今回はとても長いです。すみません
9月1日
「お嬢様、お忘れものはありませんか?一人で学校へ行くのは大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、エリー。そんなに心配しなくても、向こうには知り合いがたくさんいますから」
列車の最後尾の車両近くのコンパートメントで、レイラは今日何回目かのやり取りを、窓から見えるエリシャとしていた。
「でっですが……」
「何かあったらルナに伝言託しますし、向こうにはダンブルドア先生もいらっしゃるのですよ?ヴォルデモートごときに負けるような人ではないです」
だから、安心して。とレイラは微笑んだ。
「分かりました。……では、お嬢様。私は仕事に戻りますので。道中、お気をつけて」
「ええ、エリーもね」
お互い視線を交わらせる。
バチッ
姿くらましをしたエリシャがその場から一瞬で消えた。
「…………」
エリシャが消えたその場所をじっと見つめているレイラ。少し不安なのだろうか、その瞳は揺れている。
と、その時
「きゃああああ!!」
レイラに近い、列車の戸口の階段から女の子が滑り落ちた。その上に、その子の荷物らしいトランクが迫っている。
「────っ
咄嗟に窓から飛び出したレイラは、浮遊呪文を唱えてトランクを浮かした。そして、杖を持っていない方の手で女の子を抱き止める。
「…………ふぅ、大丈夫ですか?」
ゆっくりトランクを降ろしながら、レイラは女の子に問う。
その女の子はレイラをぽーっと見つめた後、顔を赤くしながら、
「だっ、だっ、大丈夫です!ありがとうございます!」
と言った。
「そう、それならよかったです」
レイラは微笑んで、女の子を地面に降ろした。そして女の子に軽く会釈して、自分のコンパートメントに向かって歩いた。
その後ろ姿に熱い視線が送られているとも知らずに。
レイラが助けたこの女の子は、パンジー・パーキンソン。後のスリザリンの女の子だ。
ちなみに、今のレイラの服装はローブを着る前の男の子の服装。髪を後ろの高い位置でポニーテールにしているとはいえ、男の子と見間違えるのも無理はない。
この列車に乗車してから、20分が経った。
ぼーっと窓の外を眺めているうちに、発車まであと10分となっていた。
コパートメントに誰か来る前に、さっさとローブへの着替えを済ませる。着替え終わったレイラは、トランクのポケットから数少ない本の一冊を出した。
家ごと本が燃えてしまったため、今手元にあるのは自分で買った本のみだ。
(さて、続きはどこからでしたっけ?)
レイラは本のページをパラパラとめくる。と、そこへ
「あの……ここ空いてるかな?もう一人いるんだけど……」
と、黒髪に緑色の瞳をした男の子がコンパートメントの扉を開けて、声をかけてきた。
「他のどこもいっぱいなんだ」
(……原作と違う…)
彼の言葉に、レイラは一瞬少し戸惑いを見せたが、すぐに笑顔で返事をした。
「ええ、勿論」
「よかった、ありがとう」
レイラの返事にホッとしたような顔をした黒髪の子に続いて、赤髪の男の子も入ってきた。
「ねえ、せっかくだから、自己紹介しないかい?」
荷物を整理し終えた赤髪の子が唐突にそう言う。
「僕はロナウド・ウィーズリー。ロンって呼んで」
赤髪の男の子がそう言うと、続いて黒髪の男の子が名乗った。
「えっと、僕はハリー・ポッター。ハリーでいいよ」
「えっ!君、本物?じゃあ、あれはあるの?その…ここにある、あれ」
ロンが右の額を指差し、驚いた様子でそう言った。ハリーが前髪を手で上げる。
そこには稲妻型の傷が、確かにあった。
「本当だぁ……」
「ねぇ、君の名前は?」
感動しているロンに変わり、ハリーがレイラに聞いてきた。
「私はレイラ・ユオハーゼと言います。レイラでいいですよ。二人とも、よろしくお願いします」
レイラが会釈してそう言うと、ロンは目を見開いて驚いたような顔をした。
「きっ、君今レイラ・ユオハーゼって言った?だ、だって例のあの人に殺されたって……」
「……そうなんですか?」
お互い驚いたような顔をしてキョトンとする。
「まぁ、私はその事について覚えていませんし、無かったことに…………」
そこまで言ってレイラは思い出した。両親と兄が死んだ瞬間を。緑の閃光で埋め尽くされた家を。
「あー……その件については先生方に聞いてみますね」
「うっ、うん」
しばらくしてロンがスキャバーズを見せてきた。ぺティグリューだ。この野郎、呑気に寝やがって……
「寝てばっかりだ。死んでたって、きっと見分けがつかないよ。昨日、少しは面白くしてやろうと思って黄色に変えようとしたんだ。けど呪文が効かなかった。やってみせようか──。」
そういってロンはトランクをごそごそと引っ掻き回し、くだびれたような杖をとりだした。ボロボロで、端からなにやら白い物が出ている。
「ロン、それ壊れているんじゃないですか?ちょっと貸してください。
レイラは杖を取り出して呪文を唱えるを。ロンの杖から火花が散り、新品同然になった。ハリーは目を丸くしている。
「うわー、すごいね!ありがとう!」
喜ぶロンに気にしないで、と応じ、ロンがスキャバーズに杖を振り上げたとき、コンパートメントの扉が開いた。
「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」
扉を開けたのは、なんとなく威張ったような話し方をする女の子だった。その後には丸顔の男の子が泣きべそをかいている。
「「見てないよ」」
ハリーとロンの声が重なる。
だが女の子は聞いてもいないような様子で、
「あら、魔法をかけるの?それじゃ、みせてもらうわ。」
と座り込み、ロンは少したじろいだが、すぐに呪文を唱えた。
『お陽さま、雛菊、とろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ』
だが何も起こらない。スキャバーズは相変わらずねずみ色だ。
「その呪文、間違ってないの?まあ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習の……(そういえば、ハーマイオニーって最初はこんな感じだったよな……)私はハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」
ハリーとロンは教科書を暗記したという彼女の発言に唖然としていた。
「ぼ、僕、ロン・ウィーズリー」
「ハリー・ポッター」
「ほんとに?私、もちろんあなたのこと知ってるわ」
そしてハーマイオニーはいかに自分がハリーを知っているかということについて語り始めた。もはやハリーは呆然としているし、レイラも半分呆れていた。ハーマイオニーの記憶力がすごすぎる。
レイラは話が終わるのをみはからって、「レイラ・ユオハーゼです」と自己紹介した。
「え?レイラ・ユオハーゼって家族と一緒に殺されたって『20世紀の魔法大事件』に出てた……いや、ごめんなさい。レイラね。よろしく」
「気にしないでください、一般的には殺されたことになっている?みたいですから」
「そう……とにかく、もういくわ。ネビルのヒキガエルを探さなきゃ」
そしてハーマイオニーが出て行こうとしたとき、レイラは呼び止めた。
「すみません。ネビルですよね?ヒキガエルの名前は?」
「トレバーだよ」
そう言ったネビルはもう泣き出しそうだ。
「そう、ちょっと待っててくださいね……
『呼び寄せ呪文』を使ったレイラをハーマイオニーは怪訝そうに見る。
「呪文、それであってるの?」
そういった次の瞬間、一匹のヒキガエルが飛んできた。ハーマイオニーは目を丸くしている。
「トレバー!」
ネビルは大喜びだ。
「すごいわね、あなた。そんな呪文、教科書にのってたかしら」
「1年生のものにはのっていないはずですよ。これは4年生で習うものですから」
というと、ハーマイオニーは口をあんぐりとあけた。
「ありがとう、僕、ネビル・ロングボトム。助かったよ」
「レイラ・ユオハーゼです。これからよろしくお願いしますね、ネビル」
ハーマイオニーとネビルはそのまま自分たちのコンパートメントに戻った。
「車内販売はいかが?」
お昼時になると、車内販売のおばさんが、カートを引いてやって来た。
ロンはお弁当を持って来ていたため、何も買わなかったが、ハリーとレイラは、爆買いというものをしていた。レイラが買ったのは主に甘いものを中心としたお菓子だ。
それぞれ昼食をとっていると、コパートメントの扉が勢い良く開いた。同時に誰にも気づかないれないように、レイラがトランクを開けてそこに吸い込まれる。
「ここに、ロニー坊やはいるかい?」
「それと、銀髪碧眼の美少女」
「あと、ハリー・ポッターと、」
「「銀髪碧眼の美少女」」
入って来たのは赤毛の双子だった。ハリーが『銀髪碧眼の美少女』の言葉に先程までレイラが居た場所を見つめた。だが、いない。
その間に、ロンと双子が話していた。
「僕は、坊やじゃない!それで、兄さん達何かよう?」
「かわいいーかわいいー弟の入学なんだぜ?」
「どんな感じか偵察に来たってわけさァ」
ジョージ、フレッドの順にそう言った。
「ああ、それなら心配ないよ。だって、あのハリー・ポッターと友達になれたもん」
「なんだって?!」
「そんなバカな!?」
ロンの得意げな表情に、彼らはわざとらしく頭を抱えた。
「他に何かあるかい?」
ロンが聞くと、
「ああ、もうないぜ」
「そんじゃ、僕たちはこれで」
そう言って先程と同じようにして出ていった。
「ねえ、ハリー彼女はどこに行ったの?」
「彼女とは私のことですか?ロン」
そこには、『銀髪碧眼の美少女』がいた。
ー数分後ー
ガラガラ──
「ほんとかい?このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話でもちきりなんだけど。それじゃあ、君なのか?」
入って来たのは青白い、気取った少年だった。後ろに弱そうなボディーガードが二人いる。ああ、ドラコとクラッブとゴイルだ。どっちがどっちか知らんけど。
私なら指一本で倒せるなぁ……
レイラがそんな物騒なことを考えている途中にも話は進んでいた。
「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切様」
ハリーが冷たく言った。
ドラコは真っ赤にはならなかったが、青白い頬にピンク色がさした。まだ、レイラの気づいていない。
「ポッター君。僕ならもう少し気を付けるがね」
からみつくような言い方だ。
「もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道をたどることになるぞ。君の両親も……(飽きてきたレイラは百味ビーンズを開けて中を覗いた)ウィーズリー家やハグリッドみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるよ」
ハリーとロンが立ち上がった。ロンの顔は髪の毛と同じぐらい赤くなった。
(わぉ、面白そうになってきた)
少しワクワクしながらことの成り行きを見守るレイラ。
「もう一ぺん言ってみろ」
ロンが叫んだ。
「へぇ、僕たちとやるつもりかい?」
ドラコはせせら笑った。
「いますぐ出ていかないならね」
ハリーはキッパリ言った。
クラッブもゴイルもハリーやロンよりもずっと大きいけれど、グリフィンドールに入るだけあってハリーとロンは勇敢だなぁ。
レイラは他人事のようにそう思いながら百味ビーンズを口に放り込んだ。
(ふむ、トースト味といちごですか。当たりですね)
「出ていく気分じゃないな。君たちもそうだろう?僕たち、自分の食べ物は全部食べちゃったし、ここにはまだあるようだし」
ドラコがニヤニヤと笑いながらそう言った。そして、ゴイルが蛙チョコレートに手を伸ばす。…………その蛙チョコレートはレイラの近くに置いてある物だ。
ゾワァッ
ハリーは急に背筋が凍るような寒気に襲われた。ロンやドラコ、クラッブも顔を青くしている。その禍々しいものを直接当てられているゴイルはガタガタと震えていた。
「あのぉ」
その殺気のようなものを出している張本人が口を開いた。
「それ、私の何ですけど。て、いうか人の勝手に食べるなら金払って下さい。定価の3倍くらいで」
ニッコリと笑顔のまま、そう言ったのはレイラだ。その笑みには凄惨な色が加わっている。
その声に過剰反応したドラコは、背筋をピンと伸ばた。
「レッレイラ・ユオハーゼ殿……!」
「何ですか?」
「あ、いえ、お元気でしたか?」
「ええ」
「では、僕はこの辺で。同じ寮になれる事を祈っています」
そこまで言うと、ドラコはクラッブと気絶しかけているゴイルを連れて慌ててコンパートメントから出ていった。
レイラ以外の二人は、口を閉ざし、キョロキョロと辺りを見渡していた。
少しして沈黙に耐え兼ねたのか、ハリーが口を開いた。
「レイラは彼と仲がいいの?」
率直な感想だ。
「いいえ。色々とありまして……私の兄があちら側で、そこで知り合ったんです」
また沈黙が始まった。
レイラは何事もなかった様に、読書をし始めた。
────だが、その沈黙はまたすぐに破られる。
ガラガラ────
「レイラッ‼」
「やっと見つけた‼」
バフッ────
「「……え?」」
ハリー、ロン、二人の声がシンクロした。
驚くのも無理はない。なんと、先程来たロンの兄達が、レイラに飛びついたのである。
「なんで隠れていたのさ!」
「僕らの事嫌いになったの?」
「……いえ、違いますが、重いです。死んじゃいます……」
苦しそうにジタバタするレイラに、悪い悪い、とロンの兄達は笑いながら退いた。
「…兄さん達、いつの間にそんな綺麗な人を…」
「も、もしかして、先輩?!」
ハリーとロンは問いかけた。返って来た答えは…
「フッ、どうだ!」
「羨ましいか?ロニー坊や」
これにはあぜんとしてしまった。どうやら彼らと彼女は……
と、ここまで想像を膨らませてしまった二人。
すると、バンッという音とともに、双子が頭を抑えた。
「「イタっ!」」
「嘘をつくんじゃねー!このグリフィンドール!」
突如、コンパートメントの扉からスリザリンの先輩、マーカス・フリントが現れた。その手には大量の本が。
「レイラはスリザリンの新しいシーカーとなって俺達スリザリンの栄光を……」
「まだ、スリザリンに入るとは決まってないでしょう。レイラは私と一緒にレイブンクローを一位に導くのです」
マーカスの後ろからレイブンクローのチョウ・チャンが頬を膨らましながらたくさんの本を手に現れた。
「違う!グリフィンドールだ!」
フレッドとジョージが頭を抑えながら威嚇する。
「何処でもいいでしょう。それよりも、その手にしている大量の本は何ですか?」
前振りも無しに現れた四人の先輩に呆れながら、レイラはそう言う。
「ああ、これはレイラが本を読むのが好きらしいから家にあったものを持ってきたんだ」
「遠慮せずに是非受け取って下さい」
マーカスとチョウから大量の本を受け取ったレイラ。
「本当にいいんですか……!ありがとうございます!」
目をキラキラさせながら、お礼を言ったレイラを見て、フレッドとジョージは、
「「じゃあ、僕らからはイタズラセット!!」」
と、言ってポケットから大量のイタズラ道具を取り出した。
「ホグワーツってこういうのダメだったんじゃ……」
「まぁまぁ、レイラも共犯ってことで」
「そうだよ!」
えぇー?と、言いながらも嬉しそうに受け取ったレイラ。
「え……やっぱり、先輩なんじゃ……」
完全に置いてけぼりを食らっていたハリーとロンがポカンとしながらこちらを見つめている。
「二人とも、勘違いしないでくださいよ?私は新入生です」
「そ、そうなんだ」
「びっくりしたよ……」
二人が胸をなでおろした。
車内放送の声で通路に溢れる人の群れに加わったレイラはハリーとロンとはぐれないようにしながらゆっくり歩いた。
暗いプラットホームに下りると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「イッチ年生はこっち!イッチ年生はこっちだ!ようハリー、元気か?」
ハグリッドのひげもじゃの顔がにこりとハリーに笑いかけた。
「さあイッチ年生、ついて来い!足元に気をつけろ!」
滑ったり、つまずいたりしながら険しい山道を降りていく。右も左も真っ暗だった。
「さあみんな、ホグワーツが見えるぞ。この角を曲がったらだ。」
ふりかえってハグリッドが言う。
「うぉ──っ!」
歓声が上がった。
狭い道がいきなり開け、大きな黒い湖のほとりにでた。向こう岸には高い山がそびえ、てっぺんには壮大な城が見えた。ホグワーツだ。胸が高鳴った。
その後、4人ずつボートに乗せられた。ハリーにロンにレイラ、ハーマイオニーが乗り込んだ。そのボート船団は蔦のカーテンをくぐり、陰に隠れてぽっかりとあいている崖の入り口へ進んだ。城の真下と思しきトンネルの先には地下の船着場があった。全員が上陸した。
私たちは石段をのぼり、巨大な樫の木の扉の前に到着した。
「みんな、いるな?」
ハグリッドは確認し、城の扉を握りこぶしで3度たたいた。
ボツネタ
「ドラコ、喧嘩するなら私も混ぜてくれませんか?」
そう言ったレイラは汽車の壁をガンッと殴った。そこにできたのは巨大なクレーターだ。
「さぁ、やりま・・・」
「やりません!すみませんでした!」
青ざめながらドラコは慌ててコンパートメントから足早に消え去った。
・・・・・はい