから、と前置きし、ソフィアが構える。

 そして──。

 

 

「いっ!? うおっ!!」

 

 

 弧月を構えていたと思いきや、ソフィアはブレードを展開したままそれを落とし、地面につく寸前に柄を蹴った。

 

 そう。

 サッカーボールのように弧月を蹴ったのである。

 

 まさかの攻撃方法をなんとか感知した影浦は慌てて回避し、弧月はそのまま飛んでいく。

 

 

 が、そこから更に。

 ソフィアは軸足からスコーピオンを生やし、地面を経由して影浦の背後に出現させ、先端を爪のように変え、飛んでいく弧月をキャッチ。

 さらにそれをブン、と影浦へ向かって放り投げた。

 

 

「「はぁっ!?」」

「うおっ!? あっぶね!!」

 

 

 まさかの弧月返しに仰天する一同と、サイドエフェクトのおかげでギリギリ避ける影浦。

 

 

「よっ、と」

 

 

 そして元に戻ってきた弧月をキャッチし、身体を大きく捻るソフィア。

 そのまま──。

 

 

「──旋空弧月」

「えっ」

「「あっ」」

 

 

 

 影浦を生駒旋空で斬った。

 残念、影浦は脱落してしまった!

 

 

 

 ──と、思いきや?

 

 

「…………い、生きてる」

「ま、こんな感じね」

「無駄に器用な事すんねんな、ソフィアさん……」

 

 

 

 悲しい事に、ソフィアのパーフェクト弧月教室から斬られて脱落したと思われた影浦だったが、なんとか生きていた。

 

 いろんな意味で一同が唖然とする中、生駒がぽつり。

 同じ生駒旋空使いだからこそ、わかったのかもしれない。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

「ソフィアさん、いまなにしたの? かげうら先輩、絶対死んだとおもったのに」

「イコさんは見えてた風だったね」

「どや」

「……なるほど、ああいう使い方もあるのか……トリガー構成を考える価値はあるな」

 

 

 まさかの影浦生存を受け、口々に質問を投げかける生徒たち。

 尚、影浦は首を抑えて青い顔をしている。

 

 

「最後の旋空弧月はともかく、それまでの弧月キャッチボールはスコーピオンと弧月があれば誰でもできると思うわ」

「誰でもできるかどうかはともかく、最後のはいったい?」

「ああ、あれ? カゲくんの首を斬る寸前で弧月をオフにしたのよ。実戦じゃ無意味だけど」

「……な、なるほど」

「トリガーの切り替えも速かったし、ソフィアさんはほんと何から何まで速いな」

「弧月キャッチボールかぁ! やべー、超面白そうじゃん! オレもちょっとトリガー構成考えてみよっかなー。オフシーズンに練習しよっと!」

「ふぅむ。さすがにあんな事をしてくるのはソフィアさんぐらいだと思うけど……弧月を撃ち落としたりとかできるかなあ……」

 

 

 モルモットにされた影浦を除き、ワイワイと盛り上がる。

 観戦組はそれを眺めて目をキラキラさせて羨ましがっていた。特に米屋。

 

 

 そして、生徒たちのテンションは、ソフィアが放った言葉により最高潮となる。

 

 

「それじゃ、せっかくだしこの混成チーム同士で模擬戦をしましょうか!」

「「おー!!」」

「おお、たのしそうだ」

「ちょっと待ってくださいよ。そんなのソフィアさんがいるそっちチームがめちゃくちゃ有利じゃないですか! 私もそっち行けばよかった……!!」

 

 

 そんな感じである。

 しかし、アリスの抗議を受け、ソフィアガチ勢チームのテンションが一気に下がる。

 

 

「言われてみれば……」

「たしかにそうだな」

「ソフィ姉がいる時点で勝ち確じゃねェか。ずりぃぞ、緑川!」

「なんでオレだけに言うのさ。三輪先輩とイコさんもいるじゃん」

「ふっ、勝ちはもらったな」

「あー、こうなるならそっち行けばよかったわ。ソフィアさんと旋空弧月合戦やりたいねん」

 

 

 青い顔から復帰した影浦も、我に返り抗議する。

 鋼と遊真も同様である。

 

 

 思わぬブーイングに後込むソフィア。

 そして……。

 

「そ、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。だったら……そうね、わたしだけ走る行為を禁止するっていうのはどう? ハンデとしては充分じゃないかしら。あ、グラスホッパーは使わせてね?」

「「…………乗った」」

「すごい悩んだね、むらかみ先輩にかげうら先輩」

「えー……それでも不利な気が……まあいっか」

 

 

 

 ソフィアの代名詞とも言えるハイスピードの禁止。

 走れないとなれば、縮地も使えず、移動だけは影浦たちにも視認できる。

 

 

 しかし、剣速やトリガーの切り替えなど、ありとあらゆるスピードが別次元で速いのがソフィアという人物だ。

 故に、ハンデとしては不十分なのでは、とガチ勢チームは考えたのだ。

 

 

 しかし、これ以上文句を垂れるとソフィアを困らせてしまう。というか既に困らせている。

 それはファンクラブの名誉会員として、はっきり言ってゲロ以下の行為である。

 

 

 

 とにかく。

 影浦、鋼、遊真、アリスの四人対、ソフィア、三輪、生駒、緑川の四人による混成チーム戦が行われる事となった。

 

 

 こんな美味しいイベントを、実況席の主が逃すわけもなく。

 既に、解説者を確保してスタンバっているという事を、ソフィアたちは知らない。

 

 

 

 尚、内容はまたの機会に語る事とするが、結果は案の定ガチ勢チームの負けであった。

 と言っても、彼らは頑張った。そりゃもう頑張った。

 チームソフィアのメンバーをソフィア以外全て落とすまでに追い詰めたのだ。

 

 しかし、生駒がぬわー! と叫んで落ちた瞬間、ソフィアのメテオラが容赦なく飛来し、逃げ遅れたアリスを容赦なく粉砕。

 無事に回避した遊真がバイパーの餌食となり、鋼はアステロイドで削り殺され。

 

 

 最後に残り、必死に抗う影浦もまた、スコーピオンを全て叩き落とされて斬られた。

 

 

 それを緊急脱出先から見ていた生駒が、「こんなんチートや! チーターやないかい!」とボケたのも割とガチだったかもしれない。

 

 

 

 まあ、なにはともあれ。

 

 

 ──ガロプラ襲来まで、あと二日。

 

 




戦いの様子を描写するとエグい文字数になって私が死ぬのでカットしました。
誰か書いてくれてもええんじゃよ?()

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。