最後のボーダー   作:初音MkIII

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本日四話目です。予定より一話増やしました。

アンデルセン隊の順位については

前回試合終了直後→他部隊の初期ポイントを参考に暫定6位→他部隊の試合結果が反映されて現在の順位

という流れになってます。


第6話 No.4との遭遇

 

 

 ランク戦初日で快勝し、一気に順位を8位にまで上げた玉狛第二。

 あまりにも順調なスタートに、玉狛支部の面々は大騒ぎであった。

 

 ……訂正。

 大騒ぎしているのは一部のみであった。

 主に小南とお子様が騒いだ。

 

 そんなこんなで祝勝会が一段落してから、昼の部で実況役を務めた栞がふと皆を集める。

 尚、実力派エリートはちょくっと顔を出しはしたが、今は不在である。

 

「どうしたんだしおりちゃん。これからすわ隊とあらふね隊の対策をしようというのに」

「見せたいものがあるんだよねー。ほら、昼の部でも11得点上げて下位から中位に上がったチームがいるって話」

「11得点……!」

「すごい」

「修たちと同じ得点っすね。いくら下位と言っても珍しい」

「二チームもそれほどの得点を取るのは前代未聞じゃないか?」

「って言っても下位でしょ? 大したことないわよ」

「そう言われるとおれたちも大したことないってことになるぞ、こなみ先輩」

「しかもしかも! 今シーズン新たに加わったチームという点も修くんたちと同じなの!」

「「……!」」

「……やっぱりあの人か」

「!? 知ってるのか、空閑!?」

「まぁね」

「(どういう繋がりなんだ……!?)」

 

 ソフィアを知る遊真とレイジは既に分かっているが、烏丸、小南、修、チカの四人は知らないので興味津々である。

 

 陽太郎は栞を待っているうちにおやすみしました。

 

 

「あったあった、これだ」

「俺はもう見たが、すごいぞ。これと当たった連中はご愁傷さまとしか言いようがない」

「レイジさんがそこまで言うなんて珍しいっすね?」

「ふ、ふん! ウチの遊真の方がすごいし!」

「ありがたきしあわせ」

「……“アンデルセン隊”……? 外国人ですか? それとも、近界民……?」

「さあ? でも本部直属だし、外国人なんじゃないかな。さすがに城戸さんが許さないだろうし。見せたいのもこの人の戦いなんだよね!」

「ふーん……若いわね」

「俺と同い年だぞ。直接聞いた」

「「!?」」

「ここに来たんですか!?」

「ああ。迅の紹介でな」

「初耳なんすけど」

「あたしもなんだけど!? なんで言ってくれなかったのよ! っていうかこの見た目で21歳!? 嘘でしょ!?」

 

 

 さらっと知り合い発言するレイジに皆が驚愕する中、動画が始まる。

 新シーズン一発目の試合にして、見た者全ての度肝を抜いた、凄まじいものが。

 

 

 そして──。

 

 

「「…………」」

「すごいな」

「でしょ? 見てよかったと思わない?」

「いずれ当たる可能性は高いしな。この分だと間違いなく上位に行くだろう。はっきり言って桁違いだ」

 

 

 言葉を失う一同と、どこか得意気な栞。

 冷静に呟く遊真と、冷静に返すレイジ。

 

 見事に反応が二極化した。

 

 

「ぜ……全力でまあまあね!」

「小南先輩、動き見えました?」

「あ、ああ、当ったり前じゃない!!」

「「(見えなかったんだな)」」

 

 

 ちゃんと見えたし! 負けないし!!

 ともぎゃる小南を横目に、いつも通りの冷や汗を流す修。

 唖然とするチカ。

 冷静に、しかし何度も動画を見る遊真。

 

 

「幸い次の試合では当たらないが、いつまでも避けていられるわけじゃない。だが、先のことに囚われすぎて次の試合を落としていたら世話が無いからな。きちんと次の対策もしておけよ」

「あっ、はい! えーと、荒船隊と諏訪隊……」

「うーん……速いな。おれでも追いつけなそうだ。もしチカを狙われたらカバーしきれない。そうなるともっとスピードを上げなきゃいけないけど、どうしたもんかな……」

「おい、空閑。気持ちはわかるが、とにかく今は次の荒船隊と諏訪隊とのランク戦に集中するぞ!」

「……ん、おお。すまんオサム」

 

 

 こんな感じで、アンデルセン隊の戦闘模様は玉狛の面々に大きな衝撃を与えた。

 

 

 その後。

 遊真はかつてないほど真剣に、アンデルセン隊への対策を考えつつレイジと一緒に防衛任務。そして翌日以降の空いた時間で小南と何度も模擬戦を。

 修もやっぱりアンデルセン隊への対策を考えつつ、烏丸指導の元に自分を鍛え。まぁその前に荒船隊と諏訪隊をどう攻略するか、ひたすら考えていたが。

 チカはどうしたらもっと修たちの力になれるかを考え、後日それまでよりハードなトレーニングをレイジに要求した。

 

 

 

 B級ランク戦2日目、中位グループ。

 昼の部、組み合わせは──。

 

 

 暫定9位、アンデルセン隊。

 暫定11位、鈴鳴第一。

 暫定13位、漆間隊。

 暫定14位、那須隊。

 

 以上の四部隊だ。

 

 

 尚、修たちは夜の部で諏訪隊、荒船隊の二部隊が相手である。

 

 

 各隊の様子は……。

 

 ──鈴鳴第一──

 

「鋼、昨日の試合見た?」

「ええ、アンデルセン隊でしょう。すごいですね」

「鋼先輩なら大丈夫ですよ! なんたって攻撃手4位の凄腕なんだし!」

「そう安心もできないわよ。噂じゃあの忍田本部長にも勝ったらしいし」

「マジっすか!?」

「本部長に……!?」

「それは……すごいな。それが本当なら、俺だけじゃ抑えられない」

「そうなると、ぼくと太一も鋼の援護をしなきゃだめだね」

「すいません、お願いします」

「なんのなんの。皆で勝とう!」

「「はい!」」

 

 

 

 ──漆間隊……は、謎のままにしておこう。

 ということで、那須隊──

 

 

「うーん。アンデルセン隊はちょっとデータが少なすぎるよね」

『そうですね。忍田本部長との弧月十本勝負と、昨日の試合。たったこれだけですもん』

『そうね……使うトリガーで分かっているのは弧月と、昨日の最後に使ったメテオラだけ。他はまだわからない……』

「でも、強い事は間違いない。しかも鈴鳴もいるし……村上先輩を上手くアンデルセンさんにぶつけられたらいいんだけど。マップ選びをどうするかだね」

『……あれ? アンデルセンさんって年上なんですか?』

「らしいよ。玉狛のレイジさんと同い年だって」

『『!?』』

 

 

 結局、あまりにもアンデルセン隊の情報が少なすぎるため、どの隊も明確な対策は打てずにいた。

 その点で言うと、かなり特殊な事情から全員の手の内を知り尽くしているアンデルセン隊が非常に有利である。

 鋼たちもまさか、相手が未来の自分たちと戦った事があるとは思わないだろう。

 

 

 そしてそのアンデルセン隊はと言うと──。

 

 

「いやー、さすがにすげーですね~。11得点で一気に9位とか~」

「あらあら、褒めても何も出ないわよ?」

「ちぇ~。と、次の相手ですけど~」

「鈴鳴と漆間隊、そして那須隊ね」

「ですね~。昨日みたく全取りってわけにはいかないと思いますよ~」

「それは……あの子たちの動き次第かしら。少なくとも負ける気は無いわよ」

「はえ~、すっごい自信~。でも、鋼さんとかは要注意ですよ~? あの人、すっごいサイドエフェクト持ってますから~」

「そうね……ちょっと試合でもしてこようかしら?」

「はい?」

「行ってくるわね。なんならついてくる?」

「エッ、いやちょっと待っ──」

 

 

 村上鋼。

 彼が持つ「強化睡眠記憶」というサイドエフェクトを知ってるぽいのに何故わざわざ情報を与えるような事をするのか、と詰め寄ろうとした灯だったが、有無を言わさぬ微笑みに封殺された。

 

 この慢心、どげんかせんといかん、と息を荒らげる灯は、しかし自らの隊長が忍田以外と個人ランク戦をする様子を見てみたかったので、ついていく事に。

 

 

 

 奇しくも、件の鋼もまた、アンデルセン隊への対策として、スピードが特徴的なソフィアと似た戦闘スタイルだと思われる緑川を探して本部を訪れていた──。

 

 

 

 

「そんなわけでやってきました、ランク戦ブース~」

「うふふ。楽しそうね、灯」

「そりゃもう~。あたしだってソフィアさんの戦いには興味がありますから~」

「そう? まあ最近はお出かけしてばかりでろくに戦ってもいないものね、わたし」

「そう、そうですよ~! 慢心していいのはAUOだけだって昔から決まってるんです~!」

「慢心しているつもりはないのだけど……」

「いいえっ! してます~!」

 

 

 作戦室を飛び出し、ランク戦ブースへと足を進めた二人は、入口でそんなコントをしていた。

 当然、その様子は目立ちに目立ち。

 ただでさえソフィアは美しすぎて人目を引きやすいのだ。

 

 

「おい、あれ……」

「アンデルセン隊……!」

「直接見ると本当にかわいいなぁ……」

「彼氏とかいるのかな?」

「どっち?」

「アンデルセン隊長」

「だよな」

 

 

 群衆が騒ぎ出し、ブースで存在感を放っていたA級、B級の隊員たちもまたソフィアたちの登場に気付く。

 

 

「こうして並んでると、ソフィアさんの引き立て役にしかなってなくて悲しい」

「大丈夫よ、灯はかわいいわ」

「ほんとですか~……?」

「ええ。あら、鋼くんがいるわね」

「へ」

 

 

「おお、あれが噂の美少女隊長!」

「ん、米やん先輩ってああいうのがタイプなの?」

「ばっかお前わかんねーかなー。わかんねーか」

「なんかはらたつ」

「…………」

「あ、そっか。鋼さんとこの次の相手ってアンデルセン隊だっけ」

「ああ」

 

 

 と、思うじゃん? が口癖というか決めゼリフの、A級三輪隊攻撃手、米屋陽介。

 弱冠14歳にしてA級草壁隊の攻撃手を務める優秀な犬っころ、緑川駿。

 

 彼らと共に、村上鋼がじっとソフィアを見つめていた。

 

 

 そんな彼らに、微笑みながら近付くソフィア。

 止めるべきか止めざるべきか悩む灯。でもちゃっかり足は進んでいる。

 

 

「初めまして、アンデルセン隊長。鈴鳴第一の村上鋼です」

「はっじめましてー! 三輪隊の米屋陽介っす!」

「……ハジメマシテ。草壁隊の緑川」

「なんだおめー緑川、緊張してんのかー? 柄にもなく猫みたいに警戒しやがって」

「そんなんじゃないって」

 

 

 どうやらソフィアがレイジと同い年という話は確実に知られてきているようである。

 これには迅を使って情報を流したソフィアもニッコリだ。

 

「アンデルセン隊オペレーター、猫山灯です~」

「アンデルセン隊隊長、ソフィア・アンデルセンよ。よろしくね、三人とも。あとソフィアでいいわよ」

「よろしくー! で、で? ソフィアさんはもしかして鋼さん対策だったり?」

「それも無くはないけど、ちょっと体を動かしたくなって。どうせだから一戦どう?」

「俺でよければー!」

「残念、鋼くんの方」

「ありゃ……ですってよ鋼さん」

「それは──」

 

 

 もしやソフィアさんは自分のサイドエフェクトを知らないのか、と逡巡する鋼だったが──。

 

 

「やめといた方がいいよ、ソフィアさん」

「あら?」

「んー、言っても言わなくてもフェアじゃねー気がすんなー。でも俺も緑川に賛成っすね」

 

 

 意外な事にソフィアを警戒している様子の緑川がアドバイスし、米屋もまた賛同した。

 鋼としてはもっともだ、と頷きたいところだが、それでも情報が少なすぎるので残念だというのが正直なところである。

 

「ほらー、緑川くんと米屋先輩もこう言ってるじゃないですか~。やめましょうよ~」

「「ん?」」

「……もしかして」

「ええ。わたし、あなたのサイドエフェクトは知ってるわよ? その上で聞いてるの」

 

 

 首を傾げる米屋と緑川。

 目を見開く鋼。

 たはーと項垂れる灯。

 

 

「──鋼くん。一戦、どう?」

「……十本勝負で、五本終わってから15分の休憩を挟む。それでもよければ是非」

「構わないわ。全力でかかってきなさい、鋼くん。上には上がいると教えてあげる」

「──望むところです」

 

 

「おいこれ実況とかいた方が盛り上がるんじゃね?」

「あ、あたしやりましょうか~?」

「お、いいね! じゃあ拡散して人集めっか!」

「あの隊長さん、すごい自信だね。次の相手だって言うのに、鋼さんのサイドエフェクトを知った上で挑むなんて」

 

 

 こうなっちまったもんは仕方ねえやと開き直り、ノリノリで実況役に名乗りをあげる灯。

 早速情報を拡散していく米屋。

 一番年下なのに一番冷静で、呆れる緑川。

 

 

 

 尚、「【速報】噂の美少女隊長、鋼さんと個人戦やるってよ」と題し米屋が広めた情報により、A級B級の隊員たちが挙って押し寄せる事になり、ちょっとしたお祭り騒ぎになる模様。

 

 




ランク戦の順位変動描写が地味に大変。
推移をまとめてるサイトとか探し回りましたよ。
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