翌日、寮の得点を記録している大きな砂時計のそばを通った生徒たち、特にグリフィンドール寮生は真っ先にこれは掲示の間違いだと思った。グリフィンドールの点が150点も減っていたのだ。
彼らは真っ先に事の真相を探った。
レイラは勉強に関しては群を抜いて飛び抜けていたし、先生方からよく褒められ、クィディッチでも活躍をし、また遊び感覚で結構の得点を獲得していた。
にも関わらず、砂時計からわかるグリフィンドールの得点は、一五〇点も減っていたのだ。そして噂が広がり始めた。
ハリー・ポッターが、あの有名なハリー・ポッターが、クィディッチの試合で二回も続けてヒーローになったハリーが、寮の点をこんなに減らしてしまったらしい。何人かのバカな一年生と一緒に。
その噂を聞いた時、レイラは思わず自分の頬を殴った。周りにいた生徒がギョッとして見てきたがレイラは構わず、後悔をしていた。
自分ならこれを食い止められたかもしれなかったのにと。
盛大にため息をついたレイラを見て、隣を歩いていたハリーとハーマイオニーはビクッとなった。
二人揃ってレイラに愛想をつかれた等と考えていたのだが、レイラは片手で額を押さえて
「すみません、ハリー、ハーマイオニー」
と謝った。
何でレイラが謝るんだ、と思った二人だったが、ドンヨリとした雰囲気を醸し出すレイラに声をかけられずにいた。
そして、試験の日が近づいてきていたある水曜日の夕方。試験勉強に没頭していたハリー、ハーマイオニー、ロン、そしてレイラの元に一羽のフクロウが飛んできた。
「ルナ!」
コツコツと窓ガラスをくちばしで叩くレイラのフクロウ、ルナはレイラに窓を開けてもらうとスィーと部屋に入ってきた。そしてレイラの肩に止まると手紙が括られた右足を彼女につき出した。
「誰からでしょう・・・・っ!?」
手紙を読んだレイラは目を見開いた。
「何て書いてるんだ?」
教科書とにらめっこしていたロンが顔を上げてレイラに問うが、レイラはグシャッと手紙を潰して、
「すみません、少し用事ができたので・・・・・」
とだけ言って、談話室から慌てたように駆け出していった。
シトシトと静かに雨が降る中、レイラは傘も差さずに禁じられた森への道を走っていた。
丁度日は空の向こうへ消え、辺りはだんだんと暗くなりつつあった。
「___________ハグリッド!」
レイラは森の入り口で待っていた大きな人影に声をかけた。その人影は振り向くとレイラに向けて手を振った。
「すまねぇ、レイラ。こんな時間に」
「いえ、大丈夫です。それより本当なんですか?ユニコーンが、、、、死んでしまったというのは」
レイラが息を整えながらそう言うと、ハグリッドは辛そうに顔を歪めて、ああ、と頷いた。
「そう、ですか」
レイラは俯いた。
ハグリッドからの手紙には簡潔に書かれていた。
"ユニコーンの死骸を見つけた
俺は今から埋葬しようと思う"
「
ハグリッドに続いて森に入ったレイラは鬱蒼としげる森の一角、開けた場所にその死骸を見つけた。
ひどく美しく、悲しいものだった。
純白に光輝くたてがみとそのしなやかな足は無造作に散らばっている。
周りの木や地面には沢山の血が飛び散っていた。
苦しかっただろうか。
痛かっただろうか。
辛かっただろうか。
何も出来なかった自分が情けなかった。
いつの間にか周りには沢山の動物達が集まってきていた。皆、心なしか悲しそうな顔をしている。
「__________________ハグリッド、ユニコーンを殺した者に心当たりはありますか?」
森の出口へと向かっている途中、レイラは唐突にハグリッドに聞いた。
「うんにゃ、俺には分からん」
ハグリッドは首を振って答えた。
いつの間にか雨はやんで、雲の隙間から白銀に光る月が覗いている。
「そうですか・・・・・」
それっきりレイラは黙りこんだ。
険しい顔をして、どこかを睨むように目を細めながら。
「・・・・・・・・ヴォルデモート」
朝食のテーブルでレイラはポツリと呟いた。その言葉に隣に座っていたハリーがブハッと口に入れていたパンケーキを吹き出す。
「急に何言い出すんだよ!」
ゲホゲホと咳き込みながらハリーがレイラを見ると、一瞬レイラはキョトンとした顔をした。そして、
「あ、ああ。すみませんハリー。少し考え事をしていまして」
と、苦笑して謝った。
「一体何考えてたらヴォルデモートなんて言葉が飛び出てくるんだ・・・・」
ハァ、とため息をついたハリーが新しくパンケーキを取ろうと椅子から立ち上がる。と、そこへハリー目掛けて何かが突っ込んできた。
「グフッ」
ハリーの横腹に命中したそれは学校のフクロウだった。
「・・・・・・痛い・・・・」
呻くハリーの代わりにレイラはフクロウから手紙を受けとった。
「処罰の詳細です、ハリー」
「・・・・・・・・・・・・あ」
「忘れていたでしょう?」
「・・・・・うん」
ハリーは素直に手紙を読んだ。
同じような手紙がハーマイオニー、ネビル、ドラコにも届いていた。
夜11時。ハリーとハーマイオニーは談話室でロンとレイラに別れを告げ、ネビルと一緒に玄関ホールへ向かった。
三人がドアの向こうに消えたと同時にレイラは自分に『目眩まし』の呪文をかけた。そして、談話室から飛び出した。
「じゃあレイラ、僕らはチェスでもして待っておこ・・・・・・・あれ?」
ロンは今さっきまで隣にいたはずのレイラが一瞬のうちに消えたことに目をパチクリさせた。
「__________ハグリッド。ハグリッド!」
レイラは『目眩まし』を解いてハグリッドへ声をかけた。
「レイラじゃねぇか!」
ハグリッドは驚いたように声を上げた。ハグリッドの隣でいたファングが嬉しそうにレイラに近づく。
「こんなとこでいってぇ何してるんだ!?もう遅いから城へ帰り・・・・・・・」
「これからハリー達が処罰を受けるために森へ行くのですよね」
レイラはハグリッドの話を遮って早口に言う。
「私の勘ですが、ユニコーンを殺したのはハグリッドが考えている奴よりもっとヤバいです。恐らく彼らでも今の奴には敵わないでしょう」
ファングがはしゃいだようにグルグルとレイラの周りを回る。
レイラは禁じられた森を見つめた。
「だから私も連れて行ってください。彼らがしなければならないことを出来るだけ早く終わらした方が良いと思うので」
森の中を覗き込んだレイラに一陣の風が吹き寄せる。
と、そこへ城の方から何人かの声が近づくのが聞こえた。
「隠れておれ、レイラ」
素早くハグリッドがレイラを小屋の後ろへ押しやる。レイラは素直に小屋の後ろへ隠れた。
遠かった声がだんだんと近づいてくる。今言い合っているのはハグリッドとドラコだろう。
「
小声で呟いたレイラは、一つの灯りが城の入り口に消えたのを確認して小屋の影から出てきた。
「やぁ、久しぶりですね。ハリー、ハーマイオニー、ネビル、ドラコ」
「レ、レイラ!?」
ハーマイオニーが驚いたように声を上げる。そしてレイラに抱きついた。
「何でここにいるの!?早く帰りなさい!」
「と言ってる割には離してくれないのですね、ハーマイオニー」
ギュゥゥと両手で抱きしめてくるハーマイオニーに苦笑しながらレイラは彼女の背中をポンポンと優しく撫でる。
恐らく、この頭の良い少女はホグワーツに関する本を全て読んでいるはずだ。そして"禁じられた森"の恐ろしさも知っているのだろう。
少し震えているハーマイオニーをレイラは少し考えた後、抱きしめ返した。
そんな少女二人を三人の少年が羨ましそうに見つめていた。
「_____________そんじゃ、ハリーとハーマイオニーは俺と一緒に行こう。ドラコとネビルとファングは一緒に別の道だ。レイラは一人で大丈夫だよな?」
「大丈夫です」
ハグリッドからするべきことを大方聞いたレイラはコクリと頷いた。そんなレイラをハーマイオニーが心配そうな顔で見る。
「じゃ、気を付けろよ。________出発だ」
ハグリッドの掛け声にレイラはハーマイオニーの方へ微笑みかけた。
「行ってきますね」
その言葉と同時にレイラは深く踏み込んで地面を蹴った。
「____________そうですか、ありがとうございます」
レイラはケンタウルスに礼を言って軽く息を吐いた。
「今のところ有力な情報はありませんね・・・・・」
う~ん、と顎に手を当てて次に行くべき場所に検討をつけようとレイラは考え込んだ。
そんなレイラの背をニフラーがよじ登っている。足元ではオーグリーやオカミーが遊んでおり、頭ではデミカイズがゆったりと休憩していた。
そんな彼らに苦笑しながらレイラはよし、と足を止め、左を向いた。
「_______________あっち行きますか」
再び歩き始めたレイラは足を進める度に体が重くなっていくのを感じた。小さな動物達が置いてかれまいとレイラの体に乗っかっていた。
少し歩くと木々の隙間からチラチラと何かが光るのが見えた。
ちょうど良かった。合流するか、と考えたレイラはその光に近づこうと木々や草むらを避けながら歩いた。
そして、その光を放っていた二人の少年に声をかけた。
「ネビル、ドラコ、そっちはどう____________」
「「ぎ、ぎゃあぁぁぁぁ!!!!」」
レイラの姿を見た二人は大声で叫んだ。
顔を青白くさせたネビルが赤い火花を空へと打ち上げるのが見えた。
ネビル「ゆ、ゆ、幽霊っ!?」
レイラ「誰が幽霊だ」
ドラコ「悪霊退散!悪霊退散!」
レイラ「だから誰が悪霊だ!!」