最後のボーダー   作:初音MkIII

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たぶんスコーピオンの方がもっと速いけど、こんなところで全力出してもアレなんで……


第4話 極秘戦闘訓練

 

 

 新たな隊の作戦室ができた日の事──。

 

 

「──戦闘訓練?」

「そ。ソフィアさんが強いって事は皆わかってるけど、訓練も無しに入ったってのはさすがにね。ここで規格外の成績を出しておけば、“設定”にも説得力が出る」

「なるほどね。ええ、そういうことなら構わないわ」

 

 

 アンデルセン隊の作戦室には、早速実力派エリートこと迅悠一が訪れていた。

 迅曰く、基本的に誰でも入隊時に行っている戦闘訓練をやっていないとなると、いらぬいざこざが起きかねないと危惧した幹部、唐沢の提案でソフィアも訓練を行う事になったという。

 

 ソフィアもまた、ごもっともである、と納得。

 かくして波乱の予感しかしない訓練が秘密裏に実施される事となったのだった。

 

 

 ちなみに、アンデルセン隊オペレーターの灯はお留守番である。

 事情もまだ知らされていないので仕方がない。

 

 

 

 ──対近界民用訓練室にて──

 

 

 

「じゃ、頼みますよ鬼怒田さん」

『言われんでも分かっとる! まったく、忙しいというにこき使いおって……』

「迷惑かけてごめんなさいね、たぬきさん」

『きぬただ!』

 

 

 本来ならこの訓練室を管理しているのはB級「諏訪隊」の面々なのだが、今回は極秘という事でボーダーの開発室長である鬼怒田が来ているのだ。

 当然、この場にいるのもごく少数。

 迅、ソフィア、鬼怒田、そして何故か居る忍田の四名のみだ。

 

 

「忍田さん。これまでの最速タイムはどうなのかしら?」

「ああ。玉狛支部の遊真くんが0.4秒という素晴らしいタイムを叩き出しているよ」

「それまでの最速が緑川の4秒だったかな。ソフィアさんの知識ではどうなの?」

「わたしの方も同じね。遊真には悪いけれど、更新させてもらおうかしら」

「ま、あのスピードなら確かに……大丈夫、鬼怒田さん? ちゃんと計れる?」

『……恐らくは、な。とりあえず、絶対に更新されないイカれたタイムが出そうじゃ』

 

 

 

 そんなやり取りを経て、仮想戦闘モードに移行。

 一般的に「近界民といえばこいつ」と認知されているトリオン兵、バムスターが姿を現す。ただ、訓練用なので本来よりは少々小さいが。

 

 

 尚、ソフィアの武器は弧月である。

 

「未だに白服なのね」

「隊服ができるのはギリギリになるでしょうからね。仕方がないわ」

「そりゃそうだ。さて、鬼怒田さん」

『うむ。それでは──』

 

 

 意識を切り替えたソフィアが弧月を構え……と言っても勿論抜いてはいない。

 

 

 

『始め!!』

 

 

 合図とほぼ同時。

 バムスターのコアが真っ二つに割れた。

 

 

 そして、「目にも映らぬスピード」で移動し、一瞬でバムスターを斬ったソフィアが遠く離れた床に着地する。

 

 

「──さすがだな」

「……やっぱり見えん。速すぎる。こりゃ、個人戦やってもまるで歯が立たないな」

「私もギリギリ対応できただけだからな。それに、どうも彼女はまだ全力を出していない節がある」

「マジですか、忍田さん」

「お前も薄々気付いていたんじゃないか? あの子はどうも、自分の動きに違和感を抱いているように見える」

「……確かに」

 

 

 ソフィア・アンデルセン。

 訓練用バムスター撃破タイム──。

 

 

『……本当に人間か? 0.1秒にも満たんぞ』

「うへぇ。弧月振るスピードも速すぎだろ」

「居合だな。生駒のそれとよく似ている」

 

 

 

 ──0.08秒。

 間違いなく、今後一切抜かれないだろう規格外のタイムである。

 

 

「わたしは人間なのか、否か。どうなのかしらね……」

 

 

 役目を終え、消滅する訓練用バムスターを横目に、ソフィアは寂しげにそう呟いた。

 自分が本当に“人間”なのか。

 最も疑っているのは、彼女自身なのだ。

 

 

「もしかしてソフィアさんって生駒旋空使える?」

「使えるわよ?」

「マジでか」

「向こうで生駒くんに教わったから。本人には真顔で“そう簡単に真似できるもんとちゃうねんで”って言われちゃったけれどね」

「そうだろうな……。実際、こちらでは生駒だけの絶技となっているぐらいだ」

 

 

 B級第3位生駒隊隊長の代名詞であり、彼しか使える者がいない凄技を使えるとサラッと語るソフィアを見て、迅が口元を引き攣らせ、忍田も苦笑した。

 

 

 

 そして、問題はこの後に起きた。

 

 

 

 レイジや荒船に師事していた経験があり、マスタークラスになる程度には使える、という事から狙撃手用訓練室に向かい、“トリオンが多いほど威力が上がる”狙撃トリガー、アイビスを手に取った時の事である──。

 

 

「たぬきさん。壁の補強は大丈夫?」

「うむ? 以前玉狛支部の子が壁をぶち抜いてしまった事があってな。それ以来補強は重点的に進めておる」

「チカちゃんね。なら大丈夫か」

 

 

 何故かものすごく不安そうにしているソフィアと、それを見て嫌な予感に襲われる迅、忍田、鬼怒田。

 尚、ここでは鬼怒田はすぐ傍に居るので音声通信ではなく肉声での返事である。

 

 

「……一応言っておくが。先日の大規模侵攻で爆撃を受けた影響で、今は普段よりも脆くなっとる。あんまりやりすぎてくれるなよ?」

「……そんな事言われると、却って緊張しちゃうのよね……」

 

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 ドズン! と、大砲のような轟音が響き──。

 

 

 

「「…………」」

「ふ、ふふ……なんとなくこうなる気がしておったわ……!」

「ご、ごめんなさい……」

 

 

 

 さすがにトリオン怪獣こと雨取千佳ほどではなかったものの、“大砲”が着弾した壁が大きく抉れ、無惨な姿を晒していた。

 壊れたように嘆く鬼怒田を見て、本気で反省するソフィアであった。

 

 

 アイビスだけは拒絶するべきだった、と考えるも後の祭りである。

 

 

「ソフィアさんってさあ」

「うん」

「トリオンも馬鹿みたいに多いのね」

「……そうね。先天的なものではないけど」

「? それはつまり……いや、今はいいか」

 

 

「鬼怒田さんには悪いが、貴重なデータが取れた。パーフェクトオールラウンダーにもなれる逸材とはな」

「呑気だね、忍田さん……」

 

 

 

 普通ならこんな事をすれば鬼怒田ならば激怒しようものだが、ソフィアは見た目だけならば可憐な少女であり、どこか鬼怒田の娘を思い起こさせるところがあるのかもしれない。

 故に、ちょっと甘いのだろう、と迅は後に語る。

 

 

 尚、ソフィアは元からトリオンモンスターだったわけではない。

 とある悲惨な経験をきっかけに、トリオンの量が激増した結果がコレなのだ。

 それでもチカには及ばないあたり、チカのトリオン怪獣っぷりが分かるというものである。

 

 ちなみに。

 その“悲惨な経験”とは、ボーダーに限らず聞けば誰もが悲痛に顔を歪め、近界民に怒りの炎を向ける事はほぼ間違いないだろう、という程のものである。

 一つ言うならば……ソフィアは既に子を産める体ではない、とだけ。そしてその原因にはあの“わくわく動物野郎”ことハイレインが大きく関わっている。

 

 

 それはさておき。

 

 

 ──圧倒的な戦闘力を見せたソフィア・アンデルセン率いる(ただしオペレーターと合わせて二名のみ)アンデルセン隊と、凄まじい破壊力を誇るトリオン怪獣と、黒トリガー持ちの近界民にして入隊時の戦闘訓練で好成績を残した白髪のチビを擁する玉狛第二。

 

 

 激戦区であるB級へ新たに参入した二部隊はいずれも特異なチームであり、今期のB級ランク戦はかつてない程に注目されている──。

 

 

 

 ボーダーはチームとして動く以上、個人戦よりも重要なチーム戦において、あのソフィア・アンデルセンがどれだけ戦えるのか。

 ボーダー最強部隊、玉狛第一の面々をそれぞれ師に持つ玉狛第二の戦闘力は如何程か。

 

 

 A級の精鋭が。

 B級の上位部隊が。

 中位部隊が。

 下位部隊が。

 C級の雛鳥たちが。

 

 果てには上層部すらも注目する彼ら彼女らは、いったいどのような戦いを見せるのか……。

 

 

 

 その行方は、予知予知歩きにすら、分からない──。

 

 

 

「実はソフィアさんの未来、見えないんだよね」

「何、そうなのか?」

「ええ。だから俺も正直まだ警戒半分なんだよ」

 

 

 

 ついでに、迅は重要な情報を漏らした──。

 

 




そんな感じで訳あって迅の未来視が通用しないので、仮に迅が風刃持ち出してソフィアさんと戦ってもかなり勝率は低くなります。

迅vsヴィザとか原作で見てみたいなぁ……
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