翌朝、レイラは何事も無かったかのようにグリフィンドールの談話室のソファーに座って、本を読んでいた。まだ、朝早いので誰も起きていないのだろう。談話室は心地よい静けさがあった。
だが、その静けさも後数十秒で崩れ去ることになる。
「「レイラァ!!!」」
大声で談話室に飛び込んできたのは赤毛の双子だった。そして、その勢いのままレイラに飛び付こうとする。
(
本を読んだまま、レイラは自分の前に無言で防御の壁を張った。
「「ぶはっ!!!」」
見事にその透明な壁にぶつかった双子はそのままズルズルと崩れ落ちた。
「痛いよぉ、レイラァ」
「僕達が何したって言うんだよぉ」
「まず、その早朝テンションをどうにかしてください」
本から目を離さずにレイラは言う。双子は、頬を膨らませながらレイラの後ろにまわった。
「僕達は君を心配してたんだよ?」
「廊下で急に倒れたってダンブルドアが言ってたよ?」
「「それで医務室に運ばれたって」」
「…………はい?」
レイラは思わず双子の方に振り返った。そしてダンブルドアとの会話を思い出した。
(あー、あの狸じじい何がどうにかする、だ。余計に心配かけてんじゃねぇか)
レイラは持っていた本を握りつぶした。
「あー、はい。そうらしいですね、はい。・・・あらら、ホンガツブレチャイマシタネ」
笑みを浮かべたレイラは本に
「レイラ?笑顔の裏に何か見えるよ?」
「何か今日のレイラ怖い…………」
「大丈夫ですよ。あなたたち
「「には、って何!?」」
双子が騒いでいると、グリフィンドールの生徒も続々と寝室から出てきた。その一人一人が大丈夫?と声をかけてくれる。全員に心配かけてるじゃん。
「あ、おはよーレイラ」
「調子はどう?」
ハリーとロンが、欠伸をしながら談話室にやって来た。
特にハリーは眠そうだ。
「おはようございます。私は元気ですが、ハリー?あなた何かありましたか?」
笑みを浮かべてハリーに問いかける。すると、近くにいた双子が声を揃えて言った。
「「気を付けろハリー。レイラが笑顔の時は正直に答えた方がいい。殺されるぞ」」
「えっ!?」
ハリーの顔が青ざめる。
やだなぁ、そんなことしないよ。殺すだなんて滅相な。機嫌がいいときは手加減するって。多分な。
朝食を食べているとき、ハリーから話を聞いた。どうやらハリーは昨晩、家族に会ったという。話を聞くと、それは原作でいう、『みぞの鏡』とやらだった。
「興味深いですね、今晩、行ってみますか」
レイラ達は小一時間寒い廊下をさまよった後、ようやく鏡の部屋を見つけた。ハリーがマントをかなぐり捨てて鏡へ向かう。レイラも『目くらまし術』を解いた。
鏡の上にはこう書かれていた。
『すつう をみぞの のろここ のたなあ くなはで おか のたなあ はしたわ』
(へぇ、『私は貴方の顔ではなく貴方の心の望みを映す』か。ふぅん)
「ねっ?」
「僕、君しか見えないよ」
鏡の前に立ったハリーとロンが喋っている。
「ちゃんとみてごらんよ。さあ、僕のところに立って見て」
ロンとハリーが場所を交代する。
「うわあ!僕を見て!」
とロンが叫ぶ。
「家族みんなが君を囲んでいるのが見えるかい?」
「ううん・・・僕一人だ・・・でも僕じゃないみたい・・・僕、首席だ!寮杯とクィディッチカップも持ってる。僕、クィディッチのキャプテンもやってるんだ・・・。ねえハリー、これって未来を映す鏡?」
「そんなはずないよ。僕の家族は皆死んじゃったもの」
レイラはそんな2人に声をかける。
「2人とも、鏡の上の文字を逆から読んでください」
2人はレイラに言われた通り、文字を逆から読む。
「「『わたしは あなたの かお ではなく あなたの こころの のぞみを うつす』?」」
「つまりこの鏡は家族を映す物でもなければ未来を映す物でもありません。心の中の望みを映し出すのです。ハリーは家族に会いたい、ロンはお兄さんたちと同じ様な栄光を掴みたい、そういうことですよ」
「「・・・」」
「ですが、その鏡に映し出されたことはあくまで望みでしかありません。けっして現実では無いんですよ。でも、その望みだって実現できないとは限りません。現実で一生懸命頑張って、それを実現すればいいんですよ」
「「・・・」」
「じゃあ、私も覗いてみましょうか」
レイラは鏡の前に立った。そこに映っていたのは・・・
「わぁ凄いですね」
レイラの後ろで、笑顔で手を繋いでいるハリーとドラコ。それにヴォルデモートとダンブルドア。グリフィンドールとスリザリン。死喰い人と不死鳥の騎士団。
(私の望みは壮大だなぁ)
自分の無茶苦茶な望みに苦笑しながら、レイラは自分の隣に立つ人物に目を向けた。
「────────ーっ!?」
そこにいたのは、
その自分が死ぬ直前に喧嘩してしまった、仲の良かった親友だった。
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【2005年 6月 日本】
私の名前は近衛 黎。日本の中学2年生だ。今日も剣道部の副主将として、部員の皆と一緒に練習をしていた。人付き合いが苦手な私は、部員のなかにいる私の親友、久遠 渚の誘いで剣道部に入った。初心者だった私に、渚は丁寧に教えてくれ、お陰で今では副主将になるほど腕前は上達した。今日も部活が終わったら、渚と一緒に下校する、はずだった。
「ちょっといい?黎」
部活が終わった後、部室の後片付けをしていると渚が声をかけてきた。
「どうしたの?」
いつも通り笑顔で答えると、渚は私を睨んで言った。
「あんたさ、私の事鬱陶しいとか、目障りとか色々言ってくれてんじゃないか」
「えっ?」
「しらばっくれんな。佑奈から聞いたよ」
渚が口にしたのは、私には言った覚えのない言葉だった。どうやら、クラスのお嬢様的存在の北島 佑奈が、私が渚な悪口を言ったと、渚に伝えたらしい。
「私が渚の悪口を?言うわけないよ、せっかくできた親友なのに」
「笑わせないで。何で影でこそこそ言うのよ」
「だから言ってないってそんな事」
何度言っても渚は信じてくれない。流石に嫌になってきた私は、つい言ってはいけないことを言ってしまった。
「ねぇ、何度言ったら信じてくれるの!?北島さんのことは信じるのに私の事は信じてくれないの!?何でよ!」
「黎こそ何で陰口叩くのよ!!」
「だから言ってないって!もう、渚の強情者!だいっきらい!!」
言ってからハッ、となった。恐る恐る渚を見ると、涙を流しながら嘲るような笑みを浮かべていた。
「ほら、言ったじゃん。だいっきらいって。私もあんたの事なんか大嫌い!!もう話しかけないで!!」
そう叫んだ渚は部室の扉を押し開けて、外に飛び出した。私は呆然としたままそれを見送ってしまった。
私は深く後悔した。自分の言葉が信じられなかった。
「────────ーっ!ねぇ!渚待って!!!」
自分も部室から飛び出すと、渚は校門に向かって走っていた。それも必死に追いかける。校庭にポツポツと雨が降りだした。
「なぎさぁぁぁ!!」
私は涙声で叫んだ。きっと、雨と涙で顔はぐしゃぐしゃになっているだろう。だがそれどころじゃない。
私はやっと校門に着いた。ゼイゼイと息をしながら、辺りを見渡す。すると、近くの交差点で渚を見つけた。
「なぎ・・・・」
声をかけようとしたその時、1台のトラックが交差点に侵入した。その先には横断歩道を渡っている渚。
私は考えるよりも早くに走り出していた。その勢いのまま、交差点の真ん中で止まってしまった渚を押し飛ばす。
最後に見えた景色は、恐怖心で顔が強張っているような、私の行動に驚いたような、そんな顔の渚だった。
──────────────────────
「【渚・・・あなたは助かったかな、ちゃんと生きてるかな。仲直り出来なくてごめんなさい。私は今ハリポタの世界で生きているんだ。渚、君もどこかの世界で生きているよね、後悔なんてしなくていいからさ・・・】」
レイラは日本語で呟いた。その目には後悔の色が映っている。だが、鏡の中の渚はにこにこと微笑むままだ。
「レイラどうしたの?大丈夫?」
ハリーの声で、レイラは我に帰った。
「え、ええ大丈夫です」
「本当?君、真っ青だよ?何を見たの?」
「・・・ごめんなさい。言えないんです」
「そう・・・分かったよ、帰ろう」
そう言って歩き出そうとするハリーを呼び止め、入り口付近の机に座っている人物に声をかける。
「校長先生、こんばんは。そこにいるのはわかっていますよ?」
ハリーとロンが怪訝な顔でレイラを見る。その時、
「ほう、よく見破ったのう。こんばんは、3人とも」
そう言って突然現れるダンブルドアに2人は仰天していた。ダンブルドアは面白そうに笑うと、レイラに問いかけた。
「いつから気づいておったのじゃ?」
「この部屋に入ったときからです、ダンブルドア先生」
「素晴らしい。グリフィンドールに5点あげよう。ところで・・・君は何を鏡の中に見たのかね?」
「グリフィンドールとスリザリンが仲良くしていたところですね。他は、まあ似た感じの事ですよ。・・・それから先は言えません」
「そうか、残念じゃの」
そういいつつ『開心術』を使ってくるダンブルドアには苦笑する。
「私にそれは効きませんよ。」
「そのようじゃ。・・・さてレイラ、この鏡については先ほど君の述べた言葉が満点回答じゃ。この鏡は望みを映してくれるが知識や真実を示してくれるわけではない。だが過去にはそれを受け入れられず、発狂してしまったものもおる。3人とも、この鏡は明日よそへ移す。探してはいけないよ。だがもし再び出会ったとしても、もう大丈夫じゃろう。夢にふけったり、生きることを忘れてしまうのはよくない。それをよく覚えておきなさい。さて、ベッドに戻ってはいかがかな」
「あの・・・先生。質問してもよろしいですか?」
ハリーが躊躇いながら言った。
「いいとも」
「先生はこの鏡で何が見えるんですか?」
「厚手のウールの靴下を一足持っているのが見える。靴下はいくつあってもいいものじゃ。」
ハリー達は透明マントをかぶり、レイラは自分に『目くらまし術』をかける。そのまま寮に戻り、ベッドにもぐりこんだ。
ハリー「レイラが自分から規則を破りに・・・」
レイラ「ああ。私、規則とやらは意外と破る方なんで」
ロン「なんで?」
レイラ「だって、守るだけの規則なんて面白くないでしょう?それに規則は破るためにあると思っているので」
ハリー&ロン「お、おお」
双子「よくぞ言った!では僕達と一緒に先生に悪戯を」
レイラ「いいですね」
ハリー&ロン「えー・・・」