最後のボーダー   作:初音MkIII

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本日三話目の投稿になります。
ぶっちゃけ初戦は消化試合なので短いです。


第5話 B級ランク戦開幕

 

 

 無自覚ヒーローメガネ、三雲修の目覚めと記者会見での近界遠征発表という大ニュース。

 第二次大規模侵攻で、かつてよりも格段に抑えているとはいえ被害を出したボーダーに対する批難の目が、一転して期待へと変化した事などがあったりしたが、何はともあれ。

 

 ボーダーの異端、玉狛支部の面々にとっては非常に重要な意味合いを持つ今回のB級ランク戦。

 その開幕を、一人の落ち着いた筋肉がチェックしていた。

 

 

 ──ボーダー、玉狛支部──

 

 

 木崎レイジ。

 狙撃手、攻撃手、銃手……。

 三つのポジションにおいて、上級者の証であるマスタークラスに到達した、ボーダー唯一の「パーフェクトオールラウンダー」である。

 また、ボーダー最強部隊とも称される木崎隊……通称玉狛第一の隊長でもあり、とにかくすごい筋肉だ。

 

 そんな彼が眺めるのは、旧ボーダーメンバーにして現ボーダー上層部の一員、そして“ノーマルトリガー最強”としても広く知られる男、忍田本部長が珍しく個人戦を行っている動画。

 

 多くの隊員たちが見守る中、まさかの忍田敗北という結果になった衝撃の事件である。

 

 

「……やはり、強い」

 

 

 そう呟き、レイジはつい先日知り合った動画の主役について思い起こす。

 

 

 暗躍が趣味の実力派エリートこと、迅悠一に紹介された少女。

 ソフィア・アンデルセンと名乗った彼女は、信じ難い事に「ボーダーがアフトクラトルの軍勢によって壊滅した未来」からやってきたのだという。

 

 普通ならば妄想だと相手にしないのだが、あの迅が稀に見る程シリアスな表情で、真剣そのものな声色で居るのだから、信じないわけにもいかない。

 未来を予知するサイドエフェクトを持つ彼によって、いったい幾つの危機を乗り越えてきたのか、計り知れないのだ。ついに頭がイカれたか、と邪険にした結果最悪の未来に進んでしまうというのも馬鹿らしい。

 

 

 しかし、それでもやはり信じ難い事に変わりはなく。

 他でもない迅同様、未だ半信半疑というのが本音である。

 

 

「アフトクラトル……軍勢、か」

 

 

 先日起きた第二次大規模侵攻。

 その相手こそがアフトクラトルであり、ソフィアが言うにはおよそ四年後に、圧倒的な大戦力をもって再び侵攻してくるのだという。

 しかも、その目的は“ボーダーの殲滅”。

 

 曰く、レイジのかわいい弟子である雨取千佳がアフトクラトルに「新たな神」とするべく攫われ、そして本国の実権を握るに至った近界民、ハイレインが自らの基盤を安定させるため、一度は自身らを撃退したボーダーの戦力を危険視した結果らしい。

 

 

「…………」

 

 

 これを聞いたレイジは悩んだ。

 ほぼ間違いなく、千佳が攫われるのは遠征先での事だろう。

 少なくとも、ソフィアが知る未来ではそうであったようだ。

 

 

 果たして、このまま弟子を戦わせていいものか。

 彼女が攫われ、その結果最悪の未来が訪れるというのならば、例え誰に嫌われてでも、それこそ無理矢理にでも辞めさせるべきなのではないか?

 

 一人重苦しい雰囲気を漂わせるレイジだったが──。

 

 

「やあ、レイジさん。ぼんち揚げ食う?」

「……迅」

 

 

 頼れる実力派エリート、迅悠一が現れた。

 まあ、レイジがこうして悩んでいるのも元はと言えばこの男が原因ではあるのだが。

 いつもの飄々とした雰囲気で、迅はレイジと対面にある椅子に座る。

 

 

「なんでもソフィアさんが言うにはさ、向こうの俺は“千佳ちゃんを守って、捕まった人達も全員取り返すハッピーエンド”を目指して動いてたんだって」

「そうか」

「まあ確かに俺ならそうするだろうなって思ったんだけどさ。その結果がバッドエンドだったってわけだ」

「…………」

 

 

 雰囲気こそ普段のそれと変わらないが、その言葉はあまりにも重かった。

 

 

「で、それ聞いて思ったんだけど。きっと向こうの俺は、なんでもかんでも一人でやろうとしすぎたんだろうなって」

「暗躍が趣味だからな、お前は」

「はは、まぁね」

 

 

 ……実は、迅が席を外している間に、ソフィアがこんな事を言っていた。

 

 

『このままわたしの知る通りに行けば、迅は次の遠征で亡くなるわ。一人でアフトクラトル本国の奥深くに潜入した結果、敵に見つかったのだと思う。そして迅が持っていた“風刃”はハイレインに奪われ、わたしたちは最高の防御を失った』

 

 

 遺体のあの傷からして、恐らくやったのはアフトクラトルが誇る剣聖、ヴィザだろう、とも。

 

 

「迅。お前にしかできない事があるのはわかる。だが、もっと仲間を、俺たちを頼れよ?」

「……ああ、分かってる。あとそれレイジさんにそっくりそのまま返すよ」

「……くくっ、そうだな。不確かとは言え、先がある程度は分かっているんだ。俺たちであいつらを支えてやればいい、か」

「そゆこと。俺も千佳ちゃんの安全には気を付けるし、不覚を取らないようにトレーニングもしないとなー」

「ああ。絶対に、守るぞ」

「──もちろん」

 

 

 迅とレイジ。

 最悪の未来を聞かされた二人は奮起する。

 悲劇など、許しはしないと。

 

 

 

「それはそうと。いよいよランク戦始まるわけだけどさ」

「ん? ああ、そうだな」

「例のアンデルセン隊も参入するわけじゃない?」

「……そう、だな」

「……メガネくんたち、大丈夫かね……」

「…………何とも言えん…………」

 

 

 

 別の意味で空気が重くなった。

 

 そう、そうなのだ。

 本来存在するはずの無いアンデルセン隊がいるので、ただでさえ狭い遠征部隊選抜の門がより狭くなってしまったのである。

 

 この事に関してはちょっと鬼怒田さんあたりと相談してどうにか城戸さんを説得する必要があるかもしれないと思う、迅なのであった。

 

 

 

 そしてそのアンデルセン隊はというと──。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

『ボーダーの皆さんこんにちは! 玉狛第一 オペレーター、宇佐美栞です!

さあ、いよいよ始まります新シーズン! 待ちに待ったB級ランク戦、開幕!

あ、桜子ちゃんは後で来るからちょっと待っててね!』

 

 

 レイジ率いる玉狛第一、そして新たに増えた修たち玉狛第二のオペレーター、栞は実況役として本部にやってきていた。

 理由は単純。

 実況席の主こと武富桜子は、今回本来の仕事である海老名隊のオペレーターとして試合に参加するため、実況ができないのだ。

 

 そして、意外や意外。

 解説役は……。

 

『初日、昼の部を実況していくわけですが……。なんと、本日の解説には個人総合3位にして攻撃手2位! 風間隊の風間隊長にお越し頂いています!』

『風間だ。よろしく頼む』

『よろしくお願いしまーす! で、初日という事なのでランク戦の説明お願いします、風間さん!』

 

『……今期新たに参入した二部隊……玉狛第二とアンデルセン隊を加え、上位7チーム、中位7チーム、下位8チームの合計22部隊。その中で何度も三つ巴、四つ巴のチーム戦を行い、点を取り合う。

 一人撃破する事に1ポイント。時間内に最後まで生き残った勝者には、生存点としてボーナス2点が入る。

 加えて、前シーズンでの順位に応じて初期ボーナスが与えられるというのも特徴だな。

 そして、B級の1位と2位にはA級への挑戦権が与えられる……以上だ』

 

『ありがとうございます! さあ! 海老名隊、茶野隊、常盤隊、そしてアンデルセン隊! それぞれ転送完了! 各隊序盤はどう動くか!?』

 

 

 新たに二部隊増えたことで、下位グループは四部隊戦が二試合となり、実力が伴えば大量得点のチャンスとなる。

 これは、早々にA級昇格を目指す玉狛第二にとっては嬉しい誤算であろう。

 

 

 それはさておき。

 

 

 忍田本部長を打ち負かしたと噂のソフィア・アンデルセンの名を冠する、アンデルセン隊。

 見物に来ていた隊員たちの注目を集めるには十分であった。

 

「アンデルセン隊って一人だけなのか?」

「しかも可愛い女の子。大丈夫かあれ」

「おいお前たち知らねえのか!? あの子すげー強いんだぞ! あの忍田本部長を倒したんだから!」

「「は?」」

 

 C級はファン気分で興奮し。

 

 

「あーっ!? あの子はあの時の!!」

「新部隊の隊長だったのか……当てが外れたなぁ」

「……一人、か。しかしあの強さならば……」

 

 B級は勧誘できないことに落ち込み、あるいはその戦力を虎視眈々と観察する。

 

 

「いやあれB級下位にいちゃダメなやつだろ」

「そっすね、太刀川さん。本部長に勝っちゃうぐらいなんだし。まぁ上は特別扱いとかやらないもんなぁ」

「くそー、俺も参加したいぞ!」

「無理ですから」

 

 A級は上層部の思惑を推測し……。

 

 

 

 

 そして、アンデルセン隊は彼ら全員の度肝を抜いた。

 

 

『んな……!? な、なんだこれはぁ!?』

『……マップの広さなど関係ないと言わんばかりだな。障害物もお構い無しか。あとお前、もう少し声を抑えろ。なんなんだそのテンションは』

 

 

 あまりの脚力に地面が弾け飛び、トリオンで生成された“民家”を蹴ってマップ中を凄まじいスピードで飛び回るソフィア。

 その速さは、目にも止まらぬどころか文字通り“目にも映らぬ”レベルである。

 

 

『トリガーは弧月だったが、最初は何も持っていなかった。となると、メインはスコーピオンか……あるいは射手か? む』

『あっ』

 

 

 確実にA級へ上がってくると予測し、ソフィアの戦力を分析する風間だったが。

 ほんの少しの隙に、戦局が動いた。

 

 

『えー……茶野隊全滅! あ、あっという間の出来事でした!!』

『まるで戦いになっていないな。無理もないが』

 

 

 わけもわからぬ内に首を落とされ、緊急脱出した茶野隊と、動揺する各隊。

 そして残された者たちは一際大きい建物に立てこもった。

 

『広い外では不利と見たか、各隊敵同士という事も忘れて、あるいは共同戦線を結び、籠城する形! 数の力で対抗しようという事か!』

『ふむ。まあそれぐらいしか取る手はないだろうが──』

 

 

 風間が言葉を続けようとした、まさにその時。

 閃光と共に大爆発が起きた。

 

 

『……け、決着! 衝撃の結末です! アンデルセン隊長、籠城を決め込んだ各隊を丸々メテオラで吹き飛ばしたぁ~!! ……あれ、メテオラだよね? 威力すごかったけど』

『……万能手、か? まぁ今回は相手が悪かったとしか言いようがない。解説のし甲斐がない試合だった』

『ま、まぁまぁ。機会があったらまた呼ぶから……。ごほん。アンデルセン隊、生存点と合わせてまさかの一挙11得点!! 22位から暫定6位へジャンプアップです! これは強い!!』

『中位グループと上位グループの試合次第だが、まぁ最低でも中位には食い込むだろうな、アンデルセン隊は』

『そうですね、まだこれが本日初……そして今シーズン初の試合なので、順位は変動するでしょう!』

『アンデルセン隊はどうやらかなり早い段階で全ての敵を捕捉していたな。派手に飛び回ったのもそのためだろう』

『なるほど! えー、今後もアンデルセン隊には目が離せませんね! では、風間隊長、ありがとうございました!』

『ああ、お前もお疲れ様だ。また頼む』

 

 

 敵の三部隊全員を撃破し、生存点込みで11得点。

 ここまで豪快な結末はなかなか無い。

 実況しながらこの試合を目に焼き付けていた栞は、帰ったら修くんたちに見せてあげよう、と決意した。

 

 

 

 尚、そんな栞がオペレーターを務める三雲修率いる玉狛第二もまた、生存点込みで11得点を上げ、軽い祝勝会のようなものが開かれたのは余談である。

 

 




ソフィアのステータス載せときます。
は? て思うかもしれませんが、きちんと理由ありますから。


トリオン  25
攻撃  18
防御・援護  17
機動  15
技術  13
射程  6
指揮  9
特殊戦術  5

※ノーマルトリガー装備時 合計108



以下は1話で壊れた黒トリガー装備時のステータス。
もちろん黒トリガーが万全の状態なら、です。


トリオン  50
攻撃  23
防御・援護  20
機動  18
技術  13
射程  7
指揮  9
特殊戦術  11

※黒トリガー“飛天”装備時 合計151

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